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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2005年06月04日13時09分掲載
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【コラム】日中は「戦略的」解決を急げ 先人たちの努力を無にしてはならない
中国の厳しい対日批判と小泉首相の靖国神社参拝への固執。歴史認識の相違をめぐり両国関係は悪化の一途をたどっている。この危機をいかに克服すべきか。ジャーナリストの池田龍夫氏は『新聞通信調査会報』6月号で、各紙の報道を分析し、日中の友好関係を築いてきた先人たちの努力を水泡に帰してはならないとし、「小異を残して大同につく」という日中和解の基本精神に基づいた「戦略的」な解決が急務だと訴えている。(池田龍夫)
日中間〝ののしり合い〟がエスカレートし、ナショナリズムの衝突が憂慮される。1972年の日中平和条約締結から33年、両国友好・和解の道のりに曲折はあったものの、破局的局面を乗り越えてきた。ところが、昨年から今年にかけての余りにも厳しい対日批判に、多くの日本人は戸惑いを深めている。
尖閣諸島領有権、東シナ海ガス田を巡る紛争、中国原潜の領海侵犯に加え、サッカー・アジアカップ予選(重慶)での中国民衆の日本人への暴力沙汰…等々、最近のトラブルは目を覆うばかりの激しさだ。そして去る4月、デモ隊による日本大使館(北京)への破壊活動をはじめとする中国各地での日本企業・日本人排斥の大規模デモの続発。〝政冷経熱〟どころか、〝政冷経冷〟の最悪事態に日中両政府は追い込まれてしまった。4月23日ジャカルタでの小泉純一郎・胡錦涛両首脳会談のあと政府権力の介入で反日デモは押さえ込まれたものの、ドラスティックな〝戦略的解決〟に踏み込まないと、対立の火種は残るだろう。
▼複雑で危険な「愛国無罪」の大デモ
中国人デモ隊は「愛国無罪」と叫んで、日本大使館や日本人経営のスーパー、料理店に激しい投石を行った。1960年代後半、紅衛兵が「革命無罪・造反有理」のスローガンを掲げて、劉少奇氏らを血祭りに上げた狂気を思い出した人は多かったろう。「四人組」の失脚で鄧小平氏が復活、開放経済路線に大転換したものの、民主化・自由化の波は1989年の天安門事件で挫折した。このあと権力を掌握した江沢民氏が、国内引き締めのため94年に「愛国主義教育実施要綱」を発表、全国の学校で本格的な愛国教育を推進してきた経緯がある。この延長線上に、今回の「愛国無罪」があるとは即断しないが、中国ナショナリズム醸成のテコになっているのではないかと心配するのである。
歴史認識にも、現実の外交案件にも、紛糾する時期が国家間にあるのは不思議でないが、突然吹き荒れた今回のデモは、常軌を逸していた。その背景に、歴史教科書と靖国神社参拝問題があることは明らかであり、「過去の侵略戦争につき、日本は反省していない」と、繰り返し迫ってきたのである。中国政府が当初デモを黙認していたかどうかは別にして、ウイーン条約で保護を義務づけられている大使館への破壊活動につき中国政府の公式謝罪がないのは、手前勝手で非礼な振る舞いではないだろうか。
「胡主席は『(侵略戦争の)反省を実際の行動に移してほしい』と小泉首相に述べた。それなら、中国も愛国・反日教育の中止を『行動』で示すべきだ」との反論(讀賣4・24社説)は当然と言えようが、現段階での性急な中国バッシングは控え目にした方が得策と思う。早稲田大学院の園田茂人教授(中国社会論)は「日本ではメディアで政治批判が率直に行われるが、中国では政府が無能と言われることを忌避する。面子をつぶされると、政権にとどまれないし、政権に付き従う人民の気持ちも失せる」(東京4・21朝刊)と述べ、その一例として80年代に対日積極姿勢を見せた胡耀邦首相(当時)が失脚したことに触れ、「親日という政治家は、中国を強く表現できないということになる。そうなると政府は人民を付き従わせることができない」とし、胡錦涛政権の立場にも同様の力学が働いていると分析している。
うがった見方であり、江沢民体制を引き継いだばかりの胡錦涛主席の苦悩が推察される。高度経済成長にわく中国だが、貧富の格差・失業者の増大・社会保障政策の不備・官僚の不正続発など社会的ヒズミを危惧する中国研究者は多い。そこに共産党政権の泣き所があるわけで、今回のデモの鉾先が〝反日〟だけでなく、〝反政府〟の要因を内包していると推測することは的外れではなかろう。
▼「反省を行動で示せ」と首相に迫る中国
反日デモへの疑問点を率直に指摘したが、今回のジャカルタ首脳会談で「反省を行動で示せ」と迫られた日本側に落ち度がなかったろうか。首脳会談の前日(4・22)、靖国神社例大祭に国会議員80人が集団参拝、閣僚では麻生太郎・総務相の参拝が大きく報じられた。太平洋戦争のA級戦犯14人を合祀する靖国への公式参拝に異を唱え続けている中国には、腹立たしいこと。小泉首相は2001年の首相就任から昨年まで毎年(計4回)靖国参拝を強行しており、その都度物議をかもしてきた。昨年秋には、胡主席の指摘に、小泉首相は「胡主席が言われたことは、誠意を持って受け止める。今後適切に対処していきたい」と苦し紛れの返答をしている。
「侵略戦争の反省が足りない」と執拗に迫る中国側の最大の標的が「靖国参拝」にあると考えざるを得ない。教科書問題は、中国国定教科書と読み比べてみれば、中国の一方的非難の行き過ぎがよく分かる。こういう問題こそ、ドイツとポーランドのように、両国歴史研究者が真摯に検討すべき課題なのに、年中行事のような〝非難の応酬〟は全く不毛な争いだ。
「『謝れ』『いや、そちらこそ謝れ』―『責任をとって欲しい』『そちらが責任をとらないからこんなことになるのだ』……。売り言葉に買い言葉である。こんな芸のない外交があるだろうか。すでに日中両国とも外交では敗者である。世界のメディアは、日中双方の器量と指導力に大きな疑問符をつけた。日本は、いつまでも過去を克服できない独りよがりで、懲りない国として描かれた。中国は、統治のためならデモも反日も歴史も操作する無慈悲で、怖い国と見なされた。……多くの先達が日中正常化のために井戸を掘った。そこに毒を入れてはならない。反日、反中民族主義という毒である。日中首脳は何よりも、その一点で合意してほしい。その上で、両首脳に戦略的決断を促したい」――朝日コラムニスト・船橋洋一記者の明快な指摘(4・22朝刊)に共感する。
▼「小異を残して大同につく」努力を
「日中正常化交渉成立」の祝宴(72年9月28日夕)で周恩来首相が「相互理解と〝小異を残して大同につく〟精神によって、われわれは中日国交正常化と一連の重要な問題について合意に達しました」と歴史的スピーチをした感動を思い起こした。先人たちの粘り強い交渉の結果もたらされた日中和解。33年後の混乱収拾のため、〝小異を残して大同につく〟努力こそ望まれる。小泉首相は「適切に処理する」との言葉の実践を試されていることを、肝に銘ずべきだ。ジャカルタでのアジア・アフリカ首脳会議で小泉首相が村山富市談話(95年)に依拠して戦争中の加害を謝罪したことを評価するものの、本来なら自らの言葉で日本の平和理念を明快に訴えて欲しかった。
小泉首相の靖国参拝の動機が「01年自民党総裁選の際、大票田の『日本遺族会』の支持を取り付けるためだった」ことは、中国側も周知の事実。その後も〝公約〟に凝り固まって、日を変えてまで4回も参拝を強行する首相の姿勢は不可解である。今回「適切に処理する」と約束したものの、今年も意表を衝く参拝を狙っているのだろうか。あの中曽根康弘首相(当時)が一度だけ参拝して〝自粛〟した政治判断から考えても、小泉首相の〝聞く耳を持たない〟傲慢さは、〝小異を残して大同につく〟精神を一顧だにしない偏狭ナショナリズムの印象である。
「時ならぬ歴史認識摩擦の大火事に直面したわれわれは、いやでも戦後60年の原点を思わざるを得ない。戦争を忘れ、矛盾を簡単に乗り越えられると割り切った日本人の傲慢――に対する隣国の批判を謙虚に受け止めよう。だが、この局面で重要なのは、日本大使館襲撃の責任を追及し、煽動では動かない日本社会の成熟と、駆け引きを拒絶する国民の結束を示すことだ」(毎日4・18朝刊『発信箱』=山田孝男記者)、「反日デモ問題はまだ、この国が国際標準に満たない一面を露呈した。今は厄介にも思える隣人とどう対話を重ね、どう付き合っていくのか。それは日本の国益にかかわってくる」(同毎日朝刊=飯田和郎・中国総局長)の指摘に耳を傾けたい。
4月中旬訪中した保坂正康氏(昭和史研究者)は「小泉首相が靖国参拝を行うたびに中国政府は国民に向けての説明の根拠を失っていくと眉をひそめたが、今回もその表情に怒りがあった。…中国社会の地下三尺には『抗日・反日』というエネルギーが常に胎動していることを感じていた。このエネルギーは、日本側の無神経な言動でたちまち火がつくという現実、そのことを理解しておくべきである」(朝日4・25夕刊)との冷厳な状況を念頭に、関係修復の〝戦略〟構築を急がなければならない。
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