ウイルス、細菌から始まって、水中の動植物そして地上・空中の動植物、その数百万種ではきかない数の生き物がこの地球上には生存している。人間はその中の1種。こんな事実は、だれでも知っているが、日常そんなことは意識せず、我々人類が地球上で中心的な存在だと思い込んでいる、いやそんな意識もないでしょう。問題は、では人類はそうした生態系の中で、どんなことをしているか、生態系にどんな影響を及ぼしているか、逆に生態系の中の生物は人類にどんな影響を及ぼしているか、それにたいして人類はどう対処しているか。人類の科学技術の進歩は人類の生存そのものを含む生態系に甚大・深刻な影響を及ぼしているのだが。
(1)目に見える生態系に対する人類の影響 かつてこの問題,人類がどの程度の影響を生態系に及ぼしているかを検討した(注1)ので、その一部を再掲載する。 「人類が現在その植物の全生産量のうちの何パーセントを使用(食糧、医療、住宅,その他直接、間接に)しているかを試算した人がいる。まず全植物の生産量は陸上植物で1.3 x 10^14 kg/year、海その他の水生植物が0.9 x 10^14 kg/year、計2.2 x 10^14 kg/year である。人類が使用する植物の量は、彼らによると6 x 10^13 kg/year (食糧だけで約1 x 10^13 kg/year)全生産量の27%にもなる(筆者の試算でもおよそ3分の1になる)。種の数でいけば、ホモサピエンスは5百万(未確定)種程ある生物種の一種にすぎない。人間はかなり大きな動物だから、重量で比較するほうが良いだろう。人間の生物圏に占める割合は重量でいうと、約2 x 10^11 kg(人類)/8 x 10^16 kg (全生物)、すなわち0.0003%ほどである。先の27%という数値はかなり議論のあるところだが、それがたとえ数倍も過剰に評価しているとしても、これは大変な量である。 同様の試算が地球上の淡水についても行なわれた。人類はやはり全使用可能な淡水の実に30%ほどを使っているそうである。この残りの量で他の生物種が生存していくのはなかなか難しかろう。(勿論、人類の使い古しでも喜んで棲息できる種もあるにはある)この植物や淡水奪取の過程で他の生物の生息環境をも汚染し破壊していく。勿論工業生産に付随する環境破壊も考慮しなければならない。これでは他の生物種が消滅していくのは当然であろう。現在絶滅の危機に瀕しているかその状態に近づきつつある生物種は、目にみえる鳥類、魚類、ほ乳類、両性類、霊長類でおしなべて20-30%ほどだそうである。我々の気がつかないところでもっと多くの生物種が滅んで行っていると考えざるをえない。 過去に生物種の消滅期が主なもので5回程あったが、その最大のパーミアン後期では50―60%の生物種が絶滅したようである。これはしかし百万年のオーダーの期間の話であるが、現在のそれはたかだか2―300年の期間のことで、消滅速度でいえば、1万倍程度の急激な変化である。このような急激な生物種の消滅がどのような影響を人類にもたらすか予想がつかない。」 現在の環境問題は、どうも「気候変動」とその原因とされる温室効果ガス排出という人為のみに注目されているが、上に引用したように、人類は、広範で深刻な影響を生態系および地球の地上周辺状態に及ぼしていること、そしてそれが人類自身に跳ね返ってきていることを充分に意識していない。
(2)環境汚染の生態系および人類への影響 人類は、その頭脳により、通常の生物ではできない環境破壊・汚染を拡大してきた。環境破壊問題は、すでに充分に議論されてきたので、ここでは論じる必要はなさそうである。基本的に間違った人類の環境破壊の2つを簡単に論じておこう。これは環境破壊というより人類種を含む生態系全体の破壊である。 通常の環境破壊には、人類による物理的破壊(森林伐採その他)と化学的破壊(生物が対処できない人工的化学物質の環境への放出に基づく。農薬などの問題)がある。こうした問題は、人間の意志でなんとか変革できる。もちろん、こうなってしまった現状では変革するのは非常に困難ではあるが。もう一つ根本的な問題は、人間が、生命そのものをある程度変革する技術を身につけてしまったことである。すなわち、DNAを恣意的に変えることができるようになってしまって、生物そのものを変えることができる 。GM(gene modified)作物などがその例であるが、人間そのものを変革することも可能になりつつある。 20世紀に始められた「核利用」は、根本的に人間を含めた生態系とは両立し得ない。核利用の場で発生する放射性核からの放射線は、生物が対処できない強力な破壊力を持っており、それが環境に放出されてしまうと、対処の方法がない。環境に放出されなくとも、その破壊力が故に、安全に保管することが困難で、人類はまだ解決法を知らない。したがって、放射性核を大量に作り出す核産業(兵器、平和利用とも)は直ちに地球上から無くすべきなのである。
(3)ウイルス、細菌レベルでの問題 さて、生物種はそれぞれ自己の生存を継続するという仕掛けを持っている。それは、Richard Dawkinsが「Selfish DNA」で主張したことである。もちろん、環境の変化その他により、生存を継続できないことはある。しかし、出来るかぎりの試みをDNAレベルで行なうようである。 では、細菌対人間レベルではどうであろう。細菌は、人間が母親から生まれて独立した瞬間から、人体に侵入して、体内で、莫大な数の細菌叢を作る。これらの細菌は人間の体内の人体細胞・組織と共生していて、免疫機構を司る細胞などとも協力関係にある。しかし、細菌は人間にとって異物であり、こうした細菌叢のなかの細胞とは別の細菌が体内に侵入すると、人間の健康に悪影響を及ぼすが、それに免疫機構が対応する。 細菌そのものは、自己の生存をかけて人体に入り、増殖を試みる。20世紀の始めに、人類は、抗生物質を発見した。これは、違った細菌種が、自己の生存をかけて、他の細胞を滅ぼすために開発した化合物(生物レベレの兵器)である。これを、人間は、細菌感染による病気の治療に利用した─抗生物質。そして、化学的に類似の機能を発揮する化合物を生物から抽出するばかりでなく、化学的にも合成し、多くの抗菌剤(抗生物質はその一部)が作られた。サルファ剤などは、抗生物質の発見以前から知られていたが。こうした抗菌剤が人類に、細菌による感染症病気の治療に大きく貢献した。過去数世紀でのこうした医療の進歩は、多くの場合,全世界での医科学者、医療従事者の協力によって行なわれてきた。その恩恵は人類全体で共有されてきた。 しかし、細菌のほうは、そうした人間の使用する抗菌剤に打ち勝たなければ、生きていけない。そこで、抗菌剤をなんとか無効にしようと努力する。それが細菌中にあるプラズミッドという主DNAとは別な小さなDNAにそういう能力が蓄えられている。そして、現在では、多くの病原菌が、こうした抗菌剤に抵抗できて、しかも、かなり化学的にも違う抗菌剤へも抵抗できる多剤耐性を持つ菌が続出している。この間の事情は、例えば、吉川昌之介著『細菌の逆襲―人と細菌の生存競争』(中公新書)に詳しい。すなわち、自己保存性が発揮されていて、人類に戦争を仕掛けているに等しい。 さて、ウイルスはどうか。ウイルスは、細菌のような抗菌剤が作用するような場所(細胞壁)を持たないので、抗ウイルス剤というような薬剤は今のところ発明されていない。ウイルスに対しては、今のところ人体の免疫機構を発動させるやりかたとして、ワクチンやサイトカイン相当の化合物がある。前者は、ウイルスが侵入した時に、直ぐ抗体をつくり、免疫機構を発揮させるよう,人体に予め準備させる。後者は、サイトカイン(インターフェロンなど)などの摂取で、免疫機構を活性化し、ウイルス退治を促す。 ウイルスが、細菌と同様な対抗手段をもっているかどうかは、まだ不明である。しかし、ウイルスのDNA (RNA)は比較的安易に変異する。おそらく、宿主の細胞に侵入して、自らを複製させるのだが、その過程は、宿主細胞の通常の役目ではないので、複製の際に、間違いを起こす可能性が高いのであろう。これは、細菌などの対抗手段とは違うが、人間が作る(ある特定ウイルスに対する)ワクチンを無効にする可能性が高い。現在(2020年12月20日)イギリスでは、コロナウイルスへの感染が激増していて、これは感染力の強い変異種が発生したからではないかと言われている。 こうした異生物を人類にとって不都合だからといって死滅させてしまうことはおそらくできない。共存をどのように、人間に対して最小限の悪影響しか与えないように、人類全体が協力して当らなければならない。
(4)細菌,ウイルスの利用 細菌その他の微小生物などは、食料の保存その他のための有用な利用の仕方(醸造など)はある。しかし、人間という種は、長年の歴史の中で、細菌,ウイルスなどを悪用してきたし、それが技術的な進歩で、より巧妙になってきているようである。西欧の植民地獲得の場面では、新大陸住民がある種の細菌への免疫をもっていなかった(それまでに、新大陸にはそうした感染菌がいなかったから)ことをいいことに、そうした細菌を散蒔き、大陸住民を沢山死亡させた。それによって、植民地を獲得しえた。ただ、その当事者がこのことを意識してやったかどうかは別だが。もちろん、通常の兵器も用いてはいた。 第2次大戦中、日本軍は満州で、そうした細菌を兵器として利用する研究を始めた(731部隊)。日本の敗戦後は、そこで得られた情報がアメリカの対応する組織に移行された。細菌兵器は条約で開発が禁止されてはいるが、どうも多くの国で秘密裏に開発が進んでいるようである。人類が全体として、なんとか克服しようとしている細菌やウイルスの脅威を、逆に、人類の殺戮や人民の支配のために利用しようという魂胆である。人類全体に対する犯罪であろう。 さて今回の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)であるが、それによるとされた感染者が、2019年12月初旬中国の武漢で最初に発見され、それが現代の交通手段などを通じて、世界中に拡散したと思われている。しかし、以前にも指摘した(注2)ように、武漢で発見される以前にイタリーやアメリカでこのウイルスに人々が感染していたらしいという証拠(抗体の存在)が見つかっており、そういった地域で武漢以前からウイルスが拡散し始めていたようである。本当の発祥地は今のところ不明である。アメリカでは、政治的理由で、このウイルスを武漢(中国)ウイルスと称してはいるが。 このウイルスは、中国でコウモリに自然発生し、武漢で人間に移ったとされているが、ウイルスのRNA (DNA)の解析から人工的な変化が加えられた可能性が高いと指摘されたこともある(その論文は後に消去されたらしい)し、武漢にある細菌研究施設、またはアメリカにあるそうした軍事施設から漏れたなどという説も囁かれている(注3;注4)。この後者の場合は、ウイルスが問題になる寸前の2019年10月にアメリカ・ニューヨークでコロナ型ウイルスの拡散によるパンデミックについてのシミュレーションEvent 201なる会議が行なわれた事実(注5)もあるからである。また、上に述べた感染症などの軍事研究施設が、遺漏などの問題で、2018年に活動停止を命じられたという事実もある。 その上、先頃から問題にしているPCR検査(間違ってか、意図的にか)による感染者数の見掛け上の増大(注6)で、感染への恐怖心を人々に植え付け、その社会的、経済的、心理的生活に多大の影響を及ぼす結果になり、支配層がその意を強制的に市民に押し付ける(例えば,ロックダウンなどにより)ことを可能にしているようである。このようなことは、先に述べたEvent 201会議でも予測していた。 このような人類全体への脅威となるウイルス・細菌へは人類全体が様々な工夫をこらして対応しなければならないのだが、現在の状況はその反対のようである。例えば、SARS-CoV-2ウイルスに対するワクチンの開発は、米国,中国、ロシアなどで懸命に行なわれていて、特に米国の大企業が異常な早さで開発に成功したとし、その安全性その他に関する検査もそこそこに、承認され、その使用はいくつかの国ではすでに始まっている。これに対して、アフリカその他の国々から、こうしたワクチンの特許は、不問にし、公開し、どこの国でも製造できる体制にしてほしいと申し出ているが、米国の企業は反対している。
(5)人口問題 人類という種の地球上の生態系への影響の根本には、ここ1―2世紀の人口急増問題がある。この問題に関する一考察を、以前(2008年)この欄に発表した(注7)ので、参照されたい。なお、人口問題については、筆者の著『病む現代文明を超えて持続可能な文明へ』(本の泉社、2013)でも扱っている。 人口を権力側にとって都合の良いレベルに、なんらかの手段(ワクチンに見せかけた不妊剤その他)で行なおうとしているといった噂もある。現在のコロナ禍は病死ばかりでなく、生活の困難に遭遇して、早死に,自殺などに追い込まれることにより、人口減少を促進する、そんなことを企んでいるといった裏話も囁かれている。 しかし、人々自らが自覚して、人口を持続可能なレベルに維持するようなことを学び、実行して行かねばならない(注7)。それには、持続可能な文明とはどんなものか、どうしたら実現できるのだろうか、世界中の人々が考え、実行に移していかなければならない(『病む現代文明を超えて持続可能な文明へ』参照)。
(注1)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200806211025246 (注2)https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciaa1785/6012472 など (注3)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58494070U0A420C2EA1000/ (注4)https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202002170000/ (注5)https://centerforhealthsecurity.org/event201/#:~:text=Event%20201.%20The%20Johns%20Hopkins%20Center%20for%20Health,order%20to%20diminish%20large-scale%20economic%20and%20societal%20consequences. (注6)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202012210923391 (注7)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200811192242533
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