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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2006年08月03日14時17分掲載
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ストレス障害の象を処分せず 米動物園女性飼育係の死は事故
ベテランの象の飼育係が、象の腫れた右目を見ようとしたときだった。突然、体重3500キロの巨大なアジア象が、暴れ出した。頭を大きく振り、この衝撃で飼育係は地面にたたきつけられた。その後、象は飼育係をけり、そして大きな足で踏みつけにした。飼育係は死亡した。即死状態だった。この事件の後、象の処分が検討されたが、処分は見送られた。その理由の一つに、この象の不幸な生い立ちがあった。(ベリタ通信・江口淳)
米メディアによると、7月21日、米テネシー州にある「象保護所」で、事故は起きた。この保護所は、老齢や病気の象を引き受けるために1995年に開設された。暴れた象は、ウィスコンシン州の動物園から2000年9月に、ここに移ってきていた。年齢は40歳という。
この日、飼育担当のジョアンナ・バークさん(36)は、象の「ウィンキー」にホースで水をかけていた。象はいつものように静かで、問題を起こすような気配はなかった。問題があるとすれば、前日に蟻に刺されたのか、右目が腫れているぐらいだった。バークさんは、腫れた目の様子を見ようと、象に右側に近づいた。その瞬間、象が大きくかぶりを振った。
飛ばされ、象にけられ、踏みつけられた。そばにいた仲間の男性が、声を出し、象の気をそらそうとした。しかし、その時はもう手遅れだった。象は今度は、バークさんから、その男性に向かってきた。男性は足首を骨折しながらも、辛くも逃げおおせた。すべてが1分以内の出来事だったという。
「ウィンキー」は、ウィスコンシン州の動物園でも、二人の調教師のほか、獣医を襲い、けがを負わせた過去があった。「象保護所」では、職員を死亡させた「ウィンキー」を安楽死させるかを検討した。しかし、あくまでも「事故」として処分は見送られ、「ウィンキー」は引き続き、保護所で生活することになった。
処分見送りには、犠牲者の両親が、「娘は象たちを愛しており、娘も処分を望んでいないはずだ」と嘆願したことも大きい。しかし、それ以上に、「ウィンキー」の不幸な生い立ちが大きく左右した。
「ウィンキー」は東南アジアのミャンマーから連れたこられたのは生後10カ月の時で、調教師の腰の高さくらいの大きさだった。当時の写真が残っているが、関係者によると、悲しげな表情をしていたという。
ウィスコンシン州の動物園での生活は、惨めだった。コンクリート床の小屋に入れられ、1日の3分の2は、鎖につながれた生活だった。小屋の外も埃にまみれた場所で、日陰もなく、木々も植えられていなかった。
こうした長期間の鎖につながれた生活が、ストレスになり、心的外傷ストレス障害(PTSD)に近い精神状態になっていたという。その後、動物保護家らが、動物園での「ウィンキー」らの置かれた状況を告発し、これが「ウィンキー」が保護所に移る力になった。
ジョアンナさんは、保護所で8年間働いていた。大学院での勉学を中断して、象の保護に情熱を傾けていた。両親は、足首を骨折しながら、娘を助けとうとした男性に感謝の気持ちを述べると共に、保護所に対し、法的責任を追及する考えはないと語った。「娘は保護所で大変幸せだった。娘を誇りに思っている」と両親。ジョアンナさんは、生前の遺言通り、保護所内に埋葬される。
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