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特集欧州移民新世紀地球規模での労働力の移動が活発になって久しい。経済のグローバル化の中で、拡大する一方の富める国と貧しい国の格差を背景に、「より豊かな生活のため」、時には「過酷な生活環境から逃れて家族とともに生きるために」海を渡り、国境を渡る人々が増え続けている。しかし、彼ら国境を越える出稼ぎ労働者、移民たちを待ち受けるのは、悪質なあっせんブローカーや出稼ぎ先での過酷な労働、賃金搾取、差別などだ。今年5月の欧州連合(EU)拡大を控え、この出稼ぎ労働者・移民をめぐるさまざまな問題が顕在化している欧州の移民最新事情を報告する。(日刊ベリタ編集部) オランダ議員の英国入国阻止事件 イスラム市民の間で意見の相違も 「公共の安全を脅かす」として英国への入国を拒絶されていたオランダの反イスラム国会議員、ヘルムート・ウイルダース氏が、12日午後2時過ぎ、英ヒースロー空港に到着した。議員は英上院議員らの招きで、自分が制作した反イスラム短編映画「フィトナ」の上映会に出席する予定だった。在英オランダ大使の入国管理局への働きかけにも関わらず、入国拒否に変更はなく、空港内で数時間拘束された後、ウイルダース議員は同日オランダに帰国した。「英国の言論の自由にとって悲しい日となった」と議員は帰国前に報道陣に語った。しかし、コーランを「ファシストの本」と評するウイルダース氏自身が、自国オランダの多くの国民からは「言論の自由の守り手」とは思われていない。イスラム教を巡る表現の自由問題が再燃した英国の議論の流れを振り返った。(ロンドン=小林恭子)(2009/02/13) オランダの極右議員、英国への入国阻止事件 コーランを否定する映画を巡り オランダの極右国会議員で反イスラム教姿勢を打ち出すヘルムート・ウイルダース氏に対し、英政府が入国を拒否していたことが、11日、分かった。入国で「公共の安全を脅かす危険がある」というのが英内務省の理由だ。ウイルダース議員は極右英国独立党(UKIP)の上院議員の招きで訪英し、自身が制作した反イスラム短編映画「フィトナ」が12日午後、英上院議員向けに上映される予定となっていた。イスラム教徒の英上院議員アーメド卿は内務省の決定を「歓迎」した。ウイルダース議員は同日午後2時頃英ヒースロー空港に到着したが、入国が可能となるかオランダに帰国させられるか、予測がつかない状態となっている。(ロンドン=小林恭子)(2009/02/12) 仏政治学者ケペル氏 「欧州の多文化主義がテロを生みだした」 −オバマ新政権に期待 【ロンドン9日=小林恭子】フランスの政治学者ジル・ケペル氏が、2001年の9・11米国大規模テロ以降の世界を分析した3部作の英語訳「ビヨンド・テラー・アンド・マーターダム」(仮訳「テロと受難を超えて」)の出版を機に訪英し、8日、ロンドン市内で講演を行った。氏は、ブッシュ米政権下のイラクの状況を分析した後、イスラム教の聖戦主義者(ジハディスト)によるテロ根絶に、イスラム系市民が多く住む西欧が大きな役割を果たせると述べた。また、オランダや英国の多文化主義政策がロンドン・テロやオランダ映画監督の殺害などのテロ事件に発展したとして、イスラム系市民の社会への深い融合を提唱した。以下はケペル氏の講演からの抜粋である。(2008/12/10) 「闇に葬らないで」 仏移民暴動から3周年、発火点の町でアフリカ系青年の追悼式 パリ北部近郊のクリシー・スー・ボワ、と聞いても日本人の大多数はわからないだろう。でも、3年前にフランス全土を揺るがしたアフリカ系移民の暴動の発火点となった町、といえば思い当たるかもしれない。同市に住む移民二世の2人の青年が警察の追跡で変電所に逃げ込み感電死した事件に対する住民の抗議は、その後の3週間にわたる300箇所ほどの都市での暴動事件へと発展していった。その日から3周年目の10月27日、同市では200人ほどが集まり2人の記念碑に献花した。事件はまだ裁判も行われず、闇の中に葬り去られるのではないかと心配する住民らは口々に早急な事実の究明を訴えた。(パリ= 飛田正夫)(2008/10/29) オランダで反イスラム映画の上映遅延決定 アムステルダムでは抗議デモも 【ロンドン27日=小林恭子】オランダの極右国会議員ヘールト・ウイルダース氏が制作し、1月末テレビ放映の予定だった反イスラム教の短編映画が、ウイルダース氏の都合により、放映遅延となった。オランダ最大の日刊紙「デ・テレグラーフ」紙が26日付けで伝えた。映画は、ウイルダース議員の自論である、イスラム教の法典コーランが「人に殺人を行なうよう扇動するファシストの本」であることを証明するのが目的だ。放映遅延の理由は、「制作が全て終わっていないため」(ウイルダース氏)だ。2004年、反イスラム映画の監督がイスラム教狂信者にアムステルダムの路上で殺害されていることから、今回の映画も同様の行動を触発する可能性や、国内外のイスラム教徒の間に大きな反感を呼び起こす事態が指摘されていた。(2008/01/27) 「アフリカを救いたい」 スペインで働くマリ移民の告白、命がけでカナリア諸島に到着 北アフリカ沿岸の漁村などから、スペインのカナリア諸島やイタリアなどに大量に押し寄せる不法移民に頭を抱える欧州各国は、不法移民政策を20日からヘルシンキで行われた欧州連合(EU)の非公式首脳会談のテーマとした。アフリカと欧州の間ではこの問題が深刻化し、政治の主題になっているものの、アフリカの青年たちがなぜヨーロッパを目指すのか、何を求めているのかについては、あまり語られることがない。日刊ベリタは、スペインに数年不法滞在し、昨年の恩赦でようやく念願の労働ビザを得たマリ人の青年にインタビューした。(マドリード=山上郁海)(2006/10/25) 「イスラム教徒がリベラルな社会で生きる条件とは」 スヘファー・アムステルダム大教授に聞く(2) イスラム教の預言者ムハンマドの中傷漫画をめぐる騒ぎは、欧州諸国が、イスラム教徒住民をいかにしてリベラルな社会に融合させるかという課題を提起した。2004年11月に、イスラムを批判した映画の監督がイスラム教徒移民の若者に殺害される事件が起きたオランダで、この問題について積極的な発言を行なっているのが、アムステルダム大学のポール・スヘファー教授だ。同教授は、「オランダの伝統とされてきた、異なる価値観に対する寛容の精神について移民受け入れ側があらためて真剣に考えるとともに、イスラム教徒も宗教上の自由に寛容であるべきだ」と説く。【アムステルダム・小林恭子=日刊ベリタ】(2006/02/16) 「イスラム教徒がリベラルな社会で生きる条件とは」 スヘファー・アムステルダム大教授に聞く (1) デンマークの新聞が掲載したイスラム教の預言者ムハンマドの漫画をめぐり、これをイスラムへの中傷とするイスラム教徒の抗議行動が世界中で発生する一方、欧州各国では表現の自由を盾に漫画を擁護する声が多い。問題の背景には、欧州各国で少数グループとして生きるイスラム教徒と、移民のホスト国となっている欧州社会との間の対立を見逃せない。今回の事件の1年ほど前、オランダでも表現の自由を巡る衝撃的な事件があった。2004年11月、イスラム教を批判した映画を制作したオランダの監督が移民2世のイスラム教徒の青年にアムステルダムの路上で殺害されたのだ。イスラム教徒の国民と先住オランダ人との間の緊張感は未だに続いている。ムスリム及び非ムスリム市民がリベラルな社会でともに生きるにはどうすべきかを、ジャーナリストとしても活動する、アムステルダム大学教授のポール・スヘファー氏に聞いた。(アムステルダム・小林恭子=日刊ベリタ)(2006/02/14)
映画監督殺害から1年(3) 「いつかまた何かが起きるのでは」 仏暴動に神経とがらせるオランダ フランスで11月に起きた、移民の若者たちによる暴動のニュースは、オランダでも連日報道された。同じようにに多くの移民、それもイスラム系をかかえる国にとっては他人事とは思えない出来事だった。イスラム教徒の移民2世の若者にオランダ人映画監督が殺害されて一年目のアムステルダムを取材していた私は、若いイスラム教徒たちが近隣国の問題をどのように受け止めているかを聞いてみた。【アムステルダム・小林恭子=日刊ベリタ】(2005/11/28) 映画監督殺害から1年(2) 合い言葉は「イスラム系隣人を恐れるな」だが… オランダの映画監督テオ・ファン・ゴッホ氏が、イスラム教を批判したとしてモロッコ系移民二世の青年に殺害されてから1年目になる11月2日。事件が起きたアムステルダムでは、セレモニーや集会で市民があらためて衝撃的な出来事をめぐり語り合った。繰り返し強調されたのは、「社会を分断しないため、先住オランダ人はイスラム系隣人に対する恐れを持つこと自体を恐れるべきだ」という言葉だった。【アムステルダム・小林恭子=日刊ベリタ】(2005/11/26) 映画監督殺害から1年(1) 表現の不自由がつづくオランダ イスラム系移民との溝も拡大 寛容精神に富む国であることを自負してきたオランダで、モロッコ系移民2世の青年が、「イスラム教の名の下に」、映画監督テオ・ファン・ゴッホ氏をアムステルダムの路上で殺害したのは丁度一年前のことだった。痛烈なイスラム教批判者としても知られる同監督は、イスラム教徒の女性たちは虐待されている、とした短編映画「服従」を制作していた。死の2ヶ月前にはこの作品がテレビ放映されていたため、映画が直接の引き金になった、とも見られている。リベラルな社会の基本的価値の1つである表現の自由が、暴力によって封じこめられたと受け止めた人は多かったようだ。同時に、以前から存在していた、オランダ国民の中のイスラム系移民に対する忌避感情を強める結果ともなった。表現の自由の行方、市民の反応を検証するため、殺害事件から1周年のアムステルダムを訪ねた。【アムステルダム・小林恭子=日刊ベリタ】(2005/11/25) 一攫千金夢見て欧州を転々 スペインで急増する中国人移民 スペインでここ数年、大きくクローズアップされている問題のひとつが移民、なかでも中国人移民の急増だ。中国人とスペイン人の利害の対立が、中国人業者の靴倉庫焼き払いに発展する事件も起きている。また、中国人移民には不法入国者も少なくないため、彼らの入国をあっせん裏シンジケートの暗躍に関する報道も目につく。彼らは何を求めて、はるばるヨーロッパの西端にまでやってくるのだろうか。一人の女性不法入国者へのインタビューをつうじて、その背景と中国人独特の世界観や価値観をさぐってみた。(マドリード・山上郁海=日刊ベリタ)(2005/10/22) 【欧州移民新世紀(16)】 フィンランド編―2 移民を生かすビジネス 「異なる文化、同じ人間」 フィンランドの外国人人口は全体の2%だ。移民・人種問題は大きな社会・政治問題になってはいないが、外国人に対する無知、あまり表には出ないが漠然とした恐怖心、偏見、あるいは敵意などが存在していることがフィンランドの移民問題の専門家らによって指摘されている。背景としては、欧州連合(EU)の中でも外国人人口の比率が低くく、外国人に対する知識が不足していることに加え、1990年代初期の国内の景気後退による高失業率と、ソ連の崩壊による東欧諸国からの移民・難民のフィンランドへの流入が急激に増えた時期とが重なったという事情がある。(ヘルシンキ=小林恭子)(2005/01/11) 【欧州移民新世紀(14)スペイン編3】密入国で入獄、その後に大成功 ある中国人の波乱万丈人生 スペインへの中国人の移民の歴史は古く、100年ほどになる。 (2004/08/16) 【欧州移民新世紀(13)スペイン編2】スペイン文化に敬意を 受け入れる側の移民への思い スペインで移民を受け入れる側の市民の間には、文化的融合を拒み、独自のコミュニティの中で生きる傾向のある移民たちに対し、「もっとスペイン文化を尊重してほしい」との声が上がっている。良識的なスペイン人の中にも「われわれは彼らの文化を理解しようとしているのに」との移民たちの姿勢への不満があるようだ。(マドリード=山上郁海)(2004/07/14) 【欧州移民新世紀(12):スペイン編1】モロッコ移民の「パラレルワールド」 社会に溶け込む姿勢は薄く 「移民を憂える国」第1位は英国、第2位はスペイン?。欧州連合(EU)による最近の世論調査は、スペイン人の二人にひとりが移民問題を懸念していることを示した。移民問題は、1975年に独裁政権から民主主義に移行し、1982年にようやく現憲法ができたスペインにとって、80年代半ばから始まった新しい問題である。人口4000万人の国に、145万人の外国人が住む現実に、国民はまだ慣れていない。特に、移民の10%を占める隣国モロッコからの移民に対して、スペイン社会はデリケートな反応を示す。地元主要紙は、相互理解の必要性を再確認するような内容の特集をたびたび組んでいるが、実際は、スペイン社会に関心を持たないイスラム教徒と、移民はスペイン社会に溶け込むべきだと考える市民の間に溝ができている。(マドリード=山上郁海)(2004/07/13) 【欧州移民新世紀(11)−英国・番外編】 扇情的な排斥記事は沈静化 EU拡大から1カ月の英国 「永住は望まない」と移民たち かつては15カ国だった欧州連合(EU)が25カ国になって一月経った。拡大直前までは、扇情的な記事をメインにする大衆紙各紙が「英国は新移民たちであふれかえる」とした見出しの記事で読者の「恐怖感」をあおったが、現在は新加盟国からの移民問題はそれほど話題には上らなくなった。しかし、「働かずに失業保険恩恵のみを得るなど、英国の高福祉制度の悪用を狙っているのではないか」「英国に永住し、将来はこれまでいる英国人を数の上でしのぐことになるのではないか」といった疑念、一種の神話は下火になったとはいえ、国民の中に未だに存在しているのも事実。その中で移民たちは「永住するつもりはない」と冷めた目で英国を見てもいる。(ロンドン=小林恭子)(2004/06/02) 【欧州移民新世紀(6)ドイツ編ー5】東欧留学生たちの素顔 ベルリンの大学から ベルリンは政治の中心地でありながら、多くの学生が住んでおり、一般に学生の街とも言われる。総合大学は市内に3つあり、その他芸術大学などの単科大学も合わせると合計約14万人の学生が市内にいるという。ドイツの大学で勉強する場合、日本の大学のような入学金や学費は一切なく、日本の大学と比べると安い。ある統計によるとドイツ全国の留学生のうち卒業を目指して勉強する学生は全体のわずか3分の1で、残りは便宜上学生を続けている人達であり、学生ビザでは年間3ヶ月(場合によっては6ヶ月まで延長可能)まで、就労が認められていることを利用して仕事にいそしむ人たちが少なくないのが実状だ。(ベルリン=塩田智子)(2004/03/03) 【欧州移民新世紀(4)ドイツ編ー3】200万人のトルコ人がドイツに 制度的、感情的差別は今も トルコ人はドイツの外国人の中で最大の数200万人を誇る。ドイツ在住の外国人は約730万人だから3割近くを占めることになる。1961年の労働力導入政策の二カ国間条約によりトルコから多数の労働者が流入した。ニーダーザクセン州都ハノーバーは人口52万人。外国人の割合は15%で、7万8000人である。3分の1がトルコ人で、その中の3割はクルド人である。市内には保守的からリベラルなものまでトルコ人関係の団体だけで10ほどあり、イスラムの礼拝堂は大小24、トルコカフェは40ある。トルコ人街にはトルコレストランはもちろん、銀行、旅行会社、医者、宝石店、雑貨屋などが軒を連ね、野菜店では頭にスカーフをかぶった女性がレジに座っている。通り全体がドイツではなく、別世界のような錯覚にとらわれる。(ハノーバー=田口理穂)(2004/02/21) 【欧州移民新世紀(3)ドイツ編ー2】増える東欧からの難民、移民 「社会保障の悪用者」と見る目も 近年のドイツにおける難民受け入りをめぐる実態の中で目立つ現象は、東欧や中東からの難民の急増だ。難民を支援したり、外国人との交流を勧めるグループも数多く活動しているが、難民に向けられるドイツ人の目の中には「社会保障制度の悪用者」という冷たいものもある。(ハノーバー=田口理穂)(2004/02/08) 【欧州移民新世紀(2)ドイツ編ー1】人口の9%が外国人、違法滞在者は200万人 戦後の移民受け入れはナチス時代の反省から 欧州の「大国」ドイツには、約730万人の外国人が居住し、全人口の約9%を占める。EU出身者は180万人、その他の国から540万人、違法滞在者は150万から200万人といわれている。ドイツが第二次大戦後、外国人労働者を多数受け入れた背景には、ナチス時代への反省から、外国人との共存を目指した歴史があった。しかし、現在はガストアルバイターと呼ばれる外国人労働者のうち、トルコ人などに失業問題が広がっている。移民をめぐるドイツの状況を報告する。(ハノーバー・田口理穂)(2004/02/03) 【欧州移民新世紀(1)はじめに】新ヨーロッパの明暗 EU拡大と移民政策 地球規模での労働力の移動が活発になって久しい。経済のグローバル化の中で、拡大する一方の富める国と貧しい国の格差を背景に、「より豊かな生活のため」、時には「過酷な生活環境から逃れて家族とともに生きるために」海を渡り、国境を渡る人々が増え続けている。しかし、彼ら国境を越える出稼ぎ労働者、移民たちを待ち受けるのは、悪質なあっせんブローカーや出稼ぎ先での過酷な労働、賃金搾取、差別などだ。今年5月の欧州連合(EU)拡大を控え、この出稼ぎ労働者・移民をめぐるさまざまな問題が顕在化している欧州の移民最新事情を報告する。(日刊ベリタ編集部=1回目は齋藤ゆかり記者の報告)(2004/02/02) スペインの移民(3):移民生徒66%のミケル・タラデイ中学校 アルミライ校長「1人ひとりの才能を見つける努力を」 校舎に入るとすぐ、教師がカタラン語で授業をしている様子がうかがえた。生徒たちは、物音ひとつ立てず、授業に集中。チャイムがなると同時に、彼らはいっせいに教室から飛び出してきた。通り抜ける生徒たち1人ひとりの顔を見ると、統一されているものは何一つ見当たらない。皮膚の色も衣服も異なり、飛び交う言語もさまざま。移民生徒たちが作り出す独特の環境だ。(2002/09/24) |
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