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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2006年11月06日14時42分掲載
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安倍政権をどう見るか
「核持ち込み」の怖れ…非核3原則堅持の再確認を 池田龍夫(ジャーナリスト)
北朝鮮の核実験強行によって。世界は揺れに揺れている。「北朝鮮への国連制裁」「ミサイル防衛網強化」「核ドミノ現象の恐れ」……物騒な動きが危機を増幅している。この時代状況に乗じ、不安感を煽ってナショナリズム(愛国心)喚起のテコにしようとの謀略に騙されたら一大事だ。憲法9条はもとより、「非核3原則」を堅持してきた日本国民は、今こそ「国是を守る」覚悟を固めなければならない。
▽「核保有の議論も…」と外相、政調会長の暴言
北朝鮮の暴挙に対して国連安全保障理事会は10月14日(日本時間15日未明)、国連憲章第7章に基づく制裁決議を全会一致で採択した。中国・ロシアに配慮して、非軍事的な経済制裁になったが、一部タカ派政治家から驚くべき発言が飛び出した。15日朝「テレビ朝日」に出演した中川昭一・自民党政調会長が「(日本に)核があることで、攻められないようにするために。その選択肢として核(兵器の使用)ということも議論としてある。議論は大いにしないと(いけない)」と熱っぽく語ったのである。「もちろん非核3原則があるが、憲法でも核保有を禁止していない」とも付け加えている(毎日10・16朝刊)。
18日には麻生太郎外相が衆院外務委員会で「核保有の議論を全くしていないのは多分日本自身であり、他の国がみんなしているのが現実だ。隣の国が(核兵器を)持つとなった時に、一つの考え方としていろいろな議論をしておくのは大事だ」と述べた(朝日10・19朝刊)。
核拡散を防ぐため全世界が懸命に努力してい最中に、自民党の政策責任者と外相の相次ぐ暴言には呆れ果てる。安倍晋三首相をはじめ他の閣僚・党幹部は「非核3原則は、一切変更しない」と述べて両発言を打ち消しているが、北朝鮮危機に便乗して、自民党政府の“本音”が口をついて出たとも勘ぐれる。
核保有・ミサイル防衛に関し、安倍首相が官房副長官時代の2002年5月13日に行った講演の衝撃が蘇る。早稲田大学客員教授・田原聡一朗氏主催「大隈塾」のゲストとして「危機管理と意思決定」と題する講演で述べたもので、当時ホットな政治課題になっていた「有事法制関連法案」が主要テーマだった。有事法制の必要性を講演したあと、田原氏との質疑応答で“踏み込んだ発言”をしているので、参考のため問題個所をそっくり引用しておきたい(サンデー毎日2002・6・2号)。
田原氏「有事法制ができても、北朝鮮のミサイル基地は攻撃できないでしょう。これは撃っちゃいけないんでしょう。先制攻撃だから」 安倍氏「いやいや、違うんです。先制攻撃はしませんよ。しかし、先制攻撃を完全に否定はしていないのですけども、要するに『攻撃に着手したのは攻撃』と見なすんです。(日本に向けて)撃ちますよという時には、一応ここで攻撃を『座して死を待つべきでない』といってですね、この基地をたたくことはできるんです。(略)撃たれたら打ち返すということが、初めて抑止力になります」 田原氏「じゃあ、日本は大陸間弾道弾を作ってもいい?」 安倍氏「大陸間弾道弾はですね、憲法上は問題ではない」
「ええっ」と、驚いたような声を上げる田原氏。そして、安倍氏は 「憲法上は原子爆弾だって問題ではないですからね。憲法上は。小型であればですね」とも断言した。田原氏が「今のは、むしろ個人的見解と見たほうがいいの? 大陸間弾道弾なんて持てるんだよ、というのは」と念を押すと、 「それは私の見解ではなくてですね。大陸間弾道弾、戦略ミサイルで都市を狙うというのはダメですよ。日本に撃ってくるミサイルを撃つということは、これはできます。その時に、例えばこれは、日本は非核3原則がありますからやりませんけども、戦術核を使うということは昭和35年(1960年)の岸(信介=故人)総理答弁で『違憲ではない』という答弁がされています。それは違憲ではないのですが、日本人はちょっとそこを誤解しているんです。ただそれ(戦術核の使用)はやりませんけどもね。ただ、これは法律論と政策論で別ですから。できることは全部やるわけではないですから」
この「安倍発言」を受けて、福田康夫官房長官(当時)は2002年5月311日「非核3原則は今までは憲法に近かったけれども、これからはどうなるのか。憲法改正を言う時代だから、非核3原則だって、国際緊張が高まれば、国民が『持つべきではないか』となるかもしれない」(毎日02・6・1朝刊)と語って、物議を呼んだ。これは番記者に対するオフレコ発言だったため「政府首脳言明」と固有名詞を伏せて報道されたが、小泉純一郎首相(当時)は「私は何も言ってない。誤報はやめてくれ」と記者団に不満を述べ、その直後に福田官房長官が「実名報道に同意した」という毎日6・4朝刊の裏話も興味深い。
▽「米の核ミサイルを即時日本に配備せよ!」と煽る中西京大教授
以上、政府・与党首脳の“問題発言”を概観したが、安倍首相のブレーンといわれる中西輝政京大教授の「米の核ミサイルを即時日本に配備せよ!」との緊急提言に驚愕した。同氏が今まで主張してきたことを「週刊文春」(06・10・19号)誌上で最も刺激的に発表したもので、非核3原則を骨抜きにする恐るべき提言だ。数十万部の大衆週刊誌に、このようなプロパガンダが掲載されたことに、日本国の“危機的状況”を痛感した。非核3原則の「持ち込ませず」の1項を取り払って「米の核ミサイルを日本に配備せよ」ということ。俗耳に入りやすい論理で、ナショナリズムを刺激して“核保有”の道を開こうとの意図を感じる。
中西教授は同誌で、「日本が独自に核を持つという選択肢は現実にはありえない。ではどうするか。日本が北朝鮮の核を抑止する唯一の方法、それは米国の核を在日米軍に配備することです。それも核を搭載したイージス艦や潜水艦を日本海に展開しただけでは抑止力になりません。日本国内の在日米軍の基地に、北朝鮮に向けたミサイルを目に見えた形で配置して、初めて核は抑止力たりえるのです。もちろんそのためには、非核3原則のうちの『持ち込ませない』の撤廃が必要となる。……日本が独自に核を持つよりは、米国にとってはるかに受け入れやすいプランであるのも確かです」と得々と持論を吹聴しているのである。
この「中西提言」が安倍政権の政策にどう影響するかは、もちろん定かでないが、安倍首相の“ご意見番”が発した提言だけに今後の行方を厳しく監視することが緊要だ。
▽「核積載の米艦寄港」…ライシャワー証言の衝撃
安倍晋三・福田康夫両氏の「核保有、ミサイル防衛」に関する4年前の発言を検証したが、その時の考えと現在の姿勢が大きく変化したとは思えず、首相になった安倍氏が「非核3原則変更は考えてない」といくら強調しても俄かに信じ難い。「非核3原則を堅持する」と言いながら、国是を踏みにじる“密約”が存在していたことが暴露されてきた歴史的経緯があるからだ。そこで、「非核3原則」をめぐる約40年の変遷をたどってみたい。
「非核3原則」は、1967年12月11日の衆院予算委員会で核兵器の有無が問題化した際、佐藤栄作首相が「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」と答弁したのが最初。沖縄の本土復帰を悲願とした佐藤政権にとって、「核抜き」を国民に約束せざるを得ない背景があったようだ。その後、1971年11月24日の衆院本会議(沖縄返還国会)で「非核兵器ならびに沖縄米軍基地縮小に関する決議」が採択された。
「1.政府は,核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずの非核3原則を遵守するとともに、沖縄返還時に適切な手段をもって、核が沖縄に存在しないこと、ならびに返還後も核を持ち込ませない措置をとるべきである。 1.政府は、沖縄米軍基地についてすみやかな将来に縮小整理の措置をとるべきである。 右決議する。」という画期的な国会決議だった。
さらに1976年6月8日の「核不拡散条約(NPT)批准に合わせて衆参両院外務委員会が同年「非核3原則を国是として確立されていることに鑑み、いかなる場合も忠実に履行、遵守することに政府は努力すべき」と決議している。
ところが、非核3原則の陰に密約があったことを裏付ける「ライシャワー発言」が1981年5月17日、明るみに出て大騒ぎになった。駐日米大使だったライシャワー氏が帰国後、毎日新聞のインタビューに応じたもので。「核積載の米艦船・航空機の日本領海・領空の通過・寄港は『核持ち込みに当たらない』との日米口頭了解が60年安保改定当時に存在、核積載米艦船は日本に寄港している」との爆弾証言だった。
これに対して日本政府は「米国からの事前協議要請がないから、『核持ち込み』はない」と強弁し続けていたが、1999年それを覆す米外交文書が見つかった。朝日新聞が同年5月15日夕刊に特報したもので、「事前協議」の虚構性が暴露されてしまった。この公文書は池田勇人内閣時代(1963年)のものであり、朝日の記事から主要点を引用し参考に供したい。
「核兵器を積んだ米艦船などの日本への寄港・通過を、1963年4月に大平正芳外相(当時)が米側に認めていたことを示す文書が、米国立公文書館で見つかった。核搭載の一時通過をめぐってはライシャワー元駐日大使が81年に『日米間に口頭了解があり、実際に核を積んだまま寄港している』などと発言して問題化したが、公文書で大平氏の『了解』が明らかになったのは初めて。文書は米国防長官が国務長官にあてた書簡で、大平氏の了解が、その後も米政府内の基本認識として生き続けてきたことをうかがわせる。日本政府は今も『核搭載船の寄港も事前協議の対象』と主張しているが、事前協議の虚構性が米政権幹部の最高レベルが交わした文書で裏付けられたことになる。
問題の文書は、72年6月にレアード国防長官が、攻撃型空母ミッドウェーの横須賀母港化や2隻の戦闘艦の佐世保への配備などを日本政府に認めさせるようロジャース国務長官に要請した書簡。昨年末に米国立公文書館で解禁された資料で、我部政明・琉球大教授(国際関係論)が入手した。書簡では、国務省側が核兵器を搭載している航空母艦を日本に寄港させる場合は日米両政府で事前協議の問題が生じることを心配したことに対し、国防長官は『事前協議は法的にも日米間の交渉記録で問題がないことは明らかだ。ライシャワー大使が63年4月に大平外相と話し合った際、核搭載船の場合は日本領海や港湾に入っても事前協議が適用されないことを大平外相も確認した。以後、日本政府がこの解釈に異議を唱えてきたことはない』とつづっている。
また、核を搭載せずに航空母艦を配備することができないか、という国務省の提案に国防長官は『それでは軍事的に意味がない』と拒否。結局、両長官のこの書簡から1年4カ月後の73年10月にミッドウェーは横須賀に配備された。大平・ライシャワー会談の交渉記録そのものは明らかになっていないが、我部教授は『大平外相とライシャワー大使の密約のあった当時は米原子力潜水艦の寄港問題などで日本国内に論議が巻き起こっており、ライシャワー氏とすれば口頭でも確認しておく必要があった。書簡のやりとりを見れば、その後も米側が事前協議制度を何とか形がい化させようとしていたことがわかる』と話す」
▽「核兵器の抑止力」が通じない時代状況
60年案保改定時からの経緯を検証してみて、核問題が戦後政治を揺さぶってきたことが明らかになった。周期的に政治問題化してきたが、今度の北朝鮮核実験が投げかけた問題は一層深刻である。米下院・情報特別委員会が10月3日公表した報告書で「北朝鮮が核実験を行えば日本、台湾、韓国は自身の核開発の計画を検討するだろう」との警告を発したことを、東京新聞(10・13朝刊)が報じている。
さらに「日本の核武装については、安倍政権もその意思がないことを強調するが、ドミノ現象は北東アジアだけでなく、イランを起点にして中東地域にも飛び火しかねない。『サウジアラビア、エジプト、シリア、場合によってはトルコまでもが核武装に走る可能性がある』と米シンクタンクCNSの部長は分析する。……半面、北朝鮮を核実験に追い込んだのは米国自身との皮肉な側面もある。ブッシュ政権はイラク、イラン、北朝鮮の『悪の枢軸』のうち、大量破壊兵器保有の裏づけを得られなかったイラクを攻撃した。核兵器を持たなければイラクの二の舞いになると考えた北朝鮮、イランを核開発に追い立てたともいえる米国。そんなねじれた立場で、いかにしてドミノ倒しを防げるか…」と、同紙は鋭く迫っていた。
前段で指摘した中川・麻生発言が、核拡散の引き金になるようだったら一大事である。二人の“核発言”は北朝鮮への抑止効果を狙っただけとの見方もあるようだが、果たしてそうだろうか。NPTを脱退して核実験を強行した北朝鮮外交に対抗して、日本がNPTを脱退することは国際信義上不可能なこと。「議論するのはいいではないか」と麻生外相が言い張っても、憲法9条・非核3原則・NPTの縛りがある現状で、性急な“核論議”は不毛であり、前向きな結論は導き出せない。例えば、「米国にならって、日本を銃社会にしよう」との問題提起をしたら“時代錯誤”との非難を受けるに違いないが、「北朝鮮に対抗するため、核武装について議論しよう」との発言も同様に愚かな発想ではないか。
中西教授が言うように、米国の核を日本に配備することが抑止力になるとは考えられない。“米ソ核均衡の時代”より複雑化した世界になったことに加え、追い詰められた北朝鮮のような国家は自暴自棄の戦術で抵抗する。従って、核抑止力が相手には通じないばかりか、却って暴発を招きかねない。
この点につき、田中宇氏(国際問題評論家)は「核兵器をめぐるブッシュ政権の政策のもう一つの特徴は、イランや北朝鮮などの反米国を脅し、逆に核兵器を持たせてしまうように扇動した結果、世界で核保有しそうな国が急増し、従来の『核抑止力』が無効になってしまったことである」と指摘。さらに「日本人は、核兵器が抑止力を失いつつある今ごろになって、核武装したがっている。本当は『核兵器は抑止力が失われたので、もう全世界で核廃絶した方が良いのではないか』と主張した方が外交的に得策なのに、世界の変化が見えていない。対米従属の気楽さが、日本人を浅い考え方しかできない人々にしてしまった」と、日本外交の非力と構想力の貧困を糾弾していた(田中宇HP10・24)。
非核3原則は、「核艦船の寄港」によって「2・5原則」に変質しているが、本土への「核持ち込み」を許して「2原則」になったら、「非核3原則の国是」は解体の運命をたどる。この危機的状況を厳しく捉え、「核廃絶」を全世界に訴え続けることこそ日本の責務である。
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