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2006年03月12日15時27分掲載
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なぜ高尾山を守らなければならないのか(2) いまこそ車社会を見直すとき 和泉 明
次に、なぜ高尾山の自然環境が破壊される可能性が高いのかについて述べたい。私たちが工事中止を強く要求するのは、高尾山が現在トンネル工事の進められている八王子城跡と同じ地層であり、しかも板状の岩石の傾斜がより垂直にちかいため、高尾山にトンネルを掘れば八王子城跡トンネル工事でおきていることと同じようなことが起きる可能性がより高いからである。
八王子城跡トンネルでは工事開始直後からトンネル入口付近の民家に井戸枯れが発生し一部の民家では現在も解消されていない。いずれの井戸も住民の知っている限り旱魃の年でも枯れたことがないという井戸であり、八王子城跡のある深沢山からの水系にある井戸である。 このような事実から、井戸枯れは八王子城跡トンネル工事が原因ではないかと考えるのがごく自然のことであるが、国は現在でも井戸枯れをトンネル工事が原因とは認めようとしない。また、トンネル技術委員会の説明では工事のため山の水位は一時的に低下するが止水工法をおこなうので元にもどるという説明であったにもかかわらず、山の水位は工事開始前より5mほど低下したままであったが最近は一気に13mも低下しており、公表データによれば毎日400トンほどの水が山から抜けて出ていっている。
八王子城跡には種の保存法で絶滅希種に指定されているオオタカの生息が確認されており、工事はオオタカとの共生をはかりながら行うとされていたが、工事が始まるとオオタカは営巣を放棄してしまった。当初の約束違反と種の保存法違反であるから国は工事を中止するべきである。
▽滝枯れの原因究明怠る国
そして私たちが最も危惧していることは、昨年5月に八王子城跡内の「御主殿の滝」と呼ばれる滝が枯れたことである。この滝は滝と呼ぶには小さなものであるが豊臣秀吉の小田原攻めに際して前田利家・上杉景勝の連合軍によって八王子城が攻め落されたときここに多くの婦女が身を投げたと伝えられていて、八王子城跡を構成するのに欠かせない場所である。 この滝は少なくともトンネル工事が開始されるまでは枯れたという記録はない。この滝が昨年5月、急に枯れてしまった。滝が枯れた時期はトンネル工事が滝の直下(約60m)にさしかかってきた頃である。私たちはこのような事態は工事の影響としか考えられず、史跡の破壊につながるため工事を中止するよう申し入れたが、国は滝が枯れたのは昨年の1月から5月にかけての少雨のせいであり工事の影響ではないという見解を発表した。 しかし、八王子気象台の公表データを調べれば、この程度の少雨の時期はここ数年にも何回かありこの時期が近年にない少雨というような状況ではないことはすぐわかるのである。このように調べてすぐわかることを、大学の教授たちが名前をつらねるトンネル技術委員会がなぜ発表するのか全く理解に苦しむ。
梅雨のあと滝は復活したが、その後、12月以降3度の水枯れが起きている。雨が降ったあと復活し、しばらくしてまた枯れるということをくりかえし、その間隔が次第に短くなってきていたところ、遂に、今年の2月に入って滝の上部の川まで枯れるという事態となった。このようなかつておきたことがない異変は大量の出水、山の水位低下により山の地中の水が抜けて空っぽの状態になりつつあるためではないだろうか。 ここにきて国側は誰が見ても少雨が原因とはいえなくなったため、滝枯れのことには触れず、業者の工事に不具合が発生したため工事が4ヶ月ほど遅れると発表した。原因究明中としてずるずると事態を長引かせ4ヶ月後の梅雨に滝が復活したのを見計らって、滝枯れは終わったとして工事を強行するつもりではないのだろうか。しかも、国は滝枯れの原因究明には欠かせない滝の上流に設置されていた地下水位を観測する観測孔を工事の妨げになるとして閉鎖してしまった。
▽不可解な市教育委と薬王院の態度
これらのことに関連して不可解なのは八王子教育委員会と高尾山薬王院の態度である。
八王子城跡トンネルは国史跡であり文化庁の管轄下あり、この現状変更は文化庁の許可が必要である。したがって、八王子城跡トンネル工事も工事により史跡に現状変更を生じないということを条件に文化庁が同意した形になっている。文化庁の管轄下にあるといっても文化庁は全国すべての史跡の現状を直接把握するだけの人手も予算もないので、八王子城跡は八王子市教育委員会が全面的に管理責任を文化庁からまかされて、トンネル工事に関連して2年に1回文化庁に対して史跡に現状変更が生じていないかどうかを報告することになっている。 八王子城跡については1999年10月の工事開始以来、滝枯れ以外にも異変が生じており、反対運動をすすめる住民側の問題指摘も主要新聞の多摩版には都度報道されてきた。したがって、八王子市教育委員会は城史跡の保存運動に長年たずさわってきた人々の意見を聞いたりして現状調査を行い、発生している現状変更について文化庁に報告する義務があったにも関わらず、毎回「現状に変更なし」という報告を文化庁に提出していたことが最近あきらかになった。しかも、今年の2月6日に4度目の滝枯れが起きて新聞でも報道されたにも関わらず、その直後に教育委員会は「現状変更なし」の報告をまたも提出している。その後、事態を重視した市議会議員9名による現地視察が最近おこなわれ、議員達による工事中止と文化庁への実態報告の要請が発表されて、はじめて八王子市教育委員会は文化庁に現状の実態を報告するという態度に変わってきたのである。
教育委員会の態度といい、郷土の貴重な史跡や自然が破壊されることに対して平然としている八王子市長の態度といい、八王子市の文化行政の貧困さを表わすものではないだろうか。(なお、財団法人「日本城郭協会」が記念事業として今年2月発表した「日本名城100選」に東京都内の城郭として江戸城ともに八王子城跡が選ばれた)。
次に、高尾山薬王院の態度であるが、高尾山薬王院が開かれたのは8世紀の奈良時代といわれ、以来千年以上多くの人々の信仰を集めてきた。薬王院は戦国時代末期、後北條氏が関東一円を支配してから幕末にいたるまで、時の権力者の庇護をうけてきた。高尾山の山林は後北條氏が伐採を禁じ、徳川時代もいろいろなかたちで保護されてきた。明治維新後は帝室有林、その後、国有林となった。このような歴史的経緯から、終戦直後の一時期、戦後復興のため東側斜面が大量に伐採されたものの、それ以外の地域は豊かな自然が守られてきた。山がもたらす霊気に包まれ、高尾山の自然と一体になって薬王院の宗教的な雰囲気が保たれてきたといえる。 高尾山の山林は国有林であるから薬王院には法律的な面からは森林を保全する義務はないとしても、長い年月を山と一体になって過ごしてきた歴史からいって、高尾山の自然を守っていく責任があるのではないだろうか。ところが、山の自然が破壊される危機に臨んでいるにもかかわらず、このことについて薬王院からは何の発言もない。このような薬王院の態度についての疑問に対して、薬王院は政治的中立という立場からトンネル工事の賛否については発言しないということである。しかし、ある意味では一番の当事者とも言える薬王院が発言しなければ工事による高尾山の自然破壊を黙認することと同じである。千年以上にわたり山と共に生きてきた寺院のとる態度としてはあまりにも冷たい、無責任な態度ではないだろうか。 隣国、韓国では仏教の僧侶たちが寺院の周辺の自然を破壊から守るために反対運動を繰り広げ国民の尊敬を集めているという。また、最近、比叡山延暦寺・学問所長の小林隆彰さんは「比叡山には信仰と関係なく、年間を通じて多くの参拝者や観光客が訪れます。このやまに来た人たちが「いい山ですね。心が洗われます」といってくださるような山にしたいですね。そのためには元々ある木は残し、多様多種な木を混ぜながら、また沿道には花の咲く木も植えたいですね」「仏教では山の木も、人間も、草もすべて同じ命であり、仏様の慈悲のあらわれと教えています。人間も「共に生きている」という考え方ですね」。と話されている。(「毎日新聞」2月11日)
▽裏高尾町の人々の生活環境破壊
圏央道は八王子JCTから裏高尾町を地上50から60mの高さの鋼鉄製橋梁がまたいで高尾山トンネルにつながることになっている。住民の生活に深刻な被害をもたらすおそれがあるのは騒音と大気汚染である。
騒音は先に述べたように、すでに場所によっては環境基準を超えている。それでも、国は環境影響評価では基準内となっていると言い張っている。しかも、国の言う環境基準とは「道路に面する地域」の環境基準(夜間55デシベル以下)であり、これを裏高尾地区に適用して、予測では夜間54デシベルであるからこれをクリアーするので問題ないとしている。この「道路に面する地域」というのは簡単に言うと、道路に面する商店のように「道路に面する」ことにより利益を受けている場合多少やかましくても我慢しなさいということである。しかし、裏高尾地区は圏央道から被害を受けこそすれ利益を受ける家は全くないのである。裏高尾地区に「道路に面する地域」の環境基準を適用するのは不当であり、一般住宅地域の基準(夜間45デシベル以下)を適用すべきなのである。 さらに、大気汚染については、巨大なループ状のジャンクションをのぼりおりしていく車と町をまたぐ橋梁を通過する車の排気ガスにくわえて、トンネルの換気塔からも排気ガスがでてくる。国は拡散モデルと風洞実験の結果から、圏央道完成後の裏高尾地区の大気汚染は環境基準内であると主張しているが国のモデルや風洞実験は障害物のない平地での拡散モデルであり、裏高尾地区のような谷間の複雑な地形に適用するには無理があることは各種の文献で指摘されている。住民側が自分たちの手で行った煙の拡散実験と第3者機関に依頼した裏高尾地区の地形・気象条件を織り込んだ3次元流体モデルという解析モデルでは、排気ガスが上空に拡散せず谷間に長時間滞留し、裏高尾の広範な地域が環境基準をこえる二酸化窒素に汚染されるという結果が出ている。また、近年健康被害という点から重視されてきているSPM(浮遊粒子状物質)については環境影響評価を行っておらず、その後も国はSPMの影響調査をしていない。
裏高尾町は、高尾山とその南側の八王子城跡から陣馬山に連なる南高尾山稜との山間の緑豊かなまちである。そこは旧甲州街道が町をとおり、古い建物こそないが木々や草花がある家々、点在する田畑、旧街道の脇を流れる小仏川の清流と川岸の雑木林、両側の山並みの四季の移り変わり、それらが一体となった往時の甲州往還を偲ばせるのどかな風景がみられる。この雰囲気がすきで訪れる人も多く、八王子市としても歴史的景観として保全すべきものである思う。圏央道の巨大な橋脚やジャンクションは町の人たちに安らぎを与え、親しんできた高尾の山々の朝夕の眺めをずたずたにして、この町の景観を全く一変させてしまうことになる。
▽「小さな政府」の掛け声の裏で
次にこの工事の建設費についてである。圏央道は現在、関越自動車道鶴ヶ島インターチェンジから東京都のあきる野インターチェンジまで約30kmが完成しており、神奈川県の津久井方面でも工事が進んでいるが、国が最も完成を急いでいるのは八王子城跡トンネルから高尾山トンネル南側出口の南浅川インターチェンジにかけてである。 東京都内の高額の工事は先に述べたようにほぼ全件談合の疑いが濃厚であり、都内の青梅インターチェンジから八王子JCTまでの20kmの総工費は当初予算3500億円に対してすでに5000億円を超えていると見られている。これは1m当たり2500万円という巨額の工事費である。ところが今回の八王子JCTから南浅川インターチェンジまでの工費予算はわずか2.1kmであるにもかかわらず1400億円である。これは1m当たり6500万円という、信じられないような巨額の工事費である。しかも現在の八王子城跡トンネル工事の3年といっていた工事が6年たってもまだ完成していない状況を見ると、もし高尾山にトンネルを掘れば工事費が予算内におさまる保証はない。
工事費のうち6割は国と東京都の負担である。小泉首相の道路公団民営化は、採算のとれない道路は国の直轄工事とすることで計画中の高速道路全線完成にお墨付きを与えたものでまやかしの民営化と批判されているが、こうした陰で、自然や住民の生活環境を破壊する圏央道のような高速道路ではない自動車専用道路はほとんど問題にされることなく、採算を度外視した巨額の税金がここに投入されつづけている。しかも国と都の負担が6割といったが、残りの4割も現在の圏央道の収支状況(平成15年度で旧道路公団の圏央道完成区間の工事費は約3600億円、この工事費の累積赤字を含めた要返済額は約3800億円)からみて回収は絶望的であるから何十年か先には税金で穴埋めすることになる可能性がおおきい。 小泉首相は口では「小さな政府」と言って、税金が投入されてもいない郵政事業を既得権益にしがみつく抵抗勢力に仕立て上げて民営化により「小さな政府」実現の最大の難関を突破したと誇っているが、影ではこのようなことが行われているのである。
▽高齢化社会にふさわしい交通政策を
最後に、国があげている圏央道建設のいくつかの根拠について述べたい。ひとつは、沿線の道路混雑と首都圏の中核都市の活性化を実現するものとして沿線の自治体と住民から早期完成の強い要望があるということである。まず指摘したいのは、中核都市の活性化として圏央道にからんで自治体が計画していた事業の多くがバブル期以前のものであり、現在は実現の見込みはないものである。また現在計画されているものの多くは物流センターであるとか郊外型巨大ショッピングセンター、又は宅地開発であるがもしこれらが計画どおり完成すれば、車が空から圏央道に降りてでもこない限り既存のアクセス道路は著しく混雑がまし大気汚染はひどくなり圏央道建設によせる住民の希望とは逆の事態が出現する。 次に、これらの建設促進を希望する人々は、圏央道工事が一部の人々の生活と高尾山の自然を破壊し、財政破綻といわれるなかで信じられないような巨額の費用が投じられることを知ってもなお建設促進を望むのだろうか、恐らくそうではないと思う。社会的選択の問題では選択を決めるに際しての質問の順序、与えられた情報の内容によって結論が大きくかわることは常識であり、建設促進を希望する住民にも現段階であらためて充分な情報を知らせた上でそれでもなお建設促進を望むのか問うてみるべきである。
国は、2007年から総人口は減少していく予想にもかかわらず高齢者と女性の免許人口が増えつづけるので、自動車保有台数はまだ増えつづけるとして自動車専用道路の必要性を正当化している。しかし、国の予想でも西暦2030年には総人口は2005年の127百万人にたいして1千人減少し、人口の3割は65歳以上の高齢者となり、75歳以上人口だけでも2割である。これらの高齢者が免許をもっていても車の保有に結びつく割合は現役世代よりもはるかに少なく、さらに保有する車の稼働率は現役時代の半分程度であるから国がいうほどの交通量の大きな増加にはならない。そして高齢化と総人口の減少により交通量はやがて頭打ちから減少に転じていくのである。 高齢者がみんな車を持って乗り回すような社会を前提にして貴重な財源を道路建設に投じるよりは高齢者が暮らしやすい、公共交通機関の役割の見直しを含めた総合的な交通政策を考えるべきではないだろうか。また、交通渋滞緩和についていえば圏央道にかける巨額の費用の数分の1という費用で現在でも国道16号線の拡幅工事や交差点の立体化により大幅に渋滞が緩和できるのである。 (おわり)
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