2025年04月19日14時08分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202504191408496
「強制動員問題はまだ終わっていない」 戦後80周年を迎える被害者遺族の訴え
第二次世界大戦下における日本国内の労働力不足を補うために、朝鮮半島出身者が企業によって過酷な労働を強いられた強制動員問題をめぐり、4月11日、被害者遺族やその支援団体は、「強制動員問題はまだ終わっていない」として加害企業に賠償と謝罪を求める要請行動及び院内集会を開催した(主催: 「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」)。
2018年、韓国大法院(最高裁)は日本企業(三菱重工及び日本製鉄)に対して強制動員された被害者への賠賞金の支払いを命じる判決を言い渡した。これを受けて、日本政府との関係悪化を恐れた韓国の尹(ユン)政権は、日本企業に命じられた被害者への賠償を肩代わりする方針を打ち出し、「第三者弁済」による解決を図っている。しかし、これは韓国政府傘下の財団が寄付金を集めて被害者らに判決金を支払う制度であり、日本企業は拠出していない。そのため、弱い立場にいる犠牲者やその遺族は、「第三者弁済」を受け入れざるを得ない状況にあるが、これは日本企業による謝罪及び賠償を求める被害者や遺族の被害感情に寄り添った解決策とは言えず、韓国社会では批判的な声も上がっている。
11日に行われた院内集会で、被害者遺族の李昌煥(イ・チャンファン、故・春植さんの長男)さんは「私の父は日本製鉄で働き骨が折れるような苦痛に耐えた。日本政府と戦犯企業が心から謝罪して賠償することが、被害者の大きな傷と長年にわたる苦しみを癒す唯一の道だ」と述べた。また、現在も係争中にある強制動員問題の裁判を支援する「民族問題研究所」の金英丸(キム・ヨンファン)さんは「韓国の尹政権が実施した『第三者弁済』は加害企業による賠償も謝罪もなく、ただ単に金銭的な解決を推し進めるものであり正義に反している。強制動員問題では被害者の名誉を回復する必要があり、本当の意味で日韓の歴史問題を解決することが、両国の友好関係を構築することに繋がる」と話した。
同院内集会には国会議員も出席し、社民党の大椿裕子参議院議員は「強制動員問題は『第三者弁済』で解決できる問題ではなく、私は日本政府の責任としてこの問題の解決を図ることに力を注ぎたいと思っている」などと述べ、共産党の小池晃参議院議員は「現在の国際基準において、企業が人権を守れるか否かがその企業価値を計る上で極めて重要になる。加害企業が強制動員された被害者や遺族の訴えを無視している限り、世界的に相手にされなくなるのではないか」と述べつつ、「強制動員は国家総動員法に基づいて日本政府が実施したもので、日本政府に責任があるのは明確である」などと、被害者と向き合う姿勢を見せない日本政府の対応を指摘した。
院内集会に先立ち、当日は三菱重工及び日本製鉄本社前で要請行動が行われたが、企業側は被害者や遺族の思いをどのように受け止めているだろうか。先日、「第三者弁済」による強制動員問題の安易な解決を図った尹大統領は罷免された。被害者遺族やその支援団体は「強制動員問題はまだ終わっていない」として訴え続けるが、日韓両政府及び日本企業はそうした訴えに対して真摯に向き合えるか、今後の動向が注目される。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。