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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2005年05月15日05時00分掲載
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米TV番組「CSI:科学捜査班」の意外な効果 検察当局は困惑
米国CBSの長寿TVドラマ「CSI:科学捜査班」は、ハイテク技術を駆使しながら捜査官が、難事件を解決していくストーリーで、人気を集めている。他にもNBCの法廷ドラマ「法と秩序」なども高視聴率を上げ、法廷・刑事ドラマがお茶の間にすっかり定着した格好だ。ところが、こうしたTVドラマの隆盛により、“CSI効果”というマイナスの影響が、実際の法廷の場に現われているという。具体的には、刑事事件の陪審員が、必要以上に科学的な証拠を要求したりして、検察側を当惑させている。(ベリタ通信=有馬洋行)
視聴率調査会社ニールセンによると、人気トップ20のTVドラマのうち、7つが科学捜査や法廷ドラマに関する番組で、視聴者数は、1億2000万人にも達している。TVドラマの特徴は、短い時間枠の中で、複雑な事件や裁判が、次々と解決されていくことだ。
「CSI:科学捜査班」のドラマでは、捜査官が、殺人事件の現場で採取された指紋や血痕などをDNA鑑定などを通じ科学的に分析し、事件を解決していく姿を描いているが、これが一部の人々に大きな影響を与えている。つまり現実でもTVドラマのようにスムーズに事が運ぶと錯覚してしまう現象だ。こうした現象は「CSI:科学捜査班」の頭文字を借用して、“CSI効果”と呼ばれ、最近メディアの間でよく使われている。
現実と非現実の境界があいまいになり、一般の事件や裁判もテレビのように行なわれると錯覚してしまうと、困るのは、殺人事件などの立証を行なう検察や、犯人の弁護士たちだ。
米紙プレス・エンタープライズによると、ドラマ「刑事バレッタ」に主演した俳優ロバート・ブレイク氏が最近、2001年5月に起きた妻射殺事件で陪審員が無罪評決を下したのも、“CSI”効果の影響ではないかといわれている。ロサンゼルス郡検察当局は、ブレイク氏が無罪になったことを「信じられないほど愚かなことが」と憤慨、テレビの影響があったとの見方を示している。
▽「非現実的なテレビ番組」が影響
検察側は、状況証拠で「クロ」と認定できるとみていたが、この事件は、物証の少なさが指摘されていた。テレビの法廷・刑事ドラマでは、豊富な証拠が提出され、犯人が追い詰められていくが、ブレイク氏の裁判は、これとはまったく正反対だったわけだ。事実、ある陪審員は、評決後、状況証拠だけでブレイク氏を有罪にできなかったと語っている。
陪審制度は、民間から陪審員を選出し、裁判に参加させる米国の司法制度。米カリフォルニア州リバーサイド郡のバランスキー検事は「陪審員は常識を働かせ、自分の経験に照らし合わせれば、正しい評決に至る。しかし、非現実的なテレビ番組の影響を受けている一部の人がいる」と話している。
実際の鑑識の現場では、事件現場から、指紋が取れても判別が不能だったりすることも多い。科学捜査班は、テレビでは犯人探しにも加わっているが、実際は、証拠の収集、分析が主で、事件捜査の訓練は受けていないという。テレビでは、DNA鑑定も数時間のうちに判明するが、実際には、数日から1週間かかる。
一方、米紙ロサンゼルス・タイムズによると、“CSI効果”で、大学の法医学クラスが人気を呼んでいるという。O・J・シンプソン事件で活躍した法医学者ヘンリー・リー氏は「多くの学生が(法医学の仕事を)“CSI”ようなものと考えている。実際は、大変な仕事だ」
法医学者になるのには、数年間にわたって集中的に化学を勉強する必要がある。フロリダ国際大学法医学教室のホセ・アルミラル主任教官によると、多くの学生が“CSI”のようになりたいという。そこで4年間化学の勉強が必要と言うと、「それなら、なりたくない」という態度を変えてしまうという。
法医学の教官たちは、多くの学生が法医学に関心を寄せることを歓迎している。その一方で、授業では、できる限り、テレビの世界と現実の犯罪捜査の違いを学生に教えたいという。ジョージア州のグリフィン・テクニカル・カレッジのクレア・シェパード教官は「多くの学生が聞き込みをしたり、相手から自白を得たり、時には草むらの中に身を潜めるようなことを考えている。これはもちろん間違い。多くの学生が法医学とは“科学”であることを理解していない」
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