・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・教育
・文化
・アジア
・国際
・入管
・中国
・市民活動
・米国
・欧州
・みる・よむ・きく
・核・原子力
・検証・メディア
・反戦・平和
・外国人労働者
・司法
・国際
・農と食
・イスラエル/パレスチナ
・市民活動告知板
・人権/反差別/司法
・沖縄/日米安保
・難民
・医療/健康
・環境
・中東
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2024年11月21日
・2024年11月20日
・2024年11月18日
・2024年11月17日
・2024年11月16日
・2024年11月15日
・2024年11月14日
・2024年11月13日
・2024年11月12日
・2024年11月11日
|
|
2007年03月25日14時06分掲載
無料記事
印刷用
日中・広報文化交流最前線
武漢の桜を中国の友人と共に愛でる 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)
桜をめぐって、昨年の今頃、湖北省武漢市の武漢大学の桜を巡ってちょっとした論争が起きたことを紹介した。これは、戦争中、日本軍が武漢大学を占領して軍の病院として利用していた時に、ホームシックになった日本軍兵士達を慰める為に桜を持ち込んだとされており、そのような桜を愛でることが良いのか、という批判があったのである。 筆者は、1年前の記事に、「次回武漢市を訪問する時には友人達と一緒に花見をしたいと思う。中国人が桜の花を見て、友人と楽しいひとときを過ごした事を思い出してもらえるよう、付き合いと交流を積み重ねていきたい」と書いた。そして本年3月23日〜24日、武漢を訪問する機会に恵まれたので、以下、訪問結果を報告したい。筆者にとっては武漢訪問は、2004年5月の訪問以来、2度目であった(前回訪問の際は、華中科技大学という大学で講演などを行った)。
●武漢大学で「桜フォーラム」
武漢大学は、1893年創設、湖北省内でも伝統のある有数の大学として知られており、日本語教育にも熱心である。その武漢大学で、湖北省内で日本語を専門科目として教えている10の大学(注1)の教職員及び日本語専攻学生達を集めて、「桜フォーラム」という日中文化交流イベントを開催するというので、筆者に招待が来た。この招待に応じて、筆者は武漢大学を訪問した。
学生達による日本語弁論大会、日本に関するクイズ大会、日本の漫画を模造紙に書いて構内に展示する、等のイベントが繰り広げられた。湖北省内の大学で日本語を教えている日本人、中国人教師や、日本人留学生達も参加して、楽しいひとときを過ごすことができた。筆者も日本の文化、社会や日中交流について講演をさせてもらった。
10の大学を集めるというのは良いアイデアである。これは3年前、筆者が武漢市を最初に訪問した際に、これらの大学の日本語学科長達を集めて会議を開催し、「各大学が個別に仕事をするのではなく、まとまって欲しい」と要望したことも受けたものである。現在「湖北省日本語教育連盟」という組織を立ち上げるべく準備中とのことである。まとまってくれると、色々と日本語教育支援、協力もし易い。
大学構内の桜は雨の中で満開であった。案内してくれた武漢大学の関係者によれば、同大学には桜は数百本〜千本あるということである。日本軍が持ち込んだ桜を実際に視認することはできず、当時の桜の木は既に枯れてしまったという説とまだ数十本あるという説を聞かされた。現在同大学にある桜は、1972年の国交正常化の際に田中角栄総理から寄贈されたものの一部を周恩来総理が武漢大学に回したもの、その後正常化10周年、20周年などの節目に日本の友好団体等から寄贈されたもの、その他同大学が自ら育てたものだそうである。
武漢大学の高名な歴史専門家某教授と意見交換する機会があった。彼は、日本の歴史専門家とも様々な交流をしているが、「今の日本をなおも軍国主義の国と見なす中国人がいるとすれば、それは間違いである。当時の日本が置かれた状況を冷静に理解しないといけない。今の日本はもはや軍国主義ではないし、対外侵略をする筈もないことは明らかである」と述べていた。このような認識は、日本人にとっては当たり前のことだが、中国ではまだこのようなことを指摘する必要が時としてあることも、また現実である。
武漢市で働いていた日本の企業関係者が寄贈した桜の名所があるというので、そこも訪問した。それは「東湖桜花園」という公園である(2001年開園)。公園入口にあるプレート等の説明によれば、日本の某銀行が75万米ドルをかけ、5000株の桜を寄贈した由。日本の弘前公園、米国のワシントンDCと並ぶ桜園となることを目指している由。公園内には、日本風の五重塔、太鼓橋なども配置され、日本風の庭園の作りであった。このような立派な日本庭園が、中国内陸部の武漢市にあるのは、筆者にとっては嬉しい驚きであった。
●武漢と外国との交流〜今昔〜
武漢は長江に面しており、経済面でも戦略的にも戦前から重要な地であった。実は、戦前、日本、欧米の租界と総領事館があった。総領事館の跡地を訪問したが、米国、ドイツの総領事館の建物は保存されていたが、日本の総領事館の建物は、時間もなく、見つけることができなかった。次回訪問の機会があれば、再度捜してみたい。武昌蜂起(1911年)に際しては、これらの日本、欧米の総領事館が中立の立場を表明したが、その文書のコピーが市内の博物館に展示されていた。(注2)
長江に面したかっての租界は今は繁華街となっており、上海のバンドのミニ版といった趣である。 今の湖北省にはフランス企業の自動車工場があり、フランス人長期滞在者は500名程度もいるそうである。そのため、武漢市にはフランス総領事館が設置されている。
湖北省は、現在、福島県、二本松市とかなり交流を行っている。福島県の有志の皆さんが過去10年間にわたり、湖北省の貧困家庭の子弟が中学校に進学するための支援を行っている(フォスター・ペアレンツ)。また、湖北省の様々な人が福島県を訪問し、日本についての理解を深めている。湖北テレビを通じて、等身大の日本と日本人の姿を伝える番組企画ができないか意見交換した。また直接的な交流が非常に重要であり、日本の青年達が湖北省を訪問する機会があれば、大歓迎すると湖北省の関係者は筆者に語ってくれた。 湖北省関係者は、本年秋、「日中文化スポーツ交流年」の一環として、大規模な日本文化紹介イベントを武漢市内でやりたいとの希望も述べていた。また日本と中国内陸部との関係を強化するために、日本総領事館も設置して欲しいと、湖北省関係者から陳情を受けた。(つづく)
注1:武漢大学、華中師範大学、湖北大学、中南民族大学、武漢理工大学、湖北師範学院、中南財経政法大学、華中科技大学、長江大学、黄岡師範学院。 注2:武昌は、現在の武漢市の一部である。
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。)
|
関連記事
【関連記事】再有一千年。賞花同在玉淵譚 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
武漢大学の桜。武漢の友人達と共に。右から2番目が筆者。(2007年3月)
武漢市内の日本庭園(「東湖桜花園」)での筆者(2007年3月)
|