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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2007年05月30日10時21分掲載
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日中・広報文化交流最前線
中国マネーは文化に向かう? 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)
●美術品競売会が相次ぐ
5月9日と28日、筆者は、中国の美術品競売企業が北京市内で開催した競売用美術品展示会を見る機会があった。主催者は、中国内での美術品競売有力大手企業であるC社とP社である。中国経済は、株などに資金が向かう一種のバブルとの指摘もある状況だが、中国マネーが文化方面にどう向かうのか、筆者の見聞を紹介したい。
競売には、書画(アンティークから現代の作品まで)、骨董(陶磁器等)、幅広い美術品が出品される。春秋の年二回開催されることが多いので、この時期に北京に滞在される方には美術品で目の保養ができるこの機会を利用されることをお奨めしたい(入場は無料である)。「参考価格」も示されている場合が多いが、総じて、その値段の高さに驚く。たとえば、陳逸飛氏の「黄河頌」という絵は、参考価格として2千2百万元〜3千2百万元と提示されていた(日本円で、3億5千万円〜5億円)。
C社は、5月12日の競売で、1157点、5億4143万元(約86億円)を売り上げたそうである。 「黄河頌」は、結局4032万元(約6億5千万円)で売れた。10年前のこの絵の価格から比べて、30倍(!)になったそうである。(5月15日付『新京報』紙報道による)。 日本人に馴染みのあるものとしては、孫文と康有為の書も出品されていた。
C社とP社の競売企業の関係者が以下を教えてくれた。 ・2005年のC社の売り上げは16億人民元だったが、経済の過熱がやや収まった2006年は12億人民元に下がった。 ・C社の競売は、年二回開催しており、数百人から1千人程度が参加している。参加人数の内訳は、中国人が約8割、外国人が約2割である。 ・P社は、2005年から競売ビジネスに参入し、年二回競売を開催している。2006年は2005年に比べてやや売り上げが落ちたが、2007年には復調の兆しがある。 ・P社が競売のために集めた中国美術品は、中国国内で調達したもののみならず、海外のコレクターが所蔵していた美術品も買い戻している。つまり、海外に流出した中国美術品を、中国マネーが中国に引き戻しているのである。 ・C社、P社の競売には、共に日本人も参加している。但し骨董品の国外持ち出し規制があるため、外国人の参加はまだ少ない。
「新京報」によれば、中国嘉徳、北京誠軒、北京永楽という競売三企業が5月の一週間に相次いで競売を行ったが、そこでの売り上げ合計は7.2億人民元(約115億円)だったそうである。2006年は調整期であったが、本年は市場の熱は回復している由である。(5月22日付同紙報道による。)
中国人コレクターは、やはり馴染みのある中国の美術品に資金を投入するようである(ただ、例外的に日本の美術品などを沢山集めている中国人コレクターもいる)。また外貨規制等のため、中国人は、外国の美術品を自由に購入することは必ずしもできない。そのため、彼らの持つ金は、国内の中国美術品市場に流れるようである。
●中国の美術品の買い手たち
中国の美術品の買い手はいかなる人達なのか?それは中国の富裕層であったり、投資ビジネスの一環だったりするようである。中国の富裕層についての報道は中国国内であまり多くないが、政府系英語新聞China Dailyに中国の富裕層のデータ(資産ベストテン)が掲載されたので紹介したい(2006年10月12日付)。 (1)廃紙業経営者34億米ドル、(2)電気機器販売経営者25億ドル、(3)不動産業経営者21億ドル、(4)不動産業経営者20億ドル、(5)太陽エネルギー発電発明家19億ドル、(6)不動産業他経営者18億ドル、(7)同17億ドル、(8)同14億ドル、(9)同13億ドル、(10)同12億ドル。不動産業経営者が、7人占めている。
競売美術品展示会の会場に来ていたプロのバイヤーは、「100万元(=約1600万円)以下の美術品は、今後相当程度の値上がりが見込めるので、狙い目だよ」とアドバイス(?)してくれた。 勿論、庶民にとっては縁の無い世界ではある。
中国で富裕層が増え、資金が豊富になるに従い、また文化産業がビジネスとして発展すれば、文化の世界にも資金が流れ込んでくるであろう。日本の画商も参加する美術展も最近北京で開催されている。日本の画家達が中国の美術品市場に本格的に参入するには至っていないようだが、やがてそういう時もくるのかもしれない。このような状況が、国際的な文化交流の発展に何らかの形でつながっていくことを期待したい(つづく)
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。)
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約6億5千万円で売れた「黄河頌」
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