近隣の評判高い寿司屋さんからお土産として貰った一枚の紙片に「子供を悪く育てたい14ヶ条―和尚のひとりごと」と題して、以下のような条件が記してある。読んでみて、思わず笑ってしまったが、実はまじめなお話である。 この逆を実践すれば、それがたちまち「子供を立派に育てたい14ヶ条」に早変わりする。これは逆説的教育再生論ともいえるのではないか。
子供を悪く育てたい14ヶ条―和尚のひとりごと (かっこ内は安原のコメント)
1、子供に対して、仏様など本当はないものだと教えなさい。どんな宗教教育もしてはいけません。(日本人の多くは無宗教で、欧米人には奇妙な日本人と映ることも)
2、子供に道徳的なしつけをしてはいけません。お金さえあれば、良いと思い込ませなさい。(すでに「カネ、カネ」の世の中になっている)
3、子供の前で、父母はいつも言い争いをしなさい。(父母のような人間にはなりたくないと思わせる反面教師になれ、ということか)
4、子供の前でおじいさん、おばあさんの悪口を思いきり言いなさい。(自分がおじいさん、おばあさんになったときに悪口を言われるのは確実だろう)
5、子供の前で学校や警察などの悪口を言いなさい。(最近の学校や警察をみていると、悪口を言いたくなる気持ちは分かるが、子供の前で、それをやったらおしまいよ)
6、子供のしつけもしてはいけません。家庭でもかまってはいけません。(しつけは大切だが、しつけができない親がふえている)
7、子供に命令したり、叱ったりして、そのわけを話してはいけません。子供がいうことをきかないと、たたいてもかまいません。(自由、人権、民主主義というものを家庭で教えることを禁じるということ)
8、良いことをしても絶対にほめてはいけません。(つまらないことでほめるよりはいいかもしれない)
9、子供の相談にのってはいけません。(どの株を買ったら儲かるか、というような子供の相談などにのる必要はない)
10、子供が遊びに来ても、家で遊ばせてはいけません。(友人などつくるな!ということなのか?)
11、友達には絶対に負けてはいけない、と常に言いきかせなさい。(連帯、助け合いなどどうでもよい。いまから負け組を足蹴にする勝ち組をめざせ、といいたいのか)
12、子供に好きなものばかり食べさせなさい。(欲望のままに生きるわがままな餓鬼になるのは、請け合いだろう)
13、子供に何でも一人でさせてはいけません。必ず手をかしてやることです。(自律、自立のこころが育たないことは間違いのないところ)
14、少しでも冒険的な遊びをさせてはいけません。鉄棒はあぶない、自転車もあぶない。家の中で遊ぶくらいにしておくことが必要です。(一人で家の中で、となると、いま流行のゲームしかないのでは? これでは元気で挑戦的な生き方とはおよそ無縁な青少年像を描くしかない)
ここで次の第15条を新たにつけ加えたい。 15、子供が学校から帰ってきたら、「きょうは何人いじめたか」と聞きなさい。「一人だけだよ」と答えたら、「少ない。もっとやれ」と叱りつけなさい。 (最近いじめによる自殺が改めて話題を呼んでいるが、そういう自殺をなくす方法は何か。いじめはこの世からなくならない。大人の世界でのいじめは日常茶飯事だ。だから子供の頃からいじめに立ち向かうことを両親、教師が教え、子供は子供なりに学ぶ必要がある。そのためにはいじめられたか、いじめた経験のある教師の採用を増やすことが肝腎であろう。体験にもとづく「いじめ撃退法」という講座を設けたらどうか)
さて、この和尚のひとりごとの心は? 「とんでもない親だと子供に気づいて貰いたい。こういう親になってはいけないと気づいたら、将来どれほど立派な人物に成長するか、楽しみである。いくら教えても本人が自分で気づかなければ、教育の意味はない」―これは教育基本法を改悪しないで実施できる「気づき」をキーワードとする教育再生論でした。
*安原和雄の仏教経済塾
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