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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2008年06月30日21時08分掲載
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山は泣いている
32・機能置換の発想はないか 本質無視のプラスアルファ思考が横行 山川陽一
第8章 開発か自然か・4
わたしたちは、しばしば、真の本質がどこにあるかを深く考えず、本質を論じているような錯覚に陥っている。
風力発電の議論もそうであった。「クリーンで資源的にも枯渇することのない新エネルギーなのだから基本的に推進に異論はない。ただし、その建設に伴って自然環境を破壊することになれば本末転倒である」。これだけ聞いていると、物の本質を踏まえた健全な議論が交わされているように思える。私自身も声を大にしてそう主張してきた。 しかし、よく考えてみると、実際には、誰もが現状のエネルギー消費を是認した上で、これから先のエネルギー消費の増分をどの程度新エネルギーで賄うかという議論をしているに過ぎない。もし、本気で化石燃料資源の枯渇や温暖化ガスの増大を心配しているのであれば、化石燃料の消費を純減させてその代替エネルギーとして新エネルギーを考えようという議論にならなければウソだ。 地球環境は、既にそこまで追い詰められているのに、個人は将来とも自分達の豊かな生活様式は変えず、国は経済成長最優先の考え方を変えないで、全ての議論が、暗黙のうちに現状是認の上で組み立てられ展開されている。
もうひとつ例を引こう。上高地まで登山電車を走らせるという構想が、いま再び、現実味を帯びて語られ始めている。そうすれば、交通渋滞の解消、環境保全、入りこみ客の総量規制につながるというのだが、果たしてそうだろうか。何とかして観光客の増加を図りたいという下心が透けて見える。 登山電車の建設と引き換えに既存の自動車道は廃止するくらいの腹を据えた提案であるならば説得力もあるのだが、そんなことはまったく考えていないようだ。その前提がなければ全てがプラスアルファで、単なる上高地の更なる観光地化の促進策に過ぎない。四季を通して入りこみ客が増加し、今でさえオーバーユースが問題になっているのに、屋上屋を重ねるだけになってしまうだろう。
こんな事例は、他にいくらでもある。かつて、信州と飛騨を結ぶ安房峠越えの国道は、雪に閉ざされる半年間は通行できず、道幅も狭く、落石と雪崩の危険が付きまとう九十九折の難路だった。安房トンネルが開通して、数時間の道程がわずか数分に短縮され、オールシーズンの通行が可能になった。開通後は峠越えの一般道は廃止されるのかと思っていたら、トンネルの新道は有料道路になり、依然として峠越えの道は維持されている。 いつできるかわからない松本と福井を結ぶ中部縦貫自動車道の一部だからという理屈らしいが、素直には理解しがたい論理である。国が高速道路株式会社に通行料相当のお金を払っても、新道を無料開放し、峠越えの道を廃止して自然に返すことが得策だと思うのだが、そういう発想はないのだろうか。
北海道に行くと、通行量もまばらな国道に平行して、山林を切り崩しながら高速道路が着々と建設中という光景に遭遇して、びっくりさせられる。よく聞くと、高速道路株式会社の事業としては到底採算が合わないので、国の直轄予算で作る高規格道路だというのだから、この国のやることにあきれ返って言葉も出ない。
新幹線を作る、高速道路を作る、日本中が全てプラスアルファの思考に貫かれている。大体のものはすでに機能充足されている今日、何でも増分として作り続けるのではなく、機能置換の発想が求められる時代である。(つづく)
(やまかわ よういち=日本山岳会理事・自然保護委員会担当)
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