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特集時事英語一口メモリンク・時事英語ブリーフィング ドル安と「隣人を乞食にする」政策 米国と中国が為替政策をめぐって、激しい攻防を続けている。ガイトナー財務長官などは表向き「強いドルを望む」という発言を繰り返しているが、米国は景気回復のために低金利、ドル安を維持している。一方、中国は昨年夏から人民元の対ドル相場を事実上固定(peg)しており、ドル安に連動して人民元安が進んでいる。これに対して米国内では、輸出を有利にするための為替操作であるとの批判が高まっている。これをbeggar-my-neighbor(近隣窮乏化)政策だと言っているのは、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン教授だ。しかし、米国こそbeggar-my-neighbor政策を取っているという主張もある(鳥居英晴)。(2009/11/22) 【番外】ロケットをミサイルと言い換えて報じる日本のマスメディア 米CNNは1日、米軍高官の話として、北朝鮮が長距離ロケット(rocket)への燃料注入を開始したと報じた。これを転電した日本の主要マスメディアはすべて、「ロケット」という表現をわざわざ「ミサイル」と言い換えて報じた。北朝鮮が人工衛星の打ち上げと主張しているものについて、CNNをはじめ主要英文メディアはrocketと表現しているものが多い。日本のマスメディアがミサイルであると断定的に報じているのは異様である。(鳥居英晴)(2009/04/03) 【60】レモン社会主義と国有化 米銀大手のシティグループとバンク・オブ・アメリカが国有化(nationalization)されるのは避けられない見通しだ。nationalizationは、the dreaded n-word of Wall Street(「ウォールストリートにとってNで始まる恐ろしい言葉」USAToday 2月20日)である。それがsocialism(社会主義)を連想させるからだ。だが、ポール・クルーグマン教授によれば、米政府が計画している銀行救済策は、“lemon socialism”(レモン社会主義)であるという。(鳥居英晴)(2009/02/27) 【59】景気対策法案と豚肉 景気対策法案が米国議会で可決された。同法案は議会では、歳出を拡大せずに減税に重点を置く共和党の強い抵抗にあった。共和党は同法案をpork-filled(豚肉でいっぱい)、earmark-laden(耳標だらけ)であると反対したのに対し、民主党はpork-free(豚肉なし)であると反論した。porkとearmarkは同じ意味で、earmarkも豚と関連している言葉。景気対策になぜ豚が関係するのか?(鳥居英晴)(2009/02/13) 【58】「鋳造された鉛作戦」と命名したイスラエルの意図 イスラエル国防軍は、12月27日に始めたパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を“Operation Cast Lead”(キャスト・レッド作戦)と命名(code-name)した。直訳すると「鋳造された鉛作戦」となる。ユダヤの祭日ハヌカに関連した詩からとられた。ハヌカは「神殿清めの祭り」とも呼ばれ、紀元前2世紀、異教徒によって汚された神殿を清めたことを記念して始まった。「鋳造された鉛」とは、ハヌカで子供たちが遊ぶドレイドル(こま)を指している。ドレイドルは、ユダヤ教が弾圧されたことを象徴するものであるという。(鳥居英晴)(2009/01/05) 【57】今年の英語流行語大賞 bailout、change、hypermiling、 overshare 今年の新語・流行語大賞が発表されたが、英語界でも毎年、the word of the year が選ばれる。the word of the yearを発表する出版社や団体などは主に5つあるが、このうち4つが出そろった。今年は大統領選挙、金融危機を反映しているが、それぞれ選考の個性が出ている。米大手出版社のメリアム・ウェブスター(Merriam-Webster)はbailout、Global Language Monitorはchange、新オクスフォード米語辞典(New Oxford American Dictionary)はhypermiling、Webster’s New World Dictionaryはovershareをそれぞれ選んだ。American Dialect Societyが選ぶthe word of the yearは1月に発表される。(鳥居英晴)(2008/12/03) 【56】プレーンバニラ金融とエキゾチック金融 金融危機の要因になったのはexotic finance(エキゾチック金融)だとされる。金融市場は伝統的で単純な商品、plain vanilla(プレーンバニラ)の世界だったが、21世紀に入りleverage(レバレッジ、テコ)をかけた複雑なexotic financial instruments((エキゾチック金融商品)が市場を支配するようになった。plain vanillaは「簡潔な」という意味で、plain vanilla ice creamが語源である。それに対比されるのがexotic。exoticはtoxic(有毒)にもなった。exotic and toxic financial instruments(エキゾチックで有毒な金融商品)という表現もみられる。(鳥居英晴)(2008/11/06) 【55】「黄金の落下傘」を禁止 高まる「デブ猫」への反感 日本では”fat cat”(デブ猫)がテレビの動物番組で人気になっているが、金融危機が深刻化している欧米では怨嗟の的になっている。”fat cat”には“golden parachute”(ゴールデンパラシュート)も用意されている。米国で金融救済法が審議されていた最中に配信されたニューヨーク発のAFP通信の記事(9月26日)にはPopular anger puts fat cat CEOs on the run(国民の怒りでデブ猫CEOは逃亡中)という見出しが付いていた。(鳥居英晴)(2008/10/14) 【番外】米国籍受賞者を日本人とする日本語メディア 今年のノーベル物理学賞の受賞者に南部陽一郎、小林誠、益川敏英の3氏が決まった。南部氏は米国籍であるのにかかわらず、日本語メディアは日本人3人としている。内外の英文メディアは一致して日本人2人、米国人1人と報じている。日本語メディアの国際感覚ぶりが表れたようだ。(鳥居英晴)(2008/10/08) 【54】Bailout、Rescue、TARP、EESA 金融救済法と政治用語 “War on terror”(テロ戦争)などの言葉を作り出して、議論をコントロールすることを”framing the issue”という。巨額の公的資金を投入して金融機関から不良資産を買い取ることを柱とした法案をめぐっては、米政府は”framing the issue”ができなかったようだ。政府側は法案をrescueと表現し、メディアにbailoutは使わないように求めた。しかし、bailoutと呼ぶメディアが圧倒的であった。Bailoutもrescueも救済を意味するが、なぜ政府はbailoutという言葉を避けたのか。(鳥居英晴)(2008/10/07) 【53】金融危機と「レバレッジ解消のパラドックス」 「世紀に一度once-in-a-century 」(アラン・グリーンスパン)という米国の金融危機で何が起きているのか。キーワードはdeleverage(デレバレッジ)である。「レバレッジ解消」「レバレッジ外し」「レバレッジ引き下げ」「脱レバレッジ」などと訳されている。“The shadow banking system”(影の銀行システム)という言葉を流行らせた、世界最大の債券運用会社PIMCO(ピムコ)のポール・マカリーは 、いま起きている現象を“the paradox of deleveraging”(レバレッジ゛解消のパラドックス)と呼んでいる。(鳥居英晴)(2008/09/22) 【52】グルジア紛争とrevisionism、revanchism グルジアへのロシアの軍事介入をめぐって、ロシアと欧米の対立が深まり、「新冷戦」の到来という見方も出ている。ロシアを非難するのに使われている言葉には、expansionism(拡張主義)、 imperialism(帝国主義)、revanchism(失地回復主義)、revisionism(修正主義)などがある。分かりづらい言葉が revisionismである。かつて中国がソ連を非難するために投げつけた言葉でもある。(鳥居英晴)(2008/09/08) 【51】「微笑天使」の口パク 北京五輪開会式で、9歳の少女が革命歌曲を歌う場面が全世界に流された。お下げ髪の林妙可は中国国内では「微笑天使」と呼ばれるようになった。ところが、これは“口パク” (假唱、対口型、lip syncing)で、実際に歌っていた(幕后献声)のは7歳の楊沛宜であったことが明らかになった。英文メディアはこれをChina's Milli Vanilli momentと呼んでいる。(鳥居英晴)(2008/09/08) 【50】「憤青」と「醜い中国人」 チベットでの騒乱に端を発した中国に対する国際的な非難の高まりに、北京五輪の開催を前にした中国では、特に若者たちの間で民族主義的感情が高まっている。そうした青年たちは「憤青」(fenqing)と呼ばれる。英紙と米紙の2人の記者は、4月末、亡くなった中国人作家が批判した中国文化の傾向を fenqingに見出している。(鳥居英晴)(2008/09/08) 【49】Splittistと人面獣心 中国当局はチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマを「分裂主義者」と呼んでいるが、中国のメディアはこれを英語ではsplittistと訳していることが多い。しかし、splittistという言葉は中国製英語である。Splittistという言葉は、チベットやウイグルの少数民族や台湾をめぐる問題に対して使われているが、中国がこの言葉を使い出したのは、1960年代の国際共産主義運動をめぐる対立のさいであった。この言葉はpejorativeな意味が込められている。(鳥居英晴)(2008/09/08) 【48】ジングルメールとノンリコースローン 米国でサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)危機が深まる中、住宅ローンを返済できなくなった人々が、家からwalk away(立ち退き)、家のかぎを入れた封筒を銀行に送り返すケースが急増している。この封筒をjingle mail(ジングルメール)という。かぎがjingle(チリンチリンと鳴る)ことから名づけられた。この現象は米国の住宅ローンのほとんどがnon- recourse loan(ノンリコースローン)であることから起きている。サブプライムローンとノンリコースローンの制度は表裏一体である(鳥居英晴)。(2008/09/08) 【47】ウォールストリート対メインストリート 米大手証券ベアー・スターンズが経営破たんし、連邦準備制度理事会(FRB)の支援のもと、JPモルガン・チェースに身売りされることになった。一方で、サブプライム・ローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)で住宅を購入した人たちがローンの支払いができずに住宅を差し押さえられる (foreclosure)ケースが急増している。こうした記事の中で出てくるのが、“Wall Street”(ウォールストリート)と“Main Street”(メインストリート)を対比した表現である。(鳥居英晴)(2008/09/08) 【46】「影の銀行システム」への取り付け騒ぎ 経営破たんした米証券大手のベアー・スターンズは、米銀行大手のJPモルガン・チェースにfire sale(激安で)救済買収された。メディアはこれを、連邦準備制度理事会(FRB)による”shotgun marriage”(強制結婚)と呼んでいる。「金融危機は新自由主義グローバリゼーションの終えんと新たな規制の時代の始まりを告げるもの」(IPS3月20日)なのか。破たんは、bank run(取り付け騒ぎ)で資金繰りが急速に悪化したためだ。エコノミストによると、現在起きている金融危機はrun on the shadow banking system(影の銀行システムへの取り付け騒ぎ)であるという。”shadow banking system”とは何か?(鳥居英晴)(2008/03/30) 【45】waterboarding (水責め)とt-word ブッシュ米大統領は8日、米中央情報局(CIA)がテロ容疑者への尋問でwaterboarding (水責め)などの手法を用いることを禁止する法案に拒否権を発動した。これを報じたニューヨーク・タイムズ紙が、torture(拷問)という言葉を使わずにwaterboardingを説明したことに対して、米国のジャーナリストがthird-rate journalism (三流ジャーナリズム)だとこき下ろした。(鳥居英晴) (2008/03/17) 【44】ヒラリー・クリントンの「台所の流し(キッチンシンク)戦略」 "kitchen sink strategy”(台所の流し戦略)という言葉が米大統領選に関する英文記事に登場し始めた。民主党指名争いで窮地に追い込まれたヒラリー・クリントン陣営が発動した作戦だ。クリントンが3月4日に行われた予備選挙でテキサスとオハイオの重要な2州を制し、土壇場で踏みとどまったのは、この作戦が功を奏したためだと言われている。(鳥居英晴) (2008/03/10) 【43】米大統領選挙と「満洲の候補者」 “Obama: not a Manchurian candidate”(ロサンゼルス・タイムズ紙、2007年12月3日)、“The Manchurian Conservative”(ニューヨーク・タイムズ紙、2月19日)。前者は米大統領選挙の民主党候補者オバマ、後者は共和党候補者マケインについての記事の見出しである。米大統領選挙とManchuria、満洲(中国東北部)とどのような関係があるのか?(鳥居英晴) (2008/03/03) 【42】世襲政治と民主主義 ブッシュ王朝、クリントン王朝、カストロ王朝、金王朝・・・。王政の廃止を決めたネパールではコイララ王朝がそれに取って代わろうとしている。日本でも世襲政治家の首相が続いている。ボストン・グローブ紙のH.D.S. Greenwayのコラム(1月8日)のタイトルのように、”dynastic politics at work”(世襲政治が稼働中である)。独裁体制のもとではもちろん、選挙を通じたものであっても、dynastyはdemocracyと言えるのであろうか。(鳥居英晴) (2008/02/12) 【41】「国境を越えた投資」か「国境を越えた国有化」か Sovereign wealth fund(ソブリン・ウェルス・ファンド)はいま最もホットな話題である。1月のダボス会議ではSWFが主要なテーマになった。焦点は、SWFが旧来の“cross-border investment”(国境を越えた投資)なのか、あるいはサマーズ元財務長官が言うところの(政府が他国の自由市場で干渉をする)“cross-border nationalization”(国境を越えた国有化)なのかである。(鳥居英晴) (2008/02/07) 【40】「暗い部屋の象」 英紙フィナンシャル・タイムズの主席経済コメンテーター、マーティン・ウルフの“Why the global financial turmoil is like an elephant in a dark room”と題するコラム(1月22日)はgooニュースでは「金融危機は、暗い部屋で暴れるゾウのように」と訳されているが、これはおかしい。“an elephant in a dark room”とは、暗い部屋にいる象を触って何であるかをあてるという話である。日本人なら、あの有名な説話を思い出すはずだ。「群盲象を撫でる」「群盲評象」である。起源はインドの仏教説話で、東と西に分かれて世界に広まったようだ。(鳥居英晴) (2008/01/31) 【39】change 米国政治の聖杯 今年の米大統領選挙では民主、共和両党の候補者は誰もが”change agent”(変革者)、”candidate of change”(変革の候補者)であると訴え、”change”(変化)がwatchword(標語)になっている。”change”は”Holy Grail of American politics”(米国政治の聖杯)になった。(鳥居英晴) (2008/01/17) 【38】「りんごとりんごの比較」 購買力平価か為替レートか 中国経済は40%も過大評価されていた。世界銀行が最新の購買力平価(Purchasing Power Parity、PPP)を使って2005年の各国の国内総生産(GDP)を見直した結果である。これはどういう意味を持つのか。ニューヨーク・タイムズ記者のハワード・フレンチは“fuzzy logic of quantum physics”(量子物理学のファジー理論)に似ているという。(鳥居英晴) (2007/12/30) 【37】デカップリング 国際経済での今年の流行語は“decoupling”(デカップリング)であろう。「世界経済の米国からの切り離し(デカップリング)」を意味する。米国経済が減速しても中国などの新興諸国や欧州が世界の経済成長を引っ張り、世界経済の拡大が継続するという説だ。世界経済が米国依存から脱却し、多極化するというパラダイムシフトである。サブプライムローン問題に端を発した金融危機の中、デカップリング論が試されている。(鳥居英晴) (2007/12/19) 【36】「資源の呪い」 “resource curse”(資源の呪い)という経済用語がある。“paradox of plenty”(豊富さの逆説)という言い方もする。天然資源に恵まれた国は、乏しい国より経済発展が遅れる傾向にあるということを説明する時に使われる。「われわれは石油の呪いの犠牲者だ。石油国家は非常に豊かだ。だがその反面、この富は“a blessing and a curse”(祝福であり呪い)でもある。経済的病である」。ベネズエラのタルクアル紙のテオドロ・ペトコフ編集長はウゴ・チャベス大統領を批判して、次のように述べる。(鳥居英晴) (2007/12/10) 【35】「超高層ビルの呪い」 「さあ、天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」(創世記第11章第4節)バベルに建てられた塔を見て、神は人間のごう慢さの原因は言葉が同じことが原因であると考えた。そこで、言葉を混乱(バラル)させ、世界各地に散らされたという。アラブ首長国連邦のドバイで建設中の超高層ビル「ブルジュ・ドバイ」が、台湾・台北市にある「台北101」を抜いて世界一高いビルとなった。2008年に完成する。世界一高い超高層ビルの建設は経済危機の前触れとなるという説がある。“skyscraper curse”(超高層ビルの呪い)である。ブルジュ・ドバイが「砂上の楼閣」になることはないのか。(鳥居英晴) (2007/12/03) 【34】「成功に応じた帰還」 偉大な王様ブッシュ? ブッシュ大統領がイラク政策に関連してまたも新しいキャッチフレーズを編み出した。” return on success”(成功に応じた帰還)だ。returnには帰還という意味の他に経済的利益という意味がある。これは一種の暗喩である。ニューヨーク・タイムズ紙はこれをオーウェル的スローガンだと批判した。(鳥居英晴) (2007/09/17) 【33】ブラウン首相、「対テロ戦争」の使用を禁止 首相に就任直後にテロ事件に見舞われた英国のブラウン首相は閣僚に対して、”war on terror”(対テロ戦争)という言葉を使わないように指示した。またテロ事件に関連して”Muslim”(イスラム教徒)という言葉の使用禁止も申し渡した。これに対して保守派のコラムニストのメラニー・フィリップスは、“Britain is now fighting a war it dares not name.”(英国は名前をつける気のない戦争を戦っている)と評した。(鳥居英晴) (2007/07/26) 【32】(続)「資本主義の王」と国家資産基金 「国家資産基金」「国富ファンド」「国家ファンド」・・・。外貨準備をリスク資産に投資する政府系ファンド、sovereign wealth fund(SWF)の日本語名が混乱している。そうした中、日本もSWFを設立すべきか議論が始まった。中国とロシアのSWFの動きに神経質になっている欧州は、基幹産業がSWFに買収されないよう対抗策に乗り出した。SWFをめぐる国際金融覇権争いが始まった。キーワードは”financial protectionism”(金融保護主義)だ。(鳥居英晴) (2007/07/19) 【31】「ハゲタカ・ファンド」と「イナゴ・ファンド」 日本企業を買いたたく外資ファンドを描いたNHKドラマ「ハゲタカ」がヒットし、日本でもハゲタカ・ファンドがよく知られる言葉になった。これはvulture fundの翻訳語だが、locust fund(イナゴ・ファンド)という言葉はドイツ生まれだ。(鳥居英晴) (2007/07/09) 【30】「中国の特色あるオランダ病」 中国は“socialism with Chinese characteristics”(中国の特色ある社会主義)を標ぼうしている。しかし、20年以上前の標語はいまや色あせ、“capitalism with Chinese characteristics”(中国の特色ある資本主義)とやゆされるようになって久しい。この標語の言い換えの最新版は、米エール大学経済学教授のグスタフ・ラニスの“Dutch Disease with Special Chinese Characteristics”(中国の特色あるオランダ病)だ。(鳥居英晴) (2007/07/06) 【29】「円キャリートレード」とミセス・ワタナベ 財務省の渡辺博史財務官の片言隻語は国際経済通信社が速報する。財務官は財務省の官僚No.2。英語の肩書きは、vice finance minister for international affairs。”Japan’s top currency diplomat”(日本の首席通貨外交官)の発言は為替相場を動かす。しかし、最近相場を動かしているのはMr. Watanabeではなく、Mrs Watanabesであるようだ。(鳥居英晴) (2007/06/25) 【28】「ゴルディロックス経済」と3匹のクマ インフレ指標が落ち着き、雇用や景況感の改善で市場の米国経済に対する楽観的な見方が強まっている。Barron’s Online(6月3日)に “No Sign of the Three Bears”(3匹のクマが現れる兆候なし)という見出しの記事があった。「3匹のクマ」は、“Goldilocks and the Three Bears”という童話からきている。「クマ」は経済用語では弱気筋を意味する。つまり、“Goldilocks economy”(ゴルディロックス経済)の状態にあるというわけだ。(鳥居英晴) (2007/06/18) 【27】「資本主義の王」と国家資産基金 中国の陰謀? 投資リターンを最大化するために、外貨準備の一部を運用するsovereign wealth fund(SWF)の設立がここ数年相次いでいる。中国が外貨準備のうち30億ドルを米プライベートエクイティ(private equity)大手のブラックストーン・グループに投資することを決めたことで、英文の新聞・雑誌はSWFについて相次いで取り上げている。SWFは巨大化することが見込まれており、外貨準備の債券(bond)から株(equity)へのシフトは国際金融市場に大きな影響を与えそうだ。(鳥居英晴) (2007/06/11) 【26】ウルフォウィッツの妻がブッシュに出した手紙の秘密 世界銀行のポール・ウルフォウィッツ総裁(63)が辞任する原因となった交際中の女性職員、シャハ・アリ・リザ(52)のことを英文メディアはさまざまな表現をしている。”girlfriend” “female companion” ”romantic partner” “close female friend”・・・。Salon.comは "neoconcubine"と呼んだ。neocon(ネオコン)とconcubine(愛人、サルタンなどに囲われたハーレムの女性)を掛け合わせた言葉だ。彼女をどのように呼ぶかは、秘密にされていることと関わり合いがあった。(鳥居英晴) (2007/06/04) 【25】「根拠なき熱狂」とバブル同士の結婚 米連邦準備制度理事会のグリーンスパン前議長が残した名文句の中に“irrational exuberance”(根拠なき熱狂)という言葉がある。米国のハイテク株バブルへの警句として、1996年12月の講演で使った。日課である早朝の入浴中に、この言葉を思いついたのだという。そのグリースパンが高騰する中国の株式市場について警鐘をならしたが、中国の投資家は聞く耳を持たないようだ。(鳥居英晴) (2007/05/30) 【24】「戦争ツァー(皇帝)」 Mission Impossible 米国では危機が生じるごとに”czar”(ツァー、皇帝)が指名される。最新のczarは”war czar”(戦争皇帝)である。イラクやアフガニスタン戦略の調整を行う。ワシントン・ポスト紙によると、当初は強い権限を持つ人物を配置する構想で、少なくとも5人のfour-star general(大将)の退役将軍に打診したが、断られた。結局、ブッシュ大統領が15日に指名したのは、イラク駐留米軍のペトレイアス司令官(陸軍大将)よりも格下の現役のthree-star general(中将)であった。(鳥居英晴) (2007/05/24) 【23】北京五輪は「大虐殺五輪」 北京五輪を”Genocide Olympics” (大虐殺五輪)と呼んで、ボイコットを呼び掛ける運動が欧米で盛り上っている。ダルフール紛争を抱えるスーダン政府に肩入れする中国に圧力を掛けるためだ。フランス大統領選挙では、左派のロワイヤルと中道のバイルがボイコットに賛成、当選した右派のサルコジが反対を表明した。国内では人権問題を抱え、資源確保に躍起となって独裁政権との関係を強めている中国に対し、国際的な風圧が強まっている。(鳥居英晴) (2007/05/10) 【22】「長い戦争」と「修辞的窮地」 ブッシュ政権はイスラム過激派との戦いを”Long War”(長い戦争)と呼んできたが、中東地域を管轄する米中央軍司令部は、この表現の使用をやめた。下院軍事委員会もこの言葉の使用を禁止した。米国は、いま戦っている戦争をどう呼んだらいいのか決められない“rhetorical quagmire”(修辞的窮地)に陥っている。(鳥居英晴) (2007/05/01) 【21】中東和平と「政治的地平」 中東和平をめぐり毎月のように中東を訪問してシャトル外交を繰り広げているライス米国務長官が最近好んで使っている言葉がある。”political horizon”という言葉である。”the newest buzzword in Middle East diplomacy”「中東外交の最新の流行語」(デビット・マコフスキー近東政策ワシントン研究所シニアフェロー)になっている。パレスチナ国家樹立を遠くに見据えた「政治的地平」という意味のdiplomatic speak (外交用語)である。マコフスキーが言うように、この言葉は”elusive”である。(鳥居英晴) (2007/04/04) 【20】アン・コールターのf-word 右翼のpundit(評論家)アン・コールターが民主党の大統領候補のジョン・エドワーズ元上院議員に対し、男の同性愛者の蔑称である”faggot”という言葉を使ったことで、ゲイの団体や民主党ばかりでなく、共和党からも非難を浴びている。「ジョークだ」と弁明に努めているが、彼女のコラムの掲載中止を決める新聞も相次いでいる。(鳥居英晴) (2007/03/19) 【19】「倭国」の英語の表記 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のメディアが昨年12月から日本のことを「倭国」「島国」などの蔑称で本格的に呼び始めた。産経新聞の黒田勝弘ソウル支局長は「そんなに「『倭』」を使いたければ『在日朝鮮総連』も『在倭朝鮮総連』に『日帝』も『倭帝』に『朝日共同宣言』も『朝倭共同宣言』にしたらどうだろう。ついでに英文表記もJAPANではなく『WOE』とするか…と倭人記者はからかいたくなるのでした」(1月6日)と皮肉っているが、実際には英文の表記は『WOE』でも『WAE』でもない。(鳥居英晴) (2007/01/24) 【18】”surge”か”escalation”か”augmentation”か 増派をめぐる言葉の戦争 ブッシュ大統領が10日に発表した2万人以上の米兵のイラクへの増派決定をどう表現するのかをめぐって、言葉の戦争(war of wards)が勃発している。米メディアは一時的増派(temporary troop increase)という意味で“surge”と表現している。しかし、実態は”escalation”であり、世論をミスリードするものであるという批判が起きている。(鳥居英晴) (2007/01/15) 【17】イラク研究グループ報告書と「天国のパイ」 米国の超党派諮問機関「イラク研究グループ」が12月6日に提出した報告書をめぐって、”pie in the sky”という言葉が飛び交っている。「絵に描いたもち」に相当するが、この句を造語したのは20世紀初頭の米国の急進的労働運動の活動家、ジョー・ヒル。フォークシンガーの元祖でもある。彼は処刑されて、伝説的ヒーローになった。(鳥居英晴) (2006/12/13) 【16】”stay the course”から”benchmark”へ イラク政策に関して“stay the course”を繰り返し言ってきたブッシュ大統領が、驚いたことにそんなことは言っていないと言い出した。代って使い出したのが”benchmark”である。これは撤退のための”timetable”とは異なると主張する。大統領は、現実とはかけ離れたsemantic game(言葉遊び)に溺れている。(鳥居英晴) (2006/11/01) 【15】”stay the course”と”cut and run” 11月の米国の中間選挙を前に、ブッシュ大統領はイラク政策について、”stay the course”か”cut and run”かというふたつのキャッチフレーズでもって二者選択を迫る戦術をとっている。しかし、共和党内からも”stay the course”戦略に対して疑問の声が上がっている。(鳥居英晴) (2006/10/17) 【14】「ソプラノ国家」 「遊撃隊国家」「カルト国家」「首領国家」「盆栽国家」・・・。類を見ない専制体制を堅持する北朝鮮は、日本でもさまざまな呼び方がされる。英語でも北朝鮮ほど多くの異名を持つ国は恐らくない。その中のひとつ「ソプラノ国家」と聞いて、すぐにピンとくる人は少ないかもしれない。(鳥居英晴) (2006/10/15) 【13】安倍首相のキャッチ22 靖国神社を参拝するのかしないのか、あいまいにしたまま来週、中国と韓国を訪問する安倍首相の置かれた立場についてニューヨーク・タイムズ紙は、catch-22に直面していると伝えている。(鳥居英晴) (2006/10/05) 【12】固定されていない大砲 イマニュエル・ウォーラーステインによると、中東でのそれはイランでもイラクでもなく、イスラエルでも米国でもない。それはパキスタンであるという。それとは loose cannonのことである。(鳥居英晴) (2006/09/16) 【11】インテリジェンスとは何か 外務省のラスプーチン、佐藤優氏の一連の著作や手嶋龍一氏の小説「ウルトラ・ダラー」で、インテリジェンス(intelligence)という言葉がbuzzword(流行語)になっている。安倍政権では、首相直轄の「対外情報機関」を創設して政府のインテリジェンス機能の強化するという。産経新聞は8月24日、次ぎのように報じている。 (鳥居英晴) (2006/09/09) 【10】イスラムとファシズム 米国のブッシュ大統領の最新のキャッチフレーズは“Islamic fascists”(イスラムのファシスト)である。米国内では、その表現の是非をめぐって議論が沸騰している。AP通信は、fascismが今年の中間選挙での共和党のbuzzword(流行語)になりそうだと報じている。(鳥居英晴) (2006/09/04) 【9】「シーア派の三日月地帯」と「過激主義の弧」 イスラム教シーア派を国教とするイランの台頭、シーア派が政治力を増したイラク、レバノンでシーア派民兵組織ヒズボラが対イスラエル戦で「善戦」したことなどで、レバノンからイラク、イランへといたる地域を「シーア派の三日月地帯」(Shia crescent)と呼ぶ言い方が流行りだした。しかし専門家は、複雑な問題を安易に簡単な言葉で表現することは理解を妨げる、と指摘する。(鳥居英晴) (2006/09/02) 【8】中東問題の根本原因 イスラエルとヒズボラの間の戦争が勃発して以来、米国のブッシュ大統領が繰り返し使っているキャッチフレーズがある。”root cause”(根本原因)という言葉である。中東問題の根本原因は、「テロリストのヒズボラ」とそれを支援するシリアとイランにあるという意味で使っている。これもまた、新たなBushese(ブッシュ語)なのか。(鳥居英晴) (2006/08/24) 【7】非国家主体と国家内国家 レバノン紛争に関する英文記事を読んでいるとnonstate actorという言葉がよく出てくる。ヒズボラなどを説明する表現で、非国家主体と訳されるらしい。しかし、日本語の一般記事ではほとんどお目にかからない言葉だ。(鳥居英晴) (2006/08/23) 【6】「スパゲッティと麺には気をつけろ」 経済記事には一般の辞書にも載っていない用語がよく出てくる。ましてやホカホカの新語であれば、ネットを使って調べるほかはない。そんなケースが最近あった。8月17日付のインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙に載ったフィリップ・ボウリングのコラム。見出しはWhen free trade sinks into the 'noodle bowl'であった。(鳥居英晴) (2006/08/19) 【5】イスラエルの戦争のキーワード 各国の指導者や国際機関が、ヒズボラとハマスの越境攻撃に対するイスラエルの報復攻撃について非難する際に使った言葉がある。日本語の記事では、この言葉の重要性はほとんど目立たなかったが、英語の記事やコラムでは見出しに使われた。この言葉こそが今回の戦争のキーワードである。その言葉は、次ぎのように使われている。(鳥居英晴) (2006/08/15) 【4】もう片方の靴 ベネズエラにおける言論締めつけに関するopenDemocracyの記事Venezuela's media in a Bolivarian storm を読んでいて、結びのところで引っかかった。そこにはこう書かれていた。 (2006/08/09) 【3】発射か発射実験か 北朝鮮のミサイルに関して、海外のメディアが「発射実験」という言葉を使っているのに、日本のメディアは「発射」という言葉を使って大騒ぎをしているのはおかしいという主張がある。宮台真司氏がブログで述べており、「週刊金曜日」にもそのような趣旨の読者の投稿があった。果たしてそうであろうか。 (2006/08/05) 【2】産みの苦しみ 日本語メディアではあまり注目されず、英語メディアでは最近、さかんに引用されている米国のライス国務長官の言葉に“birth pangs of a new Middle East”というのがある。birth pangsとは「産みの苦しみ」「陣痛」という意味。 (2006/08/04) 【1】ワニの涙 ヒズボラとイスラエルの間の戦争で、多くの血と涙が流されているが、「ワニの涙」を流す人もいるようだ。 (2006/08/03) |
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