2025年02月05日19時52分掲載  無料記事
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環境

マイクロプラスチックによる環境汚染 有力汚染源は人工芝

 つい先だって、新聞だったかテレビだったかの報道で、ティーバッグのお茶を飲むと、溶けだしたマイクロプラスチックが体内に入り、えらいことになるばかりでなく地球全体に広がり、収拾がつかなくなる、という話を知りました。こりゃもうどうにもならんな、と思っていたところに本書『人工芝はなぜこわい?』(日本消費者連盟ブックレット)に出くわしました。怖い、怖い。とても怖い話です。(大野和興) 
 
 しかし著者は最後に言います。「人工芝なんて本当に必要なものなのでしょうか」と。ティーバッグだってそうです。あんなものなくても緑茶や紅茶やハーブティーを飲むのに困りはしない。いらないものはひとつ一つなくしていけばいい。こわがっているだけではどうしょうもない。個人としても社会としてもやらなければならないことが見えてきた。本書を読んでの最大の収穫はそれがわかったことでした。 
 
 それをやるには科学的な立証とそのための検証、そして冷静な行動が必要です。本書はその実践の書です。なんだか結論を先に言ってしまった感じになってしまいましたが、以上は前振り、これからが本番です。こわい話をします。 
 
◆大気、水、土を通して 
 
 本書は特定非営利活動法人である市民団体、日本消費者連盟が2024年12月に発行したばかりのブックレットです。著者は環境ジャーナリストで、博士号を持ち市民科学者としても活動している栗岡理子さん。(図1) 
 
 さて本題です。人工芝の原料はプラスチックです。主な用途はスポーツ用、各種競技のグランドに使われています。そのほか玄関マットなど住宅などの施設用。この人工芝が、いま環境汚染の中でも手に負えない最悪の問題として扱われているマイクロプラスチックの主要な発生源となっているのです。 
 
 ある環境調査によると、国内の川や海120地点で見つかるマイクロプラスチックのうち人工芝に由来するものが最多で25.3%を占めると本書は報告しています。しかしこれは人工芝由来のマイクロプラスチックのほんの一部で、そのほか土壌や大気中を浮遊しているものも大量にあります。それらは水や食べ物、呼吸を通して体内に取り込まれ、これまでの検査でも胃、腸、心臓、肺、肝臓、腎臓、血液、胎盤、羊水、子宮、、母乳、睾丸、ペニス、精液、膝関節、肘関節、股関節、骨髄、便、尿、痰、脳からも見つかっています。 
 
◆米国では規制へ 
 
 それがどのような影響を私たちに及ぼしているのか、本書は内外の研究機関、大学、研究者の調査や分析、動物実験などの研究成果をもとに具体的に明らかにしていきます。マイクロプラスチックは胎児からも見つかっています。また脳卒中や心筋梗塞の発症リスクを高め、アルツハイマー病やパーキンソン病などとも関連も指摘されています。 
 
 こうした知見が明らかになるにつれ、米国では人工芝を規制する動きが州や地方自治体で増えていることも本書は報告しています。以上、本書のほんの一部を紹介しただけで、捨ててはおけないなという気持ちになります。 
 
 本書を発行した日本消費者連盟は、同連盟内に置かれた環境部会でマイクロプラスティック規制に向けて精力的に取り組んでいます。著者の栗岡さんもその仲間です。 
 
 同連盟のスタッフで、同連盟g発行する月刊雑誌『消費者リポート』の編集長である杉浦陽子さんは次のように話しています。 
 
◆日本では補助金で奨励 
 
「私たちはこの数年脱プラのための活動を続けてきました。できるだけプラスチックを使わない生活をめざすためのヒントを詰め込んだリーフレットを発行したり、他の環境団体と組んで政府に脱プラのための取り組みを働きかけたり、プラスチック規制のための国際条約を効果のあるものにするために署名を集めたりしてきました。 
 中でも、この間の調査の中で、マイクロプラスチックの発出源として人工芝が最大級に大きいことがわかりました。街中から郊外まであちこちに敷かれている人工芝が、紫外線で劣化し、雨水に流され、大気中にも飛んだりして、どんどんマイクロプラスチックになっています。地球環境への汚染だけでなく、人の健康にも悪影響が指摘されています。このようなことから、海外では人工芝を規制する動きが強まっています。しかし日本ではまったく規制されておらず、むしろ文科省の関連団体である日本スポーツ振興センターが補助金を出して推奨しているので無自覚に人工芝を敷設する自治体があとを絶ちません。 
 私たちはこのようなことをもっと知り、市民に広めて、行政にも働きかけていきたいと考えています。」 
 
1部550円です。ご一読、お勧めします。問い合わせ先は以下です。 
2月13日14:00−16:00、栗岡理子さんの「人工芝はなぜこわい」オンライン講演会を開きます(図2)。 
 
日本消費者連盟eメール:office.j@nishoren.org 


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