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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2007年07月05日21時38分掲載
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時代を駆け抜けた思想と実践を読み解く一冊 西村光子著「女(リブ)たちの共同体(コレクティブ)=70年代ウーマンリブを再読する=」 評者・舟本恵美
「性の解放」と「個の解放」めざして、鮮烈に登場した1970年代のウーマンリブ運動。そのなかから全国各地に女たちの生活共同体(コレクティブ)が生まれた。多様多層なリブの運動の中で共同体(コレクティブ)に焦点を当て、同時代をともに歩いた著者が、今日の視点からその運動の実態と思想を調査し、自分のやったこと、あるいはやりそこねたことの意味をさぐった。評者・舟本恵美さんはリブの運動誌『女・エロス』(1973年創刊)創刊メンバー。社会評論社刊、1700円+税。
■ウーマンリブ運動とは何だったのか 時代を駆け抜けた思想と実践を読み解く一冊 舟本恵美
「ほんの30年前に全身全霊をかけて共同性の構築に関わった女たちがいたんだよと、現代の女たちや若者たちに伝えたいという気持ちと、自分のやったこと、あるいはやりそこねたことの意味を探りたいという気持ちが合わさって」リブのコレクティブの調査を思い立った、と西村光子さんはいい、「ウーマンリブという言葉を目にすると、いまだに私の身体の芯が熱くなり、鼓動がたかまる」のは筆者のわたしのことでもある。
しかし、この著書でのリブは「共同体・コレクティブ」を作り、模索し、溶解していった、あるいは止揚されていった共同体、仲間、「おんな」たちである。
狭義というわけではないが、西村さんが共同保育を実践してきたという実績から面と向うのはコレクティブのリブであったことを前提として、若者や現代の女たちだけでなく、70年代を生きてきた多くの層の人たちに読んでいただきたい。この著書から未来へと橋渡しをしてゆく運動が広義のリブ、つまり女全体の視野にはいらなければならない今、だからである。
厚労相柳沢の「女は産む機械」発言の折、かつての優性保護法改悪(72年)阻止の運動のようになぜならなかったのか、わたしを含めての反省をこめながら、本書を共同体に絞って以下のように紹介したい。
1、リブ新宿センター
田中美津さんという巫女的存在があって、「ぐるーぷ戦うおんな」が初期のリブを触発し、全国の女たちへの発信を行えたという事実は重い。彼女たちと「エス・イー・エックス」のメンバーが当初住み込んだコレクティブがリブ新宿センター、72年9月に開所、
77年に休館を宣言する。その間のすさまじいほどのエネルギーと日常的活動、いや非日常的運動と個々の女たちの情熱については当初平均年齢25歳という若さに支えられていたのかもしれないが、リブ旋風を巻き起こしているのだとの深層の自負もあっただろう。だからこそ続けられた非日常であったろう。
2、東京こむうぬ
「子産み+コミューン」をもじって「こむうむ」。72年から75年の解体まで、多いときは「こども9人、おとな住人4人、駆けつけ助っ人20〜30人」がうねるように情況をかえながら、こどもを共同保育した。
当時、消防法や会社の規定で、べビーカーはデパートや電車、バスで使用することは禁止されていたが、「こむうぬ」の粘り強い交渉で74年に撤回させた。今日につながる運動の成果といえよう。
著者の西村さんも働きながら子育ての中から「たつのこ保育所」という、「労働と生活と闘争を一体化させた」場をつくり「社会変革の道筋につながることを確認しえた」という。「たつのこ」は30年続いている。
3・札幌こむうぬ
72年にオープン。「一時はおとな6人、こども13人という大世帯」で、「保育園作り、駆け込み寺、自主出産の共同化」などの取り込みをし、延長線上に「共同保育館ばく」を開き、83年まで活動を続けた。
西村さんは「地方都市ならではの濃密な拠点を基礎にして送る生活が立体的に立ち上がって」くると表現している。
4・庄内コレクティブ(大阪)
72年に名乗り上げた庄内コレクティブは崩壊しながらも、小さなグループの誕生を産んだ。「関西の反体制運動は」「たえず自己に問い、他者に糺す。だから、議論は内に向かい、組織は崩壊(自滅)するしかない。しかし、くだかれた破片に、その精神は宿り、その破片からまた運動は再生するのだ」。まさにリブ運動でもある。
5・紅館(福岡)
森崎和江の<集団的エロス>に通じる紅館は、ほかのコレクティブとは異質ではある。「対関係と共同性」をテーマとし、男衆のイエ(宿)、女衆のイエ(宿)、子育てのイエ(宿)があり、「村中の女どもが、あるいは男どもが仕事の合い間に立ち寄って、あるいは年寄りのおじいやおばあが終日、村の子どもたちを育てている風景が想い起こされる」と紅館の文章に西村さんは触れている。
こうして1から5までを見てくると、リブのコレクティブは地域の特性の中で、活動をして来たし、多様に、個別に、そしてなによりもそれらを担った女たちのそれぞれの想いが情熱の狼煙をあげたのだということがわかろう。これがリブの女なのである。
そして、本書には触れられなかったが、もっと多様なリブ運動もあったし、70年代の戦いが、労働の場、マスコミの場、文学の場、一夫一婦制度婚姻の場において、今、確実に動き始めているということを確認したいと思う。
しかし、現政権の悪辣なバックラッシュも同時に起こっているのだ。35年前をあらためて掘り起こしてくださった膨大な労働に感謝し、この著書が幅広く読まれることによって、別の視点からのリブの著書が出ることを期待したい。
目次 序章 L文学とウーマンリブ 1 .L文学 2 .リブと「性の解放」 3 .「個の解放」とは何か 4 .「たつのこ共同保育所」
第一章 日本のウーマンリブの歩み 1 .ウーマンリブの歩み 〈全共闘とウーマンリブ〉〈ウーマンリブの誕生〉〈リブ合宿からリブ大会へ〉 〈リブ新宿センターの活動〉〈リブ新宿センター休館へ〉 2 .リブからフェミニズムへ 3 .日本のリブのコレクティブの特徴 〈リブのコレクティブの特徴〉〈リブのコレクティブの形態〉
第二章 女だけのコレクティブ・リブ新宿センター 1 .リブ新宿センターの日々 〈「ぐるーぷ闘うおんな」のコレクティブ〉〈リブ新宿センター設立の目標〉 〈構成メンバー〉〈経費〉〈生活〉〈共同性〉〈関係性〉 2 .リブ新宿センターが提起したもの 〈コレクティブの消滅〉〈連合赤軍とリブの接点〉〈問題の整理〉 〈連合赤軍の問題〉〈連合赤軍についてのスタインホフの指摘〉 〈ご飯粒のひっついた関係性〉
第三章 子育ての共有化をめざした「東京こむうぬ」 1 .沖縄でのタケとスガ 2 .「東京こむうぬ」の人びと 〈「東京こむうぬ」の経緯〉〈「とうりゃんせ 1 号」から保育所開所の頃〉 〈「とうりゃんせ 2 号」の頃〉〈ベビーカー問題に明け暮れた頃〉 〈「総括」を出すに至った頃〉 3 .子供の共有化と母の不在 〈子供の共有化〉〈母の不在〉〈多層のグループのなかの位置づけ〉
第四章 全国のリブのコレクティブ 1 .北海道――「札幌こむうぬ」 〈北海道リブ合宿〉〈「札幌こむうぬ」の活動〉〈夜間保育所問題で札幌市とやりあう〉 〈「共同保育館ばく」をつくる〉〈北海道リブの原理的な問題提起〉 2 .大阪――「庄内コレクティブ」 〈コレクティブをめぐる議論〉〈「庄内コレクティブ」の誕生と崩壊〉 〈二四時間共同保育の実現へ〉〈崩壊―再生の根強さが関西リブ〉 3 .九州――「紅館」 〈対関係と共同性の提起〉〈子産み・子育てはどこでやる?〉〈「自立」めざして解散〉
第五章 優生保護法改悪をめぐる七〇年代リブの闘い 1 .優生保護法改悪阻止のリブの論理 〈優生保護法改悪の動きとリブの反論〉〈「産む産まないは女が決める」〉 〈障害者からの問いかけ〉〈中絶への恐れとそこから自由になりたいと希求する矛盾〉 〈「胎児は命か」をめぐる議論〉〈障害者との共闘〉〈改定阻止グループのなかでの対立〉 〈田中美津の「〈テーマ〉堕胎の権利」〉 2 .リブのサブカルチャー化 〈式根島合宿〉〈資料提供に徹する〉〈優生保護法改悪を陰謀説で解く〉 3 .リブの優生保護法改悪阻止闘争の今日的評価 〈「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」の視点から〉 〈優生保護法改悪阻止の論理にみるリブの先進性と限界〉
終章 リブのコレクティブが告げる「個」と「共同性」 1 .リブのコレクティブの行く末 〈リブの近代主義批判が引き寄せた前近代性〉〈田中美津の「強い主体」〉 〈コレクティブのなかの権力装置〉〈諧謔精神と倫理主義〉〈「個」と「場」〉 2 .新しい「家族のかたち」 〈「親密圏」と共同体〉〈「複数の母」〉〈人と人がつながりうる「住まいの形」〉 〈「コレクティブハウジング」の試み〉 3 .現代の若者たちが求める共同性 〈「自己」と「他者」〉〈超越性と感動ネタに諧謔精神を!〉 あとがき
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表紙から
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