橋本勝21世紀風刺絵日記
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文化
メフィスト ―― ドイツ的心情と悪魔 高橋順一(たかはしじゅんいち):早稲田大学名誉教授・思想史
クラウス・マンの小説『メフィスト』の主人公ヘンドリック・ヘーフゲンのモデルは、ナチス時代にプロイセン国立劇場の監督を務めた俳優グスタフ・グリュントゲンスである。1981年に制作されたイシュトヴァーン・サボー監督の映画「メフィスト」はこの小説を原作としており、当たり役であったメフィストを演じるヘーフゲン=グリュントゲンスの鬼気迫る様相が印象的であった。ところでメフィストという言葉はいうまでもなくゲーテの『ファウスト』に出てくる悪魔(デーモン)の名メフィストフェレスに由来する。(2023/06/22 20:21)
政治
公明党が消える日 連立政権の寿命 小川 洋:教育研究者
最近、自公連立政権の軋みが話題となっている。今回の変調の直接的な原因は、衆院選挙区の区割り変更に伴う候補者擁立を巡る対立であるが、連立政権の成立と最近の不安定化を、人口変動の観点から分析してみたい。議会制民主主義が機能している先進諸国で、連立政権は日常的にみられる現象である。現・ドイツのシュルツ政権は、中道右派連立であったメルケル政権に代わる、社会民主党、自由民主党に緑の党を加えた中道左派の三党連立である。現・イタリアのメローニ政権は、右派の「同盟」と中道右派「フォルツァ・イタリア」の右派連立政権である。前ドラギ政権はほぼ全政党をバックとすることに無理があったのか、一年半余りで挫折している。(2023/06/22 12:25)
みる・よむ・きく
戦後憲法の生成を批判的に描いた『日本独立』(2020)
2020年暮れに公開された伊藤俊也監督の『日本独立』は、占領下における日本国憲法生成に関わった人々の思いと行動を群像的に描いた歴史映画です。といっても群像の中心はマッカーサー元帥を頂点とするGHQと日本政府の間でコミュニケーションを行う役割の英国帰りの白洲次郎と白洲と等しかった外相(当時)吉田茂の2つの視点に多くが割かれています。この映画では日本人の思いに反して、戦勝者であるGHQが日本人が主体的に作成したという名目で、実態としては統治のためにやってきた米官僚・軍人たちが基本を作り、押し付けたという過程が描かれています。GHQが押し付けた、というのは恐らく実態としてそうだったでしょうし、それを悔しさをにじませながら飲まざるを得なかった日本の政治家たちの思いもおそらくそんなものだったであろうと、思えます。(2023/06/22 02:17)
ミャンマーでスーチー氏の誕生日のフラワーストライキ、女性130人逮捕
アウン・サン・スー・チー国家顧問の誕生日にあたる6月19日、ミャンマー全土で花を身につけたり持ち歩くなどした女性130人が逮捕・拘束された。この日は各地でスー・チー氏の誕生日を祝うために女性たちが髪に花をつける運動「フラワーストライキ」が行われた。Radio Free Asiaの報道をミャンマージャポンが伝えた。。(2023/06/21 17:09)
文化
ニューウェーブ歴史映画論 『朝鮮総督府』と『台湾総督府』
昨日、ニューウェーブの戦争映画あるいは歴史映画が今世紀になって欧米で生まれてきていることを書きました。それらの作品は、通常の一人の主人公の目線で葛藤を克服するドラマツルギーではなく、史実に基づくとともに複数の、あるいは多数の登場人物と視点を併存させつつ1つの出来事の全貌を描こうとするものだと書きました。ドイツ映画の『ヒトラー最期の12日』とか『ヴァンゼー会議』あるいは米映画の『硫黄島からの手紙』などです。実は、今日、歴史学会でも文学の世界でも歴史学が大きな変化を起こしており、歴史と文学、ジャーナリズムと文学の境界領域を進む斬新な小説や映画などの作品がフランスなどで続々と作られつつあります。(2023/06/21 04:47)
みる・よむ・きく
21世紀のニューウェーブの戦争映画試論 複数の視点と歴史への問い
今世紀に入ってドイツの『ヴァンゼー会議』や『ヒトラー最期の12日間』あるいは米国の『硫黄島からの手紙』など、戦争・戦闘の全貌あるいはある出来事の全貌を多数の視点を絡ませてポリフォニックに描く戦争映画、もしくは歴史映画が複数制作されました。これらはハリウッド的な主人公がある課題を解決するまでの葛藤を描くタイプの1つの視点をたどる映画とは異なる思考で貫かれているように感じます。そして、そのことは歴史叙述のテーマと関係しているように思われます。(2023/06/20 11:06)
みる・よむ・きく
敗色濃い日本軍を描いた米映画『硫黄島からの手紙』(2006)
硫黄島と言えば太平洋戦争でも激戦地で知られた島であり、この島を占領されれば本土防衛が難しくなると言うことで決死の戦いを求められながらも海軍も陸軍も増援が来なかった。この玉砕覚悟で米軍を迎え撃つ日本軍の死闘を描いたのは米国人のクリント・イーストウッド監督でした。『硫黄島からの手紙』は『父親たちの星条旗』と同じ2006年に公開された硫黄島の戦いを日米それぞれの側から見つめた姉妹作品ですが、日本軍を見つめた『硫黄島からの手紙』の方がはるかに出来が良いと私は率直に感じました。(2023/06/19 16:35)
アジア
ミャンマー「夜明け」への闘い(36)PDFへの期待とうしろめたさの涙 西方浩実
1月26日。悪夢のクーデターから、もうすぐ1年。最近のミャンマーはどうですか、と聞かれると、言葉に詰まる。ヤンゴンは一見、すっかり元どおりだ。市場には色とりどりの野菜が並び、人々は冗談を言って笑い合っている。だけど一人ひとりの肩には、遠くから錘(おもり)を背負って歩いてきたかのように、疲労が蓄積している。同僚に、最近どう?と尋ねてみると「出口が見えない」と泣き笑いのような表情を浮かべた。(2023/06/19 09:24)
反戦・平和
「未来の軍事技術の今を読み解く」6.23講演会 杉原浩司:武器取引反対ネットワーク:NAJAT/STOP大軍拡アクション
2023年度防衛省予算の研究開発費は、前年の3.1倍にあたる8968億円に急膨張しています。米中がしのぎを削る最先端の軍事技術開発に乗り遅れまいと、防衛装備庁が「防衛技術指針2023」(仮)の策定に乗り出していることも報じられています。サイバー防御など12分野、装備化検討へ…「防衛技術指針」の概要判明(6月17日、読売)こうした新たな軍事技術開発が何をもたらすのかを多角的に考える講演会を企画しました。ぜひご参加、ご取材ください。(2023/06/18 17:59)
欧州
2023年4月15日ー原発にアデュー!ドイツの脱原発がやっと完了 グローガー理恵:ドイツ在住
2023年4月15日、ドイツで稼働中だった最後の3基の原子炉 ー バイエルン州のイザール原発の原子炉II、バーデン=ヴュルテンベルク州のネッカーヴェストハイム原発の原子炉II、ニーダーザクセン州のエムスラント原発 ー が永久停止され、送電網から外された。これによって、ドイツでは63年ぶりに原子力発電の時代に終わりを告げる。この歴史的な脱原発完了の裏には、過去50年間、雨にも負けず、風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けず、反核運動のために、ねばり強く、忍耐強く、頑強に闘ってきた、ドイツ市民団体の尊い姿があることを私たちは忘れてはならない。(2023/06/17 19:45)
みる・よむ・きく
日本政治を描いた日本映画『はりぼて』(ドキュメンタリー)と『新聞記者』(ドラマ)〜 敵は何なのか?〜
日本政治を描いた日本映画『はりぼて』(ドキュメンタリー)と『新聞記者』(ドラマ)は、それぞれ勇気のある作品で、その意義を評価していますし、それらが成功したことも喜ばしいことと思っています。そのうえで、若干私が不満を感じたことを書きたく思います。私の指摘通りに修正しても映画の完成度とか、集客力が上がると思っているのではありません。ただ、観客として率直に感じた点が1つ2つあったのです。それは、説明をもう少し加えてほしいと思った点でした。(2023/06/17 12:36)
国際
「アルジェリア大統領、ロシア公式訪問」【西サハラ最新情報】 平田伊都子
アルジェリアが国連安保理非常任理事国として、来年から2年間、国連安保理で活躍します。 モロッコを除く、アフリカ大陸の国々が大喜びです! 特に西サハラの難民や被占領民や亡命者は、独立のチャンスが巡ってきそうだと実感しています。 そしてパレスチナの人々も、アルジェリア非常任理事国におおいに期待しています。(2023/06/17 11:59)
みる・よむ・きく
『AI監獄ウイグル』を読む ”AI監獄ニッポン”が透けて見えます
『AI監獄ウイグル』ーこの怖いタイトルの本を手にとりながら、一瞬懐かしい気分に引き戻されました。コロナ大流行直前の2019年秋、この本の舞台である新疆ウイグル自治区の首都ウルムチにいました。ガイド兼通訳をお願いした男性が「ここは世界で一番安全な都市です」と話し始めました。(大野和興)(2023/06/15 21:55)
国際
ロシア帝国主義に抗してーなにゆえに左派はウクライナを支持しなければならないのか
ドイツの有力な雑誌「ドイツ政治・国際政治雑誌」Blätter für deutsche und internationale Politikの5月号に掲載された論文の翻訳である(一部略)。著者のセドリック・ヴェアムート氏は、スイスの政治家で、2011年から現在スイス社会民主党の国民評議会(スイス)委員を務めている。現在、マッテア・メイヤー氏とともにスイス社会民主党(SP)の共同代表である(2023/06/14 10:08)
沖縄/日米安保
辺野古新基地建設反対に向け、市民団体が請願署名を野党国会議員に手交
日本政府が強行する辺野古新基地建設をめぐり、基地建設反対を掲げるネットワーク「オール沖縄会議」と請願署名活動に取り組む「国会請願署名実行委員会」は13日、議員会館内において「辺野古新基地建設断念を求める請願署名国会提出に向けた院内集会」を開催した。(藤ヶ谷魁)(2023/06/13 17:21)
みる・よむ・きく
ナチ犯罪を振り返るドイツ映画『ヒトラー最期の12日間』(2004) 〜ブレヒトを越えた群像劇〜
名優のブルーノ・ガンツが1945年4月から5月にかけてのヒトラーを演じたドイツ映画『ヒトラー最期の12日間』(2004)は、昨年公開の『ヴァンゼー会議』と並んで、ナチスの歴史を正面から問う映画でした。『ヒトラー最期の12日間』は、その一部が切り取られて、しばしばツイッターで暴君のパロディに日本語の偽吹き出しがつけられて、当時の安倍首相への風刺として使われていたことを覚えています。まさに東からソ連の赤軍に、西から英米を軸とした連合軍に包囲され、首都防衛が不可能となりつつある頃でした。(2023/06/13 17:04)
核・原子力
ALPS処理水放出 懸念される海洋汚染
今年1月、政府は東京電力(東電)の福島第一原子力発電所で発生する処理水の処分に関する関係閣僚会議を開き、今夏から福島第一原子力発電所に貯蔵されているALPS処理水を海に放出する方針を固めた。(小栗俊也)(2023/06/12 16:45)
みる・よむ・きく
ナチ犯罪を振り返るドイツ映画『ヴァンゼー会議』(2022)
昨年公開された『ヴァンゼー会議』(邦題は『ヒトラーのための虐殺会議』)もまたナチ時代の犯罪を見つめた1本です。バンゼー会議は1942年1月にドイツで開かれ、ユダヤ人問題の『最終解決』を決めたとされる極めて重要な会議です。この映画はほとんど丸ごと会議を再現したらしく(会議録を読んだことがないので、脚色がどの程度施されているか、私は知りえないのですが)、その意味でも映画として特殊です。通常の映画のドラマツルギーとは異なっていて、おそらく事実のままの再現ではなく(もちろんそんなことは不可能でしょうが)、親衛隊大将でナチNO3のハイドリヒや、この会議で書記を担当したアイヒマン、さらにその上官や、内務省高官、外務省高官、それぞれの占領地域を担当している高官たちなど、それぞれの考え方や立場を描き分けて、効果的にセリフに落とし込んでいるという印象を受けました。(2023/06/12 16:23)
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