2024年11月26日18時45分掲載
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入管
「家族分断の危機」 外国人家族の在留資格を求め、支援団体BONDが横浜入管へ申し入れ
「こちらからお話しすることは何もない」
東京出入国在留管理局横浜支局(横浜入管)の担当者は、外国人の難民や労働者を支援する「BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)」のメンバーらに、そう繰り返した。BONDが支援するイラン国籍の青年Aさんの両親に対して、在留特別許可(在特)を付与するよう横浜入管へ申し入れに訪れた場面での出来事だ。メンバーは約2時間半にわたり訴えたが、担当者の反応は冷淡だった。
昨年8月、政府は監理措置制度の創設などを盛り込んだ改正入管法の成立を機に、人道上の救済措置として、外国籍で在留資格のない未成年の子どもとその家族に在特を付与する方針を示した。これにより、今年6月までに212人の子どもたちが在留資格を得たが、なかには彼らと同じく日本で生まれ育ちながらも、「未成年」という画一的な基準によってこの措置の対象から除外された若者が存在する。
イラン国籍の青年Aさん(22)もその一人だった。Aさんは大学卒業後に民間の会社から就職内定を得ていたが、在留資格がないため働けない状況が続いていた。冒頭のBONDは、この措置における入管庁の不合理な線引きを問題視。Aさんの在特を求めて継続的な支援を行ってきた。その成果もあり、今年10月、入管庁はAさんに在特を付与。念願の就職を果たすことができた。だが、問題はこれだけではない。中東出身の父親と南米出身の母親は、今も在留資格のない仮放免者のままであり、いつ強制退去となるか分からない不安定な状況に置かれている。
「一家離散の不安を抱えたままでは、Aさんも安心して働き続けることはできない」(BONDメンバー)
そこで、BONDのメンバーらは21日、Aさん家族が住む神奈川県を管轄する横浜入管に対し、両親への在特付与を求める申し入れを行った。
申し入れ前、BONDメンバーの男性は「家族が共に暮らしたいとの願いを叶えることは、国際人権規約の趣旨に照らして当然のことだ。Aさんの両親はこれまで30年以上にわたり、外国人労働者として日本に多大な貢献を果たしてきた。それらを考慮し、入管は両親に在特を出すべきだ」と語った。しかし、横浜入管の担当者は申し入れに対して「上に報告はするが、この場でお話しすることは何もない」と機械的に繰り返すのみであった。
「横浜入管は、Aさん家族らの事情や生活状況を詳細に知る立場にある。そこに在特を出さない理由はない。また、これまでも入管に対する申し入れを行ってきたが、我々の主張が内部でどのように検討されているのか、全くのブラックボックスだ。担当者がきちんと上に報告しているのかさえ分からない。今回の申し入れでは、改めて入管の非民主的な隠ぺい体質が明らかになった。BONDでは、今後もAさんの両親の件を含め、仮放免者の問題解決に向けた様々な支援を継続していく」(BONDメンバー)
入管庁の発表によれば、2023年末現在で日本にいる仮放免者は約3,000人。彼らの生活は過酷そのものだ。就労が禁止され、生活保護も受けられないことから、まともに生活費を得る手段がない。就労していることが入管に把握されれば、その先にあるのは無期限の収容生活だ。また、彼らは国民健康保険に加入できないため、医療費は全額自己負担。しかし、そもそも医療費に充てる収入を得ることができない。さらには、入管庁の許可なく都道府県を跨いだ移動をすることが禁止されている。このような仮放免者を取り巻く環境は「おりのない監獄」とも表現され、国連からは改善を求める勧告が出されているが、政府は事実上これを無視している状況だ。Aさんの両親は家族分断の恐怖に怯えたまま、今も抑圧された「監獄」の中で暮らしている。
仮放免者に在特を付与するか否かについては、法務大臣の極めて広範な裁量のもと判断される。しかし、実際に大臣の手足となって動くのは現場の入管職員だ。職員らには仮放免者の置かれた状況を正確に把握した上で、それらを適切に在特付与の可否判断へと反映させる組織づくりが求められる。また、仮放免者は常に心理的な不安に苛まれている。そのため、その可否判断に至る過程や審査の状況については、本人や支援者らに対して可能な限り情報提供するなどの配慮が必要である。
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〈お知らせ〉
BONDでは、12月1日(日)14:30から、かながわ労働プラザ(横浜市中区)において「仮放免者の話を聴く会」を開催予定だ。会場参加、ZOOM参加ともに下記URLから申し込める。
◯ 「仮放免者の話を聴く会」 申し込みフォーム
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdQ7acpqr63a5iy-NG8C5KXHwhSZMRKxCyzxy2FI3MTVsppWw/viewform
◯ BOND ウェブサイト
https://nanmim-bond.amebaownd.com/
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