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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2003年02月18日05時36分掲載
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東ティモールと豪州:協力推進と反発のはざまで揺らぐ両国関係
東ティモールのジョルジュ・テメ副外相がさきごろ、初代駐オーストラリア東ティモール大使に任命され、政府内での承認を受け、近く正式に駐オーストラリア大使として派遣される(同国では、ジョゼ・グテレス駐ニューヨーク東ティモール代表国連大使も副首相を兼任している)。東ティモールからはすでにアベル・グテレス駐シドニー総領事がオーストラリアに派遣され、両国関係の強化に努めているが、このところ、東ティモールと隣の「大国」=オーストラリアとの間には「さざなみ」がおこっているようだ。原因のひとつは、オーストラリアと東ティモールの間に横たわるティモール海における石油・天然ガスの開発のあり方について規定したティモール海条約の批准をめぐるオーストラリア側の対応で、もうひとつはオーストラリアに滞在する東ティモール人亡命者の扱いをめぐるオーストラリア政府の対応だ。両国の間に何が起こっているのか、追ってみる。(ディリ=和田等)
▼ティモール海条約の批准めぐる豪側の態度に不満表明
東ティモールのマリ・アルカティリ首相はこのほど、オーストラリアと東ティモールの間に横たわるティモール海における石油・天然ガスの開発のあり方について規定したティモール海条約の批准を、事前に合意した期限までに批准することは困難との姿勢を示しはじめたオーストラリア側の対応に不満を表明した。
ティモール海条約では、両国の間で共同石油開発地域を設定し、同地域から産出される石油・天然ガスから得られる税収やロイヤルティー(鉱区使用権料)などの収入を、東ティモール側90%、オーストラリア側10%の比率で分配することになっている。またこの条約では、鉱区全体が共同石油開発地域に入るバユ・ウンダン鉱区と、80%がオーストラリアに帰属し残り20%が共同石油開発地域に入るグレーター・サンライズ鉱区を対象にしているが、オーストラリア側にはグレーター・サンライズ鉱区の開発に関して、税率などをオーストラリアに帰属する地域の条件と統一・整合させることを規定した統一化協定の調印とのセットでティモール海条約に批准すべきだとの主張がある。
オーストラリア側が同条約の批准に手間どりそうだとの見通しを示しはじめたのは、統一化協定の調印と同条約の批准を一括してあつかうべきだとの声が根強く存在しているためだ。一方、統一化協定の早急な調印に難色を示している東ティモール側は、ティモール海条約の批准と同協定の調印は切り離して扱うべきで、まずは条約に批准すべきだとの立場をとっている。
アルカティリ首相によれば、東ティモールの主張の背景には、条約の批准期限として当初両国が同意した昨年12月31日までに東ティモール側は批准し誠実に約束を果たしたのに、オーストラリア側はそれを反故にし、さらには契約違反の結果天然ガスの買い手(東京ガスと東京電力)を失うリスクさえもたらそうとしている、との不満と危機感がある。また首相は、グレーター・サンライズに関する統一化協定とティモール海条約の批准を連動させないことは両国間で昨年交わした了解覚書で了解したことではないか、と述べ、オーストラリアの議会に対する不信感を表明している。
オーストラリアのウッドサイド・ペトロリアム(出資比率33・4%)を主開発業者に、コノコフィリップス(同30%)、ロイヤルダッチ・シェル(同26・6%)、大阪ガス(同10%)が共同で開発することになっているグレーター・サンライズ鉱区の石油・天然ガス推定埋蔵量は、液状で3億トン、ガス状態で8兆3500億立法フィートとされ、コノコフリップスが先行して開発を手がけるバユ・ウンダン鉱区を上回る埋蔵量が見込まれている。
▼東ティモール人亡命者に「出て行け」と豪移民省
ハワード豪政権誕生後、米国での同時多発テロなどの影響もあり、アジアや中東諸国からの難民など国内に滞在する外国人に対する厳しい姿勢をとりはじめたオーストラリア移民省は昨年後半、インドネシア占領下での迫害を逃れて東ティモールに渡ってきた東ティモール人亡命者にも帰国を促す政策をとりはじめた。
オーストラリア国内には、昨年5月の東ティモールの独立以降も母国に帰らずとどまり続けている東ティモール人亡命者が約1600人いる。「母国はもう独立して生命が危険にさらされることもなくなったのだから帰国してほしい」というのがオーストラリア移民省の言い分だが、帰国を勧告された東ティモール人の多くは10年以上にわたってオーストラリアに滞在し、すでに地域社会の一員として定着していると主張し、東ティモールへの帰国に難色を示している。
「オーストラリア人といっしょに育ち、学校に行き、いっしょにサッカーをしてきた若者も多い。なのに、なぜいまになって東ティモールに帰れというのか。オーストラリアに住んでいる東ティモール人の若者は失望しているよ」。
そう語るのは、かつて東ティモールの首都ディリに住み学生だったときにオーストラリアに亡命したフィボ・フレイタスさん(28)だ。まだ小さい頃に親とともにオーストラリアに逃れてきたため、東ティモールの公用語テトゥン語を十分に話せず、英語を主要言語として使っている若者も存在し、いま東ティモールに戻っても逆に疎外感を感じることになるのでは、との不安もある。
こうした事情を考慮して、オーストラリア人とすでに結婚している東ティモール人や、オーストラリアの市民権を持つ子どもの親である者、ビジネス上の技能を要する東ティモール人には正式な滞在ビザを発給すべきではないか、との声がオーストラリアでも出ている。こうした条件を満たす東ティモール人は約560人存在するとされるが、一方で、それ以外の1000人以上の東ティモール人は帰国を余儀なくされることになる。
メルボルン市長らは「社会の一員として定着している東ティモール人を市民として受け入れるべきではないか」と主張しているが、「コソボからの難民をはじめほかの国からの亡命者に対しても厳しい移民政策をとっていることでもあり、東ティモール人だけを特別扱いにできない」というのが移民省の立場だ。
しかし、「東ティモールとオーストラリアの間には特別な関係があり、東ティモール人亡命者を追い出すようなことになれば、(インドネシアによる東ティモール侵略を容認したのに続き)またもや東ティモール人を裏切ることになる」との声がオーストラリア国内で高まっており、移民省との綱引きが激化しているようだ。
▼東ティモールへの平和維持軍の継続しての駐留を約束
「イラク攻撃のために2000人規模の兵力を派遣する余力があるのなら、インドネシア領西ティモールから越境してきて住民を脅かしているインドネシア併合派民兵の元メンバー対策にオーストラリアはもっと協力してほしい」。1月中旬、東ティモール政府高官はこのようにオーストラリア側に要望した。
これに対してオーストラリアのハワード首相は、オーストラリアが東ティモールに軍を駐留させているのは国連との契約に基づいてのもので、単独で勝手に平和維持軍の数を増やしたりすることはできない、との見解を表明した。一方で、オーストラリア軍は5月で平和維持軍として駐留の契約が終了することになっていたが、駐留期限を少なくとも今年末まで延長、引き続き治安維持にあたることになった。
さらに11日、ニューヨークでコフィ・アナン国連事務総長と会談したハワード首相は、国連とオーストラリアは東ティモールから平和維持軍を引き上げるのは時期尚早との立場で一致し、東ティモール国内の治安維持に向け警察力の強化しながら平和維持軍撤退に備えていくことを確認したことを明らかにした。ハワード首相はまた、警察の能力を向上させていくため、オーストラリアがさらなる支援をおこなっていくとの意向を表明している。
なお、1999年8月に実施された独立の是非を問う住民投票に後に併合派民兵が引き起こした騒乱を鎮静化するため、同年10月に派遣された東ティモール国際軍(INTERFET)においてオーストラリア軍は主力を占め、現在にいたるまでオーストラリアは国連平和維持軍に最大の人員を派遣している。
2003年1月末時点で東ティモールに展開する国連平和維持軍の人員数は、13カ国から派遣された3873人で、このうちオーストラリア軍が最大の832人を占めている。次いで日本の自衛隊の680人、ポルトガル軍の637人、タイ軍の502人、韓国軍の436人だ。今後、平和維持軍は03年6月までに2780人に、03年末までに1750人に削減され、そして駐留期限の終了する04年6月に全面撤退する。
また国連文民警察官については、今年1月の時点で34カ国から派遣された731人が東ティモール各地に配置されている。文民警察官も平和維持軍と同じく04年6月に全面撤退する。
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