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2005年10月09日18時04分掲載
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検証・メディア
【市民参加型メディアをいかに創造するか(2)】 韓国モデルと日本の課題
韓国のインターネット新聞「オーマイニュース」のような市民参加型メディアを、日本でもつくれるだろうか。同紙の呉連鎬(オ・ヨンホ)代表が9月17日、人権と報道・連絡会主催のシンポジウムで行った講演を受けて、パネリストと聴衆が呉代表と意見を交換した。日韓のメディア情況の共通点と相違点を理解したうえで、韓国の成果を日本の土壌になかで発展させていくためには何が課題かが議論の中心となり、呉氏は日本モデルのオルタナティブメディアへの期待を表明した。(ベリタ通信)
●李其珍
私はジャーナリストでもなく、ジャーナリズムを勉強する一人の大学院生に過ぎませんが、本日ここで皆さんにお話できることになり、とても嬉しく思います。
私がオーマイニュースの市民記者だと先ほど紹介されましたが、市民記者に登録したのは2003年です。それから記事を書いたのはたったの2回で、そのうち1回が正式に記事として取り上げられて、メイン画面のちょっと下の方に載ったことがあります。2回の中の1回なので、50パーセントの確率で載るんだなと今は思っております。また、オーマイニュースが提供しているサービスの中でブログをやったり、一人の市民としてオーマイニュースと関わる一方で、2004年2月にオーマイニュースやプレシアンなど韓国のインターネット新聞を調査しに行き、自分の研究に取り込む、そういうことをやっております。
▼日本のオルタナティブメディアへの提言
私はオーマイニュースの市民記者をはじめてから、日本ではなぜオーマイニュースのようなインターネット新聞ができないのかと考え、また色々な方がそういうことで悩まれているようなので、今日はその点について具体的な事例を見てみようと思います。
日本に現存しているインターネット新聞の中では、JANJANと日刊ベリタがあります。今日はベリタ代表の永井さんもいらっしゃいますが、その2つとオーマイニュースの比較を簡単にしてみました。これは、JANJANや日刊ベリタを批判したりする目的では全然なくて、より日本の社会に適合したインターネット新聞をつくるためには、オーマイニュースモデルの中で、特にどういった点を積極的に推進すべきかということを提案したくて比較したわけです。2つあるのですが、ひとつは既存メディアとの差別化を明確に打ち出すことであると思います。もうひとつは、先ほどオ代表が講演の中でおっしゃったのですが、市民記者とプロの記者とのファンタスティックな結合、バランス、役割分担、それをどうやって運用していったらよいかにかかっていると私は思います。
ひとつ目の「差別化」という点についてです。去年大学院で仲間たちと、靖国問題を報道する日本のジャーナリズムのあり方について共同研究したことがあるのですが、今、日本のジャーナリズムの具体的な問題点として、明確な線が引かれていないということがわかりました。たとえば、JANJANにはJANJAN宣言というものがあるのですが、そこにはとても総括的な表現で「既存マス・メディアのニュース価値にかかわりなく市民の視点に立って良質な言論を創り上げます」とあります。日刊ベリタもそんなに変わらないのですが、「既存のマスメディアに対する批判的な検証を経て生まれた新しいメディアであり、これまでにない視点からのニュースをできるだけ多くリアルタイムで伝えることを目指します」とあります。
このように、総括的であいまいな表現をするだけで、明確な線を引かないのです。例えば、オーマイニュースは「韓国の社会が8:2くらいで保守化している。それを5:5にしたい。だから私たちは進歩側につく、進歩を標榜する」と宣言をしました。敵がどこにあって、どのような方法で状況をかえていくかという提案をしています。そのような争点をつくらない限り、巨大メディアに埋もれていくなり、同じような見方をされて、結局は発展・成長を成し遂げられないのではないかと思います。少し厳しい見方かもしれませんが。
もうひとつの、市民記者とプロ記者のバランスですが、先ほどオ代表もおっしゃったように、市民参画型インターネット新聞が市民記者によって成り立つということは、真実の半分に過ぎなく、もう半分にプロの記者の役割があるということを理解することが非常に大事であると思います。
JANJANと日刊ベリタはこの点が非常に欠けていると私は思います。例えばJANJANは、市民記者に頼りきっていると思います。編集委員と職員がいて、市民記者に混じって記事を書くということはやっているのですが、自分たちで、現在社会に起こっている問題を選択して集中して報道するということには手がつけられていないと思います。また、日刊ベリタはもっと市民記者を増やすべきであると思います。国際報道専門とは言いましても、情報を広範に提供できるメディアに成長できないとやはり生き残ることはできないので、幅広い市民記者をつくることが大事であると思います。その一方で、大手新聞の記者がやらないことを見つけて、それを集中的に扱うといった努力を続けることです。
以上2つが、日本のオルタナティブ・メディアの成長に欠かせない要件であると思います。
オーマイニュースモデルは本当に斬新で、衝撃的で、オ代表の講演会は京都や大阪でも行われています。私もそれに参加しました。しかし、聞いているだけでは何もできないし、そのモデルを認識して習得するのはいいのですけど、日本社会に合う、日本の市民を参加させることができるようなモデルを至急つくるべきで、議論だけではだめではないかと思います。その中でオーマイニュースのモデルのいいところがきちんと吸収されていくように応援したいと思います。
●浅野健一
それでは、最後に永井さんです。最近この問題で韓国にも調査に行ってこられたばかりですね。
●永井浩
私に与えられた課題は、日本でオルタナティブ・メディアをどうつくるかということです。たまたま私が日刊ベリタというインターネット新聞をやっていることで、今日ここに出させられました。ただ、オーマイニュースと比較されるのは恥ずかしくて、オーマイニュースと比べれば、吹けば飛ぶような、いや吹かなくても飛ぶような存在だとよく言われるんだけれど、それが日本の現状だということを踏まえてお話しようと思います。
▼日韓の共通点と相違点
今、浅野さんからお話があったとおり、9月4日から9日まで、韓国ソウルに取材に行って、オ代表らメディア関係者をはじめ、様々な分野の方と意見を交換することができました。私の問題設定は、オーマイニュースに代表される韓国メディアのモデルが、日本にも適用可能なのかどうかということです。今の李さんの言葉を借りれば、なぜ日本ではオーマイニュースのようなインターネットメディアが育たないのか、あるいは育つためにはどういうことが必要なのかということになります。
そこでまず、日本と韓国のメディアをとりまく共通点と相違点に簡単に触れたいと思います。これについては、既に先ほどオ・ヨンホさんのプレゼンテーションの中で、オーマイニュースが生まれてきた背景について非常に的確な説明がありましたので、そこで尽きていますが、それを私なりに簡単に整理してみます。
まず共通点です。共通点は既存メディアへの不信感の高まり。韓国では、特に新聞のメディア支配に対する不信と反発が、国民の中で臨界点にまで達していたということがあります。日本の場合も、韓国ほどではないとしても、似た状況にあると思います。2番目はインターネットの普及です。これもほぼ共通と見ていいと思います。
次に相違点ですが、それは政治的環境だと思います。今回の9・11総選挙でも示された通り、日本の政治状況は、総保守化のほうに雪崩をうって向かっている。それに対して、韓国では、オーマイニュースがスタートした時点では、保守:進歩が8:2だったのが、現在は5:5くらいになっているといわれています。保守対進歩・革新といった構図がしっかり根付いています。そういう状況をまとめてみますと、オーマイニュースが生まれてきた背景にはまず、国民の間に自分たちの声を代弁してくれる新しいメディアを要求する気持ちが非常に強まっていた。そこに、2002年の大統領選挙という政治的盛り上がりが重なり、革新的な若い世代が自分たちの考えを発信するためにインターネットという新しいメディアを積極的に利用した。それが、オーマイニュースという形で、爆発的な成功を収めた、ということだと思います。
もうひとつは、インターネット新聞が突然生まれたわけではなく、その前段階として、韓国の民主化運動があります。ハンギョレ新聞のように、市民が自分たちのお金を持ち寄って新しい新聞を作ろうという積み重ねがあり、それがオーマイニュースやプレシアンその他のインターネット新聞として花開いたんだと私は理解しています。
それから、もうひとつ忘れてはいけないのは、オ・ヨンホさんのような傑出した経営者の存在です。これが非常に大きな要因であったと思います。
そういう状況を踏まえて、日本でも韓国のようなインターネットメディアが可能かどうかということです。
今回の私の取材の大きな目的は、そのあたりの土壌の違いを自分なりに探ってみようというものでした。いろいろな側面がありますが、まずはオーマイニュースのキャッチフレーズである「市民記者」の“市民”とは何なのかということです。日本にも韓国にも市民はいるわけですが、私の感じでは、随分違うのだろうという気がします。市民記者が生まれる背景、そして私が会った3人のオーマイニュースの市民記者の方がたの発言を踏まえて、この点について私なりに説明させていただきたい。
まず、オーマイニュースやそれ以外の韓国の進歩的なインターネット新聞というのは、けっしてメディアだけの特異な現象ではなくて、実は現在の韓国の盧武鉉政権のキャッチフレーズである「参与政治」と深く関わっているのではないかと思います。参与政治を正確にはどう説明すべきかよくわかりませんが、おそらくは一人一人の市民が政治に参加するというような政治モデルをさしているのでしょう。それが社会の隅々に色々な形で浸透していき、たまたまメディアの分野ではインターネット新聞という形で定着していったのだと思います。
例えば、他の分野でどういったことが起きているか。政府の様々な委員会の構成です。日本でも様々な政府の委員会がありますが、そのメンバーの顔ぶれというのは皆さんがだいたい想像つくものです。しかし、韓国の現在の政府委員会の構成はどうなっているかというと、公務員が4分の1、学者・専門家が4分の2、そして残りの4分の1は、必ず市民団体の参加が義務づけられています。盧武鉉政権以前、金大中政権時代からそうなったのかもしれませんが、いずれにしても韓国の民主主義政治が定着する中で生まれてきたものです。かつては市民団体の参加というものはゼロだった。しかもこの学者と市民団体内のバランスについても、中央と地方、男女の比率を均等にしなければならないと定めれているそうです。
また、韓流ドラマの制作やテレビゲームにも参与政治が反映されているという説明をしてくれた方がいました。ご存知のかたもいらっしゃるかもしれませんが、テレビドラマの作られ方は、基本的なシナリオはできているのだけれど、その後は視聴者の反応を見ながら筋書きをいろいろ変えていくんだそうです。盧武鉉政権が誕生する以前から、このような作られ方はされていたそうなので本当かなという気がしないわけでもないのですが。それからテレビゲーム。これも日本ではオフラインで一人で楽しむのが普通なのに対して、韓国ではオンラインで数人が参加して楽しむのだとそうです。これが参与政治の一環かどうかは別にして、韓国社会では、様々な分野で参与というキーワードが定着しているんだ、ということは強く感じられました。
▼韓国社会に根ざす市民記者
それが市民記者の意識の中でどのように具体的に現れているかについて、私がお会いした3人の話をもとに紹介します。
最初にお会いしたのは、韓国の財閥系企業で働く30代の男性の方です。この方はカメラが趣味で、自然やスポーツなどの身の回りのものから政治的な素材までいろいろな作品をオーマイニュースに投稿しています。一例として、最近、ソウルのアメリカ大使館前で、米軍基地に反対する学生を中心とする市民の“人間の鎖”デモがあり、平和的な静かな抗議集会にもかかわらず参加者の一人が、警備の警官に羽交い絞めにされて暴行を受けた。その時は、大手のメディアの取材陣もいたのですが、なぜかオーマイニュースの市民記者である彼だけがそれを撮って、オーマイニュースに投稿して、結果的には特ダネになったということです。
私がその方に質問したのは、「オーマイニュースの市民記者になって何か変わったことがあるか」ということです。それに対する彼の答えは、「今まで見過ごしていた身の回りの出来事に対して、これはなんなのか?という問題意識を常に持つようになった」ということでした。そういう問題意識がなければ、オーマイニュースにニュースを送っても、ボツにされるか、あまり大きな扱いを受けないでしょう。だから、オーマイニュースに記事を送る市民記者である限りは、社会の様々な問題に対して問題意識を研ぎ澄ましている必要がある。つまり参与政治を支えている一人一人の市民は、こういう形で社会への関心度が非常に高く、それがたまたま彼の場合は、オーマイニュースの市民記者になったのだと理解しました。
二人目は、ベンチャー企業の経営者で40代の男性です。この人の話を聞いていて、オーマイニュースはこれだけ社会的影響力を持ったのか、ということを実感できました。彼が挙げてくれたのは、周辺のある事件について参考意見を聞かせてくれということで警察に呼ばれた話です。最初の約束だと、旅費を警察が支払ってくれるということだったのだが、全然支払ってくれない。そこで警察の会計責任者に聞いたところ、言を左右して全然払うそぶりがない。彼は後日、オーマイニュースの市民記者ということで、その警察署にこの問題の取材に行ったのです。そうしたら、次長ら幹部が自由に取材に応じてくれ警察の非を認めた。そこでその結果をオーマイニュースに投稿した。オーマイニュースではそれをストレートで出さないで、それをさきほど李さんが話された専門記者チームが、市民記者の話を裏取りした形で、オーマイニュースに載せた。その成果というのはすぐに現れまして、警察は以後、本来市民に支払うべきお金はネコババしないで、携帯を使ってキャッシュカードで支払うと公表したそうです。
市民記者の取材に警察がきちっと対応してくれるなどということは、日本ではとても想像できないでしょう。それだけオーマイニュースの社会的信用が確立しているとよく分かりました。
それからもうひとり、50代の専業主婦の方です。この方は市民記者に登録してまだ1年ちょっとなのですが、すでに500本もの記事をオーマイニュースに書かれています。内容はほぼ身辺雑記だそうです。彼女は非常に筆が早く、私が取材をした翌日、もう私から取材を受けた内容がオーマイニュースに投稿されていました。「私の人生のターニングポイント」という題で、やはりオーマイニュースへの参加が自分をどのように変えてきたかを記しています。
以上の例からわかるのは、オーマイニュースの市民記者というものが特別な存在ではなくて、新しい政治の流れの中で、きちっと根を下ろした存在であるということです。しかも、一人ひとりの記者の活動が社会変革と自己変革と連動して行われているところがとても印象的でした。
▼日刊ベリタをどう発展させるか
最後に、では日本に、オーマイニュースに代表される韓国型のインターネットメディアを適合できるかという問題です。私自身が仲間と一緒に日刊ベリタという超零細企業をやっているなかで感じたことを踏まえながらお話したいと思います。
日刊ベリタはどういうメディアかといいますと、詳しくは今日お配りした人報連ニュースのバックナンバーのコピーに目をとおしていただきたいのですが、基本的な志はオーマイニュースと同じです。市民の手でオルタナティブ・メディアを創っていくことを目指しています。ただオ・ヨンホさんのような優れた経営者にはわれわれは恵まれておらず、ほとんどのメンバーがボランティアで活動しているのが現状でして、期待したほどの成長はないものの徐々に手ごたえは実感でき読者も伸びて来ています。
伸び悩みの最大の理由は、もちろん私たちの力不足ですが、それだけではなさそうです。やはり日本と韓国の政治状況あるいは市民意識の違いが大きいのはないかと思っております。それをどのように突破して、いかにして新しい日本型のインターネット新聞をつくるか、ということが大きな課題で、今、創刊から3年ちょっと経ちますが、四苦八苦しながら模索している状況です。先ほどお話がありましたように、高田さんのような現役の記者にも参加してもらっていますし、海外の市民記者の方にも参加してもらっていますが、まだまだ不十分です。できるだけ多くの日本の市民にもっと積極的に呼びかけ、市民参加型のインタ-ネット新聞をいっしょに育てていこうという意識をもっていただくよう努力していくつもりです。
今計画しているということを少し話します。ひとつは「9条の会」についてです。今全国津々浦々で約3000の様々な活動が展開されているということですが、ご存知のように、大手メディアの「9条の会」に対する扱い非常に冷淡です。先月、東京の有明で開かれた1周年の記念会には約7000人の参加者がありましたが、新聞に関していえばほとんどベタ記事です。しかし私たちは、この全国の9条の会の活動について日刊ベリタのサイトで、お互いが情報交換できるような共通の場をつくって行きたいということで、準備しています。もしそういうことに積極的に関わってみようという方がいましたら、是非参加していただきたい。
もうひとつ、インターネットの特性を利用して、先ほどオ・ヨンホさんの言われた、グローバルな市民のネットワークを構築することも考えています。それは、中国と日本、韓国と日本の様々な問題について、各国市民がインターネットを介して対話をしてみようというものです。実は、日刊ベリタの市民記者で中国の深センにいらっしゃる方が、すでにベリタに参加する前に中国で試みています。その成果は日本僑報社というところで本にもまとまっていますが、日中の重要な問題について、普通の市民が非常に冷静に意見を交換し、相互理解を深めています。残念ながら今、中国側の事情でサイトが閉鎖されていますが、今回、編集局を日本に移して、ベリタでそれを再開しようと思っています。同じような試みを、日本と韓国の間でもできないかと思っています。
いずれにせよ、日本と韓国との違いを踏まえながら、しかし志は同じくする日本型の市民参加型インターネット新聞をつくっていきたい。それを日本の政治を動かすような力に育てていきたいと思っております。
オ・ヨンホさんは、オーマイニュースの日本語版も考えられております。このことについて、今回ソウルに行ったとき、オ・ヨンホさんとその後の進捗状態をうかがいました。答えは、この計画は是非実現したい。ただ、現在は、日本と韓国の言論文化の違いを慎重に検討しているところだ、ということでした。さすがにオーマイニュースの代表というものは物事を良く見ていると感心しました。オさんもそういう認識を持っていらっしゃるということで、われわれもいろいろな点から意見を交換しながら、インターネットを通じた、市民の国際的なネットワークの構築を目指したいと思っております。できれば、来年、イーストアイランド島で開かれる第2回の世界市民フォーラムのときまでに実現し、オさんと共同発表できればと考えております。
●浅野健一
ありがとうございました。私のほうから少し発言させていただきます。
記者クラブ問題で、先ほどの高田さんの発言やオさんの講演でも翻訳の問題がありました。記者クラブというものを定義しないで議論するとグチャグチャになってしまいます。記者クラブというものは、1930年代に治安維持法下で完成した、政府に記者を全部登録させて、そこに記者室というものを設けた制度です。ですから、日本でも1930年代まではなかった制度で、それまであったのは、いわゆる記者集団なのです。それが同じ名前なので、きちんと定義しないといけないと思うのです。
▼記者クラブ解体は急務
記者クラブというものは絶対解体しないといけないのです。記者クラブというものは英語にできないのですね。ですから、新聞協会の英語のサイトでも「Kisha-club」となっております。これは多分アメリカ人への抵抗だと思うのですね。それをプレスクラブと訳さなかった。これはKisha-clubとしか訳せないのです。これは慰安婦問題でもそうですが、“comfort woman”ではなくて、「イアンフ」として東南アジアでは使われている。「労務者」は「ロームシャ」としてマレー語になっている。日本帝国主義が作り上げたシステムなのですね。
多分高田さんが言われたのは、権力の中にある「記者室」ですね。プレスセンターです。そういうものはなくしてはいけない。ですから、記者クラブを解体した後に、プレスセンターを維持するということは、既存メディアの人も先頭になってやればいいわけです。連帯すればいいのです。しかし、記者クラブの中に、オーマイニュースジャパンが入ることは必要ないのです。今のところ、記者会見に出るためにという意味では必要ですが、それは記者クラブがあるからです。
世界中で記者クラブがあるのは日本だけだ、ということを認識していただきたい。韓国では「記者団」というと思いますが、記者団が青瓦台からなくなった時にも、ちゃんとプレスルームが残り、前よりもっと広くなって、記事を書いて送稿する部屋、そしてサロンみたいな部屋、それから記者会見室というのが3つできました。
長野県でも田中知事が、それまであった長野県政記者クラブを改造して、誰でも入れるように、長野県表現センターというものをつくろうとしたのですが、それに朝日新聞始め記者クラブは全部反対して、いまだに実現していません。5階の会議室に公衆電話やなんかを持ち込んで、そのまま表現センターがあるのですね。それでも長野県の記者は誰も不自由していないです。信濃毎日新聞の記者に聞くと、記者クラブがなくなって、何にも困ることはないと言っていました。それが多分、寺澤さんが言った「30代の若い記者に聞いたら、記者クラブが権力チェックの拠点になっていることはないよと言われた」ということだと思います。
個人的な意見を言うと、権力が「中に記者を入れない」というのだったら、別に入らなくてもいいと思います。近くにテントを張ってやるというくらいの気概がないと、記者クラブというのは解体できないと思います。
それから、私は最近『論座』で記事を書きましたが、私が朝日新聞に論文を書くのは10何年ぶりだったのですね。朝日新聞に私の活字が広告以外に出るのは久しぶりです。本当に嬉しくて「メインストリームに戻ってきた」と思ったのですが、その時に最後まで、朝日新聞の記者出身の編集幹部がこだわったのが、「浅野さんは日本のメディア状況が保守対革新が95:5といいますが、これは・・・」ということです。本当は99:1でもいいかなと思ったのですが。
この部分に最後まで食い下がってきまして、「なんとか7:3ぐらいにできませんか」とかね。つまり、朝日新聞が革新だと思っているわけですね。毎日新聞も革新だと、東京新聞や道新も革新だと。「浅野さんの95:5はどこから算出されるのか」というから、僕は「朝日新聞は圧倒的に保守だ」と言ったのです。天皇制を認め、靖国神社を認め、朝日は靖国神社の存在そのものは否定していませんから。総理大臣が行くのは行けない。自衛隊が行くのも、イラクがいけない、サマワがいけないと言っているだけで、海外に行くのは全然否定していない。それからアメリカ型の資本主義を全面肯定しているし、経団連が全面バックアップしているし、どこが革新なのかと反論しました。結局挿入されたのが、「オ・ヨンホさんのモデルで分析すれば、95:5」と入れてもいいかと言うから、勝手に入れてくれということで終わりました。
先ほど李其珍さんが言った通り、やはり日本の今のメディアが本当に保守というよりも、翼賛体制型・権力広報型になっているときちんと言った上で、それでは民衆・市民のジャーナリズムをどうつくるかと展開していかなければいけない。その時のポイントが記者クラブの全面解体。そういう意味で、寺澤さんの裁判は絶対勝たなければいけない。私は日本の裁判官も世論を見ながら考えていると思うので、ひょっとしたら地裁レベルでは面白い判決を出すかもしれない。判決を注目したいと思っております。
それでは、今、パネリストが話したことを含めて、オさんにもう一度話していただきたいと思います。
●オ・ヨンホ代表
まず、このセミナー会場の皆さんが真面目に聞いていらっしゃるということに感謝いたします。韓国では見られない傾向です。4時間くらい、皆さんずっと座っていらっしゃるのですが、身じろぎせずに聞いていらっしゃる。韓国でしたら2時間くらいは聞いているのですが、だんだん1人、2人と席を立って、終わる頃には半分くらいになっている状況です。ですから、私はこの差は一体どこからくるのだろうかと考えていました。
▼日本型モデルの開発を期待
韓国人は、ある意味では忍耐力があるところもあるのですが、ある意味ではこらえ性がありません。韓国語で「早く、早く」という言葉は、たくさん使われています。その早く、早くというのが、韓国人の特性となっている速報性を重んじるインターネット新聞に合ったのかもしれないですね。ですから、ここに身じろぎせずに座っていらっしゃる方々に、この速報性があるインターネット新聞が合うのかなと思います。しかし、一方でこれがインターネット新聞の速報性と合致したときには、ものすごい爆発力も出るのではないかなと思いました。
私は2001年頃から日本に来だしたので、もう3、4年間経っていますが、果たしてオーマイニュースのようなモデルが日本で可能なのかという質問をよく受けます。しかし、それに対する答えは、韓国と日本というのは、共通点もあり、差異点もあるわけですから、これらをどのように分析してどのように解釈するかにかかっているのではないかということだ思います。
先ほども、JANJANやベリタの事例やそれについてのお話が出ました。そして、この3年間の実験が、あまり満足いくものではないというお話もありました。ですから、この問題は果たして、試みそのものは良かったのだが、運営上にいろいろ問題点があったとみるべきなのか、もう一つはこのような試みそのものがそもそも間違っていたと見るべきなのか、これにまずポイントを置くべきであると思います。ですから、日本も新しい時点にきているのではないかと思います。JANJANやベリタが、この実験を肯定的だと見て、これをどのように発展させるかというように問題を立てるのか、それともいやそうではなくて、全く新しいモデルが必要なのだというふうに問題を立てるべきかということですね。
私自身は、確かに韓国ではこのようなことをしてきて、このように成功しました。日本でこのようにしたらこのようになるかなと考えることはあります。でも一方で、これは理論的な想像でしかないのかなと考えもします。なぜならば、私自身は、韓国で、韓国的状況というものを体得して、肌でその雰囲気というものを掴んで、瞬発的に動くことができたからです。ですから、このような状況ではどうすべきかということに本能的に答えが出てくるわけです。ですが私自身は、日本に対して具体的にその雰囲気だとかを具体的に知っているとは言い切れません。
メディアを運営するためには、お金も人もかかるわけですが、一番大切なのは、毎日毎日更新していくときに、特に編集して運営するときに、非常に細かい感覚や勘が必要だということです。それを一番よくご存知なのが、ここにいる皆さんだと思います。ですから、私も、今後日本のオルタナティブ・メディアがどのように発展していくのかということを関心をもって見守りたいと思いますが、やはりそれを一番期待しているのは、ここにいる皆さんだと思います。 (つづく)
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