暮れに出て好評発売中の岩波新書『北朝鮮は、いま』につづいて、日刊ベリタに連載された記事が相次いで出版化される。『槙枝元文自伝「教育・労働運動に生きて80年」』が3月にアドバンテージサーバー社から刊行予定。『笑う真犯人─検証・恵庭冤罪事件「13のナゾ」』は筑摩書房からの出版が決まり、編集作業が進んでいる。いずれもネット記事の書籍化という新しい流れの成果であるとともに、ベリタの記事への評価の高さを示すものといえる。これら以外の記事についても、本にすることでさらに多くの人びとに読んでもらえるよう計画している。(ベリタ通信)
『北朝鮮は、いま』は、韓国のインターネット新聞「プレシアン」に2006年4月から8月にかけて連載された「2006年、北朝鮮はどこへ」を日刊ベリタに翻訳・掲載したものに、石坂浩一・立教大学準教授(韓国社会論)が手を加えて昨年12月22日に岩波新書として出版された。
プレシアンは、「オーマイニュース」ととともに韓国を代表するネット新聞で、専門性の高い解説・評論で高い評価を得ている。この連載は、韓国の研究者らでつくる「北朝鮮研究会」の最新の成果を韓国の読者にわかりやすく紹介することで、北東アジアの平和と繁栄に欠かせない北朝鮮の実像についてただしい理解を深めてもらおうという目的で始まった。政治、外交、経済から文学や犯罪まで多角的に、「変わる北朝鮮」と「変わらぬ北朝鮮」を分析し、好評を得た。
日刊ベリタは、拉致と核に偏重しセンセーショナリズムが目立つ日本のメディアの北朝鮮報道とは異なる視点から、この国についての多面的で冷静な理解を私たちができる一助にできればと思い、転載を開始した。連載は、韓国の人びとの現在の北朝鮮理解を知るうえでも興味深い内容となっている。
また、今回の出版はネット時代における日韓市民の新しいメディア協力の成果ともいえ、日刊ベリタではひきつづきプレシアンの北朝鮮報道の転載を進めている。 *プレシアン(1月24日の紹介記事)
http://www.pressian.com/Scripts/section/article.asp?article_num=40080123190908
『槙枝元文自伝「教育・労働運動に生きて80年」』は、日教組委員長と総評議長として戦後日本の教育・労働運動に大きな役割を果たした槙枝氏の足跡を、自らの生い立ちにまでさかのぼりまとめたもの。同氏はいまの若い世代には「過去の人」かもしれないが、日本の教育と労働状況が大きく変わろうとしている現在、戦争体験世代である槙枝氏らが戦後の日本にどのような夢を託して活動してきたかをあらためて知ることは無駄ではあるまい。
槙枝氏は過去を振り返るだけではなく、自身の労働運動の総仕上げのつもりで結成に努力した「連合」が事志と異なってしまったことへの反省も示し、21世紀の日本のあるべき進路への運動論を次世代に提言している。連載と出版はその意味でも貴重な証言といえる。
連載は来週掲載予定の<103>回で終了、教育関連出版社として知られるアドバンテージサーバー社で3月刊行をめざして編集作業が大詰めにさしかかっている。
『笑う真犯人─検証・恵庭冤罪事件「13のナゾ」』は、ジャーナリストの山口正紀氏(元読売新聞記者)の95回にわたる連載。2000年3月、北海道恵庭市で起きた24歳の女性会社員焼殺事件の真相をねばり強い取材で明らかにしようとする力作で、連載中から大きな反響を呼んだ。
「恵庭OL殺人事件」として大きく報道されたこの事件では、被害者の同僚女性Oさん(当時29歳)が殺人などの疑いで逮捕され、05年9月に札幌高裁で有罪判決を言い渡された。新聞・テレビ・週刊誌は事件発生当初から「三角関係による嫉妬殺人」として、犯人断定報道を繰り広げた。Oさんは一貫して容疑を否認し、犯行の直接証拠が見つからないもかかわらず、警察と検察は彼女を犯人に仕立て上げようとした。地裁と高裁はともに、「疑わしきは被告人の利益に」という戦後日本の刑事裁判を支えてきた大原則・鉄則を根底から崩す判決を下した。
これに対して山口氏は、膨大な関連資料の分析と精力的な取材でつぎつぎに捜査と裁判の疑問を解き明かし、真犯人はOさんではなく警察周辺の関係者ではないかという結論にたどりつく。
出版についてのくわしい報告は山口氏と筑摩書房との編集作業の進展をみながらあらためておこなうが、その前にぜひ読みたいと思う方はぜひ日刊ベリタで購読していただきたい。
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