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2007年04月28日15時42分掲載
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メーデーの隊列に在日ビルマ人労働者の組合旗も シュエバ(田辺寿夫)
■FからFへ
4月15日(日)、港区芝にある友愛会館で開かれた在日ビルマ市民労働組合(FWUBC==Federation of Workers' Union of the Burmese Citizen in Japan)の第6回年次総会に出席した。友愛会館は日本の労働組合運動の先駆者鈴木文治が1911年に「友愛会」という労働組合をはじめて結成した歴史に因む由緒ある建物である。現在は連合傘下で、日本有数の産業別労働組合のひとつJAM(Japanese Association of Metal, Machinery and Manufacturing Workers)が本部を置いている。JAMは日本ではたいへん珍しい外国人による労働組合FWUBCの設立を手伝った団体であり、現在にいたるまでその活動を支えている。ビルマ人で占められる執行委員のなかにもJAMの日本人女性組合員2人(会計・監査を担当)が加わっている。
FWUBCはちょうど5年前の20022年4月、友愛会館で産声をあげた。発足時の名称は在日ビルマ人工場労働組合だった。略称にある最初のFはFactoryだった。しかし、日本で働くビルマ人の職場や工場よりもむしろ居酒屋やレストランが多い。そんな事情からFactoryはやめてFederation of を使うようになったとのこと。略称はそのままである。名称はともかくFWUBCは2002年7月に東京都地方労働委員会から日本の労働組合法に適合する労働組合であるとの正式な認可を受けている。 しかし、日本の一般の労働組合とはかなり性格が異なる。FWUBCは設立当初から現在に至るまで主要な目標として掲げている次の4項目がそれを如実に示している。
(1)日本で働くビルマ人労働者の生活・労働条件の改善、労働者としての権利の獲得と保護。 (2)JAMをはじめとする日本の労働組合とともに活動し、必要な知識、経験を学ぶ。 (3)ビルマにおいて軍事政権の支配に苦しむ労働者大衆を励まし、支援する。 (4)アウンサンスーチー率いるビルマの民主化運動を全力で支援する。
FWUBCに集うビルマ人労働者たちは、日本において労働者としての権利を守り、職場におけるさまざまな問題の解決を図るとともに、そうした活動を通じて組合運動のなんたるかをしっかり学ぼうとしている。そして自分たちも協力・支援することを通じて母国の民主化を達成し、ビルマが民主的な国家になったあかつきには日本での体験や学んだことを活かして、母国に労働組合運動を根付かせようと願って奮闘しているのである。
■輝ける委員長は難民
FWUBCにメンバーとして登録したビルマ人の数はこれまでの5年間でのべ574人にのぼる。しかし、出入りが激しい。ほとんどが滞留期限超過者(オーバーステイ)であるから、自ら出頭して帰国したり、警察や入管に摘発されて退去強制(強制送還)される人が後を絶たない。現在の在籍者は156人。そのうち69人はこの1年の間に加盟した人たちである。 15日の年次総会にはおよそ40人のメンバーが出席した。そのほかにJAM、難民支援協会(JAR)、アムネスティー・インターナショナル(AI)日本支部、ビルマ市民フォーラム(PFB)など協力団体の日本人がゲストとして参加した。 FWUBCの委員長は設立以来ティンウィン(Tin Win)さんがつとめている。今回の総会でもむこう1年さらに委員長をつとめることが決まった。「長期政権」である。議事の通訳をつとめたほか、役員選挙の開票まで手伝ったぼくは彼をからかってこう声をかけた。
「6年間も委員長をつづけるんだ。テインウィンさんはディクテーター(Dictator=独裁者)だなあ」 「そうなんだ。軍事独裁政権とたたかうのに、こっちも独裁者だなんて自己矛盾だよ」
もちろんおたがいわかったうえでの冗談であり軽口である。群馬県太田市の工場で働くティンウィンさんは毎週末東京へあらわれ、さまざまな組織と連絡をとる一方でメンバーの人たちの相談にも乗り、組合の民主的な運営に腐心している。1954年生まれ、ビルマの古都マンダレー出身のイスラム教徒であるティンウィンさんは1988年の民主化闘争ではマンダレーで指導的な役割を担った。その後もアウンサンスーチー書記長が率いるNLD(国民民主連盟)の役員として憲法の起草にかかわるなどの活動をつづけた。軍事政権によって逮捕される危険を察知して日本へ逃れて来たのが1996年のこと。ただちに難民認定申請をし、1999年には難民認定を受けた。
ティンウィンさんはウルドゥー語やペルシャ語もできる。英語にはとくに堪能である。その英語力を生かして国際自由労連(ICFTU)やJAMもその構成団体のひとつである金属労協(IMF−JC)の幹部たちと交流をもち、そうした人びとの協力を得てFTUBCの結成にこぎつけた。 ティンウィンさんは比較的早い段階で難民として認定された。いま在日のビルマ人の多くが難民認定申請をしている。2006年に日本政府に対して難民認定申請をした外国人の数は史上最多の964人、そのうち626人はビルマ(ミャンマー)国籍者であった。 そのなかにはFTUBCC組合員も含まれている。ティンウィンさんは総会での挨拶のなかでこう話した。
「発足当時、メンバーのうち5%ほどが難民認定を申請していました。いまはメンバーの95%が難民あるいは難民認定申請者です。ですから私たちは日本における難民認定にかかわる問題にも取り組んでいます・・・」
■健康と難民の問題
労働組合が労働条件や職場環境についての問題の解決をはかるのは外国人労働者にとっても同じである。FWUBCもJAMの協力を得てそうした活動に取り組んでいる。総会でのミィンスエ(Myint Swe)書記長の報告によれば、この一年間に組合員からうけた相談の件数はおよそ30件、そのうち一番多かったのは賃金の未払いで7件、さらに職場で暴力的ないじめにあったケースが2件あったという。これらは外国人労働者のほとんどが滞在期限超過者であり、就労資格がないために、「足元を見られ」日本人労働者以上に過酷な状態に置かれていることを示している。
さらに切実なのは健康・医療の問題である。FWUBCは、在日外国人の医療について先進的な役割を果たしている横浜港町診療所の山村淳平医師の協力をあおぎ、毎月一回定期的に健康相談を実施してきた。場所はビルマ人たちが集まりやすい高田馬場の新宿区リサイクルセンターである。体の不調について相談に乗るほか、適切な病院を紹介したり、高額な費用のかかる手術などが必要な場合はソーシャルワーカーと連絡をとり、なるべく負担を軽くする工夫もしている。
山村先生は総会でも挨拶をし、外国人医療について報告を行なった。ビルマ人を含めた外国人労働者が、さまざまな条件から健康状態を悪くするばかりか、在留資格がなく、健康保険もないためになかなか診療を受けようとせず、病院に行った時にはすでに病気が悪化してしまっているという悪循環が起こっていることを山村さんが指摘した。日本での生活のなかで積み重なるストレスが健康悪化に拍車をかけている事態も見流せないとし、とくに入国管理局の収容施設に拘束された場合にはそのストレスが倍加し、神経・精神の面で重篤な病状をもたらすケースが多いと警鐘を鳴らした。
収容の問題は難民認定にもかかわる。不法滞在で捕まっても本人の意思で帰国する場合は収容はごく短期間ですむ。しかし帰国すれば迫害を受ける恐れがあると考える外国人は難民認定を申請することになる。この場合はかなり収容がながびく可能性がある。さらに難民認定申請はしたものの不認定となった人はたとえ難民不認定取消し訴訟を提起したとしても収容されることはよくある。いまやメンバーのほとんどが難民認定申請者だというFWUBCにとっては、心身の健康にかかわる難民認定の問題にも力を注がなければならない状況となっている。
■外国人労働者のさきがけたれ!
FWUBC総会ではJAMを代表して小山正樹副書記長が挨拶をした。小山さんはFWUBCのような在日外国人による労働組合は日本ではほかに例がないこと、厳しい条件のなかでFWUBCは地道な活動を繰り広げていると称賛し、これからはほかの多くの在日外国人労働者にとって模範となるような先進的な組合に成長して行ってほしと激励した。 この1年間にFWUBCは2回にわたってワークショップを実施した。1回は在日外国人労働者が労働現場で直面する問題について、2回目はやはり外国人労働者の健康・医療についてである。 この話し合いの内容については、Q&Aスタイルの小冊子を作成してメンバーに広く周知する予定であるとのこと。これまでの成果をふまえて今年度はどのような活動を行なって行くのか、ティンウィン委員長は次のように述べた。
「前年度に実施したワークショップで感じたのは、組合員のなかに日本の労働法規についての理解が十分ではないことである。さらに勉強する機会を設けたい。次に今年度も最低一度はワークショップを実施し、ビルマ人組合員に学ぶ機会を作るとともに日本人労働者との交流を深めたい。三つ目はビルマの民主化である。ビルマに正当な労働組合を定着させようとする私たちの目標は、母国が民主化されないかぎり実現しない。私たちは国内外の民主化勢力と連携し、母国民主化のための活動をより積極的に進めて行きたい」。
4月28日(土)、第78回中央メーデーが代々木公園を主会場に実施される。日本の労働者の隊列のなかに、ビルマの国土の形をあしらったFWUBCの旗を高く掲げるビルマ人たちの姿も見られるはずである。
*田辺寿夫氏はジャーナリスト、元NHK国際局チーフディレクターとして国際放送ビルマ語番組を担当。在日ビルマ人から「シュエバ」の愛称で親しまれている。
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