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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2008年02月02日11時52分掲載
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山は泣いている
19・自然と人間の暮らし やっかいだが永遠の課題を考えるフォーラム 山川陽一
第5章 山と文化・2
「自然と人間の暮らしを考える」フォーラムインを標榜して、全国各地で開催されてきたフォーラムインの集会が、勝沼・八ヶ岳の20周年記念集会を機に幕を閉じた。この集まりは、わたしたち日本山岳会の自然保護委員の仲間である蜂谷緑さんが主宰して20年前に始まった。毎年1回、日本各地の山麓の村落や町を主会場にして、その地にかかわりのある歴史や文化を語り、自然保護を論じ、音楽や演劇を鑑賞し、そしてゆかりの山や森で遊ぶ。単なる山登りの集まりでもないし、単なる音楽会や演劇のイベントでもない。大上段に自然保護を振りかざしたシンポジウムでもない。 参加する人たちも、山登りをする人だけというわけではなく、かつて、この集まりに参加してファンになった人や、彼女の関係するいろいろな団体や個人的なつながりの人たち、その友人など、まったく種々雑多である。メインのテーマも、その時々で、播隆上人だったり、武田久吉だったり、宮澤賢治や柳田國男だったりするのだが、どれもこれも、にわか造りのものではなく、彼女が長年暖め続けてきたものをテーマアップしたものである。 彼女自身は決して表面に出ないが、登山界だけでなく、文学、演劇、音楽など、幅広い領域に見識と人脈がある彼女が、1年がかりで周到な準備をして当日を迎えるから、毎回、参加した人たちは心から楽しい時間をすごすことができる。こんな集まりが消えてなくなってしまうのを残念がっているのは、わたしだけではなく、彼女とこの集まりをよく知っている人たちの共通の気持ちであろう。
自然保護というと、えてして、一木一草手をつけてはいけない、開発は絶対ダメという極論に振れがちであるが、そう叫ぶのは、ある意味で簡単なことである。叫んで物事が解決すればいいが、叫んだだけでは何の解決にもならない。人類が地球上に人間社会を築きあげてしまった以上、自然と人間のかかわりの中で、どこに調和点を見出すかの作業こそが自然保護活動に携わるわれわれに与えられた命題である。
その作業は、自然と人間の関係を足して二で割るといった類のものではない。自然と人間の両方に愛情の目を向けながら、しっかりスタンスを固めて方向性を出していくというやっかいな作業である。その解は、しばしば、自然と人間が織り成す歴史的なかかわりの中にヒントが隠されているように思われる。
正面きって自然だけを論じるのではなく、自然の中でその恩恵を受けながら営まれてきた人間の暮らしとそこで培われてきた文化に目を向けよう、こんなことを20年前に標榜して、このテーマを追求し続けてきた蜂谷さんの慧眼にいまさらながら感心する。
今流に言えば、地球環境を守るため「保護と利用のバランスをどうとるのか」「自然との共存をどう実現するか」といったことなのだろうが、彼女なりの視点から “自然と人間の暮らしを考える”という平易な言葉で呼びかけ、問題を投げかけ続けてきた。この言葉の中に隠された本質的な問題は、フォーラムインが幕を閉じても、自分たちの永遠の課題として持ち続けていかなければならないものだと考えている。
(追記) 蜂谷緑さんは、山岳雑誌「アルプ」の仲間で、ご主人は中央公論や婦人公論の編集者でありアルプの執筆者のひとりでもあった近藤信行さん(現山梨県立文学館館長)である。著書には、彼女が青春の一時期、疎開先として過ごした安曇野時代を綴った「常念の見える町」などがある。彼女と接していていつも教えられることは、人間年齢ではない、熱い気持ちを持ち続けることがいかに大事かということである。 彼女は表面に出ることが嫌いなひとだから、もし本文を事前に見せたら、「あら、私そんな大層なこと考えていないわよ。弔辞みたいなことやめてよ。」と一言の下に却下されてしまうにちがいない。(つづく)
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ダケカンバ(志賀高原)。
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