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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2006年03月31日15時43分掲載
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中東
荒れ狂う軍と警察、そして遺体置き場 リバーベンド・ブログから
戦火の中のバグダード、停電の合間をぬって書きつがれる若い女性の日記「リバーベンド・ブログ」は3月28日付で、民兵組織が割拠、治安が悪化する一方のバグダッドで、処刑遺体などが集められる遺体置き場を訪れた日のことを綴っている。その現場で唇をかみしめた彼女は「深い悲しみ、激しい憎しみ、あきらめ、様々な表情があった」と書いている。(TUP速報)
■確認できないこと…
昨日の夜遅く、私は座り込んでイラクのチャンネルを切り替えてみていた(私は時々6チャンネルくらいも観ようとする)。電気が来ている時、イラクのチャンネルで何をやっているか見るのは、私にとって深夜の習慣になっている。一般的に言って、本当に「中立な」イラクの番組は見当たらない。
最もよく観られているものは、目下政権をめざして競い合っている、異なる政党の出資によって支えられている。このことは、選挙の直前の期間にとりわけ明白になってきた。私は、鳥インフルエンザのレポート番組、別のチャンネルの様々なラトミヤの映像、3つ目は、エジプトの連続ドラマの中から選ぼうとしていた。イラク人の多くが、あまり極端でない主張であると(選挙の間は特にアラウィー支持を打ち出していた)考えているシャルキーヤのチャンネルで私は止まった。
私は画面の下部に流れるニュースの小さな見出しを読んでいた。お決まりのバグダードの地域での迫撃砲の発砲によって、ここでアメリカ兵が死亡したとか、もうひとりあちらで怪我をした…イラク人12人の死体がバグダードで発見されたなど。突然、そのひとつが私の注意を引き、読んだことが正しいか確かめるためソファにまっすぐ座り直した。
E(弟)は居間の向こうの端に座って、後で組み立て直そうにもできないだろうに、ラジオを分解していた。「ここに来てこれ読んで。私の誤解よね…」。私は彼をこういって呼んだ。
彼はテレビの前に立って死体やアメリカ人や傀儡たちの文字が流れるのを見ていたが、待ち構えていた記事が出たとき、私は飛び上 がってそれを指差した。Eと私は黙ってそれを読んだが、Eは私が感じたのと同じくらい困惑しているようだった。
その記事はこうだ。 「夜のパトロールにおける軍隊または警察の命令には、彼らがそのエリアを管轄している連合軍と一緒に行動していないかぎり、民間人はこれに従わないようにと国防省は要請する」
これはいかにこの国が現時点で乱れているかをよく表している。
■「それってどういう意味?」
ムフサン・アブドゥル・ハミードと彼のグループと連携している「バグダード」という他のチャンネルに変えてみた。彼らは同じ記事を扱っていたが、一般的な「連合軍」という代わりに「アメリカ連合軍」と言っていた。私たちは他のふたつのチャンネルをチェックしてみた。イラキーヤ(ダーワ党寄り)はそれを報道していず、フォラート(SCIRI寄り)も彼らの記事では扱っていなかった。
それが他のチャンネルで繰り返された今日、私たちは議論した。 「それってどういう意味?」 いとこの妻が昼食に集まったとき聞いた。 「やつらが夜やってきて家を襲撃したくても、家に入れないってことよ」と私は答えた。
「やつらは許可なんて要求していないよ」とEが指摘した。「あいつらはドアをぶち壊して人々を連れて行くだけさ。忘れたの?」
「国防省の言うことにきっちり従うならば、私たちはやつらを撃っていいわけよね、ちがう? それは不法侵入で、やつらは強盗か誘拐者ってことになるわけでしょ…」。私は答えた。
いとこは頭を振って「もし家族が家の中にいるならば、やつらを撃つなんてことしないよ。やつらはグループでくるんだ、覚えてるだろ? やつらは武装して大人数のグループで来るんだ。だからやつらを撃ったり抵抗したりすれば、家の中にいる人間が危険だ」
「それに、やつらが最初に攻撃してくる時に、アメリカ人と一緒じゃないってどうやってわかるんだ?」。Eが聞いた。
私たちは可能性をあれこれ考えながら、座ってお茶を飲んでいた。結局初めっからイラク治安部隊は宗教的で政治的な党派と連合した私兵集団だという、イラク人にとって自明だったことを確認しただけだった。
しかし、それはさらに懸念されることに火をつけた。治安状況がひどく悪いので、イラクで治安に関して最高権限と責任を持っているふたつの省は、お互いを信用することができないでいる。国防省は「アメリカ連合軍」を連れていない限り、彼ら自身の要員すら信用することができないでいるのだ。
■私兵集団の処刑遺体
最近では何が起こっているのか理解することは、本当にむずかしい。 私たちは、アメリカとイランの間でイラクの治安について話されていることを聞いている。イラク駐在アメリカ大使は、国内の私兵組織に出資したことでイランを非難している。昨日のフセイニヤ(注:イマームフセインの子孫を悼むシーア派のモスクの一種)への攻撃で、20人から30人のサドルの私兵を殺したのはアメリカ軍だとの主張が今日でている。アメリカ軍は、イラク治安部隊(彼らが常に賞賛している)がやったのだと主張している。
これらの全ては、イラク軍と治安部隊は状況をうまくコントロールしているというブッシュや他のアメリカ人政治家の主張とまったく矛盾している。いや、多分コントロールしているのだろう、ただうまくいっていないだけ。
この数週間バグダード中で死体が発見されている―いつも同じだ。頭部にドリルで開けられた穴、何発もの銃弾、絞殺の痕――犠牲者たちは吊るされたように見受けられる。私兵集団の処刑様式だ。犠牲者の多くは治安部隊か警察あるいは特別な軍団によって家から連れ去られた…。彼らのうちの何人かは、モスクから一斉に連行された人たちだ。
数日前、私たちは大学に女性のいとこを迎えに行った。彼女の大学は偶然その地域の遺体置き場に近い。Eと私たちのいとこのLと私は、交通状況を考えて大学から少しばかり離れたところに駐車し、中でいとこを待っていた。私は遺体置き場の近くの混乱を見ていた。
数十人の人々が(ほとんどは男性だが)集団で暗く立っていた。何人かは煙草を吸い、他は車や小型トラックに寄りかかっていた…。深い悲しみ、激しい憎しみ、あきらめ、様々な表情があった。何人かの顔には怖れと期待の入り混じった心配の表情があった。それは、バグダードの遺体置き場の外で見かける特有の表情だ。何かを探しているように、目は大きく開かれ血走っていて、眉根を寄せ、顎は堅く、口は厳しく噛みしめられている。その表情は、彼らが死体の横たえられている場所に入って行くときに、彼らの捜しているものが見つからないようにと祈っている。
いとこは重いため息をつき、私たちに少し窓を開けてドアをロックするように言い、遺体置き場を確認しに行った。一ヶ月前、彼の妻のおじがお祈りの最中にモスクから連れ去られ、まだ見つからないでいる。二日ごとに家族の誰かが彼の身体が運び込まれていないか、遺体置き場に見に行っている。「彼が見つからないように祈ってくれ…、いや、むしろ…私はただ、確認できないことがひどくいやなんだ」 いとこは、重くため息をついて車を降りた。彼が通りを横切り群集の中に消える時、私は無言で祈りの言葉を唱えた。
■暖かい日の慟哭
Eと私はまだ大学の中にいるHと遺体置き場にいるLを辛抱強く待った。何分間もEと私は黙って座っていた。この状況では少ししゃべることも不謹慎な気がしたのだ。Lがさきに帰ってきた。私は不安な気持ちで彼を見つめ下唇を噛みしめている自分に気付いた。「彼を見つけただろうか?インシャアッラー(神のおぼしめしあれば)彼を見つけてはいない…」。私は誰に言うともなくつぶやい た。彼は車に近づき頭をふった。彼の顔はこわばり険しかったが、その険しい表情の後ろではほっとしいるのが見て取れた「彼はいなかった、ハムドリッラー(神に感謝します)」
「ハムドリッラー」Eと私は一緒に繰り返した。
私たちは遺体置き場を振り返った。ほとんどの車が息子や娘や兄弟を予想して、簡素な細い木製の棺を積んでいた。黒いアバヤ(長衣)を着た、取り乱したひとりの女性が、中にはいろうともがいており、ふたりの親族が彼女を後ろから引き戻そうとしていた。3人目の男が車の上に伸び上がって縛り付けてある棺を解こうとしていた。
「あの女性を見てごらん。息子さんを見つけたんだ。彼らが息子さんを確認しているのを見たよ。頭に銃弾を受けていた。」その女性はもがき続けていたが、突然彼女は足もとに崩れ落ち、彼女の慟哭は午後を満たした。驚くほど暖かい日だったのにもかかわらず、私は急に冷えてしまった指を覆おうと袖をひっぱった。
私たちはずっと様々な場面を見ていた。深い悲しみ、怒り、失意など、そして時々、彼らが最も怖れたものを見つけなかった時に見せる一種それとわかる安堵。悪臭に涙しながらも、彼らが入って行った時より少し足どりが軽くなって遺体置き場から去っていく時、愛する者を引き取るという心配から一時的な猶予を与えられて… 。
午後9時51分 リバー
(翻訳:リバーベンド・プロジェクト:ヤスミン植月千春)
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