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2008年08月07日17時30分掲載
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中国
貴州省暴動の背景:公安は黒社会と結託し治安は悪化 民衆の恨み爆発の集団事件が各地で続発
▽「気分がすっきりした」
甕安県暴動から一週間後、甕安県の公安局政治委員の羅来平と局長の申貴栄、県の党委員会書記、王勤、県長の海平が免職となり、甕安県は一応の平静をとりもどし、ある朝食専門店はむしろ以前より繁盛しているという。外からたくさん人が来るようになったからだ。 「甕安はおかげで有名になったよ」と、多くの人々は来訪者だと知ると開口一番にこう言う。
しかし民衆の怒りがこれで消えたわけではない。9つの鎮と14の郷を有している甕安県県城(中心地)はメインストリートといくつかの横道があるだけの街で、飲み物を買ったり、露店で軽食をとったり、ネットカフェに入ったり、タクシーの運転手に話しかけたりすれば、こちらから聞かなくてもさっそく難儀を訴え、電話番号を伝えて、なんとか助けてくれと言ってくる。ほとんど誰もがひどい目にあっているようだった。 「ここは社会の雰囲気が悪い。コネが国や法より強いんだ」
小型車を運転する張さんは家族で小売店を商っているが、記者が李樹芬の家はどこかと尋ねてみると、張さんは怒りくるって言った。「おれは運転手を3年やっているが、規則違反の切符がもう枕になるほど溜まったよ。ちょっとしたことですぐ罰金だ」 罰金は即決だが、犯罪者の逮捕は遅々として進まないという。 「この横町でおれは強盗二人をつかまえて警察に突きだしたんだ。ところがろくな捜査もしないですぐ釈放したんだぞ!」 47歳のタクシー運転手、劉能方さんは2006年6月11日未明、県城の中心街で夜食を食べているあいだに買ったばかりの新車を盗まれた。犯人は銀盞郷小村湾で事故を起こし、現場で逮捕されて警察に送られた。しかしいくらもたたないうちに警察がやってきていい加減な報告をした。犯人が壁を乗り越えて逃げた、捜査は終わりだと。劉さんは賠償金もなく、犯人の行方もわかっていない。
甕安の治安の悪さは貴州省でも有名である。暴動事件が起きる前から中国政府で一級の危険地域指定を受けていた。現地の人によれば女性が外出するときアクセサリーはつけないという。イヤリングやネックレスがひったくられる事件が多いのだ。夜、親は子どもたちを一人で外出させない。夜の勤務のタクシー運転手はいつもびくびくしている。「強盗殺人が多い。みんな暴力組織で、公安とつながっているから取り締まりされない」という。 張さんは街で夜、7、8人がワゴン車を襲っているところを目撃し、110番通報したが警官は来なかった。劉能方さんは言った。 「暴力団がひどいことをしても公安は何もしない。私たち一般の人間が結束しないとあいつらにたちうちできない」
大勢の人は6・28事件について「打ち壊しや焼き討ちはよくない」けれど、「気分がすっきりした」と本音を打ち明けた。デモに参加したトラック運転手の胡さんは言った。「石一つ投げたり、車をひっくり返したりするたび、みんなから拍手が起きた。おれも拍手したぜ。誰も組織なんかに入っていない。自発的にやったんだ」
▽鉱山問題、移住と家屋撤去紛争など矛盾山積
甕安県公安局は衝撃を受けたが、6・28事件が最初ではない。去年4月29日には県内玉華郷岩根河田壩村村民70〜80人が公安局を襲撃するという事件が起きている。
玉華郷岩根河田壩村は甕安県から18キロのところで、リン鉱石が豊かに産出し、甕安県リン化公司、愛思開リン化公司が現地で経営している鉱山は中国でもよく知られている。しかし、98年に採掘が始まって以来、村の住民ともめ事が絶えない。「水源が途絶え、土地が強制収用され、環境が悪くなった」という3つの問題が村民の怒りを買った。 「鉱山ができてから山の水源が流れてこなくなり、おれたちがつくった道路が占有された。田んぼもだ。灌漑用水がないんだよ」と、村の張さんは言う。「何度も訴えたがむだだった」。張さんの話では公安局に行ったのは何度も直訴に行ったあと県に訴えに行ったところ、王文挙、高朝福ら7人が逮捕され2年から6年の判決を受けたとのこと。
甕安県県城から60キロの龍塘郷は「強制移住、住居取り壊し紛争」の典型的な地方である。龍塘郷江界河渡口は紅軍の長征で烏江を渡った場所であり、社会主義教育の本拠地だ。土地は肥沃で柑橘類を豊富に産し、渓谷にある江界河村は何世代にもわたって安住し、生活も豊か、よい年では一万元あまりの収入があった。2002年、貴州省で最大の水力発電プロジェクトが始まったとたん、この村の平和が壊された。 300万キロワットを発電するこのダムは世界のカルスト地帯において最大。ダム完成後、龍塘郷烏江の推移は130メートル上昇し、広大な田んぼと江界村全部が水没する。2002年の統計で村の人口は900人余、全員移住しなければならない運命だ。2003年、移住が始まり、07年4月には強制移住も終了したが、現在も江界河河畔には200人余りが小屋を建てて残っている。
「どかないわけじゃない。引っ越しできないんだ」。38歳の楊興蘭は01年にこの村に嫁いできて、移住の圧力を受けてしまった。「保証金は一人たった1万8000元ですよ。人口は2000年の統計で計算していて、私は01年に来たから割当に入れてもらえない。一家3人で4万元にもならない。土地も持っていないし、どこへ引っ越せというのよ」
楊興蘭は夫の張福祥とダム水位線より上の山の中に小屋を建て、去年3月から現在まで1年余り住んでいる。子どもは毎日学校まで7、8キロの道を往復3時間かけて通っている。こういう村民は50〜60世帯、200人以上いる。彼らは電気も水道もない仮小屋に住み、貯蔵しておいた作物と日雇い労働で生活している。記者が訪れたときそこには老人と女子どもしかいなかったが、記者が来たと知ると女性たちは夫を畑から呼び、実情を訴えてきた。
郷政府は省政府にダム地区には50ムーほどの田畑しかなく人が住むのには適していないと報告した。さらに省政府から視察に来た役人には現地の住民は気風が悪いと報告し、村民たちを怒らせた。村民たちは去年は省、州、県の政府に何度も直訴に行ったが、政府が江界河村の路上に拠点をつくり直訴に行く人を妨害するようになった。 「甕安で暴動が起きなければ、あんたたち記者だって来れなかったよ」と、村民の黄廷文は笑って言った。「李樹芬一人が死んだくらいでこんな大事にはなりはしない。政府が人心を得ていないのだ」と、72歳の老人も言った。
▽甕安県の事件は時代を映す鏡
近年、甕安県のように、一つの民事事件や刑事事件が重大な集団的事件に発展する例が多発し、時代を映す鏡のようにパターン化している。たとえば04年、街頭でのもめ事が一般市民による県政府襲撃、警察車両焼き討ちに発展した重慶市の万州事件、05年には車の人身事故から1万人規模の人々が警察を襲い、スーパーの商品を奪うまでになった安徽省の池州事件、06年には、中学の女性教師、戴海静の怪死から民衆が市政府を襲撃した浙江省の瑞安事件、07年にはホテルの女性従業員の怪死がきっかけでホテルが襲われた四川省の大竹事件など。中国の農村の社会問題を研究している于建◆[山+栄]氏は社会の不満爆発の事件だとしている。
于建◆氏は、甕安事件も不満爆発事件の典型的特徴があるという。 于氏は本誌にこう語った。「こうした事件は国が社会の治安を管理する有効性に問題と危機があることを示している。治安管理の行き詰まりは主に二つの直接的要因による。一つは社会に不満を持つ民衆の存在、もう一つは政府の治安管理能力の低下である」「甕安事件の導火線は司法に対する民衆の疑いだ。そこから、司法の不公正が民衆にとって最大の不満だという私の観察が証明された。司法機関は一般の人が権利を侵されたとき最後に求める救済だ。司法の公正が失われれば民衆は自分たちの意見や訴えを表す正当なルートを失ってしまう。彼らはそこで制度化されていない社会的な力で公正を実現しようとし、不満をぶちまけるのは不思議ではない」「また、政府の治安管理濃緑の低下は、根本的に民衆の権利を無視していることから来ている。治安管理能力は警備システム、処理技術、責任制度の3つからなる。政府の各種警備制度の設計で、民情・民意を無視したり、民衆の動きをすべて『敵情』と考えたりしている。危機の処理技術では、地方政府のやっている方法は出発点が問題を解決するところではなく暴力で圧力を加えるところにあり、衝突を激化させている」
6・28事件で罷免された前甕安県公安局局長の申貴栄はこう言っている。「民衆事件で警察を出動させるという、民衆の『恨みを買う』ことは我々がやらなければならない。採掘権の紛争、強制移住、家屋の撤去などもそうだ」 彼は警察内部が黒社会と結びついていたことをはっきり認めた。
責任制度では今回、政府のやり方は以前とくらべて開けてきた。以前は下級政府が上級政府に事実を隠蔽したことが民衆事件を悪化させる重要な原因だった。しかし今回は胡錦涛はすぐに事件について3つの指示(民情安定、原因究明、情報公開)を出した。さらに民間でのウエヴサイトで事件に関する情報は見ることができる。メディアがインターネットを主体にしているいま、情報の伝達はもはや阻むことができない。 こうした状況で貴州省の役人は最初、いままで通り出した「少数の企みを持った人間が扇動した」という結論をすぐに改め、「深層の問題」に注意を向け地方役人の責任を追及した。これは民衆事件の治安管理方法に一つの見本となっただろう。
▽現地政府は死亡した少女の村を封鎖し記者の入村を阻止
残念ながら伝統的な官僚ロジックは強大で、上意下達の方法は解決されていない。甕安を離れる前、記者は李樹芬の家のある玉華郷雷文村泥坪組を最後に取材しようとした。だが雷文村の入口では外部の車がすべて交番の警察官に停められていた。「道が滑って危険だから入れない」「歩いても無理だ」「上の命令で外部の人間は入れない」と、若い警官は言い、村に入っても李家の人には会えないぞと警告した。「玉華郷の指導者がいるんだ。郷長が李樹芬の家にいる」という。
17歳の李樹芬が亡くなって16日になる。甕安は暴動で有名になった。そうではあっても郷政府はいまだに大勢の人員を動員して「自殺で溺死した」とされる少女を守っている。遺体は埋葬されて5日になるが、こうした粗暴で下手な処理をしていては、もともと大きな不満を抱く民衆がいる以上、問題は果たして改善されるか、あるいは蓄積されるか。
原文=『亜洲週刊』08/7/20張潔平、朱一心記者 翻訳=納村公子
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