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2006年06月16日14時00分掲載
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世界社会フォーラム
【IPSコラム】ダボスからは新しい思想は生まれない WSFはアイデンティティの危機 (下) ロベルト・サビオ
【IPSコラムニスト・サービス=ベリタ通信】世界経済フォーラム(WEF)の年次会議には、世界で最も金持ちの会社の重役、政治指導者、知識人、ジャーナリストが毎年、スイスのダボスに集う。その数は約2000人。1971年にスイスの経営政策教授であるクラウス・シュワブによって創設されたWEFは、その支持者によれば、世界の主要な政治・経済組織の代表が、その時の重要な問題を議論するためには理想的な機会である。
約600人のジャーナリストが参加し、会議の大多数を取材できる。参加者のほとんどは政治世界と多国籍企業の人間であるが、労働組合と宗教指導者、さらにアムネスティー・インターナショナルやトランスペアレンシー・インターナショナル、オックスファムなどの一部の主要なNGOも参加する。
WEFに反対する人たちによれば、会議は実際には、ビジネスフォーラムにすぎない。そこは、企業が人脈を作り、ロビー活動をし、真の目的は利益を増すためのもので、貧困を減らすためのものでは決してないという。
その名前にかかわらず、WEFは欧州人と米国人、日本人が圧倒している。欧州と米国の人口は合わせても世界の人口のわずか17%を占めるに過ぎないのに、2002年の出席者の75%が欧州(39%)と米国(36%)からであった。対照的に、フォーラムのわずか7.7%が世界の人口の60%を占めるアジアからであった。10億ドル以上の収入がある企業だけが招待され、途上国世界の企業は極めて少ない。
WEFが反対者との対話を広げようとしたため、NGOは出席している。しかし、ふたつのNGO、地球の友とフォーカス・オン・ザ・グローバルサウスは招待されていない。なぜなら、批判的に過ぎ、手厳しすぎると見なされたからだ。一方、地球温暖化で対話を活発化しようとしたグリーンピースは、フォーラムが協力的でないことが分かり、辞退した。
しかしながら、WEFは平和的な批判は受け止めるといつもしてきた。ライバルであるポルトアレグレの世界社会フォーラム(WSF)のグループと一連の対話を重ねてきた。WEFはそのために、2003年にオープン・フォーラムを創設したと主張する。それには300人が無料で出席することが許された。
2001年に始まったWSFは、WEFに新たな問題を投げかけた。なぜなら、それが暴力的な活動家や熟慮することよりも行動に傾きがちな伝統的社会分子で構成されてはいないからである。そうではなく、WSFは「もうひとつの世界は可能だ」という信念でまとまった知識人、歴史家、経済学者からなっている。彼らのWEFに対する批判は、それが自由経済のグローバリゼーションの恩恵を代表し、北の恵まれていない人々と南の大多数の人々を除外しているというものである。シュワッブはそうした批判を考慮に入れた。
実際、1989年のベルリンの壁崩壊以来、WEFはいわゆるワシントン・コンセンサスの共鳴板になっていた。ワシントン・コンセンサスは米政府、国際通貨基金(IMF)、世界銀行の間の合意であり、新自由主義のグローバリゼーションを新しい国際関係の戦略モデルにし、第三世界全体に対して、一律に民営化の計画と、貿易、金融、サービスの一方的な自由化に着手するように推し進めた。
シュワッブは非常にうまいやり方で、WSFの問題をWEFに次第に取り入れていった。貧困、南の主張、農業保護主義の議論、自由市場のゆがみとった問題である。彼は市民社会の問題について語るために、エンターテイメントの世界のスターさえ迎え入れた。
ダボスは統治のために革新的な提案をしたことはなく、金持ちと影響力のある者たちが、彼らの論理の範囲内で複雑な問題を分析し、解決策を探るためのクラブとしての役目を果たしていると言っていい。新しい問題に対する現在の開放性にもかかわらず、今日、WEFが思想や提言を生み出すことを誰も期待していないし、参加者に交際のための絶好の機会としか期待されていない。
WSFを評価するのはもっと複雑である。確かに、フォーラムへの参加者は10万人を超し、空前の水準に達した。が、成長とアイデンティティの危機に入り、新しい様式への過渡期に入った。
ダボスとポルトアレグレはともに別の役割を演じる者であり、同時にそれぞれの世界を症状を示している。WEFはパワーがあるが、正当性の危機に面している。WEFが新しい思想を生み出したとはいえないが、WSFは世界における理想主義と関与の新しい局面の噴出を代表していることは確かである。
*ロベルト・サビオ IPS名誉会長、世界社会フォーラム国際委員会メンバー
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