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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2006年06月25日08時12分掲載
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日中・広報文化交流最前線
中国はアニメ大国を目指す? 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)
中国では「文化産業を育成しよう」というかけ声があちらこちらで聞かれる。特にアニメ産業育成は、重要な政策目標になっている。 中国でアニメ、漫画を語る際には、日本からの影響を意識しない訳にはいかない。「一休さん」「ちびまるこちゃん」「ドラゴンボールZ」「鉄腕アトム」「ドラえもん」「名探偵コナン」、宮崎駿作品などは多くの中国人に強い印象を残している。日本のアニメのDVDも多く売られている(海賊版も含め)。日本からの影響は中国人自らが痛感しているようである。 6月11日、筆者は、北京電影学院動画学院(映画学院アニメ学部)で開催された第5回動漫祭(アニメ漫画祭)を訪れる機会があった。そして学校の幹部らとともに閉会式に参加し、優秀漫画コンテストの最優秀作品に「日本大使賞」を授賞してきた。
●アニメ、漫画の学部で学ぶ学生達
北京電影学院は中国有数の映画関係大学であり、最近高倉健氏も訪問され講演を行っている。この大学の中にある動画学院も中国有数のアニメ関係学部である。 「動漫祭」での漫画、イラストの展示を見ると、改めて日本のアニメ、漫画が中国の若者に強い影響を与えていることが分かる。 今回、数千点の漫画が応募されたがその中の最優秀漫画作品に「日本大使賞」を授与することとなり、第一回「日本大使賞」を筆者より女子学生の羅斯嘉さんに授与した。彼女の漫画は、貧富の差がある中で、貧しい家庭でも想像力を持って楽しんでいる子供の姿を描いたものである。羅さんには、副賞として、日中交流を行っているNGO「日中新世紀会」吉村善和理事長より、今秋1週間訪日招待する旨発表した。
動画学院内に「中日動漫研究中心(日中アニメ漫画研究センター)」というセンターを設置することとなり、その看板の除幕式が行われた。このセンターでは、日中の漫画、アニメ交流を実施していくことになる。 北京電影学院・張会軍院長、同学院・沙占祥書記、同学院動画学院・孫立軍院長らも参加してくれた。 以上は、産経新聞、西日本新聞等でも報道された。 筆者を案内してくれた動画学院の一年生の魏さんが語ったところでは、彼女は小さい時に日本の千葉県に住んでいたことがあり、日本から離れる時に、日本の漫画、アニメから離れると思うと悲しくて泣いたそうである。
このイベントが行われた北京電影学院動画学院は、中国におけるアニメ関係学部(前身は学科)として、50年という最古の歴史を持つ。学生数(大学4年制及び大学院)は総数で約500名。最近は毎年100名程度の学生を採用している由。中国全体では、アニメーターが毎年数千人とも一万人超とも言われる人数が卒業している由である。これらの人材の内、優秀なクリエーターが一人でも二人でも出れば、中国が優秀なアニメを産み出すことも不可能ではないかもしれない。
●中国のアニメ産業の将来:「日本式」か「アメリカ式」か?
このイベントに来ていた中国の有名な漫画家姚非拉氏と話す機会があった。彼の漫画「夢里人」は、テレビ・アニメ化もされている。女子高校生の主人公がいろいろと夢を見て成長するストーリーである。無国籍的な家庭と町並みが舞台であり、美少女戦士やらポケモンに似たキャラクターなども出てくる。 彼の意見は、「日本では多くの漫画作品の中から優秀な作品が選りすぐられ、アニメが作られる」「米国ではアニメのためにストーリーが書き下ろされる」「中国ではどちらかと言えば米国型に近いことになる」というものである。 これは、中国においては、漫画出版市場が成熟する環境にはないことが背景になっている。中国では「アニメ産業を育成しよう」というかけ声はよく聞かれるが、「漫画産業を育成しよう」というかけ声はあまり聞かない。漫画という出版文化が育っていないことは、アニメ産業を育てるにあたり不利な点であろう。
●日本の漫画、アニメからの「悪」影響はあるのか?
漫画、アニメを通じて、日本的な物の考え方が中国の若者に悪い影響を与えるのではないかとの警戒の論調も中国メディアで見受けられる。『環球時報』という新聞は、6月に三回にわたり、シリーズで、この問題を取り上げ、日本の漫画、アニメの影響について、あれこれ論じている。「日本の漫画、アニメの悪影響を心配する必要は無い」という主張の論拠は、「日本のアニメは想像力をかきたてる」「多くの文化に触れることが良いことだ」というものだが、中には、「中国の若者は日本の漫画から大きな影響を受けているが、しかし反日情緒を持つ若者も多い。つまり、日本の漫画が誤った方向に導いたとは言えない」という主張も『環球時報』に掲載された(6月14日付)。 この主張を読んで、筆者は考え込んでしまった。日本の漫画、アニメを通じて培われた親日感と、いわゆる「歴史問題」などについて聞かされて培われた日本に対する一種の警戒感・反日感情が、若者の心の中に共存しているのであろうか。ステレオタイプ化されたある種の否定的な日本観が、日本の漫画、アニメによって修正されることがあるのか無いのかが、筆者の関心事項である。
漫画、アニメなどのポップカルチャーを通じて日本に親しみを持ってもらうことは重要なことである。あらゆる芸術、文化活動は、人間的共感を育む土壌である。この面の交流を強化することの重要性は論をまたない。中国の大学で日本語科で学ぶ多くの学生は、漫画、アニメで日本に親近感を持って日本語を選んだという。 しかし、それだけでは、日本の真の良さや努力を理解することには必ずしも繋がらない面もある。ポップカルチャーを入り口として、日本について関心を持ってもらい、それと同時に、日本が戦後どのような努力をしてきたか、といった真面目な点にも理解を持ってもらう努力を併せて行わないといけない。中国の若者にはそのようなことも是非理解してもらいたい。当たり前のことであるが、改めてこの両方が必要だと痛感する。(つづく)
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。)
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最優秀漫画作品に『日本大使賞』を授与する筆者(左)と受賞者の羅斯嘉さん(2006年6月)
北京電影学院動画学院アニメ漫画祭:学生の作品展示前での学生と筆者(2006年6月)





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