北海道内で活動するNPO・NGOらでつくる「G8サミット市民フォーラム北海道」が政策提言をまとめ、6月6日、道のサミット推進局担当者に提出し、9月末をめどに道と協議の場を設置するよう併せて求めた。今回は高橋はるみ知事あてだが、今月下旬に福田康夫首相への提言、さらにはG8諸国首脳への提出も予定されている。(札幌=木村嘉代子)
同フォーラムは昨年9月、これまで地道に活動してきた道内の市民活動団体を正会員、団体・企業・個人を協賛会員として結成され、当初から政策提言作りをひとつの目標に定めてきた。北海道洞爺湖サミットを単に歓迎するのではなく、また、G8のためだけのつながりで終わるのではなく、北海道の歴史と未来を考えるのが設立の主旨でもあり、地域での活動のなかで見えてきた北海道的な課題をグローバルな視点からとらえ、日本政府、そして各国首脳へ問題提起するのが狙い。
政策提言は、「21世紀の北海道・アイヌモシリ(注・「リ」は小文字)を『人間の住む静かな大地』にするために」と題された序文ではじまり、気候変動、生物多様性、平和・人権、貧困・開発の4つのパートに分かれ、それぞれが、開催地・北海道、議長国・日本政府、8カ国の首脳に提言している。
これらの提案は、この島が「北海道」と呼ばれるようになった歴史をふまえ、植民地支配、開発による自然破壊や貧困といった問題を、サミット開催地に暮らす住民の立場からとらえ、地域のみならず、世界の人々が抱える課題の解決を訴えている。
政策提言作りは初めてということもあり、作業はかなり難航した。その経緯について秋山孝二共同代表(財団法人秋山記念生命科学振興財団理事長)は、「最初は議論がかみあわず、集約できるのか、政策提言になるのか不安も感じた。それぞれが個別具体的、限定的なテーマで活動していたこともあり、まずは情報の共有からはじめなければならなかった」と述べる。
提言をまとめるにあたっては、4つの分科会でそれぞれ討議し、そこで練られた案を全体会議で発表して意見交換が行われ、再び分科会に持ち帰るという過程がとられた。こうした密度の濃い話し合いが何度も繰り返され、5月31日に最終提言がまとまった。 政策提言が仕上がるまでには、会議はもちろん、メーリングリストでも、環境や人権、開発といった領域を超えて活発な発言が飛び交った。たとえば、「北海道・アイヌモシリ(「リ」は小文字)」という表現ひとつとっても、お互いの解釈の相違があり、容易には決まらず、こうしたことが頻繁だった。
「課題は山積みだったが、回を重ねるうちに、相手がどの立場で解釈しているのかがわかるようになり、主張を理解できるようになっていった。フィールドで活動している人たちは、違うフィールドの人の話を聞いても認識できのだという、現場で動く人間の強さを知った」と秋山共同代表は感慨深げに語った。
情報の共有による“気づき”が生まれたことが、ひとつの成果だったともいう。「かなり突っ込んだ議論ができたと思う。そうした場作りができたことも評価すべき点だ。NGO自体も縦割りになりがちで、自分のテーマのなかでの活動に閉ざされる傾向にあるが、今回、少し突き抜けたような気がする。それぞれの人たちの視野が広まったのではないか」
同フォーラムのメンバー6人が、京都で行われたシビルG8に参加したことも大きな刺激となったそうだ。 「海外のNGOの人たちに触れたことはよい経験となった。ひとつは、世界のNGOの抱える問題と、北海道の課題との共通性を見出したこと。そして、さまざまな分野の問題が相互に密接にからんでいるとわかったこと。このことで、提言作りにより磨きがかかった」
これからの展開としては、6月下旬に福田康夫首相へ提言を行い、さらに、英語版の準備も進めており、各国の首脳への提出を目指している。
提言を受け取った北海道側の反応は、同フォーラムが要求した対話の場の設定について「各部署で検討して回答したい」という段階にとどまっている。
これについて秋山共同代表は、「今後、地方自治体においても、NGOとの日常的な対話が継続し、きめ細かな政策立案・実施により、迅速で満足度の高い政策を実現して欲しい。海外ではNGOというセクターが、政府・企業とともに、自立する本来の第3セクターとしての認識が既に確立しつつある。今回のわれわれの政策提言が、その大きな第一歩になればいい」と期待をこめた。
提言はこちらからダウンロードできる。
http://kitay-hokkaido.net/modules/bulletin1/
G8市民フォーラム北海道
http://www.kitay-hokkaido.net/
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