2025年04月01日12時37分掲載
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農と食
おこめとおくに その2 軍事化の中の農と食 「同志国自給」の怪
今、考え世の中がどうなっているかを考える切り口は、軍事化と貧困化だと思っています。いま農と食を語るに際しても、この視点は欠かせない、と考えています。(大野和興)
大軍拡の時代
この国はいま猛烈な軍拡を推し進めています。ざっと振り返っただけでも。安倍政権時代の2014年、「集団的自衛権の行使」を閣議決定、2015年安保法制成立、2022年「安保3文書」閣議決定、敵基地攻撃能力の保有。同23年、「防衛力整備計画」で軍事費をGDP比2%、約11兆円にするため、5年間で総額43兆円を上積みに動き出す。25年度は前年度予算より1割弱増の8兆7005億円。ちなみに防衛費は長年GDP比1%という枠があり、5兆円が限度でした。
現実の軍備も次第に増強され、沖縄では先島地域のミサイル基地化が進み、中国、北朝鮮に向けミサイル網がつくられています。沖縄だけでなく軍事基地拡大は全国に及んでいます。海のそとからからみれば、この列島全体がハリネズミのように見えるはずです。
私権制限も始まる
軍事化を目的に私権の制限もすでにはじまっています。沖縄在住の谷山博史さんは、自身のフェイスブックで以下のように発信しています。
「軍事化の民の領域への浸食が始まっています。表の顔が民政用の空港・港湾や市街地での軍事訓練であるとすれば、裏の顔が土地規制法です。土地規制法がなぜ裏の顔かというと、法の運用において、国は個人情報も含め市民の調査と監視を水面下で行っているからです。軍事監視区域に指定された住民だけではありません。「その他関係者」も調査・監視の対象になります」
谷山さんはぼくの敬愛する友人です。国際協力NGOである日本国際ボランティアセンター(JVC)で世界各地で活動、米国が爆撃を開始したアフガニスタンにも真っ先に乗り込み、米軍と直で渡り合いながら医療、女性の権利、生活などの活動を繰り広げ、JVC代表を務め、退職した後はいつの間にか植木屋さんになり、沖縄に住み着いて植木屋と農業で暮らしを立てながら平和運動をしています。
敵基地攻撃から継戦能力へ
いまの政治状況を見ていると、防衛費はとめどなく膨らむことは確実です。新聞を見ると「敵基地攻撃」はすでに規定事実のように扱われています。わかりやすくいえば”やられるまえにやれ!”という先制攻撃論なのですが、このことが憲法違反だという意識すら薄くなってしまっています。
読売新聞が23年11月に行った世論調査で「日本が防衛力を強化する」ことに賛成が68%で、反対の23%を大きく上りました。国民自身が”気分はもう戦争”状態に入っているのです。
そして議論はさらに進み、「継戦能力という新しい概念に政府与党の議論の移っています(令和5年版防衛白書、産経新聞デジタル版2023年8月28日)。敵基地攻撃で先制して戦争の火蓋をきっても、敵もさるもの、すぐに反撃されるだろうから、一度始めた戦争を負けないで長続きさせるためには、その備えを作っておく必要があるという議論です。
今のところ弾薬の輸送、貯蔵など戦争インフラが検討課題に挙がっている段階ですが、この議論が深まってくると、次にエネルギーと食料が議論の対象になることは目に見えています。(キャノングローバル戦略研究所「中国を抑止する継戦能力日本にあるのか?武器弾薬以外にエネルギー、食料も」23年2月23日JBPress掲載)
いまコメをはじめとする食料品の値上がりが続くなかで、食料安保を整えよ、37%にまで下がっている自給率をあげよという議論が市民に間に広がっています。キャノングローバル戦略研究所にいわれるまでもなく、食料は継戦能力のさいたるものです。そして現実に日本の農業生産力は最低にまで落ち込んでいます。日本が「自給」するためには、かつて日本がたどった道である海外侵略で植民地を作り、自給経済圏を作るしかありません しかしそんなことを表立っていうわけにはいかない。
同志国自給論の台頭
そこで今、奇妙な自給論議が密かにささやかれています。「同志国自給」という言葉です。同志国とは、対中国を意識し言葉で、日米同盟を軸にカナダ、オーストラリアなど太平洋諸国とアジア諸国を組み込んだ「自由で開かれたインド太平洋」を指しています。聞きなれない言葉ですが、令和5年版防衛白書には出てきます。要するに中国封じ込めの同志 、ということです。
米国のトウモロコシ、ダイズ、コメ(カリフォルニア米)、カナダやオーストラリアの小麦や酪農・肉製品、アジア各国からの野菜や果物、そしてコメ。インドは世界最大のコメ生産国です。2位は中国ですが、その後ろにバングラディシュ、インドネシア、ベトナム、タイ、ミャンマー、フィリピン、パキスタンと南アジア、東南アジアの国々が続きます。日本は自給しなくてもなんの不都合もない。すでに温暖化に備えて高温耐性品種の研究は進んでいますから、その品種を持ち込めばいい。
いまこの国には三つの安保があります。軍事安保、経済安保、そして食料安保です。この三重の安保体制のもとで農と食が軍事化に組み込まれていく道筋がはっきりと見えてきます。食料安保を整備せよ、食料自給を、と叫ぶことの落とし穴に気づくべきでしょう。この先には経済や農業の国家管理化、国民の生活のあり方、文化による戦意高揚と、国民の生活や意識にまで軍事化がしみとおることになリかねません。
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