2006年8月16日(水)、早稲田にあるフリースペース「あかね」で、特定非営利活動法人・PEACE ONの高瀬香緒里さんをお招きして、「アラブの魅力と壊されゆくイラク」というワークショップを催した。高瀬さんとPEACE ON代表の相澤恭行さんのお話をうかがったが、予想以上にイラクの治安情勢が悪化していることに驚いた。
現在、イラク、特にバグダッドはほぼ内戦に近い状態だという。アメリカの後ろ盾を得て警察などを独占しているシーア派の民兵が、スンニ派の住民を殺戮するケースが多々あると聞いた(勿論スンニ派の武装勢力がシーア派住民を殺害する例もあるという)。生きたまま体を切り開かれたり(違法な臓器売買のためである可能性すらあるという)、電気ドリルで穴を開けられたりした多くの惨たらしい死体の映像を観た。
勿論、フセインは残虐な独裁者だった。フセイン政権時代、フセインを批判する言論は弾圧され、フセインを批判する自由はなかった。しかし、逆に言えば、フセインさえ批判しなければ、言論や表現の自由はあったのだと相澤さんは語る。実際、フセインは原理主義的ではなく世俗主義的であり、例えば女性に対する宗教的抑圧などもほとんどなかったという。今のイラクでは、フセインを批判することはできるようになったが、逆にそれ以外誰の悪口を言っても、どこでそれを盗み聞かれ密告されて殺されるかもしれない、という恐怖が支配しているのだそうだ。諸勢力がイラクに流入し、状況は混迷している。 アメリカの占領政策は──わざと混乱を作り出そうという意図だったのでないのなら──明らかに失敗している。しかし、割を喰うのはイラク国民だ。バグダッドを中心にイラク全土で毎日100人以上が殺されている。バグダッドに帰ったイラク人現地スタッフが「これはゴースト・タウンだ」と語ったという話も聞いた。以前は、シーアとスンニの宗派対立は、マスコミなどに煽られるもので、実態とは違うという意識がイラク国民にもあったというが、大規模な虐殺が続いて、相互不信が募り、共存が困難になってきているという。最早、イラクは「破綻国家」への道を歩みつつあるのかもしれない。国家として一体をなしたイラクというのは、困難になりつつあるようだ。
これは悲劇である。「自由と民主主義」をもたらすと約束したアメリカの侵攻がイラクにもたらしたのは、恐怖と殺し合いと混乱だけだった。アメリカがやった違法で道理を踏み躙る行為を決して忘れてはならない。今のイラクの混迷は、それの結果なのだ。日本でも、イラク戦争開戦時には、3万人以上の市民が反戦を訴えて立ち上がった。その多くの人々に訴えたい。今もイラクの悲劇は続いているのであり、イラクに注目し、その平和を訴えていかねばならない、と。人々はイラクのことを忘れ去りつつあるのかもしれない。しかし、占領は継続中であり、自衛隊派兵というかたちでそれに加担した日本も今なお戦時であることを認識し、戦争反対の声を挙げていかねばならない。アメリカの傲慢な帝国主義的政策に抗議の声を挙げていかねばならない。
特定非営利活動法人 PEACE ON
http://npopeaceon.org
イラク・ホープ・ダイアリー 高遠菜穂子
http://iraqhope.exblog.jp/
PEACE ON DAYS 高瀬香緒里
http://peaceonkao.exblog.jp/
PEACE ON IRAQ 相澤恭行
http://peaceonyatch.way-nifty.com/peace_on_iraq/
イホネット・HP
http://www.iraq-hope.net/
URUK NEWS イラク情勢ニュース (webサイト)
http://www.geocities.jp/uruknewsjapan/
イラク・レジスタンス・レポート
http://www.geocities.jp/uruknewsjapan/Iraqi_resistance.html
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