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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2005年08月06日08時32分掲載
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国史跡とオオタカ営巣地の破壊、地下水の枯渇 橋梁談合のもうひとつの犯罪
橋梁談合事件は道路公団副総裁、理事と関連企業幹部の逮捕へと発展している。関係者はいずれ刑事責任を問われるだろうが、談合まみれの公共事業はそれによっては修復不可能な深刻な事態を引き起こしている、と圏央道反対運動に関わる一市民(匿名希望)は指摘する。東京都下の八王子トンネル工事では国が国史跡を破壊し、貴重種のオオタカを追い払い、地下水の枯渇を招いている。マスコミが報じないこのような暴挙にも、一人でも多くの市民が目を向け反対運動に協力してほしい、と投稿者は訴えている。(ベリタ通信)
<圏央道に反対する一市民より>
私はひと月ほど前、橋梁談合と圏央道という題で圏央道「あきる野インターチェンジ」を例に橋梁談合と圏央道のかかわり、圏央道そのものの問題を書いた。その後、橋梁談合事件は公団幹部が直接かかわって価格情報をもらし、工事の割り振りを行ってきたことがはっきりしてきた。大手マスコミでは橋梁談合事件の“特異性”を強調する記事がみられる。私は今回の事件は決して特異な事件ではなく、税金を山分けするために、つぎつぎと巨費を投じて必要のない工事を実施しつづけるこの国の行政の姿そのものであるとおもう。そこで、今回は圏央道「八王子城跡トンネル工事」を例に国と公団がおこなっていることをひきつづき明らかにしていきたい。
▼戦国末期の北条氏の居城
圏央道はいま「あきる野インターチェンジ」が完成し、工事は北に向かってが進められ、中央高速道と八王子ジャンクションで接続させ、ジャンクションを延長して高尾山にトンネルを通そうとしている。JR高尾駅から小仏方面の登山に向かう人たちは旧甲州街道を小仏へ向かうバスの車窓から中央高速道にかぶさるように巨大なジャンクションが建設されているのがみえる。
このジャンクションと圏央道をつなげるために、ジャンクションの北側に八王子城跡トンネル(直径10mのトンネル2本、2.4km)が掘られつつある。このトンネルは国史跡八王子城跡直下を貫通するため八王子城跡一帯の自然環境を破壊する可能性が高く、当初から城跡の保存に取り組んできた人々や自然保護団体が強く反対していた。そしていま、トンネルによる八王子城跡一帯の破壊が現実のものとなりつつある。
八王子城跡は小田原に本拠をおき関東一円を支配した後北條氏の4代目当主北條氏政の弟で、北関東を支配し威勢をふるった氏照の居城跡であり、戦国末期の山城としては最大の規模を誇る貴重な遺跡として国史跡に指定されている。氏照は北関東を支配し、越後、甲斐方面の守りとしてここに1580年頃、城を築き城下町をつくっていった。山頂付近に八王子権現の社があり、これが八王子の地名の起こりといわれている。
史跡は標高460mの山頂付近の本丸を中心に面積154ha、およそ東西1.5km、南北1kmの区域である。(比較の対象にあげると東京の上野公園が不忍池をふくめ84haというからおよそその倍の広さであり、皇居の北の丸公園、東御苑、皇居前広場をあわせた広さが110haである)。城下町をふくめると周囲20kmほどの広大なものが構想されていたのではないかといわれている。しかし、豊臣秀吉の小田原城攻撃のさい、城主氏照は小田原へ出向いており、その間に八王子城は上杉景勝、前田利家の連合軍に攻撃され城主不在の城は1日で城兵ら千数百人が討ち死にというかたちで落城した。
その後、城下町は現在の八王子市中心部よりに移されたので城下町の遺構はみられないが、城跡は戦国末期の山城から平城へ移行期の貴重な遺跡であり、後北條の威勢を示す貴重な遺物が大量に出土している。発掘されたものには全国各地の陶磁器にまざって中国の陶磁器やベネチアガラスもあり、当時の日本の交易を研究するうえでも貴重なものである。
こうした経緯からこの城跡は全体が戦死者の墓場ともいえるため、ほとんど人の手が入らず長く手つかずの自然が保たれてきた。しかし、多摩地方にも押し寄せてきた開発の波の影響で1960年ごろから、ふもとの部分の破壊が進んできたため城跡を保存しようとする地元の人たちの運動が起き、「八王子城跡を守る会」が結成され多くの人々の熱意によって城跡は破壊からまもられてきた。ところがその国史跡を国自身が破壊しようというのである。
国史跡というのは文化財保護法により指定されたものであり、同法3条によれば「政府及び地方公共団体は文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもってこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない」とある。
▼自然破壊に手を貸す学識経験者の“神託”
八王子城跡の特徴は豊富な水である。北條氏照がここを居城と定めた理由のひとつは豊富な水であつたとおもわれる。山頂付近には氏照の時代から枯れたことがないといわれる水場(かん井の井)がある。高尾山からこの一帯は小仏層といわれる地層で、いわゆる褶曲山地であり薄い板状の粘板岩が斜めに重なり、風化して砂礫が入り混じったものである。このため雨水は山中で豊富な地下水脈をつくり、多くの植物が繁茂し、湧き出した水は澤や滝となっている。
北側の山中では1996年に「種の保存法」で指定された貴重種であるオオタカの営巣が確認された。この水脈はこの山が出来た白亜紀から数千万年をかけてできあがったものであり、この地質とともにこの山の生態系の基盤をつくっているものである。しかし、このような地層はトンネル工事により破壊されると大量の出水をひきおこし、自然環境が大きく破壊される可能性が大きいうえ工事が始まればオオタカが営巣を放棄するとして、城跡を守る運動を続けてきた人々は「八王子城跡とオオタカをまもる会」を結成し、他の自然保護団体とともに再三、国に工事中止を申し入れてきた。
国側は学識経験者7名による「トンネル技術委員会」をつくりトンネル工事の環境への影響を調査させた。委員会は出水の可能性はみとめたが、出水は一時的なもので工事の進行とともに回復していく、また、オオタカの営巣については影響を最小限に出来ると工事にお墨付きを与え、工事に反対する人々との十分な話し合いもないまま1999年に工事を強行した。
しかし、工事開始直後から山中の水位は13mも低下し、トンネル坑口付近の民家の井戸枯れが発生した。国・公団の主張にもかかわらず水位の完全な回復はなく、水位は現在3m低下したままである。オオタカは営巣を放棄し別の場所に移った。山中の遺構はあちこちで崩落をおこしはじめている。これは水位低下による地表の乾燥のためと考えられる。
さらに、今年に入って渇水期にも今まで枯れたことのない「御主殿の滝」と呼ばれる滝が一時的に完全に枯れてしまった。国は滝の水枯れがトンネル工事の影響であるとはみとめようとせず、今年の春季の近年まれにみる少ない降水量のせいだと主張している。しかし、今年の春より少ない降水量の年はいままでもあつたのであり、国のいうことが正しければ昨年の1月から4月の4ヶ月間の降水量は今年の3月から5月の降水量の合計より少ないのであるから、昨年滝の水枯れが起きているはずである。
トンネル委員会は問題が起きるたびに検討会を開催する。しかしいつも結論は「環境への影響はない。工事を続けてよいぞ」という“神託”がくだされ、工事が進められる。トンネル委員会の「平成16年には水位は回復するぞ」という神託にもかかわらず水位は3m低下したままである。トンネル委員会はこの事態を「水位は安定してきた」としている。もし山全体の水位が3m低下したままであれば、地表の乾燥化が進み植生に影響をあたえるはずである。そもそも、ほんとうに貴重な自然をまもろうというのであればトンネル委員会のメンバーに複数の生態学の専門家や何十年と城跡を観察してきた地元の代表をくわえるべきではないか。
▼トンネル工事にも談合の疑い
トンネル工事は2回にわけて入札がおこなわれ、落札価格は62億円と38億円、落札率はそれぞれ98%と92%であり、この落札率は談合の存在を疑わせるものである。そして工事が開始されると反対していた人々の指摘していたとおり大量の出水にみまわれ、海底トンネル工事なみといわれる大量の凝固剤の注入をよぎなくされ、当初3年の予定の工期が6年たった現在も完成していない。
工期が大幅に伸びた理由は予想をこえる大量の出水である。そして国側は工事完成を急ぐため途中で工法を変更し、新しい掘削機械を数億円かけて導入した。さらに最近になって、最後の部分で予想外の岩盤に突き当たりまたも別の掘削機械を数億円かけて導入しようとしている。3年の予定工期が2倍に伸びているうえに工法の変更、掘削機械の更新等で、出水に対処するため予算はあって無きが如し、文字通り湯水のように金が使われているのではないか。
事態は工事反対を訴えるひとびとの恐れていたことが現実となっている。膨大な凝固剤の注入でトンネル内への出水はふせげても水脈を断たれた大量の水が山から逃げていくことを止めることはできない。現在、毎日400トンの水が山から流出している。滝の水が枯れたり、遺跡の崩落が始まっている。膨大な凝固剤の一部は地表にしみ出してきている。この凝固剤が地下水の水質へ及ぼす影響も心配である。
しかし、国はなにがなんでも、工事を完成させようとしている。トンネルが完成しなければ八王子ジャンクションと接続できず、高尾山にトンネルも掘れない。高尾山については石原都知事がトンネル工事の許可を与え、大手JVには166億円(落札率95・6%)というおいしい工事が用意されているのである。
こうして、国交省、道路公団、企業は税金を山分けしながら史跡と自然を破壊していくのである。行きずりの通行人に言いがかりをつけて殴る、けるの暴行のあげく殺してしまうというやりきれない事件が時々起きる。逮捕された犯人の法廷での言葉は「死ぬとは思わなかった」である。この国の公共事業が引き起こす被害について行政側からくりかえし聞かされるのもこのようなセリフである。殴る、けるの暴行を受けている人が裁判所に助けを求めても「受忍限度だ。我慢しろ」といわれる。
このようなことがいつまで続くのだろうか。国民も是非このような事実にもっと目をむけてほしいものである。
トンネル工事に反対する人々は現在、圏央道事業認定取り消し訴訟、高尾山トンネル工事取り消し訴訟を国に対して起こし係争中です。裁判の状況につての情報はwww.naturetakao.comをご覧下さい。
* 圏央道 正式名称は首都圏中央連絡自動車道。都心から半径40〜60kmの距離に国が建設を進めている総延長300kmの高速自動車専用道路で、千葉県木更津市から成田、筑波、川越、八王子、厚木、茅ヶ崎、横浜を結ぶ。現在、埼玉県の関越自動車道鶴ヶ島インターチェンジから八王子市裏高尾町まで約40kmの工事が進められており、鶴ヶ島インターチェンジから東京都あきる野市のあきる野インターチェンジまで約30kmが完成している。
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