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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2007年10月03日20時37分掲載
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日本の「国際貢献」のあり方に真剣な論議を 福田新政権の対応に注目 池田龍夫
安倍晋三首相突然の辞意表明――9月12日正午すぎ、衝撃のニュースが全国津々浦々に旋風を巻き起こした。 参院選挙(7・29)で歴史的大敗北を喫した安倍晋三政権は、8月27日内閣改造を断行して、「私の内閣」延命策に狂奔していたが、難局打開のメドが立たず,支持率は下がりっ放しで窮地に追い込まれていた。衆、参・与野党勢力〝ねじれ現象〟によって、「55年体制」から「07年体制」へ様変わり――9月10日召集の臨時国会は、迫力不足の所信表明演説で開幕、12日午後2時からの代表質問で論戦の火蓋を切るはずだった。その直前、安倍首相の〝敵前逃亡〟ともいえる暴挙が、議会制民主主義を踏みにじった。
昨年9月発足した安倍政権は、「美しい国」「戦後レジームからの脱却」を呼号し、17回もの強行採決を行なって、「教育基本法改正」「国民投票法」などの重要法案を一方的に成立させてきたが、「年金」と「政治資金」スキャンダルが国民の厳しい批判を浴びて参院選大敗北につながった。参院勢力の与野党逆転によって、11月1日の期限切れが迫った「テロ対策特別措置法」延長に〝赤信号〟が点ったことが、首相を追い詰める最大の決め手になったようだ。安倍首相は所信表明演説で「謙虚に反省し、野党の意見をよく聞いて…」と掌を返すように低姿勢を演じたものの、時代の流れに対応する構想力・判断力と勇気が乏しく、政権を投げ出さざるを得なかったのである。
▽国際公約?の〝給油活動〟で行き詰まる
安倍首相はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれたシドニーで9月8日、ブッシュ米大統領と会談。首相は「参院選後も日米同盟強化の基本方針に変更はない。海上自衛隊による給油活動は継続が必要であり、最大限努力する」と述べ、大統領は「日本の支援に感謝したい。日本の支援は米国をはじめ、テロとの戦いに参加している国際社会のメンバーにとって不可欠だ。引き続き支援を期待する」と応じて手を握った。大統領以外の米高官からも「給油継続」の圧力をかけられていた首相は翌9日、現地での記者会見で「インド洋での給油活動が国際公約となった以上、私は職を賭して取り組む。(活動を継続できなければ)職にしがみつくことはない」と見栄を切ってしまった。
10日朝刊が新聞休刊日だったため、同日夕刊各紙が「給油継続できねば退陣」との大見出しで伝えると同時に、所信表明演説を報じた。民主党との妥協点を見出せないまま、破れかぶれの奇手に出たと思わせたが、2日後に尻尾を巻いて辞任とは、正気では考えられない〝燃え尽き症状〟だ。あるいは、「裸の王様」が自分の姿に気づいて、城へ逃げ込んだ様子になぞらえられる〝辞任劇〟だった。退陣会見では目をうるませ、「現状では国民の支持を受けるのは難しい」ので「局面を展開するため辞任する」とのセリフを7回も繰り返す焦燥ぶりが目立つだけで、突然辞任の説明は皆無と言っていい。
安倍シンパと目されている桜井よしこさん(評論家)から、「(野党と)戦う前に敵前逃亡したようなもので、最初から最後まで戦わなかった。判断がすべてワンテンポ遅れている。これで、安倍さんの政治生命が終わっただけでなく、総選挙が行なわれれば、結果次第では自民党の終焉になる可能性がある」(読売9・12夕刊)とコキ下ろされる醜態だった。「テロ特措法問題で小沢民主党代表が党首会談に応じなかった」との泣きごとを述べて同情を請うている姿は哀れで、年金・政治資金の失政につき国民に詫びる言葉がなかった点でも、安倍政治がいかに無策・無能だったかが分かるではないか。
▽早期衆院解散、真剣な国会論争を望む
そもそも「戦後レジームからの脱却」を金科玉条のように言い募ったことが大間違い。敗戦後のサンフランシスコ平和条約を否定するような誤った歴史認識が、内外の反発を買ったのは当然の成り行きだ。従軍慰安婦問題での欺瞞的釈明が、米国議会を怒らせて「謝罪要求決議」にまでエスカレートさせた罪は大きい。また、国民の多くが望んでいない「教育基本法」改正を強引に成立させて「愛国心」を盛り込んだ権力的手法など〝戦前回帰〟を企む姿勢に、良識ある国民はハラハラしていたのである。
「海自の活動継続に対する小沢民主党の方針が変わらない以上、安倍首相の狙いとは裏腹に政治的な空白も尾を引くだろう。後継政権は早期に衆院を解散し、信を問うべきだ。与野党はそこで、新しい国会のあり方と政策路線を、競って国民の前に示してほしい。自民党に注文したい。参院選では、憲法改正など保守色の濃い政権の課題と、年金や地方格差などの身近な国民の課題とのずれが表面化した。格差対策を念頭に『与謝野・麻生政権』ともいわれる新体制は、あいまいな『アナウンスなき脱小泉路線』に踏み出そうとしていた。一方で、テロ対策という安保問題が、政治の焦点として浮上した。総裁選では、安倍政権が先送りしてきた内政・外交論争を戦わせるべきだ」(朝日9・13朝刊)と、「国民の信を問え」と迫る。
「政権担当能力があるのかとさえ疑わせる事態を招いた責任は、安倍首相のみならず自民党にもある。もはや衆院の解散・総選挙で混乱を収拾するしかない。民主党に政権をいったん渡し、その選挙管理内閣のもとで解散してもいいくらいだ」と、毎日9・13社説も厳しく斬り込む。 東京新聞も同日社説で「けじめが要る。このまま総理総裁を選んでは、安倍氏と同様、政権選択の審判を受けない自公政権が続いてしまう。潔く下野するか、衆院解散・総選挙で出直す。選択すべき道は二つに一つである」と指摘。読売・産経・日経もそろって、政治空白による政局混迷を憂慮する論説を掲げていた。
自民暫定政権は止むを得ないにしても、早期解散・総選挙を求めるのは当然の流れである。
▽クールに「給油活動」の是非を論じよ
民主党の「給油活動」延長阻止の方針は固く、参院で政府与党案が否決され、廃案となるのは必至である。それでは給油できなくなるため、自民党内では「新法」を提出する案が急浮上。「新法」が再度参院で否決されても、「11月10日までの会期」を延長すれば、参院で否決された場合に衆院で再議決できる憲法第59条の「三分の二条項」を使って押し切ろうとの戦術だ。参院へ送付された法案を60日以内に議決しなかった時には、衆院側は参院が否決したとみなして、衆院の与党三分の二以上の力で再議決、法案を成立させることは可能だが、強引な採決は望ましくない。安倍首相退陣によって今後どう対処するかは全く予測できないが、先月号の本欄で詳述した通り、インド洋での給油実態とアフガニスタン情勢を検証し直し、「日本の国際貢献のあり方」を真剣に論議することこそ先決だ。
「テロ特措法」はアフガニスタンのテロ対策のための法律だが、イラク攻撃向けの米空母などに転用されているとの「米第五艦隊HP」の情報が流れて物議をかもしている(筆者も同HPにアクセスしたが閲覧不能。削除されたようだ)。いったん他国に給油された油の行方の追跡は困難だが、「イラク作戦に転用」の疑いは依然残る。
いずれにせよ「テロ特措法」は〝国際貢献”の名のもとに、過去3回延長されてきた。国会への実態報告もなく、アフガン情勢の変化に対する論議もないままエンドレスの継続に疑いを持たないことこそ不思議だ。シーファー米大使も小沢代表との会談で「給油情報」の提示を約束しているので、防衛省も積極的に情報を開示すべきだ。「時限立法」延長の是非を論じることは国会の責務であり、「国際公約」「軍事機密」を盾に、論議を封じてはならない。
民主党は今国会に提出する法案を「イラク特措法廃止」「年金保険料流用禁止」「政治資金一円以上の領収書添付義務」の3法案に絞り、野党が過半数を占める参院に提出して先議する戦術で臨む方針だ。いずれも、政府自民党が反対しにくい法案で、福田康夫新政権が対応を誤れば国民の反撃を受けることは必至。年末・年始にかけ激しい与野党攻防が続くに違いない。
折からブッシュ米政権も、イラク派遣米軍の撤退をめぐって苦境に立たされている。来年の大統領選を控え、政権奪還を目指す民主党の攻勢は激しさを増してきた。奇しくも日・米民主党の追い上げムード。日米関係の修復のためにも、健全な政権選択を切に望みたい。 (池田龍夫=ジャーナリスト)
*本稿は、「新聞通信調査会報」10月号に掲載された「プレスウォッチング」の転載です。
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