イラク行きの命令を拒否した米軍の現役将校、エレン・ワタダ中尉にたいする公判前審問が8月17日と18日に開かれました。4時間に及ぶ審問中3時間にわたって、デニス・ハリデイ元国連事務次長、イラク侵略に抗議して2003年3月に辞職したアン・ライト元陸軍大佐、国際法の権威であるフランシス・ボイル‐イリノイ大学教授らがワタダ中尉を弁護する証言を行いました。調査担当将校マーク・キース中佐がワタダ中尉を軍法会議に送るかどうか、容疑をどうするか、勧告を出すようです。ワタダ中尉の母キャロライン・ホーさんがこの審問を前にして、支援を訴える公開の手紙を出されましたので、紹介します。(TUP速報)
ワタダ中尉の母です、皆さんどうかご支援を キャロライン・ホー
2006年8月15日
アメリカの仲間の皆さん、そして世界中の市民の皆さん、私は将校としてフォート・ルイス基地に配属されているエレン・ワタダ中尉の母です。エレンは、6月22日にイラクへ派遣されたストライカー旅団の一員でした。その運命の日、エレンは移動命令を穏やかな態度で拒絶し、部下が搭乗しているイラン行きの飛行機には自分は乗らない、という選択をしました。息子は、除隊要請を提出した日(2006年1月)からイラク派遣のこの日まで、命令に従えと言う圧力をしつこく受けましたけれども、自分の信念に忠実であり続けました。すでに数知れぬイラク人とアメリカ人の命を奪った不法な戦争と占領に部下を引き込まない、ということが、部下を支援することだ、と確信していました。正義にもとる非倫理的な目的のために我が軍を使う政策の加担者であり続けるよりも、戦争に反対する態度をとることによって部下に尽くすことができるのだ、と考えたのです。
軍や政府組織内外からの情報調査や専門家に相談し、こつこつと集めた事実を綿密に吟味して、エレンは、民主主義の名のもとに残虐行為が行われているのにもう沈黙を続けることはできない、との結論を下しました。先制的な戦争を正当化するためにだましとウソばかりを使った政権の手先であることが、息子にはもうできませんでした。何が正しいか決める自由を放棄したのではないし、何が正しいか決める自由は人間と組織に対する忠誠をも超越するものだ、ということに気が付いたのです。
将校としての義務は、米国憲法を支持し、憲法を国内外の敵から守り、合法的な命令にだけ従うことです。イラク行きを拒否することで、ワタダ中尉は自分に課された義務を全うしたのです。それに応えて軍は、移動しなかったこと、大統領に対する侮蔑発言、将校として不穏当な振る舞い、ということで起訴したのです。まとめるとこれらの罪は陸軍刑務所収監7年にもなります。
一人の母として、私は「千里の道」の第一歩を踏み出したばかりです。わが子の決意が、私が息子に教えてきたことと、息子にしてもらいたいと私が本当に思っていることとの間に食い違いがあることを私に気付かせてくれました。わが子の決意によって、私が息子に教えてきたことと、息子にしてもらいたいと私が本当に思っていることが、全く違っていることがわかり、そのときは、事の重大さに押しつぶされんばかりでした。でも、「うちの子だけはやめて・・・ヒーローにするなら他のかたの息子さんを」とささやくあの自分たちだけを守ろうとする身勝手な反応を正当化する言葉を見つけることは、正直言ってできませんでした。いうまでもなく、この経験が人生を変えるような出来事になりました。わが子が選び取った道に、称賛と尊敬の念を抱くばかりです。私は無条件に息子を支持します。
当面8月17日と18日の公判前審問の行われる間、そして将来にわたっても、エレン・ワタダ中尉をどうか引き続きご支援ください。移動命令拒否と米憲法修正第1条で保障された権利(訳者注:表現や宗教の自由)の正当性を明らかにする証拠を提出することをエレンが許されるかどうかはまだわかりません。でも、世界が注目していること、そして正義が貫かれねばならないことを軍に知らせねばなりません。
8月16日は全米運動普及の日とされ、米国のみならず世界の団体が、イラク戦争と占領の不法性と非道徳性、そしてワタダ中尉が発信しているメッセージを知らせるためにティーチ・インを行うよう要請されています。学校、家庭、教会、公民館等々でお話や対話をすることができます。それに、フォート・ルイス基地をはじめアメリカ中で、また国外でも、集会、デモ、ビジルなどが予定されています。意識を高め、パワーアップし、多くの民衆に行動しようという気になってもらう好い機会です。
軍法会議が開かれている間の大衆行動と市民不服従の下準備を、私たちと一緒にやろうではありませんか。
ワタダ中尉についての最新ニュースと行動予定の確認や、8月16日全米運動普及の日にティーチインを行うのに役立つ様ざまな資料のダウンロード、ポスター、リーフレット、Tシャツの求め方、ワタダ中尉法的防衛基金へのカンパの仕方などについては、どうか、公式ウェブサイト: www.thankyoult.org をご参照ください。
平和と感謝を込めて、
キャロライン・ホー、(エレンの母) (翻訳:寺尾光身/TUPスタッフ)
*ワタダ中尉の母キャロライン・ホーさんが出された最初の公開書簡は、TUP速報620号( http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/678 )でお知らせしました。
*原文が掲載されているのは以下の2サイトです。
http://thankyoult.live.radicaldesigns.org/content/view/175/
http://www.truthout.org/docs_2006/081506R.shtml
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