ビルマ(ミャンマー)の反政府デモに対する流血の武力弾圧から半年になる3月26日、デモを主導した「全ビルマ僧侶連盟」と「88世代学生グループ」が共同声明を発表した。両民主化勢力は、その後の国連による軍政と民主化運動指導者アウンサンスーチーさんとの橋渡しが不調に終わったことに失望を示すとともに、軍政が5月に予定する新憲法草案のための国民投票へ「反対」を表明。ビルマ国民は平和的な手段を通じた民主化実現という「最善の事態」を望みつつ、「最悪の事態に立ち向かう用意ができている」と述べている。ビルマ情報ネットワークが日本語訳を配信した。(ベリタ通信)
全ビルマ僧侶連盟・88世代学生グループ 共同声明 ミャンマー(ビルマ)・ヤンゴン(ラングーン) 2008年3月26日
国連はビルマ国民を保護する責任を果たせなかった ビルマ国民は最悪の事態に備えている
(1)2008年3月18日、イブラヒム・ガンバリ特使は国連安全保障理事会にビルマについて報告し、これを私たちは高い関心をもって見守った。特使は今年3月も含め計3回ビルマを訪問したが、毎回、軍政は特使が提示した勧告を全面的に拒絶した。このため私たちはガンバリ氏が自分の任務を遂行できなかったことを正直に報告するだろうと信じていた。国連事務総長は、ビルマの国民和解を進めるためにすべての関係者を含んだ透明で民主的な手続きを踏むよう、軍政に圧力をかけるというマンデートを負っている。私たちはガンバリ氏が安保理に対し、このマンデートを強化するよう求めることを望んでいた。 しかし驚くべき、かつ悲しむべきことに、ガンバリ氏は安保理に対し誤解を招く報告をしたのである。ビルマ国民の立場からは、ガンバリ氏は自らのマンデートを「軍政が説得的な手続きで憲法を起草し、アウンサンスーチー氏と期限を定めた、実質的な内容を伴う対話を行うよう、圧力をかけ、または働きかけること」から「軍政の一方的な行為を支持し、民主化勢力に降伏を示唆すること」へと改めたように見える。これまで私たちは、ビルマ問題に対する国連の取り組みを全面的に支持してきた。だが今回、ガンバリ氏が、軍政に有利な形で、国連を誤解に導いたことに異議を唱える。
(2)私たちは、国連安保理がビルマについて効果的な措置を講じていないことにも遺憾である。ガンバリ特使の誤った方針と、中国、ロシア、南アフリカによる反対のため、国連安保理は麻痺状態にあるも同然で、ビルマ国民を守るという大きな責任を果たすことができずにいる。ビルマ国民は数十年来自国の政府に厳しく抑圧されている。中国、ロシア、南アフリカの各国政府は、国民の意に反して支配を続ける非常に残虐な軍事政権を強力に支持しており、私たちはこれらの政府を強く非難するものである。
(3)私たちはまた、潘基文国連事務総長が国連安保理に対し、ビルマでの仲介を行うという自らのマンデートを拘束力のある決議によって強化するよう求めようとしなかったことも遺憾とする。この18年の間、何人もの国連特使や特別報告者がビルマを訪問し、アウンサンスーチー氏率いる民主化勢力、ならびに民族代表と全面的に協力するよう軍政に働きかけてきたが、実に35回に上るこれまでの訪問は不首尾に終わっている。 国連憲章第15章99条は「事務総長は、国際の平和及び安全の維持を脅威すると認める事項について、安全保障理事会の注意を促すことができる」と定める。ビルマの状況が国境を越えて周辺地域ならびに世界の平和と安定に脅威となっているにも関わらず、事務総長はビルマについて効果的な措置を取るよう国連安保理に要請していない。ビルマ国民から見ると、事務総長はビルマの状況をまったく改善していない。反対に、潘氏が事務総長に就任してからビルマの状況は一層悪化しているのである。
(4)その一方で私たちは、米国、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、EU、スイス、モンゴル、コスタリカ、アルゼンチン、ガーナ、チェコ共和国、ノルウェーといった国々からの継続的で粘り強い支援には勇気づけられている。暗黒の時代にこれらの政府が私たちの側に立ち、私たちと気持ちを同じくし、必要不可欠な支援を行ってくれていることに感謝する。私たちはこれらの国々に対し、これからも私たちを支え続けてくださると同時に、軍政高官や親族、政商を対象とした金融措置の実施などを通じて、軍政に対して最大限の圧力をかけ続けることを求める。そして軍政の憲法を承認しないこと、また国連安保理にも軍政の憲法を承認しないよう働きかけることを求める。
(5)国際社会のこうした動きとは別個に、ビルマ国民は自ら立ち上がり、平和的な手段を通じて軍政の不正や抑圧に抵抗するものである。私たちは、来る国民投票では、軍政の見せかけの憲法に「反対」で応じる決意を固めている。軍政は現在、憲法を承認させようと積極的に、また必死に国民に圧力をかけている。したがって憲法を受け入れまいとする私たちの動きに、かれらが暴力で応じてくることは不可避であろう。私たちの「反対」とは、見せかけの憲法に対する「反対」であり、軍政に対する「反対」であるからだ。国連安保理の協力があろうともなかろうとも、私たちには自らの将来を決する用意がある。 アウンサンスーチー氏は最近「最善の事態を望みつつ、最悪の事態に備えよ」と語った。これは氏の父でビルマ独立の英雄アウンサン氏の言葉でもある。その通り、私たちは最悪の事態に立ち向かう用意ができている。私たちは真理と正義とを求めてたたかっている。勝利するのは私たちである。
全ビルマ僧侶連盟 オーバータ師 テイザー師 パンニャヴァンサ師
88世代学生グループ トゥンミンアウン ニーラーテイン ソートゥン
(日本語訳:ビルマ情報ネットワーク)
英語版(PDF)
http://www.burmainfo.org/politics/88GS_statement200080326.pdf
ビルマ情報ネットワーク(www.burmainfo.org)
|