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2006年06月10日11時51分掲載
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ウソと無責任で破壊される高尾山 トンネル工事停止は今からでも遅くない 和泉 明
私たちが反対してきた圏央道高尾山トンネル工事の事業認定がさる4月21日に国土交通大臣によって告示された。工事に反対する人々は直ちに事業認定取消しの訴えを東京地裁に提訴した。昨年7月の事業説明会から今回事業認定告示までの過程は、国側の民主主義を無視した強引なやり方によって進められてきた。そして、いまトンネル工事によって高尾山の自然が破壊される恐れがいよいよ大きくなってきているにも関わらず、国側は事実を無視して土地を収用し、工事を強行しようとしている。わたくしはこのような事実を少しでも多くの人たちに知っていただきたいと考えて事業認定にかかわる問題をまとめてみた。
▽住民側の意見は無視した事業認定審議
高尾山トンネル工事の事業認定は起業者である国土交通省が国土交通大臣に認定申請をして国土交通大臣が許可するという「自作自演」「お手盛り」行政なのであるが、そうならないために土地収用法は民主主義にもとづいた手続きの過程を保証するように起業者が事前に説明会、公聴会を開催し住民側との十分な意見交換が行われ、さらに公聴会で出された意見が公正な第三者によって構成される社会資本整備審議会で十分に審議されるという過程を経たうえで事業認定の可否がおこなわれることを求めている。 ところが昨年7月の説明会では10名以上の質問者が残っていたにも関わらず主催者である国土交通省は会を一方的に閉会し、11月の公聴会も予め提出された質問を受け付けたものの、十分に質疑応答がつくされないまま質疑打ち切りがおこなわれ、いずれの会も住民との十分な合意形成をめざす努力をするというには程遠い状況であった。
本件に関わる社会資本整備審議会公共用地部会(委員7名)は2月28日と3月17日の2日間開催され「事業認定すべきであるという国土交通大臣の判断を相当と認め」、これにもとづき4月21日に国土交通大臣は事業認定を告示した。
公聴会で出された私たちの多数の意見が社会資本整備審議会でどのように扱われたのか私たちには分からない。国土交通省のホームページには審議会のために国土交通省がまとめた「公聴会での反対意見と国土交通省の意見」という対比表があり、審議会ではこれが審議の参考につかわれたと思われるが、国土交通省の意見は、トンネル工事は高尾山の水環境に十分配慮した工法で実施するので問題ない、トンネルができても高尾山の自然環境に与える影響は軽微である、住民の生活環境に与える影響は環境基準内である、として住民及び反対団体からの意見、疑問を切り捨てている。この反論を読むと要するに「影響はないことになっているのだから大丈夫なのだ」というに尽きる。 工事に反対する人々が指摘した裏高尾町で圏央道八王子ジャンク工事によりすでに環境基準を超える騒音が発生している現実や住民達が騒音・大気汚染について時間をかけて行った貴重な調査結果はほとんど無視されている。このような国側の一方的な反論に対して住民側の意見を表明する機会が全く与えられないまま、2日間の審議で事業認定が妥当という結論がだされている。
▽審議会委員は現地調査を行なったのか?
同じホームページに審議会の主な意見というものが載っているがA4、1ページにわずか10項目にすぎない。そしてその内容を見ると「高尾山トンネル工事では止水対策が講じられるというのだから問題ないだろう」、「住民の生活環境の悪化は受忍限度内と判断できるから圏央道事業に賛成」、「圏央道はCO2削減効果が大きいから環境面で非常にプラスであるから賛成」といった意見がのっている。
そもそも、今回のような自然環境、住民の生活環境が深刻な争点となっているケースでは、審議する人たちは、一度は現地を見なければ公正な審議が可能とは思えないのであるが審議会の人たちが現地を訪れた形跡はない。審議会のおもな意見を見るかぎり、高尾山をおとずれる年間250万の人たちが山によって心身を癒されることの価値や都市近郊にあってこれだけ多様な生物種が存在しているという世界的にみても貴重な高尾山の自然的価値については何ら言及されていない。昨年8月に東京都が行った世論調査では「あなたが、東京都を代表する景観として保全し、後世に伝えていきたいと思うものは何ですか。この中から特に伝えていきたいものを5つまでお答えください」という質問の上から3番目は「奥多摩や高尾山など山岳と渓谷の自然美が融合した地域」(55.0%)である。(東京都生活文化局「都民生活に関する世論調査」平成17年11月)。
私たちが現在最も問題にしているのは、高尾山の手前、国史跡八王子城跡に建設中の圏央道八王子城跡トンネルの工事で山の水位が大幅に低下し、御主殿の滝と呼ばれる史跡内の滝が涸れてきていることである。昨年の5月にトンネル工事が滝の近くになった頃から、すくなくとも人々の記憶では起きたことがない、滝が涸れるということが起きた。その後12月頃からは雨が降るとしばらく水は流れるがまた涸れるということを繰り返していたが、現在では涸れた状態の方が多くなってきている。滝涸れの起きた時期がトンネル工事と重なっていること、滝の上流にあたる山の上には水があるのに下流の滝までの間で水がなくなってしまうこと、これに国の公表している水位データを突き合わせれば滝涸れの原因がトンネル工事以外には考えられない。にもかかわらず、国は原因究明のための対策委員会なるものをつくり原因究明中と称してトンネル工事を続けている。 八王子城跡トンネルで滝涸れが発生していて原因がわからないというのであれば、ほぼ同じような地質である高尾山に「トンネルを掘っても滝涸れなど地下水脈に影響を与えることはない」とどうしていえるのだろうか。原因がわからないのに止水対策をとるから高尾山の自然環境に影響はないとどうして社会資本整備審議会は判断できたのだろうか。
▽責任のたらい回しに明け暮れる行政機関
圏央道八王子ジャンクションの建設が進むにつれて現実に起きている裏高尾町の騒音についても、国は中央自動車道に遮音壁をもうけるから問題ないといっている。私たちが問題にしている付近の中央自動車道に最近、遮音壁が設けられたがほとんど効果がないことは現地に行けばすぐわかることである。また国は圏央道ができれば在来道路の交通渋滞が解消されることにより明治神宮の森の何倍かのCO2削減効果があるといっている。しかし、もしこの効果をいうのであれば圏央道建設によらない在来道路の拡幅、交差点の改修、立体交差化等で解消できる渋滞と圏央道建設による渋滞解消の差だけが圏央道建設による効果であるであって、まやかしの比較である。さらに問題なのは圏央道工事により破壊された緑により失われるCO2削減効果(マイナスの影響)は無視されていることである。
審議会の委員は「受忍限度」という言葉をつかうが、これもあいまいだ。たとえば3月から4月にかけての裏高尾町は周囲の山々と雑木林が日々装いを新たにしていくような新緑と旧甲州街道に沿った家々の庭の木々や庭草の色とりどりの花々は、空も風も人も早春の空気の中で一つになったような、訪れるひとびとを何か幸せな気分にしてくれる空間である。そのような風景が、高さ数十メートルの鋼鉄製橋梁により分断され、騒音と大気汚染にさらされることが受忍限度と簡単にいえるのだろうか。政府は教育基本法改正案で「国と郷土を愛する態度」を目玉にしようとしているが現実に政府が行っていることは正反対の行為である。
私たちは国史跡八王子城跡のトンネル工事を許可した文化庁に国史跡が破壊されているので工事中止を国交省に申し入れてほしいと要請したが、文化庁は八王子城跡の管理責任は八王子市教育委員会にあるからそちらに話してくれという。八王子市教育委員会に行くと教育委員会は「われわれは文化庁と都庁の指示に従って仕事をしている」という。高尾山トンネル工事に関して東京都の申し出を承認した環境庁に八王子城跡の現状を説明し東京都に対して工事を許可したことを見直してほしいと要請すると、「我々は承認を取り消せる立場にはない。都に話してくれ」という。都庁に行けば環境庁から許可をうけているのだから環境庁へ行ってくれといわれる。 私たちはディケンズや19世紀のロシア文学の世界にでもいるような気分になるが、これらの人たちの言葉からは貴重な文化財や自然を守ろうという熱意は感じられない。こうして責任逃れをしあっているうちに史跡や自然は破壊されてしまうことになる。目の前に血を流している人が倒れていて、誰の目にも見えるのに自分達だけは「見えない」と言い張るような行政の態度は、あとを絶たない悲惨な薬害やアスベスト被害の根っこにあるものと同じではないのだろうか。
高尾山のトンネル工事は目前にまで近づいてきているかもしれないが高尾山本体にはまだ手がついているわけではない。残された時間は多くないが、世論の盛り上がりがこの無謀な工事を止めさせることができるのである。
▽読者コメントへの反論
最後に、前回わたくしの記事に対して読者コメントをいただいたのでこれに関連して、わたくしの考えを述べさせていただきたい。コメントは「トンネル工事で水が涸れるというが本当か」「自動車を敵視している」「八王子在住者は圏央道を使わず在来道路を延々と時間をかけて関越方面へ行けということか」「圏央道を建設しなくとも現行道路の改修で大幅な交通渋滞解消ができるといえるのか」「圏央道建設でなく公共交通機関も含めた総合的交通政策というが具体案はあるのか」といったことであった。
最初の項目は今回文章で述べたとおりである。2番目についてはわたくしの文章のどこから「自動車を敵視している」と読みとられたのかわからないが、わたくしの基本的考えはバブル期以前の1970年代に具体化された圏央道計画は背景となる社会情勢が大きく変わってしまった――低成長経済への移行、少子高齢化の急激な進行、国・地方財政の危機的悪化、自然環境保護意識の大きな高まり等々――現在、いったん白紙に戻して時間をかけて必要性を検討しなおすべきだということである。
「在来道路を時間をかけて関越方面へ行けということか」については、現在、八王子より南方面の人が利用している「あきる野インターチェンジ」の交通量は上下車線合わせて1日せいぜい9千台程度しかないのであり、高尾山トンネルに変わる代替ルートの検討をすることは理にかなっていると思う。ついでにいえば、「あきる野インターチェンジ」のひとつ先の「日の出インターチェンジ」の1日の交通量は4千台程度とがらがらの状況である。平成15年に東京都が行った世論調査を見ると「この10年間で交通渋滞がひどくなっている」と感じるひとの割合が一番大きいのはたしかに多摩中央部(八王子周辺)である(約35%)が、それでもこの地区の人たちのうち「費用と時間がかかっても新設の道路をつくり、交通量の分散を進めるべきである」という項目に賛成している割合は12%とあまり多くない。一番賛成が多い項目は「交差点改修プラン」(54%)であり、残りは「車線の増設、立体交差化」(21%)である。(東京都生活文化局「道路に関する世論調査」平成15年12月)。 現行道路の改修は現在のボトルネックの改修計画をまず実施すべきである。このような工事による効果の一例を挙げれば、国道16号線の相模原駅と橋本駅間の渋滞個所は橋本5差路の立体交差化と16号の拡幅工事によりほとんど解消した。
「公共交通機関も含めた総合的交通政策の具体案」については衆智を集めて検討すればよい。ヨーロッパの地方都市で進められている公共交通機関へのシフトや自転車利用、韓国ソウル市の高速道を撤去して川を再生した例等も参考にしながら検討すればよいと思う。 最後につけ加えると、わが国は国土面積あたりの自動車保有台数は世界最高であり、「だからさらに道路をつくろう」ではなく、自動車が社会にもたらすさまざまな負荷について真剣に考えるべき時期に来ているのではないだろうか。
*和泉明氏は高尾山の自然を守る運動に参加する一市民
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御主殿の滝。水が流れているのは今年4月12日、雨が降った直後。
御主殿の滝。わずか1週間後の4月19日には涸れている。





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