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米中央情報局(CIA)は26日、1950年 代から70年代にかけて同局が行った非合法活動に関する秘密報告書を公表したが、その文書は”Family Jewels”と呼ばれている。27日のニューヨーク・タイムズ紙の見出しは“Files on Illegal Spying Show C.I.A. Skeletons From Cold War”(違法なスパイ活動に関するファイルは冷戦からのCIAのskeletonsを示す)とある。ここでは”Family Jewels”(家族の宝石)とskeletons(がい骨)は同じ意味である。
同記事の中に次のような個所があった。
Yet the long-awaited documents leave out a great deal. Large sections are censored, showing that the C.I.A. still cannot bring itself to expose all the skeletons in its closet.
(だが、待望の文書はかなりの部分が除外されている。多くが検閲され、CIAがいまだ内部の秘密を明らかにできないことを示している)
“skeleton in the closet”は文字通り訳せば、「押入れの中に隠された白骨化死体」ということだが、「他人に知られたくない内輪の秘密、恥」を意味する。“skeleton in the cupboard(食器棚)”とも言う。
"family skeleton"という言い方もある。”Every family has a skeleton in the closet.”はことわざで、「どの家庭にも外聞をはばかる秘密がある」という意味。藤沢周平の「よろず平四郎活人剣」に「どこの家にも・・・。多かれ少なかれ家の中の煩いというものがあって、それは金があるから免れ得るという性質でも、なかろう」という一節がある。翻訳家の村上博基は解説で、いちど「家の中の煩い」を使って見たいと書いている。
U.S. News & World Report(6月27日)の見出しは、“CIA Airs Its Dirty Laundry”であったが、”dirty laundry”(汚れた洗濯物)も「内輪の恥」という意味である。
同記事は次のように述べている。
Then CIA Director James Schlesinger ordered CIA officials to report any activities that conceivably exceeded the CIA's legal charter. His successor, William Colby, called it an attempt to assemble all the "skeletons in the closet." Most CIA insiders preferred to call it the "family jewels," although others wrote memos referring more obliquely to "delicate matters."
(当時のジェームズ・シュレジンジャー長官はCIA職員に対し、CIAの法的に認められた活動を超えたと見られる活動を報告するよう命令した。後任のウィリアム・コルビーは、それを"skeletons in the closet“を集める試みと呼んだ。ほとんどのCIA内部の者は、それを"family jewels"と呼んだ。その他の者は、もっと遠まわしに"delicate matters"(デリケートなもの)と言ってメモを書いた)
6月27日の読売新聞は"family jewels"を「家族の宝石」としている。英辞郎には“family jewels”は、 〈米俗〉一家の恥、〈米俗〉男性器、睾丸 文字どおりには「家宝」の意。やや古い感じの遠回しな言い方、と出ている。ランダムハウス英和大辞典は、男性器、内輪の恥。(特に)CIAの秘密工作、と説明している。
"Family Jewels"は、CIAがキューバのカストロ議長の毒殺計画や、国内での活動を禁じられているにもかかわらず、国内で反戦活動家やジャーナリストに対する盗聴や監視などを行ったことを示している。
"Family Jewels"は、CIAにとって外部に知られては困る、恥であったのである。
(鳥居英晴)
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