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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2008年07月14日20時22分掲載
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山は泣いている
33・トンボ池の憂鬱 伊那市で見たハッチョウトンボの生息地 山川陽一
第8章 開発か自然か・5
6月末、伊那市で開かれた「自然エネルギーを考えるシンポジウム」に出席した翌日、地元の方に、「もし時間の余裕があったら、近くにハッチョウトンボの生息地があるので行ってみませんか」と誘われ、新山(にいやま)の「トンボの楽園」へ案内してもらった。ハッチョウトンボは体長がわずか2センチほどの日本最小のトンボである。 最初はいくら探しても見当たらず、どこにいるのかなと目を凝らしてみると、池の中に繁茂した草の葉にとまって、確かに、本当に小さな、けれども、まさしく立派な赤とんぼが羽根を休めているではないか。ひとつ見つけると、あっちにもこっちにもという感じで、いくつもの固体を観察することが出来た。 その日は小雨が降っていたので、残念ながらこの可愛らしいトンボたちが飛び交う姿は見られなかったが、そんな情景が目に浮かんで楽しいひと時を過ごした。伊那市では、自然の豊かさのシンボルとしてこのトンボ池の保護管理に乗り出している。
時を同じくして、弘前に在住している山仲間のMさんから、「青森県のトンボ」(青森県トンボ研究会編)という本が出来たからとわざわざ送ってきてくれた。青森県で生息が確認されている77種のトンボが載っていて、その本の中でも、ハッチョウトンボは主役扱いで登場する。単なる図鑑とは大違いで、掲載されている一枚いちまいの写真やそれに添えられた一文から、執筆者の会員の方々のトンボへの愛情がこぼれ出てくるような本である。 それにしても、青森県だけでこんなに多くの種類のトンボが生息しているのを知ってびっくりした。Mさんの本職は中学校の先生だが、トンボ先生と呼ばれるほどのトンボ博士で、日本トンボ学会の会員でもある。彼は、農薬の散布ですっかり姿を消してしまったトンボを呼び戻したいという思いから、農家の跡継ぎがいなくて放置されているりんご畑を借り受けて、数年前からボランティア仲間や子ども達と一緒に「弘前だんぶり池作り」の活動をおこなっている。
こんな風に書くと、ずいぶんトンボに詳しいみたいに思われそうだが、実は、今までわたしが知っているトンボの名前は、シオカラトンボ、アキアカネ、オニヤンマ、ギンヤンマ、それからオハグロトンボとイトトンボくらいなものでしかなかった。トンボの種類がこんなに多いことや、ハッチョウトンボなどという、小さな宝石みたいなトンボがいるのを知ったのも、たまたまこんなことがあったからである。
わたしが子供のころは、確かに、トンボは、セミやバッタなどと並んで一番身近な昆虫だった。近くの用水池に、ギンヤンマをつりに出かけたこどものころがなつかしく思い出される。高度に都市化が進んだいまの東京では、トンボを見かけることはもうほとんど無い。地方でも、開発による沼地や小川の消失、田んぼや畑の農薬の散布などで、いまやトンボは遠い存在になってしまっている。
トンボが身近だったころの田んぼには、メダカやタニシやドジョウがたくさん住んでいたし、川には、ハヤやオイカワが群れていた。農薬漬けの田んぼ、コンクリートで固められた農業用水路、三面張りの川、そんなところには、もう魚も水中昆虫も住めない。
一定の環境にしか生息できないことが生態学的に立証されている生物(指標生物)を指定して、その数や分布を調べることにより、環境測定をする方法がある。ハッチョウトンボは環境省が「良好な自然環境を知る目的」として選定した生物指標昆虫10種のうちのひとつである。
いまや、保護されたトンボ池にしかトンボの棲家がなくなってしまった日本の自然環境は、あまりに寂しい。伊那市のハッチョウトンボの楽園作りや、弘前のだんぶり池作りの活動が、それで終わるのではなく、健全な日本の自然環境を取り戻す一里塚であってほしいと願っている。 (つづく)
(やまかわ よういち=日本山岳会理事・自然保護委員会担当)
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