2025年04月06日22時23分掲載
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入管
ウィシュマさん遺族らが記録映像の全面開示を求めて記者会見 来月にも「第二の訴訟」を提起
2021年3月に名古屋出入国在留管理局の収容施設で死亡したスリランカ国籍のウィシュマ・サンダマリさんの遺族と弁護団は3日、参院議員会館で記者会見を開き、入管側がウィシュマさんを収容していた際の映像を全面開示しないのは極めて不当だとして、来月にも東京地裁へ提訴する旨を明らかにした。
ウィシュマさんの死亡事件をめぐっては、2022年3月に遺族らが国へ国家賠償請求訴訟を提起しており、事件から4年が経過した今も裁判は続いている。今月23日には第17回口頭弁論が名古屋地裁で行われる予定だ。この裁判の中で遺族らは、ウィシュマさんの記録映像295時間分の全面開示を求めてきたが、入管側が開示したのはこのうち5時間分のみ。残りの290時間分については開示を拒否している。
こうした中、遺族は2月、映像の全面開示を求めて個人情報保護法に基づく「保有個人情報開示請求」を実施。これに対し、名古屋入管は3月26日付けで映像の一切を開示しない旨(全部不開示決定)を遺族に通知した。遺族と弁護団は入管側が示した不開示理由は極めて不当だとして、係争中の国賠訴訟とは別に、この決定の取消しを求めて「第二の訴訟」を提起することを決めた。
弁護団によれば、入管側が示した不開示理由は2つある。
1つ目は、「記録映像にウィシュマさん以外の特定の個人を識別できる顔画像や音声などの情報が含まれており、映像を開示することによってその個人の権利利益を害する恐れがある、かつ、その恐れのある部分をウィシュマさんに関する部分と区別して取り除くことが技術的にできない」というものだ。
「ウィシュマさん以外の特定の個人」とは、収容施設でウィシュマさんの対応に当たっていた入管職員らを指すと推測される。しかし、個人情報保護法では「公務員の職務遂行の内容に関する部分」については不開示情報に当たらないとされており、この点について弁護団の指宿昭一弁護士は「公務員の職務中の画像に関しては全面的に開示しても問題ないと思われる」と見解を述べた。
また、映像から職員らの情報を取り除くことが技術的にできないという部分について、弁護団の駒井知会弁護士は「国賠訴訟の中で入管が提出した5時間分の映像では必要なマスキング処理が施されている。そのため、技術的にできないとする入管の主張には無理がある」と述べた。
そして2つ目は、記録映像の中に「当局の保安警備体制が記録されており、これを公開することにより公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼす恐れがある」というものだ。これに対し、指宿弁護士は「入管側が提出した5時間分の映像は公開されているが、これによって名古屋入管から収容者が脱走したり暴動が起きたりしたことはない」と反論した。
会見に参加した妹のワヨミさんは「今回の不開示決定には一切納得できない。健康だった姉がなぜ亡くなったのか、映像を見て明らかにしたい」と思いを語った。
入管が既に開示した5時間分は全体の2%にも満たず、残りの映像の中に入管にとって不都合な事実が含まれている可能性は否定できない。いずれにせよ、入管側は全ての映像を開示し、真実を明らかにしたいという遺族の思いに応えるべきだろう。弁護団は来月にも提訴会見を予定している。今後の動向に注目したい。
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(お知らせ)
◯ 名古屋入管死亡事件国賠訴訟期日
・第17回口頭弁論期日:2025年4月23日(水)14:30(名古屋地方裁判所・第2号法廷)
・第18回口頭弁論期日:2025年6月4日(水)14:30(名古屋地方裁判所・第2号法廷)
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