北海道洞爺湖G8サミットで発表された「『開発・アフリカ』に関するG8コミュニケ」と「国際保健に関する洞爺湖行動指針」に対し、NGO(非政府組織)グループが、総合で「Cマイナス(かなり不十分)」をつけた。「保健医療が議題にのぼり、日本のイニシアティブで保健医療を推し進めるシステムができあがった」と内容面では一定の評価をしたものの、「具体的な資金運用に言及しなかった」ため減点。NGOとしては、来年イタリアで開催されるサミットに向けて引き続き政府との対話を求め、保健医療の充実を実現していく意向だ。(木村嘉代子)
独自のスコアカードを作成したのは、G8サミットNGOフォーラムの保健医療ワーキンググループ。今年のサミットで保健医療を議題にのせようと、2007年の1月にワーキンググループを結成し、政府に働きかけてきた。その大きな理由は、2000年の九州・沖縄サミットで保健医療をはじめて議題にのせた責任上、日本がこの問題でイニシアティブを持ち続けるべきだ、との考えからだ。
一方、政府側も、昨年11月に高村外相が「国際保健はサミットの中心テーマ」と発言、今年1月には福田首相がダボス会議で「サミットでは保健・水・教育に焦点を当てたい」と語り、G8保健専門家会合を発足して指針を作る作業にとりかかっていた。5月のTICAD(アフリカ開発会議)でも、保健医療についてある程度の議論がなされた。
7月のG8首脳会議では、「開発・アフリカ」に関するコミュニケ全8ページのうち2ページが保健医療についやされ、「国際保健に関する洞爺湖行動指針」が採択された。
この結果を受け、G8サミットNGOフォーラム・保健医療ワーキンググループの稲場雅紀さんは、「政府との協力的な連携がある程度守られ、一定の成果はあった」としたうえで、「内容と資金の面からみて、総合得点はCマイナス」と厳しい判定を下した。評価はA(歴史的評価に値する)からF(評価する点が見当たらない)の5段階。
G8サミットでの保健の課題は次の3つが挙げられる。
(1)既存のコミットメントの達成(ミレニアム開発目標、2010年を期限としたHIV/AIDS治療・予防・ケアの普遍的アクセス、三大感染症への当面600億ドル拠出) (2)十分に検討されてこなかった課題への取り組み(母子保健・リプロダクティブヘルス、保健医療従事者の増員、保健システムの強化) (3)G8の誓約の実施要求、および、責任をとらせるためのメカニズム作り
コミュニケと指針には、こうした課題の把握と取り組み方法に関して記述されており、それが評価につながり、内容面はBマイナス(積極的な評価に値する)だった。しかし、資金面では新たな誓約がないばかりか、これまでの誓約の資金拠出計画などが抜けていることからD(問題点・欠落点が多い)がついた。
全体的に辛口の評価だったものの、「保健システム強化・保健従事者増強」や「アカウンタビリティの設置」が今回のサミットではじめて打ち出され、明るい兆しが見えたことも確かだ。特に、G8による誓約を自己診断する仕組み(アカウンタビリティ)については、「G8は約束をまったく履行しなかったが、実績を査定する方向性ができた」との期待が込められ、Aマイナスと高く評された。
ただ、「アカウンタビリティ」は今後の運用にかかっているといえ、この点について、イタリア・エイズ・ネットワークのパオラ・ジウリアーニさんは、「北海道洞爺湖サミットの成果を来年のイタリアにつなげる責任を担ったと認識している。今回、モニタリングの仕組みができあがったが、これを実際にどう進めていくのかがカギとなる」と日本の取り組みを引き継ぐ意思を示した。
NGO側は、「今回の北海道洞爺湖サミットは、包括的な保健対策のスタートライン」とみており、次回のサミットでも日本がリーダーシップをとるよう、引き続き政府と協働で政策作りをしていくことを望んでいる。
「『開発・アフリカ』コミュニケ」「国際保健に関する洞爺湖行動指針」および「NGOによるスコアカード」はこちらのHPよりダウンロードできる。
http://www.g8ngoforum.org/2008/07/ngo-9.html
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