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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2006年05月06日02時39分掲載
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リバーベンド日記
アメリカはイランをどうするつもりなのか 3年前の記憶と今
2003年4月の10日か11日頃のこと。私たちの地域には、3月末から電気がきていなかった。水も止まっていたし、ほとんどのイラク人はまだ発電機を持っていなかった。私たちは昼も夜もアメリカやイギリスの戦闘機の音を聞き、街に侵攻する戦車の音に聞き耳を立て、そして祈っていた。私たちはまた、必死になってニュースを追おうとしていた。
イラク国営テレビ放送は存在を止めてしまったようだった。放映の状態は戦争が始まって以来ずっと悪かった―うまくアクセスできて、はっきりと見える時もあるが、なにかを引っ掻くように国歌が聞こえる中に顔がいくつか、ぼやけて不鮮明に映るだけという時もあった。
イラク公営ラジオ放送も同じようなものだった―火星から放送しているかと思える時もあった―それくらい音が遠かった。たまにはっきり聞こえても、その内容はまったく意味をなさないものだった。サッハフ情報相は「バグダードに戦車はいません!」と言ったものだ。それなのに、その他に言うことといえば、爆発や、家族が中にいるままで焼かれてしまった車の残骸の山のことなのだ。
▼大嫌いになった曲
4月初め頃には、私たちはテレビから情報を得ることをあきらめ、モンテカルロ、BBC、ヴォイスオブアメリカ(VOA)などのラジオ局が流すニュースに完全に頼らざるを得なくなってしまった。VOAはサッハフと同じくらい役に立たなかった―放送されるニュースが事実なのか、たんなるプロパガンダなのか、まったく判断がつかなかった。VOAはニュースの合間に同じ曲をなんどもなんどもなんども流していた。私は今でもセリーヌ・ディオンの「ア・ニュー・デイ・ハズ・カム」を聞くと、身が震えてしまう。頭の中に戦争の音が響くのだ。「私は待っていた…」頭上で戦闘機があげるうなり声…「奇跡が訪れるのを…」ミサイルのブーンという音…「私の心が告げるのよ。強くなれって…」カラシニコフ47のダダダダッという発射音…。いまでは私、この歌が大っ嫌い。
戦争が始まってからずっと放送を続けていたテレビ局に、「アル=アラム」というイランのテレビ局があった。彼らは、前の政府の許可を得て、イラクの一般市民のためにアラビア語で放送をしていた。そして、イラクのテレビ局が止められた後も放送を続けていた。彼らの戦争報道はまあまあ中立的だった。事実を伝え、不要なコメントや意見は避けていた。そのため、一定の範囲までではあるけれど、信頼することができた―ことに、私たちには他の選択肢がまったくなかったので。
一、二のラジオニュースではサッダームの像が引き倒されたといっていたが、その映像を観た人はまわりにいなかった。電力不足で誰もテレビを観られなかったからだ。イラク人の中には、古いテレビを引っ張り出して車のバッテリーにつないだ人もいた。1991年のときにやったのと同じだ。Eといとこは、去年の春の大掃除のときにおばが捨てるのをぎりぎりで踏みとどまった古い小さな白黒テレビをやっとのことで発掘した。
ふたりはそのテレビを接続し、20分ほどかけて、映るようにした(徹底的にほこりをとったあとで、ね)。イラクのテレビ局はもはや存在していなかった。やっていたのはイランのテレビ局だけだったが、鮮明な映像を放映していた。戦車がバグダード中を走り、路上のあらゆるものを砲撃する。アパッチ[米軍攻撃用ヘリコプター]が低く飛ぶ。銃撃と爆発は一時間ごとに激しくなっていっているようだった。
私たちがついに、サッダームの像が米軍によって引き倒される映像を観たのは、4月11日夜9時ごろだった―サッダームの顔にはアメリカの国旗が貼られた。戦車に乗ったアメリカ兵が見守り歓迎するなかで、男たちの大群がバグダードを略奪し焼き払っているのを観て、私たちは衝撃を受けた。今にして思うと、私たちが初めて「バグダード陥落」とイラクの占領を見たのが、イランを介して、つまりイランのテレビ局を通してだったのは、なんとも皮肉なことだった。
すぐにイラン革命防衛隊のうわさを聞くようになった。それから、イラン革命防衛隊が、イラン−イラク戦争のときにイランに亡命したイラク人たちをいかにして私兵集団に組織したか、ということを聞いた。彼らはすでにイラクの国内にいて、政府の機関から博物館まで、あらゆるものを略奪し、焼き払うのを手伝っていた。ハキームとバドルがお目見えを果たし、それに続いて私的な護衛と私兵集団を連れた法学者たちがやってきた。みんなイランから入り込んできたのだ。
▼イラン革命防衛隊の支配
今では彼らがイラクを支配している。3年という期間を費やし、狂暴な私兵集団、暗殺、誘拐を用いることによって、彼らはしっかりとグリーンゾーンに根を下ろすのに成功した。新しい操り人形たちが、シリアやサウディ・アラビアやトルコに対して文句を怒鳴り散らすのを、私たちはしょっちゅう聞く。自分たちが権力の座につかせてもらったことを感謝しなくてはならない国、アメリカに対してさえも…けれども、誰一人として、イランがこの国でやろうとしている役割については触れようとしない。
ここ数週間、イランがイラク北部―イランとの国境地帯にあるクルディスタンの一部を攻撃しているということだ。数箇所が爆撃を受けたが、さまざまな情報源によれば、千をもって数える規模のイランの軍隊がイラクとの国境地帯で待機しているという。これに先立って、イラン革命防衛隊がディヤラなどの地域やバグダードの一部にさえも潜入しているといわれている。
一方で、新しい操り人形たち(変わりばえのしない古い操り人形を使いまわしているにすぎないけど)は、数ヶ月かけてようやくだれが首相の役を演じるかを決めたら、こんどは「主たる」省庁をめぐり、どの政党がどの省庁を手に入れるかで激論を繰り返している。その背景には、たとえばイスラム革命最高評議会(SCIRI)から大臣に任命されるや否や、その大臣が「身内の人々」を重要なポジションにつけてしまうということがある―親戚、友達や取り巻き、そして、もっとも重要なのは、自分の私兵集団。アル=マリキが首相になったとたん、彼は自分の武装集団がイラク軍の一部となると宣言した(イラク軍というのは、バドル旅団とサドル派のならずもの集団のことだけを指す)。
▼操り人形たちの儀式
数日前、私たちは、新首相任命後に行われた儀式のひとつを観た。グリーンゾーンにある広い部屋で、タラバーニーが数々の政治家たちの前に立ち、少々あつかましくもこう言ったのだ。イラクはいかなる「タダハル」、つまり周辺諸国によるいかなる干渉も容認しない、なぜならイラクは「外国の影響を受けない主権国家」だから、と。いとこは笑いすぎて失神しそうになったし、Eはというと、涙をふきふき苦しげにあえいでいた…タラバーニーがでっぷりとしたお腹を揺らし、にやにや笑いを浮かべながら、もったいぶって声明を読み上げていたとき、彼に微笑み返していたのは、米軍の司令官たちの一団だったし、彼の左にはハリルザード[駐イラク米国大使]がいて、愛情をこめて彼の腕を軽くたたき、父親が長男を見るようなまなざしで彼を見つめていた!
というわけで、イラク人が数百人単位で亡くなっていて、至る所で死体が見つかっているときに(先週は、いとこの娘が通う学校の前の広場で男の死体が発見された)、イラクの操り人形たちは、だれが、どの省庁で、窃盗行為をしていいのか決めることに時を費やしている。とにかく、公金横領は軽々しく取り扱われるべきではない―十分に考え、議論されるべき事項だ―たとえ国ががたがたになっているとしても。
新生イラク軍に関するニュースについていうと、ブッシュやその仲間たちが描くように順調には進んでいない。きょう、私たちはアンバル州で行われたイラク兵の卒業式の映像を観た。儀式はつつがなく行われていた。終了の直前までは―司令官が、兵士たちはさまざまな地域に配備されると告げたとたん、大混乱になった。 兵士たちは作業服を脱ぎ捨てて振り回し、上官に毒づき、怒鳴り声をあげ、もみ合った。彼らは、それぞれの地域で軍に登録した際に、自分の出身地域内に配備されるという約束を得ていたのだ―それは筋の通った話だ。ニュースでは、目下のところ彼らはストライキに入っているということだ―自分の出身州以外の地に配備されることを拒絶して。
彼らが配備されることになっていた「地域」って、イラク北部のことじゃないかと疑わずにいられない。ことに、イラン軍が国境に待機している地域…数日前、タラバーニーはクルディスタンを守るのはイラクの責務であると宣言した。私はこの変化に全面的に賛成する―なぜなら、クルディスタンは、まぎれもなくイラクの一部だからだ。タラバーニーがこの宣言をするまでは、クルディスタンを守るのはペシュメルガ[クルド人民兵。クルド語で「死に直面する者」の意]だけだろうとずっと思われていた―それでは、イランを相手にして、十分とはとてもいえない。
大きな問題がある―アメリカはイランをどうするつもりなのか?爆撃などの可能性が示唆されている。私はイラン政府を憎んでいるけれども、イランの人々が、空爆と戦争がひきおこす混乱や痛みを受けるいわれはない。でも、私はこのことをそれほど心配していない。なぜなら、もし、あなたがイラクで生活していたら―アメリカが両手を縛られているとわかる。ワシントンがテヘランに対して行動を起こすや否や、イラク国内の米軍は襲撃されるだろう。とても単純な話よ―ワシントンは立派な武器や戦闘機を持っている…けれども、イランは15万人のアメリカ人人質を手中にしているのだ。
5月2日午前0時59分
(翻訳:いとうみよし)
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