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特集野添憲治の”列島最深部からの報告”地方図書館の実態 町村合併で崩れる図書館活用体制 過疎対策の一つに、図書館が認められることになった。図書館面を建設する時には過疎対策事業債が使えるので、新しく図書館をつくるには便利になった訳だ。現在、全国の市町村の約半分が「過疎」に指定されており、その市町村のなかで図書館建設に意欲をもっているところがあるとすれば好機であろう。だが、大都市は別として地方の市町村で図書館を建設しようと頑張っている所があるとは思えない。事業債といっても、使えば自治体の「借金」である。この財政の苦しいときに、図書館を新築しようという計画を練っている自治体があるとは考えられない。この時期に図書館建設に過疎対策事業を認めたというのも、どこかピントがずれていないだろうか。いまもっとも大切なのは、図書館の活用ではないだろうか。(2010/06/16) 米政策の根幹をゆるがす検査規格の見直しを ことしの2月、米の検査規格の見直しを求める会が消費者庁長官と消費者委員会委員長宛に、jAS法『玄米及び精米品質表示基準』についての意見書」を送った。その意見書を筆者もいただいたが、現在の日本の農政が直面している問題を、現場から意見として提出したもので、重要な指摘をしている。しかも、農業者だけではなく消費者にもかかわるなかで、米の検査規格の見直しを大きなうねりにしていくことが大切だと考えている。(2010/04/27) 深刻化する自殺問題 自殺防止セミナーは盛んだが ことしの正月を迎えて早々に、わたしの身近な所で自殺者があった。3日の朝、いつも朝に1時間ほど歩いている松林で起きた。わたしか行った時はもう死体は運ばれた後で、木の根元に花が供えられていた。松林で会う顔見知りの人たちの表情も暗く、うつむいて雪の道を歩いていた。(2010/04/20) たったひとりの抵抗が原発を止めた 下北に生きる母と娘のものがたり 本州の最北端、青森県下北半島はマサカリの形に似ているため、マサカリ半島とも呼ばれている。この半島の先端にある大間町に、1980年代はじめに大間原発が計画された。しかし、建設予定地の99%強は買収したが、その用地のまんなかにある1%が買えないので、建設はいまもストップしている(2010/01/14) 足尾銅山に強制連行された朝鮮人労働者 最盛期には「東洋一の銅山」と呼ばれ、アジア太平洋戦争の時は「超重点鉱山」に指定された栃木県の足尾銅山(現日光市足尾町)。その繁栄を支えた大煙突から出るガスで周囲の山野は荒れ、裸地の土砂が流れて渡良瀬川はたびたび大洪水を起こし、その被害をまともに受けた沿岸の農民たちの惨状と、被害農民を支えて闘った田中正造の歴史がある。その足尾銅山に朝鮮人が強制連行され、「朝鮮人は死ぬために日本へ連れてこられたようなものだ」と言われるほどの過酷な扱いを受けた歴史もある。(2010/01/04) 秋田のメロン農家に起こっていること 昔、わたしが山村で暮らしていた時は、5月になるとツバメが姿を見せたものだ。田んぼすれすれに低空飛行をしたり、夕方になると電線に何十羽も連なって留まっていた。農家だったわたしの家の軒下や内庭の天井に、数つがいのツバメが巣をつくっ。ヒナがかえると、親がエサをはこんでくるたびに鴫きたてた。下を通る時は気をつけないと、ツバメのフンが頭に落ちてきた。(2009/08/17) 朝鮮人・中国人強制連行の跡を訪ね歩いた九年 4500柱はいまも日本の山野に眠る アジア・太平洋戦争の時に中国から日本へ強制連行した中国人は「外務省報告書」によると約4万人である。捕虜や兎狩り作戦などで集めた人たちで、北は北海道から南は九州まで、135事業所で強制労働をさせられた。日本の敗戦で帰国するまでに死者6838人、負傷者6975人、不具廃疾者467人という悲劇を生んだ。しかも、送還された遺骨は約2500柱で、残りの約4500柱はいまだに日本の山野に放置されている。ひどい話だ。(2009/06/24) 増え続ける農村工場の閉鎖、5人に1人の児童が「就学援助」 2月4日は立春で暦の上では春だが、私の住む秋田県はまだ真冬てある。毎日のようにように雪が降り積もり、窓ガラスに雪模様の氷が張り付く寒さが続く季節である。「春は名のみの風の寒さや」の「早春賦」にはまだまだ遠く、窓には鉛色の雲か流れている。(2009/04/14) 雪の中にいつまでも残る鈴なりの柿の実 過疎と高齢化が同時進行する村 昨年の秋は、田畑や野山の成り物が豊作だった。不作たったツナの実をのぞき、あけび・クリ・フルミなどが沢山の実をつけた。わたしも何度か山に入り、野山の幸をいっぱい貰った。豊作の年は果実も大きいうえに、水分も多く甘さもある・人間の晩秋もこうだったらいいなと思った。(2009/02/25) 仕事がない! 地域経済を襲う危機 晩秋の夕方、わたしは自転車で能代市を走っていた。街路樹の落葉もはじまり、道に落ちている。自転車は落葉を踏んで、軽快に走った。頬にあたる風は冷たい。まわりが急に明るくなった。能代市でいちばん大きいパチンコ店の前だ。少し腰を浮かせ、パチンコ店の駐車場を見渡した。今日も車でいっぱいだ。最近は乗用車よりも軽トラックが多くなった。(2009/01/02) 自然の中で静かに進行する異変 野添憲治 ことしの秋田県の八月は、近年になく雨が少なく、晴天が続いた。雪国秋田にしては珍しく、気温が三〇度を超える日が一週間も続き、病気になる人が続出した。水田や畑では水不足となり、立ち枯れ寸前までいった。川の水が不足し、上水道の水が使えない町村もあった。異常づくめの夏だったが、下旬に数日の雨があり、最悪の事態はまぬかれた。県外では逆に豪雨に襲われた所もあり、社会の乱れが天候にもおよんだのかと思いながら夏を過ごした。(2008/11/25) 雑草田が続く向こうに廃屋が見える 農山村を歩くと、耕す人がいなくなった荒廃田にヤナギ・ススキ・雑草などがぼうぼうと生えている風景をいたる所で見かける。身の丈もある雑草田が何ヘクタールも続く向こうに見えるのは廃家である。(2008/09/28) 強制連行された朝鮮人労働者の墓石、陽をあびることもなく 同じ村を歩くもの書きなのだが、野添さんにはとてもかなわない。柔和さがちがう、立ち位置がちがう、話を聞き取る深さがちがう、人と接するときの謙虚さがちがう。中学を卒業して山林労働と出稼ぎ労働に従事、青年時代から73歳になる今日まで、東北の地に足を踏ん張り、山びと、百姓、猟師、職人の生き方の聞き書きを続けてきた。それはこの列島に生きる人びとの壮大な民衆史となって、私たちの前に置かれている。野添さんの仕事のもう一つの山脈は、アジア太平洋戦争の最中、日本に強制連行された中国人、朝鮮人の記録の掘り起こしである。秋田県北の花岡鉱山で起こった、重労働や虐待に端を発して蜂起へと至る「花岡事件」の発掘にはじまる野添さんの調査と聞き取りの旅は、全国各地さらには朝鮮半島、中国と東北アジア全域の及ぶ。その野添さん折々のエッセイを不定期でお送りする。題して「野添憲治の“列島最深部からの報告”」(大野和興)(2008/09/15) |
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