2024年11月20日23時39分掲載  無料記事
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教育

「選択と集中」ではなく「分散と多様性」を 大学関係者らが国際卓越研究大学制度の廃止を求めて署名を提出

 大学教員などでつくられる「大学横断ネットワーク」は15日、10兆円規模の大学ファンドからの資金を原資に「選択と集中」を進めようとする「国際卓越研究大学制度」について、同制度の廃止を求めるオンライン署名約14,909人分を文部科学省に提出した。 
 
 署名提出に併せて開催された記者会見で、東京大学の隠岐さや香教授は、「国際卓越研究大学制度は、大学の経営が一部の少数者に集中して私物化される懸念がある。大学の研究力向上には貢献しないのではないか」と、同制度の在り方を問題視した。その上で、「国立大学は、地元で同じ内容を学べることが期待され各県に設置されているのに、国際卓越研究大学制度はこの趣旨に逆行する。これは、教育の機会均等を妨げる」と指摘した。 
 
 また、会見に参加した筑波大学の吉原ゆかり教授は、国立大学法人法の改正によって大規模国立大学への設置が義務付けられた「運営方針会議」について、「運営方針会議の半数が学外者。学長の上に学外の者を中心にした合議体を作るのは大変危険である」と、学内の意見が疎かにされ得る状況を問題視した。さらに、お茶の水女子大学の米田俊彦氏は、「各大学における運営方針会議の顔ぶれが明らかになってきたが、財界の関係者が目立っている」とした上で、「(大学によっては)教職員の代表が含まれておらず、教職員の声が届かない仕組みになっている」と、教職員ではなく財界の意向が反映され得る状況に警鐘を鳴らした。 
 
 政府与党は、2022年5月に国際卓越研究大学の設立に関連する法律を成立させ、2023年の改定では大規模国立大学に運営方針会議の設置を義務付けた。さらに2024年には、運営方針会議の委員に必ず学外者を含める方針を示し、学内の重要事項については、これら学外委員の賛同を求めた。このような制度の変遷を踏まえて、吉原教授は「上で決まったから意見を言っても仕方がないというような、極度の上位下達がルーティン化している。今後は文系科目や基礎的な研究を行う理系科目などにおいて、教育を受ける機会が減らされる可能性もある」と指摘した。 
 
 財界の意向によって、学問の自由が侵されれば、稼げる学問のみが残され、学問の多様性が失われる可能性がある。日本の教育政策の在り方が問われている。 
 
◯ 「稼げる大学」法の廃止を求める大学横断ネットワーク オンライン署名https://chng.it/dW8DKb6JmX 


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