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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2008年06月07日11時17分掲載
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ブラジル農業にかけた一日本人の戦い
<1>海を渡ったコチア青年 和田秀子(フリーライター)
筆者が横田尚武さんに出会ったのは、2007年夏のことだった。取材のため、起業家や知識人たちが集まる会合を訪れたところ、その席で、ブラジルにおける日系農業の窮状を訴える、横田さんに出会ったのだ。
南国の人を思わせるような、ぱっちりとした二重の目に、日焼けした肌―。その風貌は、どこか日本人ばなれしており、初対面では“日系二世”かと思ったほどだった。しかし、横田さんは長野県飯田市出身。純粋な日本人である。
ここで、少し横田さんの経歴を紹介しておこう。 1941年、農家の五男坊として生まれた横田さんは、18歳まで、地元の長野県飯田市で育つ。転機が訪れたのは、高校3年生の時。たまたま家に置いてあった『家の光』という農業雑誌をめくっていたところ、横田さんの目に「コチア青年募集」という広告記事が飛び込んできた。横田さんは、迷わずこれに応募。18歳で、単身ブラジルに移住することになる。
“コチア青年”とは、終戦後、職もなく不遇な目にあっていた農家の次男や三男を、救済する目的で始められた移住プロジェクトのことだ。農業協同組合を通じて、18歳〜25歳までの独身青年を全国の農村から募集し、当時、中南米で最大の日系農業組合であった「コチア産業組合」が、日本からの青年たちを受け入れた。これを、“コチア青年”と呼んだ。 集まった“コチア青年”たちは、コチア産業組合の傘下にある日系農家に配耕され、4年間の農業研修を受けた後、資金融資を得て独立する。
この制度は、1955年から1967年までの12年間にわたって行われ、その間、約2,500人もの農村青年たちが、単身ブラジルへと渡った。
横田さんも、“コチア青年”の一人として、1960年3月、横浜港から移民船「あるぜんちな丸」に乗り、ブラジルへと向かう。18歳の春のことであった。 以後、40年以上にわたり、ブラジルで馬鈴薯や大豆などの生産に携わってきた。一時期は、ファゼンデーロ(大農場主)となり、巨万の富を築いたと言うが、現在は資金難のため、十分に農地を耕せない状態が続いているという。
横田さんは、窮状にあえぐ日系人の仲間を代表して、資金集めのために3年前に来日。現在は、東京郊外のアパートに一人で暮らしながら、協力者を得るために奔走する日々が続いている。 横田さんが、著者と出会うキッカケとなった会合に出席していたのも、一人でも多くの人々に、日系農家の窮状を理解してもらうためであった。(つづく)
◇参考文献 田尻鉄也『ブラジル社会の歴史物語』(毎日新聞社/平成 11年10月15日発行)
青木公『ブラジルの大豆攻防史』(国際協力出版会/2002年 5月30日発行)
青木公『甦る大地セラード』(国際協力出版会/1995年7月 10日発行)
鈴木孝憲『ブラジルの挑戦』(ジェトロ(日本貿易振興会)/ 2002年3月22日発行)
『ブラジルの歴史』(ブラジル高校歴史教科書)(明石書店/ 2003年1月31日発行)
内山勝男『蒼氓の92年』(東京新聞出版局/2001年1月30日発行)
外山脩『百年の水流』(トッパン・プレス印刷出版有限会社/ 2006年8月 )
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<序章>ブラジルを農場大国に押し上げた、日本人移民の力 和田秀子(フリーライター)
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横田尚武さん(67歳)
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