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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2003年09月16日19時53分掲載
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イラクにぶちまけられた放射能兵器、「劣化ウラン弾」の恐怖 山崎久隆氏講演録
米ブッシュ大統領がイラクでの戦闘終結を宣言した後も、米英軍によって殺さるイラク市民が増え続けている。一方、米軍の犠牲者も、「戦後」のほうが「戦中」を上回る異常事態だ。家屋の破壊や過剰な発砲など目に見える被害だけでなく、今後見えないところで確実に人々の体を蝕んでいくのが、湾岸戦争やコソボ紛争などに続いて使用された劣化ウラン弾。99年に劣化ウラン研究会を創設した山崎久隆さんが、8月にアジア記者クラブで行った講演内容を紹介する。(APC通信=ベリタ)
■核の廃棄物=劣化ウラン
92年ごろ、前年に起こった湾岸戦争でウラニウムを使う兵器が使用されたとの報道に接した山崎さんは、腰が抜けるほど驚いたという。米国の核兵器問題の専門家が書いた論文が日本に紹介されていた。すべての核燃料物質および放射性物質は、どこの国であれ法律によって厳正な管理が義務づけられている。事故などでウラニウムが環境中に放出されれば、原子力災害法に基づ緊急事態が発動される。にもかかわらず、米軍はウラニウムを兵器としてぶちまけた。
山崎さんたちはさっそく、この問題の追及を始めた。が、その後も劣化ウラン弾はボスニア紛争、コソボ紛争、アフガニスタン攻撃、イラク攻撃で使われた。この問題を考える上で、「劣化という言葉が非常に大きな誤解を招いている」ことを指摘する。
湾岸戦争症候群と劣化ウラン弾の関連がクリントン政権で問題になった際、当時のコーエン国防長官は「劣化ウランは天然ウランから放射性物質であるウラン235を取り去った無害なものである」と発言した。
この証言文書を呼んだとき、「あまりの無知ぶりに、あ然とした」と山崎さんは言う。劣化ウランの主体はウラン238だが、ウラニウムと名がつくものはすべて放射性毒性と金属毒性を持っており、大きな違いはない。米軍が97年に演習で沖縄に劣化ウラン弾を撃ち込んだときも、軍側は「放射能は大したことはない。旧式テレビの放射線より低いくらいだ」と断言したが、山崎さんは「これも、とてつもないすり替え。劣化という形状に対する無知をさらけ出した」と指摘する。
100万キロワット級原発を1年間運転するために必要なウラン量は、濃縮ウランにして約30トン。天然のウラン鉱石はウラン235を0・7%しか含まず、そのままでは核燃料にも兵器にもならない。核燃料なら4〜5%、原爆なら96%以上に濃度を高める必要がある。濃縮過程で天然ウランから、成分の大部分を占めるウラン238が核のゴミとして分離される。これが劣化ウランで、原発用濃縮ウラン30トンを作るときに160トンが発生する。
原発の運転と核兵器開発が続けば、劣化ウランはたまっていく。米国に70万トン、フランスに30万トン、日本に1万トンがすでにある。計算上では世界中で毎年約6万トンが発生し、日本でも年間7300トンに達する。
米国エネルギー省のホームページに掲載されている劣化ウラン容器貯蔵サイトの写真を山崎さんは紹介。鋼鉄の貯蔵容器が広大な敷地に積まれ、年間5億ドルもの管理費がかかり、容器から漏れたら放射能災害と扱われる。それほどの物質を「アメリカがイラクにぶちまけるときは、放射能災害でも何でもない。極端なダブルスタンダード」で米国は使用してきた。
■極端なダブルスタンダード
劣化ウラン弾の写真も山崎さんは示した。120ミリ、105ミリ戦車砲弾や機銃弾は、いずれも先端がヤリのように尖っている。比重が重いため貫通力が強く、遠くまで届く。風の影響を受けにくく、命中精度も高い。
一方で、防御用にも戦車の装甲板として劣化ウランが使われている。米軍は遠くからイラク軍の戦車を壊滅でき、イラク軍の戦車砲は米軍戦車の装甲板を撃ち抜けない。劣化ウランが戦車に使用されていることは、エネルギー省ホームページの核燃料サイクル図が示していた。しかし9・11テロ事件後に、この図はホームページのリニューアルを理由に外されてしまった。
湾岸戦争で米軍戦車は十数両が深刻な損傷を被った。これはすべて同士撃ちで劣化ウラン弾を撃ち込まれたことによる。破壊された戦車は放射性物質に汚染されたものとして扱われ、汚染が深刻な6両は米国に持ち帰れず、サウジアラビアの砂漠に穴を掘って埋めた。残りはサウスカロライナ州の放射性廃棄物処分場に運ばれた。劣化ウランの"安全性"を対外的に主張する米軍が、内部では放射能汚染を認識していることになる。
対照的にイラクでは、劣化ウラン弾に破壊された戦車や建物などが放置されたままだ。「これほどひどいダブルスタンダードは歴史的にも稀だろう」と山崎さんは言う。
米軍戦車の汚染除去に携わったチームのトップが各メディアに明かしたところによると、チーム100人のうち10人が作業終了後、1年程度で死亡した。2001年の時点で30人が死に、このトップの体内からは平均的アメリカ人の1500倍のウラニウムが検出されたという。
戦車砲弾などの材料にはタングステンが使われる場合が多い。タングステンの融点は約3300度。これに対して劣化ウランは約1132度。対象物に撃ち込むと、摩擦熱などによって最高3000度にまで高温化する。熱で流体化して貫通力が高まり、なおかつ自燃性もあるため、戦車に撃ち込めば内部の酸素と激しく反応して爆発的に燃える。劣化ウラン弾の攻撃を受けた戦車には、直径5〜10センチの穴が開く。その部分にガイガーカウンターをあてると、環境値の10倍から100倍の放射能が検出される。内部には燃えた劣化ウランの粉塵が大量にたまり、乗員は即死状態だという。イラク戦争で破壊された戦車も散乱しており、環境値の1000〜1900倍の放射能が検出されている。
■使用量公表を拒む米軍
アフガニスタン戦争のころから、劣化ウランの兵器用途はさらに広がったという疑惑が英国の科学者によって提示された。地中深いところにある軍事施設などを破壊する「バンカーバスター」は、従来の鋼鉄製爆弾では地下30メートルの貫通力しかなく、有効に目標物を叩けなかった。米軍は貫通力を倍増する計画を立てたが、それには強度が鋼鉄より強いタングステンか劣化ウランが材料として浮上してくる。
スマート爆弾や巡行ミサイルの貫通体は米国の公式特許の中に記載されており、特許の許可証中に「材質はタングステンまたは劣化ウラン」と書かれている。民生用にも広く使われ、非同盟国である中国を主産地とするタングステンよりは、方途がないまま貯蔵され、価格もタダの劣化ウランを転用する方が現実的なのは言うまでもない。
日本の物理学者が、バグダッドでバンカーバスターが撃ち込まれた跡地をガイガーカウンターで測定した。検出されたガンマー線は環境値の1・5倍。現在のバンカーバスターは地下100メートルあたりで爆発する。地上に吹き上がってくる劣化ウランはごくわずかにしかならない。「そういう状況を考えるならば、1・5倍というのは明らかに劣化ウランがバンカーバスターに使われていたことを立証するに等しい数値と言っていい」と山崎さんは確信する。
劣化ウランがイラクのどこで、どれだけ使われたか。国連環境計画(UNEP)やメディアなどの問い合わせにも、米軍は公表を拒む。国防総省は、空軍のA10攻撃機が劣化ウラン弾を総量にして約75トン使ったことは認めている。山崎さんは、イラク戦争を伝える米国FOXニュースの映像に、劣化ウラン弾の使用場面が映っていたことを指摘した。
イラク軍の戦車を撃つブラッドレー装甲車から放たれた弾は、それ自体は見えなかったものの、着弾すると白い煙が上がり、戦車が内部から爆発する光景は、「劣化ウランでなければありえない」。25ミリ機関砲弾を、通常なら貫通できない戦車や装甲車に撃つのは、劣化ウラン弾だからだ。米軍はジャーナリストが宿泊するバグダッドのホテルも砲撃して、記者を殺した。これもメディアが伝えた現場状況は劣化ウラン弾使用の特徴を示しており、山崎さんはその使用を疑っている。発砲した戦車は共和国防衛隊の戦車部隊を標的としていたため、最初から劣化ウラン弾しか装備していなかったと見られるためだ。
UNEPがコソボで発見した劣化ウラン弾を分析した結果、プルトニウムが含まれていることがわかった。それは核燃料サイクルから回収されたウラニウムが、劣化ウラン弾の中に含まれていることを意味する。ウラン238などに比べ、プルトニウムの放射線エネルギーは20%ほど高い。ウラニウムだけでできている劣化ウラン弾より危険性の高いものが、コソボでは使われた。これも、「劣化」という名称を再考すべきだと山崎さんが考える理由のひとつだ。
米軍はコソボでの劣化ウラン弾使用の実態をNATOに報告し、それに基づいてUNEPは現地調査を行った。米軍は30万発撃ち込んだが、発見されたのは7発。事前に米軍が回収してしまい、UNEPは環境や人体への影響を調べることができなかった。
米軍は放射能汚染がひどい場所は隠し、汚染除去をした場所だけを公表。住民4000人のうち数年後に500人がガンを患った村のことも、米軍からの情報がないため国連調査の範囲外だった。
■日本産の劣化ウランも
劣化ウラン弾は爆発後、最大7割が煙草の煙ほどの微粒子になって拡散し、人体に入り込む。体内で酸化ウランとなり、これは水に溶けないため長時間とどまる。肺から細胞を通過して血液に混ざり、全身を巡る。腎臓、肝臓、生殖器などが侵される。ウラニウムは鉛や水銀と同じ重金属毒性も持っており、記憶障害、神経障害などを引き起こし、死に至らしめる。放射線毒性と金属毒性の相乗効果により、遺伝子異常につながる危険性も高い。
イラクでは子供の悪性腫瘍の発生数が95年になって急増した。98〜99年にピークを示しており、劣化ウランの影響ならば、体内にウラニウムが蓄積して、7年くらいたってから白血病が激増したと推測できる。
劣化ウラン弾とは、日本も無関係ではない。ウラン濃縮によって排出される劣化ウランを日本の電力会社は所有放棄して、大半が米国やフランスに貯蔵されている。米国は自国に貯蔵されている劣化ウランから、劣化ウラン弾を作る。つまり米国の劣化ウラン弾の材料には、本来、日本の電力会社が所有すべき劣化ウランが混入していると山崎さんは指摘する。
劣化ウラン弾は湾岸戦争では主にイラク・クウェート国境で使われたが、イラク戦争ではほぼ全域に撃ち込まれた。湾岸戦争よりひどい環境の中で、子供たちは遊んでいる。自衛隊派兵を政府は考えているが、「緊急にやらなければいけないのは、まず汚染地帯を確定すること」だと山崎さんは言う。コソボと違い、雨の少ないイラクなら、すぐにとりかかれば相当量の劣化ウラン弾を回収できる。そして医療支援。「とりわけ日本に期待されるのは放射線医学、あるいは被曝治療。そういったノウハウは日本は世界一」と訴えた。
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