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2007年04月20日14時56分掲載
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生協法改定案の危険な中身(中) 資本の攻撃で協同組合は解体の危機 金 靖郎
今国会に上程されている生協法改定案−。前回は自主的であるはずの生協運営に対する国の管理権限が強化される問題についてふれた。今回は民間資本が規制緩和をかかげて非営利団体である協同組合の事業に枠をはめようとしている動きについて報告する。その背景には「すべて市場原理で社会を運営していこうという流れがある」と筆者は言う。(大野和興)
◆背後の米国金融資本の影
今回の生協法改定案では生協の連合会と一定の規模の生協に対して、共済と他の事業の兼業を禁止する条文が盛り込まれている。
生協は消費者の自宅まで食品などを届ける宅配事業や店舗といった商品の購買事業を行う一方で、怪我入院時での保障を行う「助け合い共済」など共済事業を行っている。この共済事業は農産物の産直運動と並び、生協運動にとって大きな柱ともなるもので、消費者である組合員の暮らしをささえるものとして評価されてきた。
この共済事業を契約者を保護するためにという理由で切り離し、それぞれ独立した会計にすることになろうとしている
生協は組合員の暮らし総体をささえる助け合いの組織であり、そういった意味で共済を生協から切り離すという事は生協の事業の独自性というか根本を否定されるようなものである。
実態としてみると、今回の法改正は生協の活動に様々な縛りをかけるものとなっているのだ。
こうした生協に対する規制は民間資本の要求に基づくものだと思われる。
在日米国商工会議所が共済は優遇されすぎているので、民間保険競合者の間に平等な競争環境を確立すべきだと要望する意見書を提出しており、日本の保険業者からも共済への優遇措置はやめるべきだとの圧力がかかってきた。
その結果として共済を行う生協に対して監督権限を強化する内容の条文が盛り込まれてきていると思える。郵政改革も膨大な郵貯の資金を利用したいという、アメリカの金融資本の圧力が背景にあったと言われているが、日本の政府はつくづく、アメリカの意向に弱いし、従属した存在と痛感させられる。
◆協同組合全体への攻撃
ここ数年生協に限らず、協同組合全体に対する様々な圧力がかけられつつある。
マスコミでも農協バッシングが高まりつつある。農協は農業資材の購買事業や営農指導などの事業と共に、共済事業も行っているが、この共済・信用事業で収益を上げて、それをもって、購買事業や営農指導などの事業での赤字を補填しているという非難が高まっている。農協は解体し、共済・信用事業と購買事業を切り離すといった具合に事業分野ごとに解体すべきだとの声が出てきている。
かし先ほど生協について述べたように、協同組合は組合員の暮らし総体を支える存在であり、総合的な性格を持たざるを得ない。
農協に即して言えば、健康なときは農業資材を購入し、作物を育て、時には農協の職員から改善指導を受けて、技術を向上させ、暮らしを改善していく一方で病気になれば共済のお世話になるといった具合に、人間の生活というのは切り離せない一連の過程であり、助け合い、相互扶助組織である農協はその全てに関わるものだ。それを分割するというのはあまりに非合理的なことだ。
しかし、今や協同組合そのものの意義が否定されつつある。
規制改革・民間開放推進会議(議長・宮内オリックス会長)は、2005年12月21日に第二次答申を最終決定し、公表した。
この中では、「これからの農業では専業の大規模農家を育成する必要があるが、農協は組合員一人につき一票という平等な投票権を持って運営されている。農協の組合員の大多数は兼業小規模農家で彼らの声が反映されがちで、大規模農家の声がないがしろにされる。だから一人一票原則は見直すべきだ」との提言がもりこまれている。
これはまさに協同組合原則の否定である。営利を追求する株式会社では株式を発行し、株主が主権者であり、株主の利益を増やすことを目的としている。そのため持ち株数が多い、株主の意見がその株式会社の意思決定に大きな力を持つ。
しかし協同組合は相互扶助組織、助け合いの組織である。人と人との結合であり、民主的な組織であるべきだとの理念から一人一票があるのだ。
この原則は協同組合には共通する原則で農協も生協も共通するものだ。そういった意味で規制改革・民間開放推進会議での一人一票の原則の否定とはまさに協同組合総体に対する攻撃なのである。
こうした攻撃は民間資本が推進しようとしている新自由主義、すべて市場原理で社会を運営していこうという流れが背景にある。民間資本からすれば、農協も生協も自分達が本来手に入れるべき市場を奪っている敵(?)とも言うべきじゃまな存在になりつつあるのだ。
◆民間企業と同じ土俵で
協同組合というじゃまものをどうにかしたいという意味で農協も生協も兼業の規制し、総合性を解体したいという狙いがある。そして、もし存在するのだとしても、民間企業と同じルールのもとで競争させるという考え方が広がりつつある。
2001年に農協法が改定され、これによって、農協の目的から組合員教育が消えて、「指導」に変わった。この組合員への教育とは国際的な協同組合の機関であるICAが定めたICA原則に盛り込まれたもので、この法改定により、日本の農協は国際的な協同組合運動の原則から外れた面を持つようになってしまったと指摘されている。
助け合い組織である協同組合はお互いの暮らしを改善するために何よりも相互教育が大事だということで教育促進を原則としている。
一例をあげるならば、食の安全の関心が高まる中、農家の健康を考えるならば、農薬の害がいかなるものかを知る事は大事なことでありし、それをなるべく使わない農法を推進することが求められている。
農協として農薬に頼らない農法を推進している所が全国で多数存在するが、これはまさに協同組合として必要な教育的な機能を果たしていると言える。
生協でも農薬や遺伝子組み換え食品などの学習活動が全国で行われている。なによりも教育は大事なものだ。それが農協法から削除されるといった事態はまさに協同組合の否定、解体の始まりだと思う。
先に触れた、在日米国商工会議所が出した要請文では、協同組合は民間企業と比べ、法人税が優遇されており、これはおかしいということで、共済事業を行う団体に対して民間保険競合者と同じ水準の税金を支払うことを求めている。
非営利団体ということで、一般の民間企業が30%に対して生協の法人税は22%と優遇されている。これが攻撃されているのだ。これまで見てきたような事とあわせて考えると、今や、協同組合の危機が進行しつつあると言えるであろう。
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