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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2005年05月17日12時24分掲載
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首相続投で豪与党内に高まる不協和音
「私には次期総選挙で、ビーズリー労働党党首(野党)を再度打ち負かす自信がある」──。こう豪語したハワード首相(自由党党首)の発言が今、与党自由党内で大きな波紋を広げている。とりわけ、唐突ともいえるこの発言にいら立ちと不快感を募らせているのが、同党の次期党首の座に最も近いとされる副党首を10年以上も務めているコステロ財務相(47)だ。(ベリタ通信=志岐隆司)
ハワード長期政権を支える要とも言われる順調な経済政策を担当してきたコステロ財務相には、今後1年以内に党首交代を実現して政権を引き継ぎ、2007年初頭に予定される次期総選挙で労働党を破りたいとの思いがあるからだ。地元マスコミによると、「続投宣言」にも等しい今回の首相発言がこの思惑に冷水を浴びせたのは明らかで、自由党内には今、党首交代の是非と時機をめぐり不協和音が高まっている。
連続当選14回、30年を超える連邦下院議員歴を誇り、今年7月には66歳となるハワード首相の政治手腕は老獪(ろうかい)そのものだ。同首相の後継者がコステロ財務相であることは衆目の一致するところだが、同国で歴代2位となる長期政権をいつ、どのような形でバトンタッチ=党首交代=するのかに関し、首相自らが時機などを明言したことはない。
ハワード氏は1995年1月に同党党首に復帰し、翌96年3月の総選挙で予想をくつがえす地滑り的勝利を収め、キーティング首相率いる労働党(ALP)から政権の座を奪った。
予想外だったこの勝利の要因は、ハワード首相に国民人気があったためではなく、キーティング氏のあまりにも強すぎた「個性」と低迷する経済状況に有権者が反発したためとされた。
政権の座に就いたハワード首相にはその後、幸運の女神が常に付き添ってくれている。政権奪取からほどなくして、アジア地域を揺るがせた「通貨危機」が起きたが、同政権はこの大嵐にのみ込まれることなくやり過ごすと同時に、危機から立ち直りを図ろうとするアジア諸国経済を巧みに取り込み、好調な経済成長を実現させてきた。
日本、韓国、中国そしてインドネシアなどとの経済関係が一段と強まることで、オーストラリア実業界はこれら諸国への進出を果たし、それに伴って国内経済も高度成長を維持、とりわけ失業率の低下が国民からの支持を確実にした。米国との保守色の濃い関係強化も、キーティング前政権の移民政策に危機感を持った有権者たちの心をとらえている。
好調な経済成長維持で中心的役割を果たしたのが、自由党副党首としてハワード首相(党首)を支えてきたコステロ財務相だ。33歳で迎えた1990年の総選挙に初出馬、当選を果たしたコステロ氏は当初から党の若手ホープとして期待を寄せられ、ハワード党首就任と相前後して、党内ナンバーツーの副党首に選ばれた。
コステロ財務相はこれまで、国家財政の健全化を経済政策の柱に据えた上で、消費税の導入、国営企業の民営化、情報産業の強化、輸出振興などの経済政策を推進してきた。堅実な政治手腕への評価は高く、党内でも「後継者」への道を着実に歩んできた。中でも、一時は10%台を記録した失業率を、現在では5−6%に低下させた政治手腕は高く評価されている。
「時機到来」とも思えたこの時に出現したのが、今回のハワード首相の発言だ。実は、コステロ氏が同首相から「煮え湯を飲まされた」のはこれが初めてではない。昨年10月の総選挙を前に、党首交代の機運が高まりつつあった03年半ば、ハワード首相は突如、「続投」の意向を表明、04年総選挙を自らの指導下で戦うつもりだったコステロ氏とその党内支持勢力を驚かせた。
コステロ氏はこの発言に不快感を表したが、ハワード政権下で続く経済の好調さが国民支持を集め、自由党有利の情勢が続いていたため、同首相への“造反”は不可能だった。皮肉にも、同氏の財務相としての功績が“野望”の障害となったのだ。同総選挙では自由党は議席を減らしたとはいえ、国民党との連合で過半数を確保、その結果、ハワード首相は昨年12月、歴代2位の長期政権記録を達成した。
しかし、ここへ来て国民の間には、イラク問題などでハワード首相の過度な米国寄り政策に批判が強まり、自由党内外では「いよいよ党首交代」の声が高まっていた。そこに、今回の「続投宣言」にも等しい首相発言が出たことから、コステロ氏とその陣営からは一挙に不満が噴出した。
この発言に対し、さすがのコステロ氏も「怒り」をあらわにしたと伝えられる。政治家にしては個性・自己主張の弱さが目立つ同氏も今回は、「議会での予算審議を目前に控え、このような発言は政府、与党に不利に働く。慎重さを欠いている」と発言、首相に対し強い不快感を表した。
同氏はまた、「(党首選挙に向けた)両院議員総会の開催は要請しない」と、党の利益と予算案通過を最優先する考えを明らかにしたが、「副党首としての役割は十分に果たしてきた。円滑な党首交代を望む」とも言明、ハワード首相に再考を促す意向をはっきりと示した。
ハワード首相には、ビーズリー党首率いる労働党指導部であれば「組みしやすく」、次期総選挙での勝利も確実との見通しに立ち、歴代2位の長期政権を可能な限り維持し、政界に名を残したいとの思惑があるとされる。自由党内には早くも同首相続投の是非をめぐる論議が起き始め、高まる不協和音が党内亀裂を生む可能性さえ懸念されている。それだけに、約10年にもわたって党内ナンバーツーのままで置かれているコステロ氏が今後、老獪な戦術を駆使する同首相にどう挑み、悲願である「党首の座」を首尾よく手中に収められるかどうかに関心が集まっている。
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