2007年前半に実施された米軍兵力3万のイラク増派のあと、メディアは一時、その「成果」「治安の改善」を伝えましたが、その後、爆弾テロなどがごく散発的に報じられるだけで、イラクの現状は私たちの目にほとんど見えなくなっているようです。私たちの国・日本は情報鎖国下にあるといわれ、米国の軍事行動に関するわが国の主流メディア報道は米メディアの後追いに過ぎないといわれるゆえんです。本稿では、イラク系米国人ジャーナリスト、ダール・ジャマイルがイラク国民の生の声を伝えています。(TUP速報)
トムグラム: ダール・ジャマイル、イラク論議に反映されない声を伝える トムディスパッチ・コム 2008年1月27日
[トム・エンゲルハートによるまえがき]
古い小話がある。ある男がいつまでもしつこく自分のことを言いつづけるのだ。最後に男は友だちに向きなおって、こう言う──「さて、ぼくはもうじゅうぶんだ。君はどう? ぼくのことをどう思う?」。 米国の私たちは、ともすればこの男みたいになるようだ。私たちがごくたまにしか聴取しない声のなかに、私たちの世界を理解するのに欠かせないものがどっさりある。はなから相手にされていないのだ。今週のトムディスパッチ《*》で、ニック・タースが、敗戦後のヴェトナムに置き忘れられた声を届けてくれたが、今回のダール・ジャマイルは、負け戦が進むイラクからの声を伝える。
イラクのこととなると、主戦論者と反戦論者とを問わず、私たちアメリカ人は、いろんな意味で万事仕切ってしまおうとする。みなさんがテレビをご覧になるとき、普通のイラク人らが自分の暮らしについて話したことは──あるいは、「話し手」に相当するイラク人らがテレビに登場したことは──昨年中、時間の長短はともかく、何回あっただろうかと自問なさってみるとよい。私たちはイラクについてベラベラしゃべって、おまけに、例の古いジョークのオチの部分を再現さえしている。私たちのことをどう思うか、何回、イラク人に聞いただろうか? また、米国がイラク国民にもたらした暮らしむきのことは、どうだろうか? <a href="http://www.tomdispatch.com/post/174885" target="_blank">(原文へのリンク)</a>
ダール・ジャマイルは異例である。ジャマイルの著した眼を釘づけにする本“Beyond the Green Zone: Dispatches from an Unembedded Journalist in Occupied Iraq” (Haymarket Books, 2007)《*》[仮題『グリーン・ゾーンのかなたに──占領下イラクに滞在する自由取材ジャーナリストからの速報集』]を手にとって、たぶんいちばん印象に残るのは、耳に届くイラク国民の声がいかに多いか、そして、彼らの国に対する私たちの考えかたについて、いかに異なった観点を彼らが示してくれるかということだろう。では、ここにジャマイルの最新記事をお届けする。トム <a href="http://www.amazon.co.jp/dp/1931859477" target="_blank">(原文へのリンク)</a>
「実態はまったく違います」 イラク国民が伝える自国内の「成果」と「前進」 ──ダール・ジャマイル
今年3月19日は、イラク侵略の嚆矢〈こうし〉となったバグダッド「衝撃と畏怖」空襲の5周年にあたるが、あの国の米軍占領はと言えば、終結はまだ視野に入らない。共和党の大統領候補ジョン・マケインに言わせると、占領は決して終わらないかもしれないそうだ。1月7日、彼は、米軍のイラク駐留は100年継続するという考えについて、自分としては結構このうえないと思うと記者たちにハッキリ言った。「わが軍は日本に60年間駐留している。韓国には50年かそこらだ……アメリカ人が傷つけられたり損なわれたり害されたり殺されたりしていないかぎりの話だが。私としては、それで結構だ」《*》 <a href="http://www.motherjones.com/mojoblog/archives/2008/01/6735" target="_blank">(原文へのリンク)</a>
「傷つけられたり損なわれたり害されたり殺されたり」しているイラク人については、もちろん、マケインは一言も口にしなかった。じっさい、テレビ電波に充満し、大統領選挙初盤戦に集中する言葉、非難合戦、「討論」の興奮のさなか、近ごろ、イラクに関して──とりわけイラク国民に関して──まがまがしい沈黙がほぼ支配しているようだ。
ABCニュースとワシントン・ポストによる最近の世論調査《*》によれば、アメリカ国民の64パーセントがイラク戦争は遂行する価値がないと考えている。アメリカの世論は、兵力増派後の数か月間の有望な展開──主流メディアが伝える「成果」の一切合財──に、じっさいは影響されていないことがハッキリしているようだ。いま、メディアは、イラクは経済問題に比べて、だんぜん二の次になっていて、もはやアメリカ国民の関心をさほど引かないと説いている。 <a href="http://abcnews.go.com/PollingUnit/Vote2008/story?id=4133095&page=1" target="_blank">(原文へのリンク)</a>
まれに例外はあるが、またもやあのメディアは、国民の集合意識はさておき、アメリカの風景からイラクの破局を消し去ってしまうことに手を染めている。最近、私はふとこう思った──あちら側のイラク(2003年から05年まで延べ8か月にわたる私の占領取材地)で、私の友人や知人たちは、みずからの暮らしや国の命運について、なにを思っているのだろう? いや、それだけではない。自分たちに対する私たちの態度について、なにを思っているのだろう? アメリカでいう「成果」──そして、沈黙──について、なにを思っているのだろう?
2004年10月6日、ジョージ・W・ブッシュはこう演説した──「イラクはお遊びではない。混乱とテロに対して、文明が断固たる姿勢を示している土地なのだ。われわれはためらってはならない」《*》 <a href="http://www.whitehouse.gov/news/releases/2004/10/20041006-9.html" target="_blank">(原文へのリンク)</a>
イラク国民は、もちろん、この「混乱とテロに対する断固たる姿勢」をわが身のこととして目撃しつづけている。しかし私たちの世界では、彼らは、おおむね声なき目撃証人である。アメリカ人たちは、兵力増派後にイラクで得られた「成果」や「前進」の多寡を内輪だけで論じているかもしれないが、その議論たるや、ほとんどどんな場合でも、イラク人は棒線画[○<―<]──あるいは、死体──にすぎない。イラク人にとって、自国のことであり、彼らが生き、苦しんでいる不穏な現実であるが、それに対するアメリカ人の見方(あるいは複数の見方)について、彼らがどう判断するのかを知るために、最近、私はイラクの知人たちにEメールで次のように質問している──あなたが占領軍にとって「二義的存在」になるということは、なにを意味しているのでしょうか?
イラクの大学教員、S・アブダル・マジード・ハッサン教授が次のような返信を書いてきた──
「2007年は、占領の歳月のなかでも最悪の血なまぐさい時期でした。ブッシュ氏に情勢がどれほど上出来に見えるとしても、実態はまったく違います。高学歴のイラク人450万が、占領反対というだけでいまだに免職され、あるいはいまだに力ずくで郷里から追われているというのに、ブッシュ氏やメディアのいう正常な生活とは、どのような類のものなのでしょうか? コンクリート壁の鳥かごのなかで(彼女は、バグダッド近郊全域の周りにアメリカ人によって建造されたコンクリート壁のことを言っている)人さらいや殺し屋や占領軍に警備されて、どうやって正常な生活を送れるのでしょうか? 何十人もの縁者や愛する人たちが、失踪したり投獄されたりして生死さえもわからず、あるいは拷問のあと、身元不明のままゴミ箱に捨てられているとすれば、どうやって正常な生活を送れるのでしょう?
「パンを買いに出るたびに、家族に二度と会えるかどうかわからないので、別れを告げなければならないというのに、どのような類の正常な生活を生きられるのでしょう? ブッシュ氏にとって、なにが正常な生活なのでしょう? 運がよければ一日に何時間かの通電、飲用水は足りるかどうか、医療はストップ、子どもに食わせるにも仕事はありません……
「年端もいかぬ10代の娘たちは、民兵や兵士らが家宅捜索に押し入れば、家族の手で守りきれないので、嫁に出されています。女性はもはや付き添いなしでは出歩けません。優秀な大学教員の60パーセントが──政府側の民兵に殺されたり国外脱出を強いられたりして──職場から追い出されているというのに、大学生たちは、どんな類の教育を受けるのでしょう? 占領軍が敵対勢力を恐れて入域を怖がるあまり、サイディヤやアラブ・ジュボアといった(バグダッド近郊)地域が爆撃されるのは、正常なことでしょうか? 人間がいなければ、すこぶる平和になるのです」
1月8日、ブッシュ大統領は、デイヴィッド・ペトレイアス将軍、ライアン・クロッカー駐イラク大使、それに米国が支えるイラク首相ヌーリ・アル=マルキ、米国の地域復興チーム(PRT)[地域支援活動をおこなう“軍民合同”チーム]のイラク駐在員らとテレビ会議をおこなった。のちほど、記者会見《*》で大統領は「イラクに大きな希望があることが、私の議論から〈ママ〉明らかだった。イラク国民は、昨年の劇的な治安状況の改善に見合った政治的前進を目のあたりにしつつある」と語った。彼が言うには、PRT駐在員らは「イラク全土の地域で暮らしは正常に復しつつあり、子どもたちは学校に戻り、商店は再開し、市場は商売でにぎわっている」と彼に話した。ブッシュは、「2007年、とりわけ2007年末を、だれの予想をも上回る、信じがたいほどの成果に導いた」として彼らに感謝を表明した。 <a href="http://www.whitehouse.gov/news/releases/2008/01/20080108-5.html" target="_blank">(原文へのリンク)</a>
イラクのジャーナリスト、モハマド・マフリーは、いささか違った状況の捉えかたをしている。彼は「ブッシュの問題は、配下が彼の嘘を毎度のように信じることだ」と私に書いてきた。「ブッシュの復興チームは、さっぱり見かけない。連中が地上高1寸のものでも建てたというなら、見せてもらいたい」
ファルージャ出身のイラク政治アナリスト、マキ・アル=ナザルは、家族ともども外国暮らしを強いられている。2004年11月の米軍突撃により市街の4分の3が破壊された彼の街には、暴力が横行しつづけ、雇用がなく、これといった復興事業もないせいだ。彼は、イラクに関する欧米主流メディア報道に対する思いをこう明かしてくれた──
「メディアは、将軍たちや政治家たちのプロパガンダに追従してはなりません。真実を求めること、嘘を鸚鵡〈おうむ〉返しにしないことが私たちの義務なのです。米軍占領は悪質であり、どれほどメディア宣伝を繰返しても、占領下イラク国内の混乱は隠蔽できません。私たちは、将軍たちや政治家たちが語る真っ赤な嘘を売買する地元や欧米のメディアを恥ずかしく思っています。2007年上・下半期の比較は、噴飯ものです。
「ブッシュと配下の英雄たち、(連合軍暫定当局長官L・ポール)ブレマー、(国防長官ロナルド)ラムズフェルド、現在のペトレイアスは、国民と世界に向かって、イラクについて常に嘘をつきました。米軍兵は日常的に殺されていますし、イラク兵や警官もそうです。社会基盤は破壊されています。かつてアラブ世界の大部分に食料を供給していた国で、いまや飢餓が平常になっています。制裁下12年間のイラクの国情は現在の半分ほども悪くなかったのは、皮肉なことです。解放された結果、私たちは未曾有の腐敗に追いやられました」
イラク駐留米軍増派部隊司令官、デイヴィッド・ペトレイアス将軍は、「われわれとイラク側友人らは・・・・・・引き続き治安分野を超えて未来を見据え、イラク国民が基本公共サービスを改善し、地方市場を復興し、損なわれた社会基盤を修復し、難民家族の故郷帰還を可能にする条件を生みだすのを支援するだろう」と強弁する。
イラク国民は違った知見をもつ。アル=ナザルは次のように現実的だ──
「500万人のイラク国民が海外や国内で難民化したままであるというのに、ペトレイアスは、シリアで飢えていた5万人の(バグダッド)帰還を祝ってほしいと私たちに望んでいます。彼が都合よく言い忘れているのは、帰国者たちは自宅が破壊されていたり他人に占拠されていたりするのを見るということです。彼はまた、国家の治安を、学究や技術職ではなく、彼が結成を許可した民兵団に手渡すということで、誉めてもらいたがっています。イラク国民は、治療薬も、電気も、飲料水も、ほんとうの治安も、行き届いた国境警備も享受していません。それでも、一部の人士らは、イラクで進行していることが喜ばしいと言うのです」
イラク国民は、アメリカ当局者らがいう成果と前進を信じたいのはやまやまだが──わが身を災難に囲まれては──無理な話だ。
バグダッド在住のクルド人教育顧問、37歳のサミー・タヒルは、ペトレイアス、その他による用心深いが強気の主張に対して、次のような評定をくだす──
「イラクでは、いかなる公共サービスにも改善が見られません。それどころか、いまや私たちはもっと悪い状態にあり、ビルを塗装して、見栄えをよくする仕事に舞い戻っています。クルディスタンは、いまだにイラク南部や中部からのイラク人難民でいっぱいです」
これに関して、マフリーは次のように書く──
「もともとイラクを破壊したのは、将軍たちであり、基本公共サービスにはなんの改善も見られない。例えば、バグダッドの大部分では、この2週間ばかり、執筆の時間に停電だ!」
ハッサン教授も、同じような見解をこう書く──
「2003年の軍事作戦の終了時に、アメリカ人が破壊しのこしたもの、それを彼らは過去4年間で破壊しつくしたのであり、イラク人家族の難民化について、その状況を生みだしたのが占領軍とその任命政府であるという単純な理由により、彼らがなにかしたがっているとは、私には思えません。
「この大量難民移動を引き起こしたのは、宗派間の暴力なのですが、これを主導したのは米軍とその同盟軍であり、それも、米国の計画にもとづき、それに宗派の利害を大きく反映したまま公布された“新”イラク憲法にもとづいて、イラク社会を分断するためでした。占領軍は、各地域に対する命令、支配、制圧を容易にするために、イラクを宗派や民族別の小さな地域に分割したいのです。占領の主目的は、イラクと中東地域の石油生産と油田を支配下に置くことです。難民家族の発生も、彼らにとっては許容しうる副次的被害なのです」
タヒルは、こう伝える──
「2007年末の強襲まで、子どもたちはいつも学校に通っていました。米軍が町や村を攻撃したいくつかの地域で、子どもたちを通学停止に追いこんだのは、主として軍事作戦でした。ブッシュは2003年からこのかた同じことを言ってきましたが、イラクでは、状況が常にどんどん悪化してきました。彼と彼の将軍たちは、戦争を継続することによって、イラクと米国とをともに破壊しています。アメリカ経済は戦費を支えきれないでしょうし、イラクは完全に破壊されています」
コンドリーザ・ライス国務長官は、1月15日にバグダッドを電撃訪問したさい、昨年の米軍「兵力増派」が配当を生んでおり、イラクにおける「私の臨場そのものによって、この勢いを後押しする一助になれる」と発言した
マフリーは、米軍の存在とそうした「配当」についての嘆きを次のように語る──
「アメリカ人は、イラクになされたことを気にしていないようだ。連中は、戦争犯罪人であるブレマーを最高勲章で飾りたてた(2004年12月、ブッシュは自由勲章[*]をブレマーに授与)。ペトレイアスのような戦争犯罪人や他のブッシュ政権高官らにも、米国の兵士たちやわが国民が殺されているときに、嘘をついた功績により同じ勲章を授与してもいいではないか?」 [国家の保安に対する貢献など、すぐれた功績に対して文民に授けられる最高勲章]
一方、タヒルはこのような警告を発信する──「あらゆる米国の政治家やアメリカ国民の大多数は(上院議員)マケインと同じ考えかたをしているようです。だが、彼らはイラクが日本や韓国であると考えるべきではありません」
マフリーも同意見だ──「そういう指導層が彼らの国の歴史の最終ページを書くのだろう。そのような策士たちをアメリカ国民が選びつづけるなら、彼らの国の破局が間近に迫っているのが目に見えるようだ」
ハッサン教授は、彼女の同胞の多くほどには手厳しくないとしても、占領が容赦なく長引き、アメリカの大統領選挙戦が加熱しているときに、イラク国民の多くが明確に抱いている心情を次のように述べる──
「たいがいのアメリカ人は、イラク侵略の背後にある真の動機、そして、その戦争が彼らにおよぼす現在および将来の結果を見抜いています。私の知っているアメリカ国民は、親切で思慮深く、分別があります。彼らはこの戦争を終わらせるために必要な手を打つだろうと私は信じています。彼らは、いまでは、これはアメリカ国民の戦争ではないと知っています。これは石油会社の戦争なのです。では、どうして石油会社の欲得のために彼らの若い男女を犠牲にしなければならないのでしょうか?」
米中央軍の前総司令官ジョン・アビザイドは、現在、みずからフーヴァ研究所客員フェローを務めているスタンフォード大学[*]で、米国主導の侵略と占領に関して講演し、「もちろん、狙いは石油であり、これを否定することはできません」と聴衆に語った。アビザイド将軍の評言が出たのは、連邦準備制度理事会の前議長アラン・グリーンスパンが回顧録に「世間周知のこと、イラク戦争の狙いはおおむね石油であると認めるのは政治的に不都合であることが、私を悲嘆させる」と書いてから、ほぼ1か月後のことだった。
米国内の多くの者たちが、ブッシュ政権高官らや(民主、共和両党の)大統領選主要候補たちと同調して、イラク占領という惨事の大きさを把握することを拒みつづけている一方で、イラク国民はこのような贅沢を許されていない。
占領の初年、私のイラク滞在中といった初期のころ、私が会ったイラク人は概して、米国政府の政策とアメリカ国民の願いとを躊躇せずに区別していた。
時がすぎ、ナジャフ、ファルージャ、アル=カイム、サマラ、ラマディといった街に対する野蛮な米国の軍事作戦のあと、アブ・グレイブのあと、ハディサのあと、彼らの国土の社会基盤のほぼ完全な破壊と社会機構の破砕のあと、私は占領に疲れたイラク国民がその線引きを止めるようになったのを目にしはじめた。
最近、バクバの住民(メディア接触に対する報復を懸念して匿名を希望)が、私のイラク人同僚アーメド・アリに次のように語った──「治安の欠如は、占領の直接の結果である。アメリカ人は何千マイルもの海を渡って、私たちの家を壊し、私たちの国民を殺しにきた。彼らは私たちのあらゆる災難の原因だ」
バクバ出身の商人、アブ・タリクは、米軍は意図的にイラクの社会基盤を破 壊したと信じている。彼はアリにこう語った──
「アメリカ人は、電力網、給水所、工場、橋、幹線道路、病院、学校を破壊し、建物を燃やし、国境を開いて、他国人やテロリストが容易に入国できるようにした。こういうことをすべてする人間は、人間性に欠けています。私はアメリカとアメリカ人を憎む」
もうひとりのバクバ住民、アブ・タイセールは、イラク国民の敵意をこのように要約して語った──
「占領が始まったばかりのころ、イラクの人びとは地域における米軍の戦略に気づいていなかった。彼らの戦略は破壊と殺戮にもとづいています。彼らは野望を達成するためにはなんでもやる。いまでは、米国の微笑の背後には憎悪と暴力があることをイラク国民は知っている。彼らは、他者を暴力的といい、テロリストと名指すが、彼らがイラクや他の国でやっていることは、テロの起源であり、精髄なのだ」
退職教師、ジャラル・アル=タエーは、イラク国民がこれまでにも増して信じているらしいことについて、次のようにアリに語った──
「バクバでは、人びとはアメリカ人に激しい憎しみを抱いており、大勢の住民が米軍の敵になった。ディヤーラ地方の住民は、米軍と(バグダッド)政府に虐げられ、不当に扱われている。状況を改善するためには、米軍は当市を市民の自治に委ねるべきだ」
[筆者] ダール・ジャマイルは、独立ジャーナリスト、新刊書“Beyond the Green Zone: Dispatches from an Unembedded Journalist in Occupied Iraq”(Haymarket Books, 2007)
《1》[仮題「グリーン・ゾーンのかなたに──占領下イラクに滞在する自由取材ジャーナリストからの速報集」]の著者。これまでの4年にわたり、ジャマイルは、占領下イラクのほか、レバノン、シリア、ヨルダン、トルコから報道してきた。彼は、トムディスパッチ・コム、インター・プレス・サービス、アジア・タイムズ、フォーリン・ポリシー・イン・フォーカスに定期的に書いている。また、サンデー・ヘラルド、インディペンデント、ガーディアン、ネーション誌、その他の刊行物に寄稿している。それに、独自サイト「ダール・ジャマイルの中東通信」
《2》を開設し、彼の全記事を掲載している。
http://www.amazon.co.jp/dp/1931859477 《1》
http://www.dahrjamailiraq.com/ 《2》
[ダール・ジャマイル記事バックナンバー] <a href="http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/747" target="_blank">速報722号 2007年7月26日配信「Eメールが伝えるイラクの地獄絵」</a>
[原文] Tomgram: Dahr Jamail, Missing Voices in the Iraq Debate Tomdispatch.com., posted January 27, 2008
http://www.tomdispatch.com/post/174886 Copyright 2008 Dahr Jamail
[サイト紹介] トムディスパッチ・コム──抗主流メディア毒常設サイト:
http://www.tomdispatch.com/ 9・11後の私たちの世界を深く理解し、私たちの帝国的な世界が現実にどう動いているのかを明確に認識したい人たちのための評論の場主宰・編集者トム・エンゲルハート:
http://www.tomdispatch.com/p/about_tom 寄稿者一覧: http://www.tomdispatch.com/p/guest_authors コンタクト: http://www.tomdispatch.com/contact/tom_engelhardt
[翻訳]井上利男 /TUP
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