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2007年06月04日00時09分掲載
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時事英語一口メモ
【26】ウルフォウィッツの妻がブッシュに出した手紙の秘密
<A href="http://jijieigo.at.webry.info/200804/article_28.html" target="_blank">ブログ版</A>
世界銀行のポール・ウルフォウィッツ総裁(63)が辞任する原因となった交際中の女性職員、シャハ・アリ・リザ(52)のことを英文メディアはさまざまな表現をしている。”girlfriend” “female companion” ”romantic partner” “close female friend”・・・。Salon.comは "neoconcubine"と呼んだ。neocon(ネオコン)とconcubine(愛人、サルタンなどに囲われたハーレムの女性)を掛け合わせた言葉だ。彼女をどのように呼ぶかは、秘密にされていることと関わり合いがあった。(鳥居英晴)
Google Newsを使って、どのような表現がされているのか調べてみた(6月3日現在)。Paul Wolfowitzとgirlfriendで検索すると、8312件で圧倒的に多かった。次いでcompanionが1956件、 partnerが594件、 lover が49件、mistress が17件、galが7件あった。
The Huffington Postのブログ(5月27日)で作家のDiana Slickmanは、今回のスキャンダルで"adult girlfriend"に相当する適切な言葉がないことが明らかになったと述べている。
"Girlfriend" is certainly inaccurate; she's no longer a girl and something more than a friend. Had their positions been reversed, I doubt that NPR would have called him her boyfriend.
(彼女は少女ではないし、友人以上であり、“girlfriend”は確かに不正確である。立場が逆であったら、公共ラジオが彼のことをboyfriendと呼ぶとは思わない)
Slickmanによると、"female companion"は盲導犬を思い起こさせるし、"lady friend"は婉曲的であるが、年寄りくさい響きがある。”partner”は対等な関係を示唆するが、ウルフォウィッツは上司である。"mistress" はホテルの部屋での密会を思い起こさせる。
Slickmanは”leman”を使うように提唱している。しかし、Google Newsで検索する限り、今回のケースでこの言葉を使っている例はない。
作家の Ben YagodaはSlate(4月20日)で、”You Go, Companion! What to call Paul Wolfowitz's special lady friend”と題し、”companion”は不適切であると主張している。ニューヨーク・タイムズ紙が”girlfriend”や”companion”を使っていることについて、Yagodaは同紙のスタイル・ガイドを引用している。
companionは、 "Companion is a suitable term for an unmarried partner of the same or the opposite sex."(同性でも異性でも結婚していないパートナーに対して使うのに適切な言葉である)
partnerは、 "a suitable term for an unmarried companion of the same sex or the opposite one. But if the context allows misreading to mean a business partnership, use companion instead."(同性でも異性でも結婚していないコンパニオンに対して使うのに適切な言葉である。しかし、文脈上、仕事のパートナーに間違えられそうな場合は、companionを使うように)
loverは、 "lover is a suitable term for a partner in a literary or historic liaison or a highly visible romance between public personalities in show business, for example."(文学ないし歴史上の関係でのパートナー、あるいはショービジネスでの公的な人物同士のはっきりした恋愛関係にあるパートナーなどに対して使うのに適切な言葉である)
girlfriendと boyfriendについては、 "The terms are informal and best reserved for teenagers."(この言葉は非公式的なもので、ティンエージャーに使うのが一番に適している)
And maybe the Times' use of the word is a sign that girlfriend is on the verge of seeming appropriate for companions of all ages. But whether or not girlfriend has legs, companion should go: It's just too staid a word to apply to an object of passion, adoration, and/or love.
(ニューヨーク・タイムズがgirlfriendという言葉を使っているのは、その言葉がすべての年齢のコンパニオンに対して適切な言葉になろうとしている兆候なのかもしれない。だが、girlfriendが長続きしようとしまいと、companionを使うべきではない。情熱、崇拝、愛の対象を表現するには落ち着きすぎた言葉である)
ワシントン・ポスト紙(5月14日)によると、同紙にもなぜ彼女を"girlfriend"と呼ぶのかという問い合わせがくる。ウルフォウィッツは妻クラレと離婚していないから”mistress”と呼ぶべきだと主張する読者もいる。
同紙の記者はクラレにメールで問い合わせをした際、離婚しているかどうか聞いたが、その点について回答はなかった。離婚届を出したという記録を見つけることはできず、モントゴメリーにある家の所有者は二人のままであるという。
So it may be we were wrong to say Riza was Wolfowitz's girlfriend. If so, we regret the error.(リザをウルフォウィッツの”girlfriend”と呼ぶのは間違いかもしれない。もしそうなら、間違いであり申し訳ない)
ウルフォウィッツが2005年3月に世銀の総裁に指名された時にも、英国のデーリーメール紙は離婚しているのかどうかクラレに確認しようとした。
同年3月20日付の記事は、“Will a British divorcee cost 'Wolfie' his job?”。British divorceeとはリザのことで、英国籍の彼女は離婚歴がある。Wolfieはブッシュがウルフォウィッツを呼ぶ言い方。「リザのために職を失うことになるか」と、今日の事態を予見するような見出しである。
Yesterday, she refused to comment on whether her husband had been unfaithful before their separation, saying: "I really do not want to share this with you."
(彼女は、別居する前から夫が不倫をしていたがどうか答えなかった。「これについては話したくありません」)
She also refused to confirm her marital status - reports of his appointment repeatedly describe Wolfowitz as divorced but The Mail on Sunday has been unable to find any records. Asked if she is separated or divorced, Clare replied: "That's my business."
(ウルフォウィッツ指名の報道は彼が離婚していると報じているが、彼女は離婚しているかどうか確認することも拒否した。本紙は記録を見つけることはできていない。別居しているのか離婚しているのかを問われて、クラレは「余計なお世話」と答えた)
世銀のスタッフによると、リザはウルフォウィッツがイラク戦争を推進する上で重要な役割を演じたという。クラレは大統領に当選したブッシュに手紙を書き、the threat to national security any infidelity by her husband could cause(夫の不倫により起こされるかもしれない国家安全保障に対する脅威)を警告した。
On the claim that she wrote a letter to Bush, she said: "That's very interesting but not something I can tell you about."
(ブッシュに手紙を書いたという件については、彼女は「それは非常に興味深いけれど、わたしが話せるようなことではありません」と答えた)
この手紙については、クリントン大統領の上級顧問であったシドニー・ブルメンタールがopenDemocracy(5月30日)で“Paul Wolfowitz’s tomb”(ウルフォウィッツの墓)と題した評論で触れている。
「ウルフォウィッツはCIA長官になりたかった。だが、彼が売り込みに行くとすぐさま、妻のクラレは大統領に当選したブッシュに私的な手紙を出し、彼は信用できないと書いた。この手紙は封印された。だが、CIAの元高官はこのことについてわたしに語った」
ブルメンタールは、次のようなクリス・ネルソンのニュースレター(4月16日)を引用している。
「ウルフォウィッツはリザを本当に愛していた。CIAにとっての問題は、彼女が外国人であるということだけでなかった。問題はウルフォウィッツが結婚していることであった。そしてその相手が、そのことで非常に怒っており、不満を直接、大統領に持っていったことであった。その時われわれは、そのことを知らないで、ウルフォウィッツをCIAの最終選考名簿に入れた。すぐにわれわれは、共和党の外交政策担当の高級幹部から、ダメだと言われた。それから、その背景について説明を受けた。ウルフォウィッツの個人的問題が、なぜ国防総省で不適格とされなかったのかは聞いていない」
ウルフォウィッツは1943年、ニューヨークで生まれた。両親はポーランドからのユダヤ人移民。父親の親類は全員、ホロコーストの犠牲になった。父親は数学者で、コーネル大学の教授になった。父親は熱心なシオニストでもあった。ウルフォウィッツは14歳の時にイスラエルで1年間過ごしたこともある。姉もイスラエルに移住し、イスラエル人と結婚している。
ウルフォウィッツはコーネル大学で数学と化学を専攻した。クラレと出会ったのは同大学に在学中で、1968年に結婚した。クラレは文化人類学者で、インドネシアの専門家である。
ウルフォウィッツは同大学でアラン・ブルーム(「アメリカン・マインドの終焉」の著者)の影響で政治に興味を覚え、シカゴ大学に移って、政治学を学んだ。若いころは公民権運動のデモに参加するなどリベラルであったが、ここから右寄りになっていく。(日本語のウィキペディアに彼がトロツキストであったという記述があるが、そのような英文資料は見つけることはできない)
ブルームの師であり、ネオコンに大きな思想的影響を与えた政治哲学者レオ・シュトラウスの講義を受けた。しかし、大きな影響を与えたのはアルバート・ウォルステッターであった。ウォルステッターはトロツキストから反共に転じた軍事戦略家で、スタンレー・キューブリックの「博士の異常な愛情」のモデルになったと言われている。ネオコンのリチャード・パールもウォルステッターの弟子である。
同大学でイラクの亡命者で後に副首相になるアハマド・チャラビ、駐イラク米国大使になるザルマイ・ハリルザドとのコネクションができる。
ウルフォウィッツの博士論文は、なぜイスラエルの核開発が中東と世界の安定に脅威となるかについてであった。
ブルメンタールは、“Wolfowitz's study of nuclear policy was more than a higher mathematics; it was a kind of mystical Kabbalah.”(ウルフォウィッツの核政策の研究は高等数学というより、ユダヤ教神秘思想の一種であった)と言う。
民主党の上院議員の秘書を務めた後、77年に国防総省、80年に国務省に入り、86年から89年までインドネシア大使。89年から93年まで国防次官を務め、94年から2000年まではジョンズ・ホプキンス大学ポールニッツ高等国際問題研究大学院の学長を務めた。
ウルフォウィッツとリザの最初の接点は、レーガン政権のもとで設立された「国民民主主義基金」。リザは1990年代初めに同基金に入った。ウルフォウィッツは同基金の理事であった。二人が交際を始めたのはリザが離婚し、ウルフォウィッツが別居した1999年後半。
リザはリビア・トリポリの生まれ。父親はリビア人、母親はシリア系サウジアラビア人。父親はサウジアラビアのサウド国王のコンサルタントであった。チュニジア、サウジアラビア、英国で育ち、ロンドン経済大学とオックスフォード大学で学んだ。オックスフォードでトルコ系キプロス人のBulent Alirizaと1980年代末に結婚する。
二人は米国に移住し、リザはフセイン政権打倒のために亡命イラク人が設立した「イラク基金」で働いた。「国民民主主義基金」に移り、1997年に世銀に入った。離婚した夫は戦略国際問題研究所のシニア・アソシエイツである。
ウルフォウィッツが国防副長官を辞め、世銀総裁に就任した2005年6月当時、リザは世銀の中東北アフリカ局に勤務していた。世銀の内規はパートナー同士が上下関係になることを禁止している。このためリザは国務省に出向した。
その際、給与が大幅に上がったことについて世銀調査委員会は5月14日、"at Mr. Wolfowitz's direction was in excess of the range" (ウルフォウィッツ氏の指示で、それは内規を超えるものであり、出向と給与昇給の条件に関与したことは "placed himself in a conflict of interest situation"(利害相反を犯した)と認定した。ウルフォウィッツは「正当な手続きを踏んだ」と主張している。
4月の世銀倫理委員会で彼女は、"not only because I am a woman, but because I am a Moslem Arab woman who dares to question the status quo both in the work of the institution and within the institution itself."(わたしが女性であるばかりでなく、世銀の仕事と世銀の内部での現状につい疑問を呈するイスラム教徒のアラブ女性であるせいで)、世銀で差別されたと感じたと述べた。
ワシントン・ポスト(5月10日)はリザについて、a Muslim woman who draws her identity from both the Western and Arab worlds, a passionate advocate for women's rights, reform and democracy in the Middle East(西側世界とアラブ世界の双方からのアイデンティティを持ち合わせ、中東での女性の権利、改革、民主主義を熱心に提唱するイスラム教徒の女性)と描いている。
Despite their different cultural and religious backgrounds -- Wolfowitz is Jewish -- the two share a formidable self-assurance. Friends also often point to the couple's intellectual common ground. Both are true believers when it comes to spreading democratic ideals in Arab lands where dictators repress free elections and free expression.
(文化的、宗教的な背景は異なるのにもかかわらず、二人は強い自信を共有している。友人たちは二人の知的共通性を指摘する。二人は、独裁者が自由選挙と言論の自由を抑圧するアラブで民主主義の理想を広めることの信奉者である)
リザはアラビア語、英語、フランス語、イタリア語、トルコ語を話す。ウルフォウィッツは、フランス語、ドイツ語、ヘブライ語、インドネシア語を話し、1980年代にはアラビア語を独習した。2006年に中国を訪問し、モスクを訪れた際にはアラビア語でコーランを唱えたこともある。
ブルメンタールはリザのことを、ウルフォウィッツの“perfect partner”と呼ぶ。
Paul Wolfowitz's doctrines are a summa of numerous failed political dogmas of the 20th century. His notion of politics was essentially Bolshevik, but less democratic in practice than Lenin's. Wolfowitz had no concept of mass politics. Nor did he have an idea of democratic centralism, the core of Leninism, by which the vanguard led the cells of the party. Wolfowitz believed only in the vanguard.
(ウルフォウィッツのドクトリンは20世紀の数多くの破綻した政治ドグマを集めたものである。彼の政治概念は本質的にボリシェビキであったが、実践ではレーニンのそれより非民主的であった。ウルフォウィッツは大衆政治という概念を持っていなかった。レーニン主義の核である民主集中制という考えも持っていなかった。民主集中制で前衛が党細胞を指導する。ウルフォウィッツは前衛しか信じなかった)
ウルフォウィッツはイラク戦争が始まる前、米軍はイラクで解放者として歓迎されるであろうと述べた。
On 17 May 2007, the day Wolfowitz agreed to resign, the sedate employees of the bank surged into the corridors, celebrating the day of liberation by hoisting champagne glasses and bursting into song: "Nah, nah, nah, nah, hey, hey, hey, hey, hey hey, goodbye!"
(ウルフォウィッツが辞任することを同意した5月17日、世銀の職員は廊下に飛び出し、解放の日を祝って、シャンペングラスをあげて歌を歌った)
クラレはメリーランド大学のIRISセンターに勤務している。ワシントン・ポストによると、クラレはメールでリザのことを次のように述べている。
"Shaha Riza is a dedicated and serious reform advocate who has my respect. I hope she will be able to continue her work in spite of everything."
「シャハ・リザは熱心でまじめな改革の支持者で、わたしは尊敬している。いろいろあったが、彼女が仕事を続けられるよう望んでいる」
ニューヨーク・ポスト紙(5月23日)は、ウルフォウィッツとリザは別れたと報じている。ウルフォウィッツが世銀を6月末に正式に辞任した後、リザは世銀に戻ることになりそうだという。
参考サイト
http://www.huffingtonpost.com/diana-slickman/the-wolfowitz-problem_b_49545.html
http://slate.com/id/2164651/
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/05/09/AR2007050902501.html
http://www.dailymail.co.uk/pages/live/articles/news/news.html?in_article_id=342048&in_page_id=1770
http://www.opendemocracy.net/democracy/paul_tomb_4655.jsp#
http://www.newyorker.com/reporting/2007/04/09/070409fa_fact_cassidy/
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