2024年12月03日19時41分掲載  無料記事
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農と食

低賃金低農産物価格 失われた30年、労賃も生産者米価も下がりっぱなしだった

 おコメの値段が高止まりしています。この夏、いきなりスーパーからコメが消えるという事態が勃発、“令和の米騒動”と騒ぎになりました。所管の農水省は「なぁに、9月も中旬になれば新米が出回りますから一時的なことですよ」といっていました。その言葉通り、新米に時期が来たらコメは店頭に戻ってきたのですが、値段は上昇を続け、高止まりということになって今に至っています。(大野和興) 
 
 生産者側から見れば、この30年、生産者が受け取る手取り米価は下がる一方でした。1993年にガットのウルグアイラウンドでコメの一部輸入自由化が実施され、同95年にグローバリゼーションを推進する国際機関WTO(世界貿易機関)が発足。それに合わせて国内では生産者米価、消費者米価に公的な支えをしていた食糧管理法が廃止されました。 
 
 両米価とも価格決定は市場にゆだねられる体制に移行したのです。その後、生産者米価は下降を続け、90年代後半には60キロ(玄米)で1万8000円くらいから産地銘柄によっては2万円代にまでなっていたものが、1万円そこそこと半値になって迎えたのか、今回の“令和のコメ騒動”でした。 
 
 ここまで見てきてすでにお気づきになったことと思います。労働者の失われた30年と低米価はぴったり重なり合うのです。この30年、実質労賃は下がり続け、非正規さらには労働者でもない浮遊する労働力が激増してきました。彼らが尊厳も持って生きていくための生命を再生産する食料が必要です。でないと非正規、フルーランスの低所得者には買うことが出来ません。とくに基本食料のコメは安くなければならない。 
 
 まさに「低賃軍低農産物価格」という経済学の古典的命題が見事に貫徹された30年でした。ならばこちらも古典的命題に戻って“労農同盟”の旗を掲げて、農民には所得と生産費を補償し、消費者・生活者にはゆうゆうと食える消費者価格を補償する二重価格の実現を迫るべきときでしょう。 


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