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2008年06月16日15時05分掲載
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中国
「手抜き工事がわが子を奪った!」 四川大地震校舎倒壊、真相求め親たちが政府の責任追及
大地震発生から半月、四川省の被災地域は復興に向かっている。倒壊した校舎の瓦礫の上には霊堂が建てられ、犠牲になった子供たちの遺影が飾られた。そんな中、「手抜き工事がわが子の命を奪ったのだ」として、父母たちが次々政府を訴えている。
先陣を切ったのは綿竹市富新第二小学校(旧五福小学校)の父母たち。「全国哀悼の日」初日(5月19日)午後2時28分、親たちはわが子の遺影を抱き、廃墟となった校舎跡に建てられた霊堂のそばに座り込みをした。続いて「哀悼の日」の3日目、都江堰の聚源中学校と新建小学校の数百人の父母が校舎前に集まり、校舎倒壊原因の徹底調査及び手抜き工事を行った学校関係者と請負業者の摘発を要求した。 さらに数日後、綿竹漢旺鎮の東汽中学校ほか倒壊した学校の父母たちもそれに続いて次々と立ち上がった。子を失った父母たちは政府への不信を露わにし、その悲痛な訴えは四川省北部、西部へも広がっている。
多くの市政府は父母の声に応え、専門家チームを結成して真相調査に乗り出し、四川省教育局も5月26日、被災した学校施設の安全評価を至急行うよう通達している。しかしそんなことで、かけがえのない子供を失った父母の嘆きと憤りが癒されることはない。
旧五福小学校の保護者代表、熊英さんは、目を閉じるたびに頭が割れ脳みそが飛び出した娘さんの姿が浮かんでくるという。 「地震が起きたとき、私の周りでは倒れた建物はなかったので、娘の学校も大丈夫だと思っていたのです。私は幼稚園の教師をしているので、すぐに園児たちを連れて外に逃げ、一人もケガはありませんでした。しかし3時頃、娘の学校に行って現場を見るなり私は気が遠くなりそうでした。なぜこんなことに?学校が完全に崩れ落ちているんです」
本誌記者は熊英さんと一緒に旧五福小学校に向かった。途中で見た建物のほとんどは無傷であったが、小学校が見つからない。よく見ると無事残った建物に取り囲まれるようにぽっかりと空いた空間があり瓦礫が散乱している。それが旧五福小学校だった。
その日、熊英さんは瓦礫の中から娘さんの体を引っ張り出した。そのとき娘さんはまだ息があり「ママ」と呼んだが、3時間後にこの世を去った。11歳で亡くなった娘さんは星月ちゃんといい、長い髪を二つに分けて結っていた。両親と卓球をするのが何よりも好きだったという。星月ちゃんの親友だった劉月星ちゃんも地震で亡くなった。母親どうしも友人で、一緒に娘の遺体を弔い、山の上に葬ったという。 「娘に言ってあげたい、パパもママもあなたを愛しているって。ママ、いつも留守にしていてごめんね。どうやって償ったらいい?」
あの日から両親の時間は止まったままだ。生きる望みとなっているのはただひとつ、娘を死に追いやった者の罪を暴き出すことだ。熊英さんの鬼気迫る様子と、悲壮に満ちた言葉は戦場に赴く兵士のようだった。 「私たちは政府と長期戦の構えで準備を進めています。それがどんなに辛い戦いとなってもやりとおす。この信念があればきっとやれる。信念を失ったらみんな倒れてしまうでしょう」
5月27日午後、旧五福小学校の別の保護者、李小兵さんに取材した。李さんによると、政府の派遣した調査チームは、当日のうちに検査用としての石塊を持って行ったが、李さんは納得していないと言う。 李小兵さんら多くの保護者たちが手抜き工事だと断定するのは、倒壊したどの学校でも、周りの建物は無事に残っていたからだ。現場にはゆがんだりつぶれたりした建物に鉄筋が見あたらず、コンクリート・プレハブの留め具もあるのかどうか疑わしかった。レンガがつるつるとしているのはコンクリートの接着が不十分だからではないか。こんな校舎が全国にどれだけあるかと思えば、誰だって我が子のことが心配になる。
都江堰市聚源中学の「新校舎」では500名の生徒のうち400名が死亡、綿竹の旧五福小学校では309人の児童のうち127名が死亡、漢旺鎮武都教育中心小学校及び幼稚園では合わせて700名の生徒・児童のうち300名以上が死亡した。都江堰市では6カ所の学校がすべて倒壊したが、政府施設の建物は一棟も倒れなかった。 一方、安県では、各地で周囲の建物がみな全壊した中で、桑棗中学の校舎だけが半壊で済んだが、これは校長が資金を投じ、8棟の強固な校舎を造ったためだった。全校2000名余りの生徒と教員は全員無事だった。被害の大きかった北川県の劉漢希望小学校でも奇跡が起きた。校舎は階段部分がずれたが、3階建ての建物に異常はなく、483名の児童は全員無事であった。
この2校と、廃墟と化した手抜き工事の学校との差には愕然とさせられる。倒壊しなかったのが偶然で、災害にあえば学校はみなもろくも崩れるとでもいうのか。政府の発表では、四川省西部及び北部では地震によって6800教室が倒壊した。しかし父母たちが出した数はそれを上回る8365教室だ。このうちどれだけが手抜き工事だったのか。
ボランティアで現地に来た外国人技師、アブラハムさんは疑問を呈す。なぜ倒壊した学校には鉄筋がほとんどないのか。レンガとレンガの間に厚く塗るはずのコンクリートが粉々なのは、接着不足ではなかったのか。これらの校舎はどうやって政府の検査をくぐり抜けたのか。 アブラハムさんは、手抜き工事や材料のごまかしが行われなかったか調査するために、倒壊現場から1メートルの長さのコンクリート塊とプレハブ部品を運び出し、化学検査所に提出した。これにより、コンクリートの中の鉄筋とセメントの割合、鉄筋に充分な引張強度があるか、コンクリートの成分が基準に達しているか、充分な接着力があるかを知ることができる。
毎晩、熊英さん、月星ちゃんの母劉小英さん、王小雪ちゃんの父李小兵さん、その他多くの父母たちは、わが子の魂を外に置き去りにするまいと、祭壇の遺影を胸に抱いて自宅に帰る。 朝にはまた遺影を抱いて学校に向かう。父母たちの中には地面にうずくまったまま、傷ついた心の中に閉じこもってしまったような人もいる。熊英さんや李小兵さんは外部と積極的に連絡を取り、毎日わが子の遺影を抱いて郷政府や市政府に行く。役所を訪ね、役人をつかまえては、公平な対応を求める。
「われわれは子供を失った。これが天災ならば天命だとあきらめる。人災ならば真相を明らかにしてくれ」 「まあまあ、こちらでお茶でも」 市長と書記は丁寧な応対で彼らを招き入れようとしたが、小雪ちゃんの父親は応ずることなく、門の外で座り続けた。 「妻は昨年病気をして半身不随です。娘は私たちのたったひとつの希望だったのです。それが奪われてしまいました。私たちの希望を返してください」 綿竹市党委員会書記蒋国華は土下座して父母たちに詫びた。
地震から14日目、5月25日午後4時21分、記者は再び、徳陽市政府に請願に行く熊英さんたちに同行した。市政府職員が記者の侵入を阻止しようとしたまさにそのとき、また地震が起きた。青川県を震源とするマグニチュード6.4の大きな余震だった。建物は音を立てて大きく揺れ、記者はすぐに熊英さんとともに外へ逃げた。
揺れは10秒足らずで、記者は恐怖も感じなかったが、旧五福小学校の保護者たちは震えていた。母親の中には、老婆のように身を震わせ子供の遺影をきつくつかんでいる人もいた。その日、徳陽市常務副市長張金明は激昂する保護者たちに詰め寄られて返答に窮し、困り切っていた。 李小兵はメガホンを持ち、保護者たちを代表して言った。 「われわれの同意なしに現場からレンガ1個、瓦1枚たりとも持って行くな」 張金明が答えた。 「わかった!わかった! 専門家チームを作って調査する」 「われわれも検証に参加する」 「わかった、三人参加してくれ」 「現場の人間に証言させろ!」 「お天道様が見ているぞ!」
綿竹市党委員会書記、蒋国華は土下座し、張金明は神に誓った。平身低頭の役人と憤る親たち。新建小学校の保護者たちの怒りは、都江堰市政府教育局臨時テントへと向かった。机をひっくり返し、コンピュータやファックス機を叩き壊し、公安が調停にやってくる騒ぎとなった。
省北部西部の「おから工事」学校の疑惑は、被災地の人々全体の心の問題となり、全省に広がっている。わが子を失った父母の悲痛な思いは、今すべて政府の責任追及へと向かっている。政府は、倒壊した6800教室、そして幾千とも知れぬ悲しみにくれる父母に向き合い、学校の安全と被災住民の心のケアという問題に一刻も早く取り組まざるをえなくなった。
原文=『亜洲週刊』08/6/8号記事(朱一心記者) 翻訳=椙田雅美
(補足:雑誌には、責任追及に立ち上がった親たちがめいめい子どもたちの遺影を掲げ、中央に「天災は避けられないが、人災こそ憎むべき」というスローガンと告発状を手書きした看板を置いたロイターの写真が掲載されている)
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