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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2007年10月13日17時07分掲載
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山は泣いている
5・山のトイレ事情──富士山とチベット 山川陽一
第2章 汚れる山
▽「富士の羽衣」の壮観
山のトイレ問題がクローズアップされて久しい。数年前、富士山を世界自然遺産に申請しようという動きが起きたとき、山小屋がシーズンオフに排泄物を放出した際のペーパーが裾野まで尾を引いて残留し、それを人々が富士の羽衣と称しているという写真入の記事が新聞にでて有名になった。さすがに、今は富士山も地元や環境省の努力で随分と改善されたが、大勢の登山者で溢れかえる夏山のハイシーズンには、まだなかなか快適なトイレ事情というわけにはいかない。富士山に限らず、全国の有名な山では必ずトイレ問題が勃発していて、地元はその対策に苦慮している。特に日本百名山の山に問題が顕著である。
考えてみれば、わたしがせっせと山に登っていた昭和30年代を思い起こしてみると、野営で焚き火をしても、野糞をしても何も問題になることはなかった。登山者がそれだけ少なかったからなのだが、登山者の絶対数が増加し、更にそれが百名山ブームで一極に集中すると、環境に与えるインパクトと人にとっての快適さの両面から大きな問題がでてくる。
近年この問題については、環境省も、山小屋経営者も、山岳愛好者も、それぞれの立場からいろいろな努力を重ねてきており、専門の研究団体や企業も出てきているが、建設費がかかりすぎる、技術的に問題が残っている、環境上の問題を残しているなどで、決め手になる対策が確立されていないのが実情である。例えば、わたしの関係している「高尾の森づくりの会」では、毎月の定例作業日には百人に及ぶボランティアの人が集まるので、携帯トイレを1個100円で販売し、排泄物は各自自宅に持ち帰って処理してもらうルールにしてきた。 これとて、やむを得ずやってきたことで、コストがかかりすぎることや使用する人に抵抗感があることに加えて、大量の廃棄物(ジッパーつきビニール袋と紙おむつ素材の内容物)が出ることを考えると、山にはやさしいかもしれないが、地球環境全体にとっては果たしてやさしい対策かどうか、大きな疑問を残す。
森武昭さん(神奈川工科大学教授)の分類によれば、対処方法として(1)入山規制・入山料の徴収(2)し尿の持ち帰り(3)し尿の搬出(4)環境にやさしいトイレの設置(5)その他(登山者のマナーによる対処など)の五つの類型があり、それぞれに特徴と問題点があることを指摘している。一把ひとからげで論じるのではなく、森さんのように類型分けして、それぞれのジャンルごとに決め手になる決定版を追求していく科学的アプローチと努力が求められる。
われわれ登山者として、こころがけ次第で誰にでもすぐにでもできる対策はマナーの向上である。
▽日本人の山登りを見てくれ!
2005年秋、わたしは、母校である慶応義塾大学山岳部の創部90周年記念登山隊に参加して、チベットヒマラヤの秀峰カルション(6674メートル)に登りに行った。残念ながら、自分自身はC3(6150メートル)までで体力の消耗と酸欠状態が激しく、あえなく下山したのであるが、仲間ふたりが未踏の頂きに立つことが出来た。自分としては相応の準備をして臨んだつもりだったが甘かったのだろう。空気の量が少ないということが如何に大変か思い知らされた山行であった。
場所は、チベットの中心都市ラサの南西150キロ・ヒマラヤ山脈の東端に位置し、ブータンの国境に近い。BC(ベースキャンプ)周辺はヒツジの放牧地帯で、たまに訪れるヒツジの群れと羊飼いしか訪問者はいない。そこから上の山岳地帯は人も家畜も未だ立ち入らない無菌地帯である。
そんな場所であるから、環境問題といっても日本の山やエベレストのBCのように、まだ自分たちのウンチをどうしようかなどと悩む必要は全くない。BCでは、使用後のペーパーを燃えるゴミとして回収する程度の配慮をすれば、後は自然の自浄能力に任せれば充分であった。ただ、そういう所であるからこそ配慮が必要なことがある。環境意識の未熟な現地要員にまかせておけば、発生したゴミや不要物は多分全部放置されてしまう。登山隊自身も自分たちの体力面と経済的面から安易な道を選んでしまうことになりかねない。その延長線上に野口健さんが提起したエベレストのゴミ問題があると思う。以下は、わたしが登山隊の報告書に補稿として書いた一文である。
「山を汚さないで帰ってくることは、ぼくにとって頂上を手に入れると同等に重要なことであった。『慶應隊が登った後にゴミの山が残った』などという悪評が立たないようクリーンな登山をしたい、こんなことを隊長にお願いし、隊員みんなに訴えた。みんな諸手をあげて賛成してくれた。下山にあたり、自分たちが出したゴミ、余った食料パック、ガスボンベ、不要になった道具類など、すべてを運び下ろした。一部の人間の自己満足的行為ということではなく、これから山に登る者は誰もが、地球環境を念頭に置いた山登りをしなければならない。 ぼくたちの下山後入れ替わりにドイツ隊が頂上を目指してBCを出発していった。 『さあ、どうぞ、日本人の山登りを見てくれ! 頂上まで足跡しか残していませんよ。』」(「カルション峰登山報告書」から転載)
(やまかわ よういち=日本山岳会理事・自然保護委員会担当)
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転載について
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キヌガサ草。





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